C04悩み解決
シニア期の猫のあごニキビ|若い頃と同じケアでは追いつかない
夕方の食事。器の前まで来た猫が、前足を折ってその場に伏せました。あごが器のふちに乗ったまま、顔だけが動いています。その姿勢のまま、2分。若い頃は同じ器の前で立って、あごを浮かせたまま食べていた子です。シニア期に入ってから猫のあごニキビが戻ってきたとき、変わっているのは皮脂の量より、あごが器に触れている時間のほうです。器もフードも置き場所も替えていないのに、あごの下だけが変わる。この記事では、その2分がどこから来たのかを追いかけます。
器の前で、伏せて食べるようになった
猫が食べているところを、横からしゃがんで見てください。目の高さを床に近づけると、あごと器のふちのあいだに、すきまがあるかどうかが見えます。若い猫は、器の前に四本の足で立ち、首を下ろして食べます。このとき、あごは宙に浮いています。口だけが器の中に入り、あごの下は何にも触れていません。
シニア期に入ると、この立ち方が続かなくなる子がいます。食べはじめは立っていても、途中から前足を折って伏せる。あるいは、最初から後ろ足を畳んで座り、首だけを伸ばして低い位置から食べる。どちらの姿勢でも、あごの下が器のふちに乗ります。そこから先は、口を動かしているあいだじゅう、あごの皮膚が器に当たり続けます。
食器も、フードも、置いている場所も替えていません。それでも猫のあごニキビが出るのは、器の側が変わったからではありません。その子の食べる姿勢が変わって、あごが器に乗っている時間ができたからです。シニア期のあごニキビは、この時間の話としていちばん説明がつきます。猫のあごニキビが若い頃と同じケアで追いつかなくなるのは、ここが変わっているからです。
| 若い頃 | シニア期 | |
|---|---|---|
| 食べるときの姿勢 | 四本の足で立つ | 前足を折る/後ろ足を畳んで座る |
| あごの位置 | 宙に浮いている | 器のふちに乗っている |
| あごが器に触れる時間 | 口を運ぶ一瞬だけ | 食べているあいだ、ずっと |
| 1回の食事の長さ | 3分ほどで離れる | 途中で休みながら、長くなる |
| 食べたあとのあご | 乾いている | 湿っている、フードの粉がつく |
右の列に寄っているなら、あごの下は毎食ごとに数分間、器のふちと皮脂とフードの湿りにはさまれていることになります。1日2回の食事で、1年で1,000回以上。若い頃と同じ拭き取りでは追いつかない、という感覚はここから来ています。猫のあごニキビが同じ場所に戻ってくるのも、同じ場所が毎日同じだけ触れているためです。
触れている時間が、何倍にもなっている
同じ器で、同じフードを、同じ量だけ食べています。それでも、あごが器に触れている時間だけが変わりました。若い頃は口を運ぶ一瞬だけ、いまは食べているあいだずっと。回数は変わらず、1回あたりの長さが変わったということです。
触れている時間が延びると、あごの下では3つのことが同時に進みます。ひとつは、器のふちが皮膚を押し続けること。二つめは、あごの皮脂が器のふちに移り、そこに残ったものにまた触れること。三つめは、フードの湿りとよだれが、あごの毛に留まったまま乾かないことです。押されて、移って、湿ったまま。この3つが重なる時間が、食事のたびに数分ずつ積み上がります。シニア期の猫のあごニキビは、この積み上がった時間の長さで見ると分かりやすくなります。
- 押される時間:器のふちは硬く、あごの下の皮膚は薄い場所です。一瞬なら跡も残りませんが、数分続くと毛が寝て、皮膚が同じ形に押されたままになります
- 皮脂が移る時間:あごの下は皮脂の出る場所です。触れているあいだ、皮脂は器のふちへ移ります。次の食事で、その同じ場所にまたあごが乗ります
- 湿っている時間:ウェットフードなら器のふちが濡れていますし、ドライでもよだれで湿ります。あごの毛が濡れたまま数分過ごすと、乾くまでにさらに時間がかかります
では、なぜ姿勢が変わったのか。ここを飛ばすと、器だけ替えても戻ってきます。シニア期に食べる姿勢が変わる背景には、たいてい次のどれかがあります。
- 前足で体を支えていられる時間が短くなった:立ったまま首を下ろす姿勢は、前足に体重が乗ります。長く続けにくくなると、途中で伏せます
- 首を下ろした姿勢が続けにくくなった:頭を下げたまま静止するのは、首まわりに負担のかかる姿勢です。下ろす代わりに、体ごと低くします
- 器の中が見えにくくなった:目が見えにくくなると、器に顔を近づけます。近づけた結果、あごが先に器へ当たります
- ひげが器の内側に当たるのを避けている:深い器では、顔を斜めに入れる子がいます。斜めに入れると、あごの片側だけが器に乗ります
どれも、食欲や元気とは切り離して起きます。食べる量は変わっていないのに、食べ方だけが変わっている。飼い主から見て気づきにくいのはこのためです。皿の中身は毎回きれいになくなるので、姿勢のほうを見る機会がありません。
あごの下は、その子の舌が届かない場所です。若い頃から届いていません。つまり、毛づくろいが減ったからあごに残るようになった、という説明はここでは合いません。もともと届いていない場所に、触れている時間だけが増えた。シニア期の猫のあごニキビは、届く・届かないの話ではなく、時間の長さの話として見てください。
器の高さを上げて、あごを浮かせる
手当ては、姿勢を直すことではありません。伏せて食べること自体は、その子が楽な形を選んだ結果です。変えるのは、伏せたままでもあごが器に乗らない高さにすることです。器の位置を上げると、伏せていても首が下がりきらず、あごの下にすきまが残ります。猫のあごニキビへの手当てとして、家庭でいちばん確実に変えられるのがこの高さです。
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いまの高さで、あごが乗っているかを横から見る
食べはじめの30秒ではなく、食べ終わりの30秒を見てください。姿勢が崩れるのは後半です。しゃがんで、目の高さを器と同じところまで下げます。あごの下にすきまが見えなければ、乗っています。
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器の下に台を入れて、2〜3センチずつ上げる
一度に高くしないでください。高すぎると、今度は首を反らせて食べることになります。2〜3センチ上げて、1日ようすを見る。本や薄い箱で構いません。落ち着いて食べているかを見ながら、少しずつ足します。
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食べているあいだ、あごの下にすきまがある高さで止める
目安は、器のふちがその子の胸の下あたりに来る高さです。伏せていても、あごが宙に浮いていれば十分です。姿勢を立たせる必要はありません。
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ふちの低い、浅い器に替える
高さを上げてもふちが高い器だと、あごが乗る面はそのまま残ります。ふちが低く、口が入る幅のある浅い器にすると、あごが当たる面自体が減ります。ふちの角が丸いものを選んでください。
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食べ終わったあと、あごの下を押さえて水分を取る
こすりません。乾いた布かコットンをあごの下に当てて、そのまま3秒待ちます。汚れを落とすためではなく、湿っている時間を短くするための一手です。食後すぐ、器を下げるついでにやると続きます。
食後にあごの下を押さえる3秒は、乾いた布から一段進めることもできます。伏せて食べた数分のあいだに、あごの毛へ移っているのは、器のふちへ行き来した皮脂と、フードの湿りに混ざった食べかすです。乾いた布で押さえると湿りは減りますが、ふちから戻った皮脂はその上に残ります。mofuwa 猫あごクリーナー は、コットンにとって使うアルカリ電解水のジェルです。あごをぬるま湯で軽く濡らしてふやかしてから、くるくるとなでるように拭き取ります。すすぎも二度拭きも要らないので、器を下げるついでの一手が長くなりません。スプレーのように吹きかけないので、食べ終わってまだ伏せたままの姿勢でも、その子を立たせずに済みます。コットンに付いた色が、その日の量です。器を2〜3センチ上げた週から付く量が減っていれば、皮脂が増えたのではなく、あごが器に触れている時間のほうが短くなったと読めます。あごが赤い、じくじくしているなど、炎症や出血がある場合は使用せず、獣医師にご相談ください。
器そのものの手入れも、同じ理由で毎日に入れます。あごが乗っていた場所には、その子の皮脂が移っています。ふちの内側と外側を、毎食後に洗ってください。ぬめりが残っていると、次の食事で同じ場所にあごが戻ります。プラスチックの器は表面に細かい傷が入って皮脂が残りやすいので、シニア期はステンレスか陶器のほうが手入れが楽になります。
食器の高さだけを上げて、水皿を床に置いたままにしていることがあります。水を飲むときも、あごは同じように器のふちへ乗ります。シニア期は水を飲む回数が増える子もいるので、あごが触れる時間は食事より長くなることもあります。食器を上げたら、水皿も同じ日に上げてください。
食べにくさが先にあるときは、あごの話にしない
ここまで、食べる姿勢が変わることを前提に書いてきました。姿勢が変わること自体は、シニア期に自然に起こります。ただ、姿勢の変化の手前に、食べにくさがあることがあります。その場合、猫のあごニキビは結果のほうで、先に見るべきものが別にあります。
- 食べはじめるまでに時間がかかる、器の前で立ったまま動かない
- 口を開けたときに、片側だけで噛んでいる
- 食べているあいだに頭を振る、フードを口からこぼす
- 食べる量は同じなのに、食事にかかる時間が2倍以上になった
- 食べたあと、前足で口のまわりをこすっている
- 水を飲む量や回数が、ここ数週間で急に変わった
- 体重が減っている、背中や腰を触ると嫌がる
これらは、器の高さで解決する話ではありません。口の中、関節、目、そのどれかに理由があることがあります。あごの下の変化に気づいたことをきっかけに、食べ方のほうを見てください。猫のあごニキビは目につきやすいので、先に気づく機会になります。
あごの下が腫れている、じゅくじゅくしている、触ると痛がる、出血している、においが数日続く、黒い点だけでなく赤いふくらみが増えている、食べる量が減った、体重が落ちている。いずれかに当てはまるときは、拭き取りを続ける前に動物病院にご相談ください。あごの下は自分では見えない場所なので、気づいたときには時間がたっていることがあります。
相談するときは、いつから、食べる姿勢がどう変わったか、器の高さを替えたかどうかを伝えてください。食べているところを横から撮った動画が10秒あれば、姿勢の話はそれで伝わります。あごの下は、診察の前に拭かずに連れて行ってください。何がどのくらい残っているかが、そのまま情報になります。
シニア期のあごニキビを、年齢のせいだと片づけないでください。年齢そのものではなく、年齢とともに変わった姿勢が、あごを器に乗せています。姿勢は変えられませんが、器の高さは今日変えられます。食後にあごの下を押さえる3秒と、器の高さ2〜3センチ。この2つで、あごが触れている時間は確実に短くなります。2週間続けて、同じ角度で撮った写真と並べてみてください。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
