C09シーン別・暮らし

シニア犬と暮らす人が動物病院に行く日で困ること、その手当て

公開日 2021年3月6日|文=mofuwa編集部

明るく静かな部屋で、淡いクリーム色の毛の年老いた犬が薄い布の上で休んでいる
通院の日にいちばん長いのは、診察室ではなく待っている時間のほうです。写真:https://kaboompics.com//Pexels

受付に診察券を出して、椅子に座って、名前が呼ばれるまでの20分。動物病院で実際にいちばん長いのは、この待っている時間です。老犬と暮らしていると、通院の回数は少しずつ増えていきます。年に一度だったものが季節ごとになり、やがて月に何度かになる。そうなると、病院に行く日はもう特別な日ではありません。特別な日のつもりで毎回すべてを整えていると、飼い主のほうが先に続かなくなります。ペットの通院で困ることの多くは、診察の中身ではなく、その前後の時間に集まっています。この記事では、老犬と動物病院へ向かう日について、実際に口に出される問いを7つ並べ、最後に通しで整理しました。

何時間前から動き出せばいいですか|老犬の動物病院で、最初に出る疑問は時間の置き方です

前の晩から準備を始める方が多いのですが、老犬の場合はおすすめしにくいところがあります。前日から支度が始まると、その子の一日の流れも一緒に前倒しになるからです。いつもと違う時間に呼ばれ、いつもと違う場所に荷物が置かれる。年齢を重ねた子ほど、その差に気づきます。当日の朝までは、できるだけふだんどおりに過ごしてください。

動かし始めるのは、家を出る10分前で足ります。ペットの側の支度で本当に必要なのは、排泄を済ませることと、水を一口飲ませることの2つだけです。あとは飼い主の側の持ち物で、これは前日に袋へ入れておけます。人の準備は前日、その子の準備は10分前。この2つを分けておくと、当日の朝が静かになります。

予約の時刻についても一つ。老犬は同じ姿勢でいる時間が長くなるほど負担が増えるので、待ち時間の短い時間帯を、動物病院に一度たずねておくと、その後の通院がずっと楽になります。開院直後か、午後の早い時間かは病院によって違います。月に何度も通うなら、最初の一回で聞いておく価値があります。

待合のどこにいれば大丈夫ですか|老犬を長く立たせないための、動物病院での居場所

椅子に座って、その子を床に立たせたまま待つ形が、老犬にはいちばんこたえます。10分立っていられても、20分立っていられるとは限りません。座らせる場所を先に作ってください。持っていくのは、家で使っている敷物を1枚だけ。畳んでも荷物にならない薄いもので構いません。

抱き上げて膝に乗せる方も多いのですが、体重のある子だと飼い主の腕のほうが先に限界になります。途中で下ろすことになるくらいなら、最初から敷物の上に伏せさせたほうが、その子の姿勢は安定します。ペットカートを使っている場合は、そのまま中で待てるかどうかを受付で確認してください。動物病院によっては、他の子との距離を取るために置き場所を案内してもらえます。

行く前に洗っていったほうがいいですか|老犬の動物病院で、これをやらなくてよいのはなぜか

これは、やらなくて構いません。7つの問いの中で、唯一「減らしていい」と答えられるところです。理由は2つあります。1つめは、洗って乾かしきるまでにかかる時間と拘束が、老犬にとってそれなりの負担になることです。通院そのものにも体力を使う日に、その前へもう一つ大きな作業を置くことになります。

2つめは、いつもの状態で見てもらったほうがいい、ということです。洗った直後の被毛と皮膚は、ふだんのその子ではありません。におい、フケの出方、毛の寝方。飼い主が家で気になっていた変化ほど、洗うと分からなくなります。相談したいことがある日ほど、洗わずに連れて行ってください。

気になるときは、部分だけで足ります。口のまわり、足先、おしりのまわり。この3か所にグルーミングスプレーを吹きかけて手でならせば、数十秒で片づきます。体をきれいにしてから行かなければ失礼にあたる、と感じる方がいますが、動物病院はその子の状態を見る場所です。全身を洗った直後より、ふだんの状態のほうが役に立ちます。

Note手を増やす問いと、減らす問いを混ぜてください

通院の日にまつわる情報は、やることばかりが並びがちです。老犬との暮らしは何年も続くので、増やした手はそのぶん毎月かかり続けます。この記事で減らしたのは、行く前に洗うという一手です。減らした時間を、待合での過ごし方と帰ってからの手当てに回してください。同じ7つでも、その配り方で当日の疲れ方が変わります。

玄関を出るまでの順番が、毎回ばらばらになります|老犬とペットカートの支度

毎回考えているから、毎回ばらばらになります。順番を1つ決めて、それを固定してください。おすすめは、その子に触れるものを先、荷物を後にする並びです。理由は単純で、支度の途中でその子を待たせる時間がいちばん短くなるからです。

  1. 先に、その子の体につけるものだけ

    ハーネス、リード。ここで足元がふらつくようなら、玄関に敷物を1枚置いてから着けます。立ったまま長く着けさせないのが、老犬の支度の要です。座ったままでも着けられる形の道具に替えると、この時間がさらに短くなります。

  2. 次に、移動の形を決める

    歩いて行くのか、ペットカートか、抱いていくのか。同じ子でも、その日の朝の様子で変わって構いません。いつも歩いていたから今日も歩く、と決めてしまわないでください。玄関で数歩の歩き方を見て、その場で決めます。

  3. 最後に、袋を持つ

    診察券、財布、敷物、水、ペットシーツ、記録のメモ。この6つを1つの袋に入れっぱなしにして、通院用として玄関に置いておきます。毎回詰め直さないので、忘れ物がなくなります。使ったぶんだけ、帰ってから補充します。

この順番にしておくと、途中で何か足りないと気づいても、その子を玄関に立たせたまま探し回ることになりません。探すのは袋の中だけで、その子はもう座って待っています。月に何度もある日なので、支度が5分縮むことの意味は、1回ぶんではなく年間の合計で効いてきます。

月に何度も動物病院へ通うようになった老犬|毎回やることと、やらないことの線を知りたい

通院が増えたときに起きるのは、手順が少しずつ増えていくことです。前回うまくいかなかったことへの対応が足され、それが次の回にも引き継がれる。気がつくと、通院の日だけ手順が10個ある状態になります。ここで一度、毎回やることと、そうでないことを分けてください。

通院の日にやることを、頻度で3つに分ける
いつやるか内容考え方
毎回やる排泄・水を一口・敷物を持つその子の姿勢と体の負担に直接つながることだけ
毎回やる家で見ている3つを、メモに一行口頭で思い出そうとすると、待合で焦ります
月に一度でよい爪の長さと足裏の毛を確かめる床で滑る条件は、月単位でしか変わりません
やらなくてよい行く前に全身を洗うふだんの状態で見てもらったほうが伝わります
やらなくてよい前日から支度を始めるその子の一日の流れが前倒しになります

分けてみると、毎回必要なものは意外と少なくなります。老犬との暮らしで大事なのは、通院の日だけ特別に頑張れることではなく、来月も再来月も同じようにできることのほうです。ペットの通院は、これから何年も続く可能性があります。減らせるところを先に決めておくと、増やしたい日に余力が残ります。

帰ってきて、まずどこを拭けばいいですか|動物病院から持ち帰るものと、老犬の毎日のケア

帰宅してすぐ、玄関で拭くのは3か所です。足先、おなかの下、それにあごの下。いずれも、待合や診察台で外の面に触れていた場所です。全身をやる必要はありません。この3か所は、家に上がったあとで寝床やソファへ最初に触れる面でもあります。

この3か所は、mofuwa グルーミングスプレーで片づけています。毛に直接吹きかけて、毛の流れにそって手でなでるだけです。アルカリ性の電解還元水なので、外で触れた面についた汚れと余分な皮脂が乳化して落ちます。洗う日と洗う日のあいだを受け持つ道具で、老犬のように入浴そのものが負担になる子ほど、この間の日の手数が効いてきます。成分は清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口のまわりやあごの下でも量を控えずに使えます。赤くなっている場所やかさついている場所は、拭くより先に動物病院で相談してください。強くこすらず、その子が疲れているようなら、翌朝に回して構いません。

帰ってきた日にもう一つ見てほしいのが、寝る姿勢です。通院のあとは、いつもと違う向きで寝ることがあります。それが翌朝には戻っているかどうか。戻らない日が続くようなら、次の通院のときに伝える材料になります。毎日のケアと記録は、ここでつながります。

聞かれたことに答えられませんでした|家で見ている3つを、動物病院へ持っていく

待合で急に思い出そうとすると、たいてい出てきません。日付も、いつからかも、あいまいになります。持っていくのは記憶ではなく、一行のメモにしてください。書くのは3つだけです。多くすると続かず、続かないメモは持っていくものになりません。

  1. 食べた量と、食べ方

    全部食べたか、残したか。器の前に立つまでの時間が長くなっていないか。量そのものより、いつもと違った日が何日あったかを数えます。カレンダーに印を1つ付けるだけで足ります。

  2. 水を飲む回数と、飲む場所

    回数が増えたか減ったか。器のところまで行かなくなっていないか。飲む場所が変わったときは、飲む量ではなく歩く距離の話かもしれません。気づいた日付だけ書いておきます。

  3. 寝ている場所と、姿勢

    同じ場所で寝ているか。伏せる向きが片側に寄っていないか。起き上がるまでにかかる時間が変わっていないか。老犬の変化は、動きより先に、休み方に出ることがあります。ここは飼い主にしか見えない情報です。

この3つは、診察の中身の話ではありません。家でしか観察できないことを、家の外へ持ち出すための記録です。スマートフォンのメモに日付と一行だけ、と決めておけば、月に何度もある通院の日にそのまま開けます。写真を撮っておくのも有効で、歩いている数秒の動画があると、言葉より早く伝わることがあります。

Caution次の予約を待たなくていい変化

食べる量が数日続けて落ちている、水の飲み方が急に変わった、立ち上がれない、呼吸の様子がいつもと違う、同じ場所をなめ続けている、皮膚が赤い、じくじくしている、においの質が変わった。こうした変化に気づいたときは、次の予約日まで待たずに動物病院へご連絡ください。通院の間隔が決まっていると、その日まで我慢させてしまいがちです。予約と予約のあいだに相談してよい、と最初に確認しておくと、迷う時間がなくなります。

通院を、特別な日から月に何度もある日へ|老犬とペットの暮らしの組み替え

7つを通して見ると、どれも診察室の外の話でした。動物病院へ行く日で飼い主が困ることは、診察の中身ではなく、その前後にある時間の使い方に集まっています。そして老犬と暮らしていると、その日は月に何度もやってきます。1回ぶんを完璧にする設計から、何十回も続く設計へ、いったん組み替えてください。

1回ぶんの設計と、続けるための設計
特別な日として組むと月に何度もある日として組むと
支度前日の夜から始める人の荷物は前日、その子は10分前
待合抱いて待つ敷物を1枚敷いて、伏せさせる
行く前全身を洗って整える洗わない。気になる3か所だけ拭く
持ち物毎回そろえ直す袋ごと玄関に置きっぱなしにする
帰宅後疲れたので何もしない足先・おなかの下・あごの下だけ拭く
記録そのつど思い出す食べた量・水・寝る姿勢を一行ずつ

右の列は、どれも手が減っています。減らせた理由は、その日を特別扱いしなくなったからです。ペットの通院が続く暮らしでは、毎回全力で整えるより、毎回同じ形で通えることのほうが結果として長持ちします。飼い主の側に余力が残っていれば、その子の様子の小さな違いにも気づけます。

最後に一つ。老犬の通院が増えることを、悪い知らせとして受け取る必要はありません。通う回数が増えるのは、見てもらえる回数が増えるということでもあります。月に何度もある日になったからこそ、前回と今回の差が細かく分かるようになります。家で見ている3つを持っていって、帰ってきたら3か所を拭く。動物病院に行く日を、そういう毎日のケアの一部として置き直せば、老犬と暮らす何年かは、もう少し軽く進みます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。