C14トリマー/獣医師視点

トリミング前日の準備で仕上がりが変わる

公開日 2021年10月24日|文=mofuwa編集部

やわらかな日ざしの入る明るい部屋で、淡い色のラグの上に伏せているふわふわした淡い色の犬
前日の夜に指が抜けたかどうかが、翌日の仕上がりの分かれ目になります。写真:Jay Brand/Pexels

前日の夜にコームを入れて、右の脇で1回止まった。そのときは指で少しほぐして、通ったから終わりにした。翌日の台の上で、同じ場所にまた指が止まります。トリミングの前日に触ったところと触らなかったところは、当日の工程を通したあとも、ほとんどそのままの形で残っています。当日いちばん最初にやるのは、全身を濡らして乾かすことです。この工程は、緩んでいる絡みには何もしませんが、締まりかけた絡みには締まる向きに働きます。だから前日の10分は、時間の節約ではなく、翌日の出発点をどちらに置くかという話になります。

前日の夜に止まった場所は、翌日そのまま残る|トリミングの前日に起きている変化

前日の夜と当日の朝では、毛の状態がほとんど変わりません。1日で伸びる長さは知れていますし、汚れも一晩ぶんです。変わるのは毛そのものではなく、絡みの締まり方のほうです。ゆるく重なっているだけの絡みと、根元まで締まった絡みは、見た目では区別がつきません。指を入れたときに抜けるか止まるかで初めて分かれます。

この差が、翌日の台の上でそのまま出ます。前日に抜けた場所は当日も抜けます。前日に止まった場所は、当日も同じところで止まります。1日という時間は、絡みをほどく方向には働きません。締まる方向にだけ、少しずつ進みます。だからトリミングの前日にやることは、何かを新しく作る作業ではなく、翌日の出発点を前に進めておく作業になります。

前日の夜に指を入れたときの手ごたえと、翌日そこで起きること
前日の手ごたえ絡みの状態翌日の台の上で起きること前日にやること
指が根元まですっと入る重なっていないそのまま通る触らなくてよい
途中で少し抵抗が出るゆるく重なっている洗って乾かすと締まる毛先側から短く割く
指が止まって戻る根元まで締まっている同じ場所で時間がかかる位置だけ覚えて渡す
毛が束になって一緒に動く面で固まっている刃を入れる判断になるその日は触らない

表の3行目と4行目は、前日に無理をして減らそうとする場所ではありません。締まった絡みを前日の夜にほどこうとすると、締まる向きに力がかかります。根元から引く動きは、毛を束にまとめる動きだからです。翌日ほどく人がいるのですから、前日にやるのは位置を覚えることのほうです。触らなかった場所が3か所ある、と言えるだけで、当日の組み立ては変わります。

濡らして乾かす工程は、絡みを締める向きに働く|犬のトリミング前日にある背景

当日の作業は、カットから始まりません。まず全身を濡らして、洗って、乾かします。この工程は、乾いた状態でゆるく重なっていた毛を、一度まとめてから乾かす形になります。水を含んだ毛は互いに沿って、乾くときにその形のまま固まります。もともと重なっていなければ何も起きませんが、少し重なっていた場所は、乾いた時点で前より締まっています。

前日の状態が、当日の工程を通ったあとどうなるか 当日の最初の工程は、絡みの有無を判定しません。前日の状態をそのまま受け取って、締まる向きに一度進めます。だから前日に緩めてあるかどうかで、乾かし終えたあとの姿が分かれます。 前日 の状態 濡らす 乾かす 当日 の出発点 緩いか、締まっているか 同じ向きにだけ進む 前日に緩めてあった場所 水を含んでも沿うだけで済む 乾いたあともコームが抜ける 前日に触らなかった場所 重なったまま乾いて締まる ほどく時間が当日に足される
工程が絡みを選ぶのではなく、前日の状態のほうが工程を通ります。

もうひとつ、前日の夜そのものに絡みが増える背景があります。乾いた季節に、乾いた毛へいきなりブラシを入れる動きです。毛どうしが帯電すると、隣の毛に寄っていきます。寄った毛は、ブラシを通したあとに元の向きへ戻りません。トリミングの前日に「ととのえておこう」としてブラシを何度も通した結果、翌朝のほうが絡んでいた、という順序は現場でよく聞く話です。

犬のトリミングの前日で崩れるのは、この4つのどれかであることがほとんどです。どれも「ととのえよう」とした手が、締まる向きに働いた形をしています。前日の夜にやる価値があるのは、量を減らすことではなく、翌日の工程が通りやすい向きに毛を置いておくことのほうです。

乾いた毛にブラシを入れない|前日の夜10分のトリミングまでの考え方

前日の夜にやるのは、10分ぶんの手だけです。先に毛を湿らせて、毛先の側から短くコームを入れる。順番はこれだけで、場所は脇、内股、耳のうしろ、足先の4か所に絞ります。全身をやろうとすると途中で終わり、終わらなかった場所のほうが翌朝に残ります。

  1. 先に湿らせる

    乾いた毛にブラシを当てる前に、mofuwa グルーミングスプレーを全体に吹きかけます。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にせず、毛の下まで届く量をかけられます。

  2. 毛先の側から短く入れる

    コームは根元からではなく、毛先から2〜3cmずつ入れます。抵抗が出たら、その手前まで戻って、もう一段浅いところからやり直します。

  3. 止まった場所を書く

    抜けなかった場所を紙に書きます。「右の脇」「左の内股」。翌日に渡す情報はこれだけで足ります。ほどこうとして時間をかける必要はありません。

  4. 足先と口のまわりは分けて考える

    舐めに行ける場所なので、使うものを選びます。この2か所には mofuwa スキンケアミストを使うと、口のふちでも手を止めずに済みます。

湿らせてから梳かす形にすると、静電気が起きにくい状態でコームが通るので、毛が隣へ寄っていきません。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、前日の夜の1本をこれにしておくと、梳かす工程と表面の汚れを動かす工程が同時に片づきます。アルカリ電解水と油がなじんで乳化するため、落ちるのは汚れのもとになっている余分な脂のほうで、地肌に要る皮脂は残ります。前日に湯を使わなくても、翌日の工程が通りやすい状態には持っていけます。

前日に湯を使うかどうかは、よく聞かれます。乾ききらない場所が一晩残るくらいなら、湯は使わないほうが翌日は楽です。特に耳のうしろと内股は、家で乾かしきったつもりでも湿りが残りやすい場所です。湯船と乾かす時間そのものが負担になるシニアの犬や、水の苦手な猫であればなおさらで、前日の体力を残しておくほうが、当日に立っていられる時間が長くなります。

Caution前日に止まる場所が、毎回同じところだったとき

前日にコームが止まる場所が3回続けて同じ/その場所の地肌が赤い/触ると体が固まる/耳のうしろが左右で温かさに差がある。こうした残り方は、絡みだけでは説明がつかないことがあります。毛の量の問題であれば、前回のトリミングのあとしばらくは抜けるはずだからです。前日に書いた紙を何回ぶんか持って、動物病院で診てもらう枠を取ってください。皮膚の側を見てもらってから、次の予約の間隔を決めたほうが早く進みます。

仕上がりが変わるのは腕の差ではありません|トリミングの前日を10分あけておく理由

同じ子を同じ人が同じ時間で仕上げても、日によって出来上がりが違うことがあります。差の一部は、前日の夜にどちらの状態で終わったかで決まっています。緩んだ状態で当日を迎えれば、最初の工程はそれをそのまま通します。締まった状態で迎えれば、ほどく時間が先に足され、そのぶん仕上げの時間が減ります。

前日の10分が、当日どこに返ってくるか
前日にやったこと当日に返ってくる場所
湿らせてから毛先側に通した洗って乾かしたあと、コームがそのまま抜ける
止まった場所を紙に書いたどこから手をつけるかが先に決まる
締まった絡みに触らなかった締まりが進まないまま当日を迎えられる
湯を使わず体力を残した台の上で立っていられる時間が長くなる

4つとも、腕も道具も要りません。要るのは前日の夜の10分と、紙の1行だけです。次の予約の前の日に、その10分をあけておいてください。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。