C09シーン別・暮らし

帰省、保護犬・保護猫を迎えた人はどうしている?

公開日 2021年11月6日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床に、クリーム色の毛の猫が静かにすわっている
先に整えるのは、その子の側ではなく、迎える人たちの手のほうです。写真:Arina Krasnikova/Pexels

帰省の玄関を上がった瞬間、母が「かわいい」と言いながら、頭の上から手を伸ばしました。その子は半歩下がって、こちらの脚の後ろに入りました。母に悪気はありません。迎えたことを喜んでくれていて、だから真っ先に触ろうとしました。保護犬・保護猫を迎えた人が帰省で困るのは、たいていこの場面です。家が変わることより先に、かわいがろうとする手のほうが早く来ます。ペットを連れた帰省で最初に手を入れる相手は、その子ではありません。触っていい場所・呼び方・逃げ場所という3つを、家族に先に伝えるところから始めます。この記事は、その3つを帰省の前に決めて渡すまでの手順です。

知らない家より先に、知らない手が来る|帰省で保護犬・保護猫に起きることの順番

帰省にペットを連れていくとき、こちらが心配するのはたいてい環境のほうです。畳の部屋で落ち着けるか、カーペットの部屋で寝られるか、トイレをどこに置くか。ところが、その子にとっていちばん早く来る変化は、部屋ではなく人です。玄関を上がって最初の30秒で、知らない声が複数し、知らない手が近づきます。床の材質を確かめる時間よりも先に、触られる時間が始まります。

保護犬・保護猫を迎えた人は、この順番を体で知っています。迎えてからの数か月、触れる範囲を少しずつ広げてきたからです。その子の許容が先にあって、こちらの手はそのあとから入る。この順番を守ってきたぶん、順番が逆になる場面には敏感になります。帰省は、その逆が一度に何人ぶんも起きる場面です。

ここで書いておきたいのは、なぜその子が触られるのを苦手とするのか、こちらには分からないということです。迎える前に何があったかは、推測するしかありません。推測は書けませんし、家族に説明する材料にもなりません。分かっているのは、いま頭の上から手が出ると半歩下がる、という事実だけです。家族に伝えるのは、この事実のほうです。理由を語ろうとすると話が長くなり、伝わる前に玄関が終わります。

帰省の日、その子の側で同時に変わるもの
変わるもの家では帰省先では
人の数1〜2人3人以上のことが多い
触ってくる手決まった手だけ初対面の手が同時に複数
呼ばれ方名前ひとつ愛称が増え、声の高さも変わる
床いつもの材質畳・カーペット・板の間が混ざる
におい自分と家族のにおいよその家の空気と、料理のにおい
逃げ場所決まった場所があるどこが安全か分からない

6行のうち、こちらが帰省の前に動かせるのは上の3行です。床もにおいも、行ってみないと分かりません。逃げ場所は、着いてから作ることになります。けれど、人の数・触ってくる手・呼ばれ方の3つは、帰省の前に電話1本で変えられます。保護犬・保護猫を迎えた人が使える時間は、着いてからより、出発する前のほうが長いということです。

Note家族は、間違ったことをしているわけではありません

頭の上から手を出す、正面からのぞき込む、名前を高い声で連呼する。どれも、これまでの犬や猫との付き合い方としては自然な動きです。家族が知らないのは、その子が触られることに慣れていないという前提のほうです。前提を渡さないまま「そうしないで」とだけ言うと、断られたと受け取られます。帰省でペットの話をこじらせるのは、たいていこの一言のあとです。伝えるのは禁止ではなく、やっていいことの中身にしてください。

触っていい場所・呼び方・逃げ場所|帰省の前に家族へ伝える3つの手順

伝えることは3つだけにします。3つより多いと、玄関に着くまでに忘れられます。そして3つとも、「やめてほしいこと」ではなく「やっていいこと」の形で書きます。保護犬・保護猫を迎えた人が家族に渡す情報は、その子の事情の説明ではなく、家族がその場で使える具体的な動きです。帰省の前に、次の順で進めてください。

  1. 手順1:伝える相手を、1人だけ決める

    全員に一斉に伝えないでください。人数ぶん解釈が分かれます。その家でいちばん話が通る人を1人選んで、その人にだけ渡します。母でも、兄でも、いちばん長く家にいる人でも構いません。当日、その人が他の家族に説明してくれる形になれば、こちらは玄関でその子の側に手を回せます。ペットを連れた帰省では、こちらの手は1組しかありません。

  2. 手順2:触っていい場所を、1か所だけ書く

    「肩から背中の側面。手は下から出して、こちらから近づいてきたときだけ」。この形で1か所です。場所を1つに絞ると、それ以外は自然に対象から外れます。頭の上、顔の正面、しっぽ、足先は、禁止と書かなくても残りません。保護犬・保護猫に限らず、下から出る手のほうが受け入れられやすいのですが、そこまで説明しなくて大丈夫です。動きだけ渡してください。

  3. 手順3:呼び方を、名前ひとつにそろえる

    帰省先では、家族が愛称を作ります。悪意はなく、かわいいから増えます。「呼ぶときは名前だけ、声は低めで」と先に決めておくと、その子が反応する音が1つに保たれます。音が増えると、どれが自分に向けられたものか分からなくなり、名前を呼ばれること自体が落ち着かない合図になります。ペットの側の負担としては、触られることと同じくらいの比重があります。

  4. 手順4:逃げ場所を決めて、「入ったら手を出さない」を約束にする

    場所そのものは着いてから決めます。伝えるのは「その子がここに入ったら、誰も声をかけず、触らず、写真も撮らない」という人の側の約束のほうです。キャリー、部屋の隅、こちらの荷物のそば。どこでも構いません。約束が先にあると、当日は指さして「ここです」と言うだけで済みます。逃げ場所の相談は、場所づくりの話ではなく、人の動きを止める話です。

  5. 手順5:3つを3行にして、文字で送る

    電話で話したことは、当日まで残りません。電話のあとに、同じ内容を3行のメッセージで送ってください。「①触るのは肩から背中の横。手は下から ②呼ぶのは名前だけ ③この場所に入ったらそっとしておいて」。当日、他の家族に転送してもらえる形にしておくのがいちばん早い伝わり方です。帰省のたびに同じ3行を送れば、2回目からは説明が要りません。

3つを、家族が使える言い方に置き換える
伝えたいこと❌ 伝わりにくい形✅ 渡す形
触っていい場所頭を触らないで肩から背中の横なら大丈夫。手は下から
近づき方急に近づかないで座って待って、来たら触ってあげて
呼び方変な名前で呼ばないで呼ぶときは名前だけ、低い声で
逃げ場所そっとしておいてここに入ったら、声もかけずに放っておいて
写真写真は撮らないでこっちを向いたときだけ撮って
食べ物何もあげないであげるならこれを1つだけ、私が渡します

右の列に共通しているのは、家族の手が空かないようにしていることです。「やめて」だけだと、手は空いたままで、次の瞬間には別のやり方で伸びてきます。やっていいことを1つ渡しておくと、その1つに手が向かいます。保護犬・保護猫を迎えた人が帰省でやっているのは、その子を守ることであると同時に、家族がその子とうまくいく機会を作ることでもあります。

善意の手は、その場では止まらない|帰省先でつまずく3か所と、そこでのやり方

3行を送っておいても、当日つまずく場所は決まっています。どれも、家族が悪気なく動いてしまう場面です。先に知っておくと、その場で言い直す手間が減ります。保護犬・保護猫を連れた帰省で、実際に手が止まらないのは次の3か所です。

  1. つまずき1:玄関に着いてからの最初の10分

    全員が集まってしまう時間です。やり方としては、玄関でキャリーを開けないことです。キャリーごと、決めておいた逃げ場所まで運びます。運んでから、こちらが座って、扉を開けて、そのまま待ちます。出てくるかどうかはその子が決めます。この10分に家族が立ったまま囲むと、そのあと2日ぶん取り返せません。「まず荷物を置かせて」と言えば、たいていの家族は待ってくれます。

  2. つまずき2:食卓のまわり

    食事が始まると、手が下に降りてきます。ペットの側から見ると、届く高さに人の手と食べ物が並びます。「あげないで」だけでは、その場の空気で必ず崩れます。やり方は、こちらが1つだけ渡す形にすることです。いつも食べているものを小さく分けて持っていき、「あげるならこれを、この人から」と決めます。家族はかわいがれて、その子は知らないものを口にせずに済みます。

  3. つまずき3:子どもと、高齢の家族の手

    この2つは、言葉での約束が届きにくい相手です。子どもは走り、高齢の家族はしゃがめません。止めるのではなく、姿勢のほうを変えてもらいます。子どもには「座って、手を床に置いて待つ」。高齢の家族には、椅子に座ったまま、こちらがその子を近くまで連れていく形にします。上から出る手を、下から出る手に変えるだけで、その子の下がり方は変わります。

  4. つまずき4:夜、寝る場所を決めるとき

    帰省先の夜は、音も明かりも家とは違います。寝床は、昼に決めた逃げ場所と同じ場所にしてください。2か所に分けると、その子はどちらにも落ち着けません。家から持っていくものは、寝床に敷く布を1枚だけで足ります。荷物を増やすより、家のにおいのついた布が1枚ある状態を作るほうが効きます。

滞在のあいだ、体に手を入れる時間は短くて構いません。よその家の床を歩いたぶん、足先と、おなかの下の面には、いつもと違うものが乗ります。帰省先では、その子の体に触れた手が何組あったかを、あとから数えることができません。そして、その子は落ち着いたあとで自分の足先をなめます。持っていくのは mofuwa スキンケアミスト だけにしました。なめることを先に見込んで中身を電解水だけにしてあるので、拭き取る工程を後ろに足さずに済みます。帰省先で増える手順が1つもない、というのがここでの選び方でした。コットンか布に含ませて、足先とおなかの下を毛の流れに沿ってなでる。これで1回1分です。逃げ場所に入っているあいだはやりません。出てきて、こちらの近くで伏せたときだけにします。皮膚が赤い場所や傷のある場所には使わないでください。

帰った日に戻すこと|保護犬・保護猫と暮らす人が次の帰省へ持ち越すコツ

家に帰った日は、その子の側も、こちらの側も疲れています。やることは2つだけにします。足先とおなかの下を拭くことと、いつもの寝床に戻すことです。帰省先で使っていた布は、そのまま寝床に足さないでください。よその家のにおいが混ざったものが1枚あると、家のにおいの基準が動きます。洗ってから戻すか、数日おいてから戻すほうが素直です。

  1. 帰った日:手数を、いつもより減らす

    帰省のあいだ、その子は知らない手を何度も受けています。家に着いた日は、こちらから触る回数をいつもより減らしてください。拭くのは足先とおなかの下だけ。ブラシは翌日以降で構いません。手数を減らすことが、いちばん効く戻し方になる日があります。

  2. 翌日:食欲と、トイレの回数を見る

    環境が変わったあと、いちばん先に戻るのは食欲で、次がトイレです。量ではなく、回数と時間帯を見てください。いつもの時間に食べ、いつもの回数で出ていれば、帰省ぶんの負荷は抜けています。1日で戻らなくても、3日を目安に見ます。

  3. 3日目:触れる範囲が戻ったか確かめる

    帰省の前に触れていた場所に、同じように手が入るかどうかです。戻っていれば、次の帰省も同じやり方で組めます。戻っていないなら、次はもう一段手前から始めます。後退したのではなく、進め方の目盛りが細かくなっただけです。

  4. 次の帰省まで:3行のメッセージを残しておく

    送った3行は消さずに置いておいてください。次の帰省では、同じ3行をもう一度送るだけで準備が終わります。変わったところがあれば1行だけ書き換えます。保護犬・保護猫を迎えた人にとって、帰省のコツは毎回新しく考えないことです。

Caution帰省のあとに続く変化は、疲れのせいと決めないでください

3日たっても食べる量が戻らない、下痢が続く、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、隠れて出てこない状態が続く、呼吸が速い。いずれかに当てはまるときは、環境の変化のせいと決めずに、動物病院にご相談ください。帰省で起きたこととは限らず、前から続いていたものが、生活が変わったことで見えるようになっただけ、ということもあります。何泊したか、何日目からその様子が出たかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

最後に、帰省という場面をどう位置づけるかです。保護犬・保護猫を迎えた人にとって、帰省は「その子を試す日」ではありません。家族に会わせることが目的なら、触れなくても、同じ部屋にいられただけで達成しています。その子の許容が先にあるという順番は、帰省先でも変わりません。変えられるのは、迎える人たちの手の出し方のほうです。触っていい場所、呼び方、逃げ場所。この3つを先に渡しておけば、帰省の玄関で交わされる最初の30秒が変わります。ペットを連れた帰省で家族に伝えることは、その30秒ぶんだけで足ります。

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よくある質問

帰省先に、もともと犬や猫がいます。どうすればいいですか。
同じ空間でいきなり顔を合わせないところから始めてください。到着した日は、部屋を分けて、扉ごしににおいだけが行き来する状態で1日おく。翌日、こちらの子が逃げ場所に入れる状態のまま、扉を少し開けてみる。この順で進めます。相手の子にも生活があるので、家族には「どちらかが隠れたら、その日はそこで終わり」と先に伝えておくと、当日にもめません。
泊まらずに日帰りにしたほうが、その子には楽ですか。
一概には言えません。日帰りは滞在時間が短いぶん、移動が往復で1日に収まるので、車や公共交通が苦手な子には負担が集中します。泊まる場合は移動が分散しますが、知らない家で夜を過ごすことになります。判断の材料になるのは、その子が移動と夜のどちらで消耗するかです。過去の外出でどちらのあとに食欲が落ちたかを思い出して選んでください。
帰省に連れていかず、家で預けるのと、どちらがいいですか。
どちらが正しいという答えはありません。連れていけば知らない人と手が増え、預ければ知らない場所と過ごすことになります。決め手になるのは、その子が人に対して下がるのか、場所に対して下がるのかです。人に下がる子なら、預けて家に近い環境で過ごすほうが負担が少ないこともあります。どちらを選んでも、帰ってからの3日で食欲とトイレの回数を見る、というところは同じです。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。