C09シーン別・暮らし

車でのおでかけ、大型犬と暮らす人はどうしている?

公開日 2022年4月23日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの中、車の後部座席に大きな体の犬が落ち着いて座っている
体が大きいほど、車のシートは点ではなく面で触れられます。手を入れる単位も、そこで変わります。写真:Valeria Boltneva/Pexels

後席のドアを開けて、体重30キロの大型犬を1頭乗せると、座面はそれだけでほとんど埋まります。前脚は片側のドアの近く、後ろ脚はもう片側。伏せれば背中が背もたれに当たり、腹は座面に全部乗ります。車での移動を小型犬と同じつもりで考えていると、ここで最初につまずきます。大型犬にとって車の後席は、通り道ではなく、数時間そこで過ごす部屋です。この記事では、なぜ大型犬だけシート全体が接触面になるのかを先に整理して、そのあとで、車を1つの部屋として面で整える手順を書きます。

後席の座面が、端から端まで接触面になる|大型犬と車で移動する日の毎日の前提

まず、大きさの話を数字で置きます。乗用車の後席の座面は、幅がおよそ120〜130センチ、奥行きが45〜50センチです。体高60センチ台の大型犬が伏せたときの全長は、80〜100センチほどになります。つまり、その子が伏せた時点で、座面の7〜8割が体の下に入ります。小型犬なら座面の3分の1にキャリーを置いて終わりですが、大型犬の車での移動では、後席そのものが体で埋まります。

ここから、触れ方の違いが生まれます。小型犬は座面に点で触れます。キャリーの底面、あるいは体の下の一区画だけです。大型犬は面で触れます。腹の全体が座面に、背中と体の側面が背もたれに、前脚がドアの内張りに、後ろ脚がもう片方のドアに。車の中でその子の体が触れていない場所を探すほうが難しい、というのが大型犬の移動の前提です。

もう一つ、動かせないという条件があります。移動の途中で「いま体の下が気になるから、少しどいてもらおう」ができません。片手で持ち上がらない体重なので、乗せたあとの車内で、こちらの都合で位置を変えることはできない。移動の何時間かは、乗せたときの姿勢のまま進みます。だから、車の中でやることは、乗せる前にすべて終わっている必要があります。

そして車内は閉じた空間です。走っているあいだ、体と座面のあいだには風が通りません。犬の体温は人より高く、大型犬は熱を持つ量そのものが多くなります。体と座面が接している面では、温度が上がり、湿りが残ります。被毛の表面についていた皮脂が、その条件のもとで座面へ移っていきます。移動が終わって降ろしたときに、座面の一部が湿っているように見えるのは、この面で起きたことです。

同じ車の同じ後席で、体格によって何が変わるか
見る場所小型犬の場合大型犬の場合
座面の占有3分の1ほど。空きが残る7〜8割。ほぼ埋まります
触れ方点で触れる面で触れる
ドアの内張り届きません前脚と後ろ脚が、両側とも届きます
背もたれ触れないことが多い背中と体の側面が当たります
足元のスペース使いません前脚が落ちて、床まで届きます
移動中の位置変更抱えて動かせます体重で動かせません
風の通り体の横に空きがある体の下には通りません
Note掃除の量が多い、という話ではありません

大型犬と暮らしていると、車の掃除は毎日の負担として語られがちです。けれど問題は量ではなく、触れ方が点ではなく面になっている、という構造のほうです。量の話にすると、答えは「もっと時間をかけて拭く」になります。触れ方の話にすると、答えは「面で受け止める側に変える」に変わります。手をかける時間ではなく、手を入れる単位のほうを見てください。

1か所ずつ拭くのをやめて、面で敷く|大型犬を車で移動させる日の手順

接触面が面である以上、あとから1か所ずつ追いかけても終わりません。座面を拭き、背もたれを拭き、ドアの内張りを拭き、足元を拭く。この4か所を毎回追いかけると、移動のたびに10分以上かかります。大型犬の車での移動を続けている家で最初に折れるのは、たいていここです。だから、拭く場所を減らすのではなく、拭かなくてよい状態を先に作ります。後席を、その子の部屋として1回だけ組んでしまう、という考え方です。

  1. 手順1:座面と背もたれを、継ぎ目なしで1枚に覆う

    2枚を並べて敷くと、必ず継ぎ目ができます。大型犬は体の重さで面をずらすので、継ぎ目は移動が始まって数分で開きます。開いたところがそのまま接触面になるので、そこだけ直接触れることになる。座面と背もたれをまたいで1枚で覆えるものを選んで、継ぎ目を作らないでください。1枚で足りない場合は、重ねる向きを進行方向の後ろから前へそろえて、めくれる側を作らないようにします。

  2. 手順2:敷く向きは、ドアからドアへ横断させる

    奥行き方向に敷くと、幅が足りずに両端が空きます。空いた両端は、ちょうど大型犬の前脚と後ろ脚が置かれる場所です。左右のドアからドアへ、横断する向きで敷いてください。端はドアの内張りの手前まで持ち上げて、シートとドアの隙間に挟み込みます。挟むところまでやると、乗り降りのときに端から引き出されなくなります。

  3. 手順3:足元のスペースまで、面を下ろす

    大型犬は伏せた姿勢でも前脚が座面から落ちて、足元の床に届きます。ここを面の外にしておくと、床だけが毎回直接触れることになる。座面から続けて、足元の床まで面を下ろしてください。床は洗いにくく、乾きにくい場所です。ここを面に含めるかどうかで、車の中のにおいの残り方が変わります。

  4. 手順4:乗せる前にその子の側でやるのは、足の裏と口のまわりだけ

    面で受け止める前提にすると、乗せる前に全身を触る必要がなくなります。やるのは、足の裏と、指のあいだと、口のまわりの3か所です。この3か所だけは面が受け止めてくれません。足の裏は外から持ち込むものが集まる場所、口のまわりは移動中に窓や内張りへ直接触れる場所だからです。所要は2分ほどで、毎日の送り迎えでも回ります。

  5. 手順5:降ろしたら、車内を拭かずに面を1枚外す

    移動が終わったら、車の中で拭き掃除をしません。敷いた面を端から外して、そのまま畳んで持ち出します。これで、座面・背もたれ・ドアの内張りの下側・足元の床が、1回の動作でまとめて片づきます。外したあとの後席は、5分ほどドアを開けたままにして、こもった空気を抜いてください。ここまでで、降車後の作業は3分ほどです。

1か所ずつ拭くやり方と、面で敷くやり方の違い
1か所ずつ拭く面で敷く
手をつける時点移動が終わったあと乗せる前に1回だけ
対象座面・背もたれ・内張り・足元の4か所後席を1つの部屋として1面
1回あたりの時間10分以上組むのに3分、外すのに3分
移動中にできることありませんありません。乗せる前に終わっています
崩れたときの対処崩れる場所がありません戻す場所が決まっています
毎日の移動で続くか頻度が上がると止まります頻度が上がっても同じ手順です
Point面の外に残る3か所は、乗せる前に手で当てる

足の裏、指のあいだ、口のまわり。この3か所は面で受けられないので、その子の側で手を入れます。固く絞った布を当てて、乗せる前に3か所だけ拭き取るという形にそろえておくと、手順が毎回同じになります。地肌へ強くこすらず、毛の流れに沿って一方向に動かしてください。指のあいだは、開いてから当てると届きます。3か所で2分ほどなので、毎日の送り迎えでも回ります。

この手順の要点は、時間を短くしたことではありません。手を入れる単位を、4か所から1面に変えたことです。大型犬の車での移動では、接触面が面になっている。だとすれば、受け止める側も面でないと、追いつきません。1か所ずつ拭くやり方は、体格の小さい子の車内で成立していた方法を、そのまま持ち込んでいただけでした。

面で敷いても崩れる3か所|車の中で家でできるのは、崩れた面を戻すことだけ

面で敷いても、移動しているあいだに崩れます。崩れる場所は毎回だいたい同じで、3か所です。どこが崩れるかを先に知っておくと、次の移動の前に確認する場所が決まります。家でできるのは、崩れない面を作ることではなく、崩れた面をどこで戻すかを決めておくことです。

  1. 崩れる1:乗り降りのときに前脚をかける、ドア側の端

    大型犬は、後席へ上がるときに前脚を先に座面へかけて、体を押し上げます。そのときの力が、面の端を車内側へ引き込みます。1回の乗り降りで数センチ、往復で10センチほど動きます。手順2で内張りの隙間へ挟んでおくと、この引き込みが半分ほどに減ります。戻すときは、押し込むのではなく、いちど端を引き出してから挟み直してください。

  2. 崩れる2:伏せから座る姿勢に変えるときの、中央のよれ

    移動中に外を見ようとして、伏せた姿勢から体を起こす。この動きで、腹の下にあった面が体の下でねじれます。崩れというより、座面の中央にしわが集まる形になります。しわの下は風が通らないので、湿りが残りやすい場所です。降ろしたあと、外す前にしわの下を手のひらで触って、湿っているかどうかを確かめてください。湿っていたら、その日は畳まずに広げて乾かします。

  3. 崩れる3:止まるたびに前へずれる、座面の前端

    ブレーキで体重が前へ移るたびに、面も一緒に前へ動きます。止まる回数が多い日ほど、前端が足元のスペースへ落ちていきます。手順3で足元まで下ろしてあれば、落ちても面の外に出ません。下ろしていない場合は、ここで座面の前端が露出します。信号の多い道を通る日は、着いてから前端だけ引き戻す、と決めておくと確認が早く済みます。

崩れの確認は、移動が終わって降ろした直後にやります。面を外す前に、3か所を見る。それだけで20秒です。ここで見ておくと、次の移動のときにどこを挟み直すかが決まっているので、組むほうが早くなります。毎日の送り迎えのように頻度の高い車での移動でも、20秒なら続きます。

もう一つ、家でできることがあります。降ろしたあとに車の後席を5分開けておくことです。大型犬が数時間いた後席は、体温と呼気で温度と湿度が上がっています。面を外しただけでは、シートの中にこもった空気は動きません。ドアを2枚開けて、風が抜ける形にしてください。人が乗っていない時間のほうが長い場所なので、閉め切ったままにすると、次に乗ったときのにおいの出方が変わります。

移動の頻度が上がるほど、車のほうが先に変わります|被毛と皮膚のサイン

最後に、頻度の話をします。週に1度の遠出と、毎日の送り迎えでは、同じ車でも起きることが違います。頻度が上がると、その子の被毛や皮膚より先に、車の側が変わります。座面のへたり、面の裏についた毛の量、開けたときのにおいの立ち方。人の目には車の変化のほうが分かりやすいので、これを観察の物差しに使えます。

車での移動の頻度ごとに、見ておく場所
頻度車の側で見るところその子の側で見るところ
週に1回ほど面の裏の毛の量。畳むときに確認足の裏と指のあいだ。乗せる前の2分で
週に2〜3回座面の中央のしわの下が湿っていないか腹と体の側面。接触面が広い場所です
ほぼ毎日後席を開けたときのにおいの立ち方肘と膝の外側。座面に当たり続ける場所
長距離が入る週面の前端のずれ方と、足元の乾き降ろして30分後の、体の下側の乾き方

頻度と変化の速さがつり合っているうちは、車のケアの話です。気をつけたいのは、移動の頻度が変わっていないのに、車の変わり方だけ急に速くなったときです。面の裏につく毛が急に増えた、においの立ち方が先週と違う、しわの下がいつもより湿っている。車は毎回同じ条件なので、条件が変わっていないのに結果が変われば、変わったのはその子の側ということになります。

Caution早めに動物病院へご相談いただきたいサイン

接触面に当たる場所の地肌が赤い、じくじくしている、部分的に毛が抜けて地肌が見える、においが近づかなくても分かる、同じ場所をなめ続けている、車に乗るのを急に嫌がるようになった、乗ったあとに立ち上がりにくい。いずれかに当てはまるときは、車の整え方を変える前に、動物病院にご相談ください。大型犬は体重がかかる面が広いぶん、当たり続けている場所の変化が進んでから目に入ることがあります。迷ったら早いほうを選んでください。

そのうえで、家で続けることを1つだけ置きます。後席に当たり続ける背中と体の側面は、その子の口が届かない場所です。足先や腹は自分で舐められても、座面に乗っていた面だけは、最初から人が代わることになっています。車での移動が多い週ほど、そこを洗う日も早く回ってきます。うちがその日に使っているのは mofuwa モイストシャンプーで、アミノ酸系の洗浄成分を量も少なくして、足りないぶんを原料の水に使った電解水で補う作りです。落としすぎないぶん洗い上がりがごわつかないので、トリートメントの工程を足さずに済みます。大型犬にとって、浴室で立っている時間はそのまま脚にかかる時間です。工程が1つ減れば、後席で数時間を過ごした日の夜に、浴室にいる時間もそのぶん短くなります。無香料にしてあるのは、ペットが自分のにおいを好むからです。閉じた車内でその子のにおいが変わったかどうかを読むときにも、そこが効いてきます。

車での移動は、大型犬と暮らしていれば避けて通れません。動物病院へ行く日も、遠出の日も、毎日の送り迎えも、その子は後席で数時間を過ごします。変えられるのは、移動の回数ではなく、後席をどういう単位で整えるかのほうです。接触面が面なら、受け止める側も面にする。乗せる前に1回だけ組んで、降ろしたら1枚外す。崩れる3か所だけを、20秒で確認する。大型犬の車での移動で、家でできるのはそこまでです。

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よくある質問

大型犬を車に乗せる前に、全身をブラッシングしたほうがいいですか?
毎回でなくて構いません。後席を面で覆っていれば、被毛から落ちるものは面が受け止めます。乗せる前に手を入れるのは、面が受けられない足の裏・指のあいだ・口のまわりの3か所だけで足ります。全身のケアは、車での移動と切り離して、家での毎日の習慣として続けるほうが回ります。
後席ではなく荷室に乗せる場合も、同じ考え方でいいですか?
面で受け止めるという考え方は同じです。ただし荷室は床が硬く、平らで、体の下に空気の層ができにくい場所です。接触面がより広くなり、湿りが残りやすくなります。降ろしたあとに面の下を手で触って確かめる工程は、後席のときより優先度が上がります。ドアを開けて空気を抜く時間も、少し長めに取ってください。
移動中に窓を開けておけば、こもりは減りますか?
走行中の風は、体の上を通ります。大型犬でこもるのは体と座面のあいだなので、そこには届きません。窓を開けることが無駄という意味ではありませんが、こもりの対処としては別のところを見てください。効くのは、面の下に空気が入る余地を作っておくことと、降ろしたあとにドアを2枚開けて抜くことのほうです。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。