C12Q&A・豆知識

犬にも汗腺はある?

公開日 2024年9月6日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色のフローリングに、落ち着いて伏せている白っぽい毛の犬
犬の汗を家で見かけるとしたら、体の表面ではなく、床に残る四つぶんの足あとのほうです。写真:Leohoho/Pexels

犬にも汗腺はあります。玄関のタイルに四つぶんの湿った足あとが残っていたら、それは犬が汗をかいた跡です。ただし、人と同じように汗をかいて熱を逃がす種類の腺が働いているのは肉球で、体に広く分布しているもう1種類の腺は、体温を下げるために汗を出しているとは考えられていません。つまり犬は汗をかきます。かけないのは、体温を下げられるだけの量の汗のほうです。この一行が入れ替わるだけで、暑い日に見るところが変わります。体を触って汗ばんでいないことは、涼しさの証拠になりません。この記事では、犬の汗について、腺の種類・言い方のずれ・体温を下げる手段の寄り方・床に残る足あとの読み方を、8つの問答に分けて書きます。

犬にも汗腺はありますか|あります。ただし種類で働きが分かれます

答えは、あります。犬の体には汗腺があり、汗も出ています。ただし、汗腺と呼ばれるものは一種類ではありません。一般に2つの種類に分けて説明されていて、そのうち人と同じように水っぽい汗を出して熱を逃がすほうの腺が働いているのは、犬では肉球など限られた場所とされています。もう1つの腺は体に広く分布していますが、そちらは体温を下げるために汗を出しているとは考えられていません。

つまり、犬の汗の話には答えが2つ必要になります。「汗腺はあるか」への答えは、ある。「汗で体温を下げられるか」への答えは、ほとんど下げられない。この2つは別々の問いなのに、ふだんは「犬は汗をかかない」という1つの言い方にまとめられています。まとめた瞬間に、暮らしのなかで見るところがずれてしまうのが、この話のややこしいところです。

犬と暮らしていて、汗の存在に気づく場面は多くありません。体をなでても人のように湿りません。被毛があるので、そもそも皮膚に手が届いていないこともあります。だから「触って汗ばんでいない」という感触が、そのまま「暑くないらしい」という判断に変わりやすい。ここが、犬の汗について知っておくと変わるいちばん大きな点です。

Note「汗腺がある」と「汗で体温を下げられる」は、別々の問いです

この記事でいちばん先に置いておきたいのが、この分け方です。腺があるかどうかは体のつくりの話で、体温を下げられるかどうかは働きの話です。犬はつくりとしては持っていますが、働きとしては人と同じ使い方をしていません。持っているのに使えない、ではなく、持っているものの用途がそもそも違う、と読むほうが実際に近くなります。猫についても、汗をかいて熱を逃がす種類の腺が働くのは肉球など限られた場所とされていて、事情は近いと説明されています。

体の汗と肉球の汗は、同じ汗と呼んでいいのですか

呼び分けたほうが、あとの話が短くなります。犬の汗腺は、一般にエクリン腺とアポクリン腺の2つに分けて説明されています。エクリン腺は、人でいえば全身にあって、水っぽい汗を出す腺です。犬では肉球など、毛の生えていない面に多いとされています。アポクリン腺は毛の根元につながる形で体に広く分布していて、出すのは水というより、においや被毛の状態に関わる分泌物だと説明されることが多い腺です。

犬の汗腺として説明される2つの腺
肉球など毛のない面にある腺体に広く分布する腺
一般的な呼び名エクリン腺アポクリン腺
出るもの水っぽい汗においや被毛に関わる分泌物
体温との関係蒸発するときに熱を持っていく体温を下げるためのものではないとされる
家で気づく形床に残る湿った足あと被毛のにおいや手ざわり
人との比べ方人は全身にあり、犬は場所が限られる人にもあるが、分布のしかたが違う

この表を見ると、同じ「汗」という言葉で2つをまとめると、話が通じなくなる理由が分かります。肉球の汗は蒸発して熱を持っていく側の汗で、体の汗はそうではない。片方は温度の話、もう片方はにおいと被毛の話になります。犬の汗について何かを言うときは、どちらの腺の話をしているのかを先に決めておくと、間違いが減ります。

もう1つ、数の話も添えておきます。腺の数そのものを比べても、体温の話にはつながりません。体に広く分布している腺が多くても、それが熱を逃がす働きをしていないなら、体温の側では数に入らないからです。犬の汗を考えるときに数えるべきなのは、腺の数ではなく、蒸発に使える面がどれだけあるかのほうになります。

犬は汗をかかない、という言い方はどこがずれていますか

ずれているのは、主語ではなく述語のほうです。犬は汗をかきます。かけないのは、体温を下げられるだけの量の汗です。言い方を1つ入れ替えるだけの違いに見えますが、この2つは、暑い日に見るところをまるごと変えてしまいます。

犬は汗をかきませんと覚えていると、汗の話はそこで終わります。犬の体に汗という現象は起きないことになるので、床の足あとも、肉球の湿りも、意味のない情報になります。ところが「汗はかくが、それで体温を下げられない」と覚えていると、次の質問が出てきます。では何で下げているのか。汗が出るのはどんなときか。この2つが出てくるかどうかが、家での見方の差になります。

なぜ量が足りないのか。理由は面積です。人は全身の皮膚から水分を蒸発させられます。犬の体は被毛に覆われていて、汗を出して蒸発させられる面は、肉球のように毛のない場所に限られます。蒸発で持っていける熱の量は、蒸発する面の広さでおおよそ決まります。面が小さければ、出た汗が全部蒸発したとしても、持っていける熱は小さいままです。

この4つを足すと、「犬は汗で体温を下げられない」という一行になります。汗の有無ではなく、汗の使い道の話です。犬について何かを説明するときに、この一行のほうを使っておくと、次の章の話がそのままつながります。

体温を下げる手段が1本に寄っている、とはどういう意味ですか

汗で下げられないぶん、犬の体温調整は口を開けた呼吸のほうへ寄っています。口を開けて速く浅い呼吸をすると、口の中と気道の水分が蒸発し、そのときに熱が持っていかれます。やっていること自体は、汗の蒸発と同じ仕組みです。場所が皮膚から口へ移っているだけ、と説明されます。

ここで大事なのは、仕組みではなく本数のほうです。人は汗と呼吸の2本を持っていますが、犬は熱を逃がす手段が呼吸の側に強く寄っています。本数が少ないということは、その1本が働きにくい条件になったときに、代わりが少ないということです。犬の暑さの話が、人の感覚と食い違いやすい理由はここにあります。

熱を逃がす手段の持ち方が、人と犬で違う 人と犬それぞれについて、熱を逃がす手段の数と、その手段が働きにくくなる条件を左右に並べた比較カードです。 どちらも蒸発で熱を運ぶ、という仕組みは同じです 人の場合 全身の皮膚から汗が出る 蒸発に使える面が広い 汗と呼吸の2本がある 片方が鈍っても残りがある 服を脱ぐという手も足せる 犬の場合 汗を出せる面が限られる 蒸発で運べる熱が小さい 口からの呼吸に寄っている 1本が鈍ると代わりが少ない 被毛は自分で減らせない だから犬では、体の外側の条件を人が動かすことになります
本数が少ないほうが劣っているのではなく、条件の影響を受けやすいという意味です。

呼吸で熱を逃がす方法にも、成り立つための条件があります。蒸発は、吸い込む空気が体より涼しく、湿りすぎていないときに進みます。気温が高い日や、湿度の高い日は、同じ回数の呼吸でも運べる熱が小さくなります。だから犬の暑さは、気温だけでも湿度だけでも決まりません。この2つが同時に上がっている日が、いちばん条件が悪くなります。

もう1つ、犬の側で動かせないものがあります。被毛です。人は服を脱げますが、犬は自分で被毛を減らせません。毎日のケアでできるのは、抜けた毛を外へ出して、被毛の中の風の通りを保っておくくらいまでです。皮膚と被毛の状態を整えておくことは、暑さそのものへの手ではありませんが、犬の体の外側にある条件のうち、家で動かせる数少ないものになります。

なお、この章で書いているのは体のつくりの話までです。その日その子が暑さで具合を悪くしているかどうかは、家では判断できません。呼吸の様子がいつもと違う、ぐったりしている、よだれが多い、といったことがあるときは、汗の話に当てはめて考える前に動物病院にご相談ください。

犬の汗は、家のどこで見かけますか

実際に目に見える形で犬の汗に気づくのは、体の表面ではなく床です。肉球から出た汗は、そこに置かれた面に移ります。だから、水を吸わない面のうえに立っていた場所には、四つぶんの湿った跡が残ります。犬の汗をいちばんはっきり見られるのは、この足あとです。

逆に、跡が出ない面もあります。布や紙、無垢の木のように水を吸う面では、足あとは残りません。犬の汗が出ていないのではなく、面の側が吸ってしまうからです。ここを取り違えると、「うちの子は足あとが出ないから汗をかかない」という読み方になります。足あとが見えるかどうかは、犬の側ではなく、床の側の性質で決まります。

跡が出やすい条件は、もう1つあります。立ち止まっている時間です。歩いているあいだは接地している時間が短いので、跡になるほど移りません。玄関で立ち止まった、診察台の上で待っていた、車から降りて動かなかった。犬の足あとが残るのは、そういう「止まっていた場所」です。毎日のケアのなかで見るなら、散歩から帰って玄関にいる数十秒がいちばん見やすい時間になります。

湿った足あとから読めることと、読めないこと

足あとが見つかったとき、そこから読めることは、思っているより狭い範囲です。確かに言えるのは「その場面で、その子の肉球から汗が出た」ということまでです。そこから先へ延ばすと、たいてい外れます。犬の汗の話でいちばん引用してもらいたいのが、この線の引き方です。

湿った足あとから、読めることと読めないこと
読めること読めないこと
その場面で肉球から汗が出たこと体温が上がっているかどうか
立ち止まっていた時間があったこと暑がっているのか、緊張しているのか
その床が水を吸わない面だということ跡がないときに汗が出ていないかどうか
前より跡が濃い/薄いという差その差が体調の変化かどうか
いつ、どこで出たかという記録そこから先の判断。ここは家では決められません

肉球からの汗は、暑いときだけに出るものではないと説明されています。緊張しているとき、初めての場所にいるとき、移動の直後にも出ます。動物病院の診察台に足あとがはっきり残るのは、その両方が重なる場面だからです。だから足あとの湿りは、暑さの証拠にはなりません。同じ理由で、乾いていることも涼しさの証拠にはなりません。

それでも、足あとを見る価値はあります。その子について、いつ・どこで出やすいかという癖が分かるからです。散歩のあとに毎回出る子、来客のときだけ出る子、車の移動のあとに出る子。癖が分かると、次に足あとを見たときに、それがふだんどおりなのか、そうでないのかを比べられます。犬の汗は、絶対値ではなく、その子のなかでの差として読むものです。

比べるために必要なのは、記録だけです。日付と、場所と、そのときの状況を一行書いておく。数値を測る必要はありません。毎日でなくてもよく、気づいた日にだけ書けば足ります。ふだんの形が分かっていると、あとで動物病院に相談することになったときに、そのまま持っていける材料になります。

汗の話を、毎日のケアのどこに置けばいいですか

置き場所は1つです。暑さの判断を、犬の体を触った感触でしないこと。汗で体温を下げられない体では、体が乾いていることに情報がありません。判断の材料は、体の外にある数字と時刻のほうへ移します。

  1. 出かける前に、地面へ手の甲を当てる

    アスファルトやマンホールの上に、手の甲を数秒置きます。人の靴底では分からない温度が、そこにあります。犬は地面にいちばん近いところを歩いていて、肉球には毛がありません。熱いと感じたら、時間帯そのものを動かします。

  2. 帰ってきたら、玄関で足あとを見る

    立ち止まっている数十秒のあいだに、床を見るだけです。出ているかどうかより、いつもと同じかどうかを見ます。週に何回か見ていれば、その子の癖が分かってきます。

  3. 肉球と指のあいだを拭く

    汗そのものを止めるためではなく、湿ったところに地面のものが付いたままにしないためです。犬の肉球は毛がないぶん、拭くと汚れがそのまま取れます。片足ずつ持ち上げて、指のあいだも一度なでます。

  4. 気づいた日だけ、一行書いておく

    日付・場所・そのときの状況。3つだけで足ります。ふだんの形が分かるようになると、差に気づけるようになります。

拭くときに水をたくさん使うと、今度は乾かす時間が必要になります。そのうえ肉球は、家に上がったあとで、その子が自分から口を持っていく場所です。足あとを見ようと玄関で立ち止まっている数十秒のあいだに、さっきまで地面に接していた面へ舌が届きます。足先に置くものを選ぶときは、そこが口の届く場所だという前提から入ることになります。mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、なめてしまう場所に使われることを前提に中身が組まれています。布へ取ってから、肉球と指のあいだを一往復。足あとの濃さを確かめる数十秒と同じ時間に置けるので、見る作業と拭く作業が玄関で1回にまとまります。

被毛と皮膚の側も、同じ考え方です。抜けた毛が被毛の中に残っていると、皮膚の上の風の通りが悪くなります。ブラッシングで抜けた毛を外へ出しておくことは、犬の体の外側にある条件のうち、家で動かせるものの1つです。暑さへの手ではありませんが、毎日のケアとしては、汗の話といちばん近いところにあります。

犬の汗を、家で使える3つの文に畳む

ここまでを3行に畳みます。犬の汗について覚えておくのは、この3つだけで足ります。

犬の汗について、家で使える3つの文
覚える文そこから変わること
犬にも汗腺はあり、汗も出ている床の足あとが、意味のある情報になります
ただし、その汗では体温を下げられない体が乾いていることを、涼しさの証拠にしません
下げる手段は口からの呼吸に寄っている気温だけでなく、湿度と時間帯も一緒に見ます

この3つを持っていると、犬の汗についての説明を読んだときに、どこまでが体のつくりの話で、どこからが体調の話なのかを自分で分けられるようになります。「汗をかかない」という短い言い方は、便利なぶん、その分け目を消してしまいます。知りたかったのが言葉の意味なら、ここまでが答えです。

最後に、線を1本引いておきます。ここまで書いたのは、犬の体のつくりと、家で見えるものの範囲の話です。その子にいま起きていることの説明ではありません。汗の知識を当てはめて家で判断しようとすると、いちばん時間を使ってはいけない場面で時間を使うことになります。

Cautionこういうときは、汗の話に当てはめる前に動物病院にご相談ください

呼吸の様子がいつもと違う、口を開けた呼吸がなかなか収まらない、ぐったりしている、よだれが多い、歯ぐきの色がいつもと違う、ふらつく、暑い時期に急に元気がなくなった。こうしたことがあるときは、犬の汗や体温調整の知識を当てはめて家で様子を見る前に、動物病院にご相談ください。肉球の側についても、足あとの濃さが急に変わった、肉球が赤い、いつも同じ足だけをなめている、といったときは同じです。いつから、どの場面で、どう変わったかを一行メモにして持っていくと、その場で見てもらえます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。