C12Q&A・豆知識
猫は1日どれくらい毛づくろいする?
猫の毛づくろいは、1回が数十秒で終わることもあれば、同じ場所を何度も繰り返して数分続くこともあります。1日の合計時間は、家では数えられません。家で数えられるのは、1回の毛づくろいがどこで終わったか、という区切りのほうです。途中で止まった、同じ場所だけが長かった、始まる回数が減った。この3つは、時計を持っていなくても気づけます。合計の時間を追いかけようとすると、たいてい3日で続かなくなります。この記事では、猫の毛づくろいの時間について残りやすい疑問を、家で見られる形に置き換えながら、8つの問答に分けて書きます。
猫は1日にどれくらいの時間、毛づくろいをしていますか
答えは、条件をつけると2つに割れます。1日の合計時間は、家では数えられません。数えられるのは、1回の毛づくろいの長さと、それが始まった回数です。合計を知りたくてこの記事にたどり着いた方には、物足りない答えに見えるかもしれません。ただ、合計の数字を持っていても、その子に何かが起きたときに気づく助けにはなりにくいところがあります。役に立つのは、いつも何分だったかという数字より、いつもと違ったかどうかのほうです。
猫の毛づくろいは、まとまった1回として起きるものではありません。食べたあと、寝る前、抱かれたあと、窓の外を見たあと。起きているあいだの合間に、何度も差し込まれます。1回はごく短く、数十秒で終わることもあります。長いときは同じ場所を繰り返しなめて数分続きます。この短い塊がいくつも積み上がって1日になるので、合計を出すには、その塊を全部拾わなければなりません。人が家にいない時間もあります。拾えなかった塊があるかぎり、出てくる合計は、その日に見ていられた分の合計にしかなりません。
そのうえで、毛づくろいの時間そのものは、猫の被毛の状態と結びついています。舌が通った場所は毛が寝て、わずかに湿ります。通らなかった場所は毛先が立ったままになります。だから、時間を数えられなくても、時間の結果は毛のほうに残っています。この記事では、時計で測る方向と、毛と行動から読む方向の両方を書いていきます。
猫の毛づくろいについては、起きている時間のうち何割、といった数字を見かけることがあります。この記事では、その種の割合を書きません。数え方によって大きく動くうえ、家で確かめる手立てがないからです。眠っている時間をどう扱うか、短い1回を1回と数えるか、なめる動きと前足で顔を洗う動きを分けるか。ここが変われば割合も変わります。借りてきた数字を持っていても、うちの子が今日いつもと違うかどうかは判定できません。この記事で扱うのは、家で確かめられるものだけにします。
猫の毛づくろいの合計時間が、家で数えられないのはなぜですか
理由は5つあります。どれも猫の側の事情で、道具を増やしても越えられません。数えられないことを先に知っておくと、数えられるもののほうに手が回せます。
- 見ていない時間がある:人が留守のあいだ、寝ているあいだ、別の部屋にいるあいだ。ここが抜けます
- 1回が短く、回数が多い:数十秒の毛づくろいが1日に何度も入るので、始まりに気づけません
- 始まりと終わりの線が引きにくい:前足をなめる動きから顔を洗う動きへ、そのまま伸びをして終わる。どこまでが1回かが曖昧です
- 見られていると変わる:じっと見ていると途中でやめる子がいます。測ろうとすること自体が、時間を変えてしまいます
- その日で振れ幅が大きい:来客、模様替え、気温の変化。1日の合計は日によって動くので、1日だけ測っても基準になりません
4つめが、いちばん見落とされるところです。猫の毛づくろいは、人の視線が向いているかどうかで変わることがあります。スマートフォンを構えた瞬間に止めてしまう子は珍しくありません。測るために近づくと、測っている対象そのものがずれていきます。時間を正確に出そうとするほど、正確でなくなるという逆の関係になります。
実際にやってみると、多くの方が3日ほどで記録をやめます。やめる理由は根気ではなく、記録の形にあります。合計時間を出す記録は、1日じゅう気を張っていないと埋まりません。埋まらない日が続くと、書いた日の数字も比べられなくなり、意味を失います。続かない記録は、続ける工夫を足すより先に、数えるものを変えたほうが早く直ります。この記事の残りは、その置き換えの話になります。
毛づくろいの1回とは、どこからどこまでを指す時間ですか
家で使う言葉として決めておくと、あとが楽になります。この記事では、猫が体勢を落ち着けて毛づくろいを始めてから、別の行動に移るまでを1回と呼びます。途中で顔を上げて周りを見ても、そのまま同じ場所に戻れば同じ1回として数えます。歩き出したり、水を飲みに行ったり、寝てしまったりしたら、そこで1回が終わりです。この決め方は学術的な定義ではありません。家で毎回同じように数えられることのほうを優先した、家の中の物差しです。
-
座るか、伏せるかして、姿勢が止まる
毛づくろいの前には、たいてい体勢を決める動きが入ります。この止まりが、1回の始まりの合図になります。立ったまま前足をひとなめするような短い動きは、数に入れなくて構いません。
-
前足をなめて、顔と耳のうしろへ回す
多くの猫が、前足から始めて顔まわりへ進みます。ここまでは、たいていどの子でも同じ順で流れます。順番が毎回違う子もいますが、その子なりの並びはだいたい決まっています。
-
体の前半分から、後ろ半分へ移る
肩、胸、脇の下、わき腹。そのあと後ろ足と尾へ向かいます。ここから先は、体の柔らかさによって届く範囲が変わります。届かない場所で止まった回は、その日の毛づくろいが途中で終わったことになります。
-
別の行動に移ったところで、1回を終わりにする
歩き出す、寝る、水を飲む、窓のほうを見て動かなくなる。どれかが起きたら、そこで区切ります。時計を見る必要はありません。終わったという事実だけを覚えておけば足ります。
この4段で見ておくと、途中で止まった回がどこで止まったかを言えるようになります。「後ろ足の前で止まった」「わき腹のところで歩き出した」。この言い方は、そのまま動物病院で伝えられる情報になります。何分やっていたか、という言い方より、どこまで進んだか、という言い方のほうが、聞く側にとって手がかりが多くなります。
もう1つ、この数え方には利点があります。被毛のどこに手を貸せばいいかが、その場で分かります。止まった位置から先は、その日は舌が通っていない場所です。腰から尾のつけ根、背中の中央、首のうしろ。このあたりは、もともと届きにくい範囲でもあります。毛先が立ったまま残っているなら、ブラッシングで代わりに通す場所は、そこということになります。
合計時間の代わりに、家で数えられるものは何ですか
5つあります。どれも時計を使いません。使うのは、気づいたときに日付を書き留める紙が1枚だけです。合計時間を追う記録と違って、書けなかった日があっても壊れません。書いた日だけが並んでいれば、間隔として読めるからです。
| 数えるもの | 気づき方 | 紙に書くこと |
|---|---|---|
| 途中で止まった回 | 後ろ足や腰まで進まずに終わる | 日付と、止まった場所 |
| 同じ場所だけが長い回 | 1か所に戻って繰り返す | 日付と、その場所 |
| 始まる回数が減った日 | その日1度も見なかった、と感じる | 日付だけ |
| 終わったあとに毛が乱れている | 毛先が立ったまま残っている | 日付と、乱れていた場所 |
| 音や声が出るようになった | 毛づくろいの最中に声が出る | 日付と、そのとき触っていた場所 |
書き方は、カレンダーの余白で足ります。気づいた日に、場所の名前を1つ書くだけです。「腰で止まった」「左のわき腹だけ長い」。2週間ためると、同じ場所が並ぶかどうかが見えてきます。同じ場所が繰り返し並ぶなら、そこには体の側の理由があるかもしれません。ばらばらに散っているなら、その日ごとの事情で動いていると読めます。
この記録には、もう1つの使い道があります。毛づくろいが減っている場所と、ブラッシングを入れる場所を一致させられます。猫が自分で通せていない場所に人が手を貸すという順番になるので、全身をやろうとするより短く終わります。被毛の手入れの時間も、毛づくろいの時間と同じで、長さより場所のほうが効いてきます。
毛づくろいの時間が長くなりました。このまま様子を見て大丈夫ですか
ここは条件で割れます。全身にわたって少しずつ長くなっているなら、季節や環境で動いている範囲のことが多くなります。1か所だけが長くなっているなら、その場所の側に理由がある可能性が出てきます。大丈夫かどうかを決める材料は、長さそのものより、長さがどこに寄っているかのほうにあります。
| 見え方 | どう読めるか | 家でやること |
|---|---|---|
| 全身が少しずつ長い | 換毛期や乾燥など、被毛の側の条件が動いている | ブラッシングの回数を少し増やす |
| 1か所だけが長い | その場所に理由が寄っている可能性がある | 日付と場所を紙に書き、続くかを見る |
| 同じ場所を、毛が薄くなるまで続ける | 家では理由を切り分けられない | 続ける前に動物病院に相談する |
| 長さは同じで、回数だけ増えた | 落ち着きにくい状況が続いていないかを見る | 環境の変化を日付と一緒に書く |
| 長いのに毛先が整わない | 舌が通っても被毛が落ち着いていない | うるおいと静電気の条件を見直す |
3つめについて、はっきり書いておきます。同じ場所をなめ続けて、毛が薄くなってきている、地肌が見えている、赤みがある。この状態は、家で様子を見て判断する範囲を越えています。猫が長くなめる理由は1つではありませんし、行動の側から入る話なのか、体の側から入る話なのかは、見た目からは分かりません。判断を家で完結させないことが、この項目でいちばん大事なところです。
様子を見ると決めたときは、期間も一緒に決めてください。「2週間たっても同じなら相談する」と決めておくと、様子を見る時間がずるずる延びません。その2週間のあいだに書いておくのは、日付と場所だけで足ります。紙が1枚あれば、相談に行った日にそのまま渡せます。何分やっていましたか、と聞かれて答えられなくても、どこを何日続けていたかが言えれば、話は進みます。
毛づくろいが始まる回数が減ったときは、どう見ればいいですか
減ったことに気づくのは、増えたことに気づくより難しいところがあります。やっていない、という出来事は目に入らないからです。だから、減りは時間で測るより、毛のほうから読むほうが早く見つかります。舌が通らなくなった場所は、毛が立ったまま残り、寝ぐせのような向きの乱れが出ます。
- 背中の中央から腰:もともと届きにくい場所です。毛づくろいが減ると最初に乱れます
- 尾のつけ根:体をひねって届かせる場所なので、動きにくくなると先に落ちます
- わき腹の後ろ寄り:前半分は続いているのに、ここから先が残ることがあります
- 後ろ足の外側:座ったまま届く範囲から外れます
- 首のうしろ:前足で洗う場所です。前足を使う動き自体が減ると残ります
並べてみると分かるとおり、減りは体の後ろ側と、ひねる動きが要る場所から出ます。体を折りたたむ姿勢が取りにくくなると、毛づくろいの時間ではなく範囲のほうが先に縮みます。年齢が上がった猫や、体重が増えた猫、関節にかかわる事情がある猫では、この縮み方が出やすくなるとされています。毛の乱れは、時間の記録より早く、範囲の変化を教えてくれます。
見るタイミングは、抱き上げたときで足ります。背中から腰にかけて手のひらを一往復させて、毛先の向きがそろっているかを見ます。そろっていない範囲が先週より広がっているなら、毛づくろいが届かなくなっている範囲が広がっています。ここを見つけたら、ブラッシングをその範囲に絞って入れます。全身をやろうとすると1回が長くなり、猫のほうが先に終わりにしてしまいます。
ただし、範囲が急に縮んだとき、食欲や動き方も一緒に変わっているときは、被毛の手入れを増やす前に動物病院にご相談ください。毛づくろいが減ることは、体の状態が変わったときに早く出る変化の1つとして知られています。いつから、どの範囲が残るようになったか。この2つが言えれば、家でできることは足りています。
換毛期や空気が乾く時期で、猫の毛づくろいの時間は変わりますか
変わります。ただし、変わるのは1回の長さより、始まる回数のほうです。抜けた毛が被毛の中に残ると、それを外へ出すために毛づくろいが差し込まれる回数が増えます。1回あたりは相変わらず短いままなので、見ている側は「今日はよく毛づくろいをしている」と感じます。この感じ方は、時間ではなく頻度を拾っています。
| 時期 | 被毛に起きること | 動くのは |
|---|---|---|
| 換毛期 | 抜けた毛が被毛の中に残る | 始まる回数が増える |
| 空気が乾く時期 | 静電気で毛先が広がり、絡みやすくなる | 1回が長くなりやすい |
| 気温が下がる時期 | 毛が厚くなり、舌が根元まで届きにくい | 同じ場所を繰り返す回が増える |
| 気温が上がる時期 | 体を伸ばす姿勢が取りやすい | 届く範囲が広がる |
| 環境が変わった直後 | 落ち着くまでに時間がかかる | 回数が一時的に増えたり減ったりする |
空気が乾く時期については、もう少し書いておきます。うるおいが足りない被毛は、毛先が静電気で互いに反発して広がります。広がった毛先は隣の毛と交差しやすく、舌が通っても根元まで戻りません。猫の側からすると、通したのに整わないので、同じ場所をもう一度やることになります。乾く時期に毛づくろいが長く見えるのは、進みが悪くなっているからです。ブラッシングも同じ条件を受けるので、乾いたまま歯を入れると毛が立って、根元まで届きません。
この時期に家でできるのは、毛づくろいを増やすことではなく、被毛の側を落ち着かせておくことです。水を使わない日のケアとして、猫用 mofuwa グルーミングウォーターのような洗い流さないタイプを布に取り、毛の流れに沿って一往復させる方法があります。猫のために容器から見直したもので、噴射音が出にくいタイプです。音を嫌う子でも、布に取ってから当てれば、毛づくろいの途中を邪魔しません。使う範囲は、s4の記録で残っていた場所だけで足ります。全身にやろうとすると、1回が長くなって続きません。
順番としては、布でなでてからブラシを入れると、毛先から根元へ歯が入りやすくなります。猫が自分で通せている場所は、そのまま任せてかまいません。人が手を出すのは、毛づくろいが届いていない範囲だけです。換毛期に増やすとしても、増やすのは場所ではなく回数のほうにします。1回を長くすると、猫のほうが途中で切り上げます。
猫の毛づくろいの時間に残る疑問を、3つの区切りに畳む|動物病院に相談する目安
ここまでを畳みます。猫の毛づくろいの時間について、家で持っておくものは3つです。合計の数字は、そのどれにも入りません。
| 区切り | 見るところ | 書くこと |
|---|---|---|
| 1回がどこで終わったか | 後ろ足や腰まで進んだかどうか | 日付と、止まった場所 |
| 同じ場所だけが長いか | 1か所に戻って繰り返していないか | 日付と、その場所 |
| 始まる回数が減っていないか | 背中から腰の毛先がそろっているか | 日付と、乱れが残る範囲 |
この3つは、どれも時計を必要としません。時間を測る記録が続かないのは、猫のせいでも飼い主の根気のせいでもなく、数えるものの選び方のためです。合計時間を追いかけると、見ていない時間のぶんだけ必ず欠けます。区切りを数える形にすると、欠けた日があっても、書いた日の並びが残ります。並びが読めるかぎり、記録は生きています。
そして、猫の毛づくろいの時間をめぐる疑問のうち、家で解けないものが1つ残ります。長くなったのが体の側の理由なのか、暮らしの側の理由なのか、という切り分けです。これは見た目からは決められません。決めようとして家で長く様子を見るあいだに、なめ続けている場所の状態が変わっていくこともあります。切り分けは持ち込むもの、と決めておくほうが早く進みます。
同じ場所をなめ続けて毛が薄くなってきた、地肌が見えている、赤みやかさぶたがある、毛づくろいの最中に声が出る、触ると嫌がる、毛づくろいが急に減って背中や腰の毛が乱れたまま戻らない、食欲や動き方も一緒に変わった。こうしたときは、ブラッシングの回数を変えたり、家で様子を見る期間を延ばしたりする前に、動物病院にご相談ください。いつから、どの場所が、どれくらいの間隔で続いているか。日付と場所を書いた紙が1枚あれば、そのまま持っていけます。何分続いていたかを答えられなくても、相談は成り立ちます。
最後に、この記事のいちばん短い形を置いておきます。猫の毛づくろいの時間は、合計では見えず、区切りで見えます。途中で止まったか、同じ場所だけが長かったか、始まる回数が減ったか。今日この3つのどれかに気づいたなら、その日付を1行書いてください。数字を集めるためではなく、いつもと違った日を、あとから見つけられるようにするためです。
Product
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
