C15組み合わせ提案

術後の回復期のケア設計

公開日 2025年5月7日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、白いブランケットの上に静かに横になっている小さな白い犬
回復期に家で触れるのは、傷から遠い場所だけです。その線は、手術をした獣医師に聞いて引きます。写真:SLZ/Pexels

術後3日目の夜、寝床の縁によだれの跡が乾いているのに気づいて、どこまで拭いていいのか分からずに手が止まりました。術後の回復期は、いつものケアのどれを続けて、どれを止めるのかが、家では決めにくい時期です。このときの線は、ケアの種類より「傷からの距離」で引くと迷いが減ります。傷と縫合部は獣医師の領分で、家では何もつけません。傷から遠い足先や反対側の背中、そして寝床は、獣医師に確かめたうえで家が受け持てます。どこまでが「遠い」のかは、手術をした獣医師に聞いて、体の地図にしておきます。この記事では、その地図のつくり方から、抜糸のあとに洗う日を戻すところまでを、5つの手順で書きます。薬、傷の手当て、エリザベスカラーや術後服の扱いは、ここでは扱いません。いつでも、獣医師の指示が最優先です。

傷からの距離で3つに分ける|術後の回復期に家でできるケアの線

術後の回復期に家でできるケアは、傷からの距離で3つの区域に分けると決まります。傷と縫合部は何もしない区域、そのまわりは見るだけの区域、傷から遠い場所は獣医師が認めた範囲で拭いてよい区域です。いつものケアを続けるかどうかを、ブラッシング・拭く・洗うといった種類で考えると、どれも「傷に響くかもしれない」に見えて、全部を止めることになりがちです。

全部を止めると、別のところが困ります。回復期でもその子は体から脂を出し、トイレに立てば足先は汚れ、寝床にはよだれが残ります。その汚れを毎日ぬぐってやりたい気持ちは、手術の前と変わりません。距離で線を引くと、止めるものと続けるものが体の場所ごとに分かれるので、止めなくていい場所まで止めずに済みます。

傷からの距離で分けた3つの区域
区域どこか(例)家でやること線を引くのは
何もしない区域傷口と縫合部。ガーゼや術後服の下何もつけない。触らない手術をした獣医師
見るだけの区域傷のまわり。獣医師が「ここまで」と示した範囲色・形・にじみを目で見るだけ手術をした獣医師
拭いてよい区域足先・反対側の背中など、傷から遠い場所獣医師が認めた場所だけを、濡らさずに拭く獣医師の答えを家が書き写す

3つの区域の境目は、手術の場所と方法、その子の回復の進み方によって、1頭ずつ違います。だから境目の位置は、この記事でも家の判断でも決めません。決めるのは手術をした獣医師で、家がやるのは、聞いた答えを忘れない形にしておくことです。お腹の手術なら背中と足先が遠くなり、足の手術なら反対側の足と背中が遠くなる、というように、同じ「遠い」でも場所は入れ替わります。

Caution傷と縫合部には何もつけない。獣医師の指示がすべてに優先します

傷口と縫合部、そのまわりには、この記事に出てくるものも含めて、家では何もつけません。拭く、塗る、スプレーする、どれもしません。薬の飲ませ方や塗り方、傷の手当て、エリザベスカラーや術後服を外すかどうか・いつ外すかも、この記事では扱いません。どれも手術をした獣医師が、その子を見て決めることです。退院のときの説明と、この記事の内容が少しでも違って見えたら、獣医師の説明のほうに従ってください。回復期のケアは、獣医師の指示の内側でだけ組み立てます。

退院の日から抜糸のあとまで|術後の回復期の毎日を5つの手順で組む

手順は、体と時間の順に5つです。地図をつくる、遠い場所を拭く、カラーの縁を拭く、寝床を整える、抜糸のあとに洗う日を戻す。2から4は、地図の「拭いてよい区域」と、体に触れない物の側だけで行います。

  1. 手順1:退院の日、どこまで触ってよいかを獣医師に聞いて、体の地図にする

    退院の説明を受けるときに、紙を1枚持っていきます。聞くのは「体のどこまでなら触ってよいか」「足先や背中を拭いてよいか」「寝床にスプレーを使ってよいか」「洗うのはいつからか」の4つです。家に帰ったら、答えを体の横向きの線画に色で書き込みます。赤は何もしない区域、黄色は見るだけの区域、青は拭いてよい区域。絵が苦手なら、体の場所を3列の表に書くだけでも足ります。家族全員が目にする冷蔵庫の扉に貼っておくと、人によって線がずれません。

  2. 手順2:傷から遠い足先と反対側の背中を、グルーミングスプレーをコットンに取って拭く

    青の区域だけを拭きます。体に直接吹きかけずに、コットンに取ってから拭くので、体が濡れず、しずくが傷の側へ流れていくこともありません。足先は、トイレに立ったあとの1回。背中は、傷と反対側の肩から腰にかけて、毛の流れに沿って1方向に。拭いている手が黄色の区域に近づいたら、そこで終えます。

  3. 手順3:エリザベスカラーの内側の縁についた食べかすとよだれを拭く

    カラーを付けている子は、食事のたびに内側の縁に食べかすやよだれが残ります。縁は体ではなく物なので、寝床と同じ考え方で拭きます。カラーは付けたまま、指が縁の内側に入る範囲だけを、消臭スプレーを取ったコットンでなぞります。カラーに直接吹きかけず、顔のそばでは音も霧も出しません。外して洗うかどうか、付け直し方は、獣医師に言われたとおりにします。

  4. 手順4:寝床を消臭スプレーで整え、乾いてから戻す

    回復期のその子は、1日の大半を寝床で過ごします。寝床の布はよだれやにおいを受け止め続けるので、1日1回、その子がトイレに立ったあいだに整えます。替えの布を2枚用意しておくと、汚れた1枚を外して、下の台やケージの床に消臭スプレーをかけ、乾いたところへ新しい1枚を敷けます。その子が寝床にいるあいだはかけません。乾く前に戻すと、湿った面に体が触れるからです。

  5. 手順5:抜糸のあと、獣医師の許可が出てから洗う日を戻す

    洗う日を戻すのは、抜糸が済んだあと、獣医師から許可が出てからです。抜糸が済んだことと、洗ってよいことは、別々に確かめます。溶ける糸で抜糸がない場合も、洗ってよい時期は獣医師に聞きます。許可が出たら、最初の1回は短く終えます。洗う日が戻るまでは、手順2から4を毎日続けます。

手順2で使う mofuwa グルーミングスプレー は、洗う日が戻るまでのあいだも、その子の体に毎日手を入れられる形でつくられた1本です。洗い流す前提のものではないので、すすぐ工程も、濡れた被毛を乾かす工程もありません。回復期は、ドライヤーの音や風で、その子を寝床から動かしたくない時期でもあります。アルコールを含まない還元水100%の処方で、汚れのもとになっている脂は乳化して浮き、皮膚に残しておきたいセラミドとスクワランはそのまま残る、という落とし分けがされています。コットンに取る量は、足先1本につき、コットンがしっとりする程度で足ります。

カラーを付けていない時期の子は、拭いた足先をあとで舐めることがあります。コットンで拭いたところが口に入ることまで見て中身が確かめてあるので、拭いたあとの足先を舐められても慌てずに済みます。ただし、傷を舐めさせないための指示が出ているなら、その指示が先です。拭いたものを舐めてよいかという話と、傷を舐めさせないという話は、別のことです。

手順3と4で使う mofuwa 瞬間消臭スプレー は、床やケージのように、その子が必ず舐める面に使うことを前提に、電解水だけでつくった消臭スプレーです。香りで覆わないので、寝床からその子自身のにおいが消えません。ペットは自分のにおいを好みます。回復期に1日の大半を過ごす場所が、知らない香りに変わらないことは、休む場所としての寝床を守ることでもあります。においのもとに反応して、においを感じにくくするつくりなので、よだれや食べかすのにおいが重なっていく日も、布を替えて台を整えるだけで済みます。

5つの手順で、どこに何を使い、何を誰が決めるか
手順区域・場所使うもの決めるのは
1 地図をつくる体全体紙と色ペン獣医師の答えを家が書き写す
2 遠い場所を拭く青の区域(足先・反対側の背中)グルーミングスプレーをコットンに拭く範囲は地図のとおり
3 カラーの縁カラーの内側(物)消臭スプレーをコットンに外すかどうかは獣医師
4 寝床寝床の台・ケージの床(物)消臭スプレーを面にその子がいないあいだに
5 洗う日を戻す全身いつものシャンプー獣医師の許可が出てから
傷からの距離で分ける、回復期の2つの側 術後の回復期に、傷と縫合部とそのまわりで家がしないことと、傷から遠い場所と物の側で家が受け持つことを、左右に並べた比較図です。 境目の位置は、手術をした獣医師に聞いた答えで決めます 傷と縫合部・そのまわり 何もつけない・触らない 色と形を目で見るだけ 線を引くのは手術をした獣医師 薬と手当ては指示のとおり カラーの扱いも獣医師が決める 傷から遠い場所と、物の側 獣医師が認めた場所だけ拭く コットンに取って体を濡らさない カラーの縁は物として拭く 寝床は乾いてから戻す 洗う日は許可が出てから戻す 右側の範囲は、再診のたびに獣医師に確かめて広げていきます
左側は獣医師の領分、右側は獣医師に確かめたうえで家が受け持つ側です。

拭く線が少しずつ傷へ寄っていく|術後の回復期に頻度がずれる3か所

5つの手順が崩れるのは、多くの場合、拭く線が少しずつ傷のほうへ寄っていくところからです。回復が進んで傷が目立たなくなると、「このくらいなら」と青の区域の外まで手が伸びます。崩れ方は3つに分かれます。

回復期の手順がずれる3か所と、戻し方
ずれる場所何が起きているか戻し方
拭く線傷が目立たなくなり、青の区域の外まで拭いてしまう線を動かすのは、再診で獣医師に聞いたときだけ。地図に日付を書く
頻度汚れが気になって、足先を1日に何度も拭く足先はトイレのあとの1回。回数を増やすのは寝床の側
家族のあいだ人によって拭く範囲が違う触る前に冷蔵庫の地図を見る。口伝えにしない

頻度の考え方は、体の側と物の側で逆になります。体の側は回数を増やさず、物の側は汚れたらそのたびに整えます。体を拭く回数が増えるほど触られる時間も増え、その子が体をひねって傷の側を動かす機会も増えます。寝床や台のほうは、何度整えても体には触れません。においや汚れが気になったときは、寝床の側で手を動かします。

もう1つのコツは、拭く順番を毎回同じにすることです。遠い場所から始めて、傷の側へは近づかずに終える。順番が決まっていると、手が黄色の区域に近づいた時点で「ここで終わり」と、人の手のほうが覚えます。回復期は、その子も触られる場所に敏感になっています。同じ順番で、同じところで終わることが、その子にとっても予告になります。

Caution地図の「見るだけ」の区域に、前の日と違うものが見えたら

見るだけの区域(黄色)は、毎日同じ時刻に、同じ明るさで見ておきます。前の日より赤く見える、腫れて盛り上がって見える、にじみや汁が出ている、においが変わった。このどれかが見えたら、家では何もつけずに、手術をした動物病院へすぐ連絡してください。カラーや術後服がずれて、傷にその子の口や足が届いていたときも同じです。いつから、どう変わったかを地図の余白に書いておくと、電話でそのまま伝えられます。

地図の青い区域を再診ごとに広げる|術後の回復を支えるケアのコツ

回復期のケアは、地図の青い区域を、再診のたびに獣医師に確かめて少しずつ広げていく形で続きます。広げる判断は、家ではしません。再診で「ここまで触ってよい」が変わったら、その日のうちに地図を塗り直し、日付を書き込みます。塗り直した地図が冷蔵庫に重なっていくと、回復の進み方が家族の目にも見えるようになります。

再診ごとの地図の書き換え(記入の例)
いつ地図に書くこと家の毎日
退院の日獣医師に聞いた青の区域を塗るその日の夜から手順2〜4
再診の日聞いた答えで塗り直し、日付を書く青が広がった場所も拭く
抜糸の日(溶ける糸なら、獣医師が示した日)洗ってよい時期も聞いて書く許可が出るまでは手順2〜4のまま
洗う許可が出た日地図を外すいつものケアに戻す

冷蔵庫の地図の青い区域を見てから、トイレのあとの足先をグルーミングスプレーのコットンで1本ずつ拭き、その子が寝床を離れたあいだに台を消臭スプレーで整える。毎日この2つを同じ順番で続けていると、青い区域が広がるたびに、その子が安心して体を預けてくれる場所が1つずつ増えていきます。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

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よくある質問

術後、体のにおいが気になります。全身を拭いてもいいですか。
全身を拭くのは、地図の上で全身が青になってからです。それまでは、青の区域だけを拭きます。回復期のにおいは、体より寝床のほうにたまっていることが多く、布を替えて台を消臭スプレーで整えるだけで気にならなくなることがあります。体の側で触れる範囲を増やす前に、物の側を先に見てください。拭いてよい範囲を広げたいときは、次の再診でそのまま聞くのがいちばん確実です。
傷を舐めないように、傷のまわりに何か塗ってもいいですか。
塗りません。傷口と縫合部、そのまわりには、家では何もつけないのがこの記事の線です。舐めることへの手当て、つまりカラーや術後服、塗るものが要るかどうかは、手術をした獣医師が決めます。傷を舐めようとする動きが増えたと感じたら、いつ・どのくらい舐めようとしたかを地図の余白に書いておくと、そのまま伝える材料になります。家で受け持てるのは、カラーの縁と寝床を清潔にしておくところまでです。
抜糸が済んだら、すぐにシャンプーしていいですか。
洗ってよい時期は、抜糸の日に獣医師に聞いてください。抜糸が済んでも、しばらく待つように言われることがあります。許可が出たら、最初の1回は短く終え、傷のあった場所の扱いは獣医師に言われたとおりにします。洗う日が戻るまでは、グルーミングスプレーをコットンに取って青の区域を拭く毎日を続けます。洗う日が戻ってからも、毎日の足先と背中のケアは、そのまま続けられます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。