C12Q&A・豆知識
介護期にケアが後回しになる理由
介護が始まった家の朝は、投薬、床の拭き取り、食事の用意、通院の予約が、同じ時間帯に並びます。そのなかで後ろへ回されていくのは、決まった順番を持っていないものです。ケアは、たいていその側に入ります。時間が足りないから後回しになる、という読み方をしていると、時間が空いた日にも順番は戻ってきません。通院のない日に、夕方まで何もできないまま過ぎることがあるのは、そのためです。介護期にケアが後回しになる理由は、時間の量ではなく、1日のどこに置かれているかのほうにあります。この記事では、元気な時期の1日と、手を貸す時期の1日を並べて、順番の決まり方・割り込みの入り方・ケアの居場所の3点で比べます。そのうえで、ケアを余った時間から決まった場所へ移す、という置き直し方を書きます。
介護期にケアが後回しになる理由を、時間の量から切り離す
後回しという言葉は、時間が足りない状態を指しているように読めます。ただ、介護が始まった家で実際に起きているのは、時間が減ることよりも、1日の組み立て方が変わることのほうです。やることの総量が増えるだけなら、増えた分を削れば元に戻ります。戻らないのは、削る順番を決めていた仕組みのほうが変わってしまうからです。
分かりやすいのは、予定のない日の過ごし方です。通院もなく、来客もなく、時間はある。それでも夕方になって、今日もケアをしていないことに気づく。時間が理由なら、こういう日には戻るはずのものが、戻りません。ここが、介護期の後回しを時間の話として読んではいけない理由になります。戻らないのは、いつやるかが決まっていないからです。
決まっていないものは、意思で埋めることになります。思い出したときにやる、余裕があるときにやる。思い出す・余裕を測る、という2つの手間が毎回かかるので、疲れている日ほど落ちます。介護期は、その疲れている日が続く時期でもあります。だから、意思の側を強くする方向で解こうとすると、うまくいきません。この記事が扱うのは、置き場所のほうです。
「介護期に◯%の飼い主がケアを後回しにしている」「1日あたり平均◯分」といった数字は書きません。何を後回しと数えるかで、その数字はいくらでも動くからです。1日やらなかった日を後回しと数えるのか、週に1回できていれば数えないのか。数え方を決めているのは調べた側で、その決め方が自分の家と同じとはかぎりません。借りてきた数字より、自分の家で1週間数えたほうが当たります。この記事で書けるのは、後回しが起きる構造と、家で自分の数字を出す方法だけです。数え方は、いちばん下の記録表に置いてあります。
軸1・元気な時期の1日|介護が始まる前、ケアはどの時期にどこへ置かれていたか
1つめの軸は、手を貸す必要がなかったころの1日です。この時期の1日は、決まった順番でできています。起きる、ごはん、散歩、留守番、ごはん、寝る。順番が固定されているので、次に何が来るかを考える必要がありません。そして、この固定された順番のどこかに、ケアがくっついていました。
ここが大事なところです。元気な時期のケアは、空いた時間に置かれていたのではなく、決まった出来事の後ろにくっついていました。散歩から帰ったら足を拭く。寝る前にブラシを入れる。前の出来事が合図になっているので、思い出す必要がありませんでした。やるかどうかを毎回決めていたわけではなく、順番として流れていた、というほうが近いと思います。
- 合図になる出来事があった:散歩から帰る、ごはんが終わる、寝床に入る
- 終わりの形が決まっていた:足を拭き終える、ブラシを一通り入れる
- 1回の長さが読めた:だいたい同じ時間で終わるので、予定に入れられました
- 途中で中断されなかった:始めたら最後までいけました
- やらなかった日が目立った:順番が飛ぶので、抜けたことに気づけました
5つとも、意思の話ではありません。どれも、1日の組み立て方が持っていた性質です。元気な時期にケアが続いていたのは、飼い主の意識が高かったからではなく、この5つがそろっていたからでした。だから、介護期に入ってケアが後回しになったとき、責める相手は自分の意識ではありません。5つのうちどれが消えたのかを見るほうが、話が早く進みます。
もう1つ、この時期の特徴を挙げておきます。皮膚や被毛の変化が、ゆっくりだったということです。毎日動いて、自分で体勢を変えて、自分で毛づくろいをしている状態では、同じ場所がずっと圧されることがありません。1日抜けても、翌日に取り戻せました。この「取り戻せる」という感覚が、そのまま次の時期に持ち込まれるところが、後回しの入り口になります。
軸2・手を貸す時期の1日|割り込みが入ると、介護のなかでケアの居場所が消える条件
2つめの軸は、手を貸すことが増えてからの1日です。この時期に起きているのは、順番が消えることではありません。順番の外から、割り込みが入るようになることです。予定になかったことが、その場で最優先になる。しかも、いつ入るかは決められません。1日の形は、割り込みが入るたびに組み直されます。
- いつ入るか読めない:時間帯を決められないので、予定の側で避けられません
- 終わりが読めない:5分で終わることも、1時間かかることもあります
- 人の手が要る:その場を離れられず、ほかのことと並行できません
- その場で決めることがある:判断そのものに気力を使います
- 後ろの予定が全部ずれる:1つ入るたびに、順番の後ろから削られます
最後の行が、後回しの正体です。割り込みが入ると、削られるのは順番の後ろにあるものからになります。そして、順番の後ろに置かれやすいものには共通点があります。締め切りがないことです。投薬には時刻があり、食事にも時刻があります。ケアには、今日やらなければその日のうちに困る、という締め切りがありません。だから、削っても今日は成立してしまいます。介護期にケアが後回しになる条件は、ここに集まっています。
| 条件 | 何が起きるか |
|---|---|
| 締め切りがない | 削っても、その日のうちには困りません |
| 合図だった出来事が変わった | 散歩が短くなると、散歩のあとという合図が消えます |
| 1回の長さが読めなくなった | 途中で体勢を変える必要が出て、予定に入れにくくなります |
| 中断しても誰も困らない | 割り込みが入ったとき、まずここが止まります |
| やらなかった日が目立たない | 順番の外にあるので、抜けても気づきません |
| 余った時間にやろう、と置き直された | 割り込みのある日には、余った時間が発生しません |
2行目は、見落とされやすいところです。散歩が短くなったり、外に出る回数が減ったりすると、ケアの合図そのものがなくなります。足を拭くのは、帰ってきたからでした。ブラシを入れるのは、寝る前でした。合図にしていた出来事が変わると、ケアは合図を失って宙に浮きます。やる気が落ちたわけでも、時間がなくなったわけでもなく、合図が消えただけ、という場合がかなりあります。
そして6行目です。合図を失ったケアは、たいてい「時間ができたらやろう」という置き方に変わります。この置き方をした瞬間に、ケアは1日の順番から外れて、余りの側へ移ります。余りは、割り込みのある日には出てきません。介護期にケアが後回しになる理由を1行で言うなら、順番の中から余りの側へ引っ越してしまったから、ということになります。
2つの1日の違いを並べる|介護のケアを、余った時間から決まった場所へ移す使い分け
2つの軸を並べます。同じ家の、同じ子の、同じケアなのに、置かれている場所が違います。この表で見てほしいのは、下の3行です。ケアの居場所と、やめどきの決まり方と、できなかった日の扱い。ここが入れ替わっていることが、後回しの中身になります。
| 元気な時期の1日 | 手を貸す時期の1日 | |
|---|---|---|
| 1日の組み立て | 決まった順番が最初から最後まで通ります | 割り込みのたびに組み直します |
| 順番の決まり方 | 前の出来事が次の合図になります | その場の状況で決まります |
| 割り込みの入り方 | ほとんど入りません | いつ入るか読めません |
| ケアの居場所 | 決まった出来事の後ろ | 余った時間 |
| 1回の長さ | だいたい同じで読めます | その日の様子で変わります |
| やめどき | 一通り終わったら終わり | 決めていないので、途中で止まります |
| できなかった日 | 順番が飛ぶので気づきます | 順番の外なので気づきません |
どちらを選ぶか。介護期に選ぶのは、右側です。左側は、時間があるときにはうまく回りますが、割り込みのある日にだけ消えます。そして介護期は、割り込みのある日のほうが多くなります。ケアを続けたいなら、増やすのは時間ではなく、合図のほうです。
合図にできるのは、介護期にも毎日必ず起きる出来事です。手を貸す時期になると、元気なころとは違う出来事が、毎日の固定点になっています。そこにくっつけます。
| 固定点 | くっつけるケア | 続きやすい理由 |
|---|---|---|
| 朝の投薬のあと | 口のまわりを拭く | 時刻が決まっていて、毎日あります |
| 体の向きを変えたとき | 下になっていた側を見る | 触る姿勢が、そのまま見る姿勢になります |
| 食事の片づけのあと | あごの下と胸元を拭く | 汚れる場所と時刻が一致しています |
| 寝床の敷き物を替えるとき | 背中と腰まわりに手を入れる | その子が動いた直後で、手が届きます |
| 通院の前日 | 全身をひととおり見る | 翌日に伝える材料になります |
この表で決めるのは、1つだけで足ります。5つ全部をやろうとすると、また余った時間の側に戻ります。1日に1か所、決まった場所を持つ。それが続いてから、2つめを足すかどうかを考えます。介護期のケアで増やすものがあるとすれば、回数でも時間でもなく、決まっている場所の数です。
自分の家の順番は、1週間で出せます。やり方は、その日に入った割り込みと、ケアができたかどうかを、1行ずつ書くだけです。できなかった理由は書きません。書くのは、割り込みの中身と、できた・できなかったの2つだけ。7日ぶんたまると、どの割り込みが入った日に落ちているかが並びます。よそから借りてきた割合よりも、この7行のほうが自分の家に当たります。
| 日 | その日に入った割り込み | ケア |
|---|---|---|
| 月 | 夜中に2回起きた | できなかった |
| 火 | なし | できた |
| 水 | 食事に時間がかかった | できた |
| 木 | 通院、午後がまるごと埋まった | できなかった |
| 金 | 床の汚れを2回片づけた | できなかった |
| 土 | なし | できた |
| 日 | 来客があった | できた |
この例だと、落ちているのは3日です。そして3日とも、割り込みが夕方から夜にかけて入った日でした。ここまで並ぶと、次にやることが決まります。ケアの置き場所を、夜から朝の投薬のあとへ移すことです。1日の総量は変えていません。置いた場所を、割り込みの入りにくい時間帯へずらしただけです。後回しを減らすというのは、たいていこういう作業になります。
決めるのは長さではなく置き場所|毎日の一点
置き場所が決まると、ケアの中身のほうも変わってきます。手を貸す時期のケアは、全身を一度にやり切る形から、決まった一点を毎日見る形へ移ります。1回の長さで決めていたものを、場所で決めるようになる、と言い換えてもいいと思います。長さで決めていると、割り込みの多い日には0になります。場所で決めていると、短くても0にはなりません。
介護期に、この毎日の一点が効いてくる理由もあります。手を貸す時期は、皮膚と被毛の変化が出るのが早くなります。寝ている時間が長く、同じ側が下になり、自分で毛づくろいをする回数も変わります。元気な時期の「1日抜けても取り戻せる」という感覚が、そのまま通用しなくなる時期でもあります。だからケアの時間は、手を入れる時間であると同時に、変化を見る時間を兼ねることになります。
- 下になっていた側:肩、腰、後ろ足の外側。毎日同じ側が続いていないか
- 口のまわりとあごの下:食事と投薬のあとに汚れやすい場所です
- 後ろまわり:自分で届きにくくなる場所です
- 足の裏:床の上での踏ん張り方が変わっていないか
- 被毛の手ざわり:同じ場所だけ、絡み方が違っていないか
元気なころ、口のまわりは、食べ終わったあとにその子が自分で舐めて片づけていた場所でした。手を貸す時期に減っているのは、この片づけの回数のほうです。だから、朝の投薬のあとに置く一点は、口のまわりになります。そして、そこに置くものは、口に入る前提で選ぶことになります。塗るタイプのものは、朝つけたぶんが昼には舐めて取れていることがあります。mofuwa スキンケアミストは電解水100%なので、その子が舐める場所にそのまま使えます。布に取ってから、あごの下と口のまわりを一往復。投薬のあとという合図に、この一往復までをくっつけておきます。ケアを増やしているのではなく、決めた場所に置いたケアを、割り込みのある日でも同じ形で終えられるようにしているだけです。
後回しになるのは、時間が足りないからではなく、置き場所が決まっていないからでした。だから増やすのは時間ではなく、始まる合図のほうです。朝の投薬のあと、体の向きを変えたとき、食事の片づけのあと。介護期にも毎日必ず起きる出来事を1つ選んで、そこにケアを1か所だけくっつけます。1日1か所で足ります。続いてから2つめを考えるほうが、結果として長く続きます。
同じ場所の地肌が赤い、毛が薄くなってきた、じくじくしている、触ると痛がる、においが出てきた、寝ている姿勢が急に変わった、食べ方や飲み方が変わった。こうした変化があるときは、ケアの回数や道具を変える前に、動物病院にご相談ください。手を貸す時期は、皮膚と被毛の変化と、体の側で起きている変化が重なって見えます。家では切り分けられません。1週間の記録表があれば、いつから、どの場所が、どう変わったかをそのまま持っていけます。
最後に一行だけ。介護期にケアが後回しになったのは、その子を大事にしていないからではありません。1日の組み立て方が変わったのに、ケアの置き場所だけが前のままだったからです。置き場所を1か所決め直せば、時間を増やさなくても戻ります。戻す先は、いちばん割り込みの入りにくい時間帯に1か所。それだけで足ります。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見るよくある質問
- 介護が始まってから、ケアの回数はどれくらいまで減らしていいですか
- 回数の目安を数字で決めるより、置き場所を1か所決めるほうが続きます。1日1か所を毎日と、全身をひととおり見る日を通院の前日に置く、という組み方であれば、割り込みの多い週でも0になりません。減らしてよいかどうかは、その子の皮膚と被毛の状態で変わります。同じ場所の地肌が赤い、毛が薄くなってきた、においが出てきたといった変化があるときは、回数を決める前に動物病院にご相談ください。
- 時間が空いた日に、まとめてやってもいいですか
- まとめると1回が長くなり、その子の側が先に切れます。手を貸す時期は、同じ姿勢でいられる時間が短くなっていることが多いので、長い1回は途中で止まりやすくなります。止まった場所は次にも残りやすく、結局そこだけが後回しのまま積み上がります。空いた日にやるとしても、時間を延ばすのではなく、その日は2か所にする、という増やし方のほうが残ります。
- 介護期に、ケアをやめてよい日はありますか
- あります。むしろ、やめる日を先に決めておくほうが続きます。通院のある日、夜中に何度も起きた翌日など、割り込みが確実に入ると分かっている日は、最初から予定に入れないでおきます。決めずに流れで抜けると、抜けたことに気づかないまま次の日も抜けます。決めて抜けた日は、次の日に戻れます。ただし、体の変化に気づいた日は別です。その日は手を入れるかどうかではなく、動物病院に相談するかどうかを先に決めてください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
