C12Q&A・豆知識
アンダーコートレーキとは?換毛期の道具
歯と歯のあいだが指1本分ほど空いていて、先がわずかに内側へ曲がっている。ブラシの棚に並んだ道具のなかで、アンダーコートレーキだけが櫛にもブラシにも見えない形をしています。アンダーコートレーキとは、上毛のあいだを通り、下毛だけを引き出す道具です。レーキとは熊手のことで、名前は形をそのまま言っているだけです。この道具のおもしろいところは、定義の後半にあります。要点は、毛を取ることよりも、上毛のあいだを通り抜けることのほうにあります。通り抜けることを前提に作られているので、通る先の隙間がない被毛では、通れずに毛そのものを引っかけます。だから、換毛期の道具として名前が挙がるわりに、この道具には使えない子がいます。この記事は、その一点についての読みものです。
アンダーコートレーキとは何を指す道具か|歯が粗く、先が曲がっている理由
定義から置きます。アンダーコートレーキとは、上毛のあいだを通り、下毛だけを引き出す道具です。被毛が2層に分かれている子で、内側にある細く短い毛を外へ出すために作られています。アンダーコートレーキという名前のうち、アンダーコートは内側の毛のこと、レーキとは熊手のことです。庭で落ち葉をかき集めるあの道具と、歯の粗さがそのまま同じ考え方でできています。
手に取ると、ほかのブラシとの違いはすぐ分かります。歯の本数が少なく、1本ずつが太く、あいだが大きく空いています。スリッカーのように細い針が面で並んでいるわけでも、コームのように歯が詰まっているわけでもありません。歯の先はまっすぐではなく、わずかに内側へ曲がっているものが多いところです。この3つの特徴は、どれも同じ1つの目的から来ています。
| 形の特徴 | そうなっている理由 |
|---|---|
| 歯のあいだが広い | 上毛を拾わずに、そのあいだを通り抜けるため |
| 歯が太くて本数が少ない | 細い針だと上毛の側に引っかかってしまうため |
| 歯の先が内側へ曲がっている | 通り抜けたあとに、下毛だけを引っかけて外へ出すため |
| 歯の並びが1列のものが多い | 面で押さえず、線で通すため |
| 歯の長さが被毛より短くない | 上毛の層を越えて、下毛の高さまで届かせるため |
並べてみると、形の説明が全部つながります。この道具は、毛を捕まえないための工夫と、毛を引き出すための工夫が、1本の歯の中に同居しています。あいだが広いのは捕まえないため、先が曲がっているのは引き出すため。ここが分かると、アンダーコートレーキとはどういう道具かという問いに、形から答えられるようになります。
ちなみに、換毛期に名前が挙がるのはこの構造のせいです。下毛は季節の変わり目に入れ替わるとされていて、その時期に抜けた毛は、上毛の網に引っかかったまま体の上に残ります。外へ出ていかないので、被毛の中で量が増えていきます。アンダーコートレーキとは、その残っている毛を、上毛を触らずに外へ出すための道具だ、と言い換えることもできます。
「取る道具」として読むと形の説明が合わなくなる|通り抜ける前提が選ばれた背景
この道具を「たくさん取れる道具」として読むと、話が合わなくなります。たくさん取ることが目的なら、歯は細く、詰まっていて、面で当たるほうが有利です。実際、抜け毛を集める道具のなかには、そういう形のものもあります。アンダーコートレーキは逆をやっています。歯を減らし、太くし、あいだを空けている。取ることだけを考えたら、わざわざ不利な形を選んでいることになります。
不利な形が選ばれている理由が、この道具の背景です。この道具が守ろうとしているのは、取る量ではなく、上毛のほうです。上毛は、体の外側にある太くて長い毛で、雨や日ざしを受けている層だとされています。この層は季節で総入れ替えになるものではなく、少しずつ入れ替わります。下毛を出したいときに、上毛まで一緒に持っていってしまうと、外側の層が薄くなります。だから、上毛には触れずに、そのあいだをすり抜ける形が要る。歯のあいだが広いのは、そのための隙間です。
- 上毛:外側にある太く長い毛。季節で総入れ替えにはならないとされています
- 下毛:内側にある細く短い毛。季節の変わり目に入れ替わるとされています
- 2層のあいだ:上毛の根元どうしのあいだに、歯が通れる隙間があります
- 抜けた下毛:外へ出ていかず、上毛の網に引っかかって被毛の中に残ります
- レーキの歯:上毛を押しのけず、隙間を通ってから下毛だけを引っかけます
この5行を上から下へ読むと、道具の考え方がそのまま出てきます。アンダーコートレーキとは、被毛を2つの層に分けて、片方だけに手を届かせるための道具です。片方だけに届かせるという条件があるから、形が独特になります。ブラッシングの道具のなかでも、届く相手をここまで限定しているものは多くありません。
使ってみたときの手ざわりにも、それが出ます。歯が上毛のあいだに入ったときは、抵抗がほとんどありません。すっと通って、通り終わったところで歯に綿のような毛が乗っている。引っぱっている感覚がないのに毛が集まる、というのが、通り抜けているときの状態です。逆に、通っている途中で引っかかる感じが続くなら、そこでは通り抜けていません。この感覚の差が、次の章の話につながります。
アンダーコートレーキの記事は、どうしても持ち方と動かし方の説明に寄ります。ただ、手順を先に覚えても、その子に合う道具かどうかは決まりません。合わない被毛に当てているかぎり、どんな動かし方をしても、起きることは変わらないからです。この記事で扱うのは、手順ではなく前提のほうです。前提が合っているかどうかは、道具を動かす前に、毛を分けて見るだけで確かめられます。
使えない子がいる、と分かるまでの経験|上毛と下毛が分かれていない被毛で起きること
換毛期にいちばん名前が挙がる道具なのに、この道具には前提条件があります。アンダーコートレーキが働くのは、上毛と下毛が分かれている子だけです。2つの層に分かれているからこそ、あいだに隙間があり、歯が通れます。分かれていない被毛には、通り抜ける先がありません。通れなければ、歯は目の前にある毛そのものを引っかけることになります。つまり、上毛を引き抜くかたちになります。
被毛の構造は、大きく分けると次のように呼ばれています。犬種の名前ではなく、毛の構造の呼び名として並べておきます。
| 構造の呼び名 | 毛の並び | この道具との関係 |
|---|---|---|
| ダブルコート | 上毛と下毛の2層に分かれています | 歯が通る隙間があります |
| シングルコート | 層が分かれず、1種類の毛が並びます | 通り抜ける先がありません |
| 巻毛・伸び続ける毛 | 抜け落ちにくく、長く伸び続けるとされます | 引き出す相手がいません |
| ごく短い毛 | 層はあっても、毛の高さが足りません | 歯が地肌に近づきます |
| 毛玉が固まっている場所 | 毛が面としてつながっています | 通す隙間が塞がっています |
2行目から下は、どれも同じ理由で合いません。通す隙間がない、という一点です。道具の良し悪しの話ではなく、道具が前提にしている構造がそこにない、というだけの話になります。合わない道具を当てているときは、たいてい手ごたえで分かります。すっと通らない、途中で止まる、引く力が要る。この3つが続くなら、その被毛は通り抜けの相手になっていません。
右側の状態を続けたときに何が起きるかも、書いておきます。抜けるはずのなかった上毛が減っていくので、被毛の見た目が薄くなり、毛先の揃い方も変わります。取れた毛の量だけを見ていると、うまくいっているように見えてしまうところが、この話のややこしい部分です。量は出ています。ただ、出ているのが下毛ではなく上毛だった、という状態になります。
自分の子がどちら側かは、道具を動かす前に確かめられます。毛を根元まで指で分けて、太くて長い毛の下に、細くて短い毛の層があるかを見るだけです。指で軽く掻き分けたときに、綿のような毛が指に付いてくるなら、下毛の層があります。分けても同じ太さの毛しか出てこないなら、そこは1層です。この確認は数十秒で終わりますが、これをやるかどうかで、道具が合う合わないが先に決まります。
季節の影響も一言だけ。乾いた時期は静電気で毛先が広がり、根元まで分けにくくなります。毛先が立っている状態だと、層があるかどうかの確認そのものが難しくなります。うるおいの残っている状態のほうが、毛は素直に分かれます。層があるかどうかを見るのは、被毛が落ち着いている時間を選ぶほうが確実です。
換毛期の道具を、その子の毛の層から選ぶという考え方
ここまでを、道具選びの考え方に戻します。アンダーコートレーキとは、被毛が2層であることを前提にした道具です。前提が合っている子には、上毛を触らずに下毛だけを外へ出すという、ほかの道具では代わりにくい役割があります。前提が合っていない子には、その役割がそもそも成り立ちません。合う合わないは、腕前の差ではなく、毛の構造の差です。
| 決めること | 何を見るか | 決まったあと |
|---|---|---|
| 層が2つあるか | 毛を分けて、細く短い毛の層があるか | なければ、この道具は候補から外します |
| いま換毛期に入っているか | 指で掻き分けて、綿のような毛が付くか | 付かない時期は、出てくる量が少なくなります |
| 毛玉が固まっていないか | 毛が面としてつながっていないか | 固まっている場所は、先にほどく相手になります |
3行目だけ補足します。毛玉が固まっている場所は、層があるかないかにかかわらず、通す隙間が塞がっています。ダブルコートの子でも、その場所だけは右側の被毛と同じ状態になります。同じ子の中でも、場所によって道具の前提が変わる、ということです。全身を1つの道具で通そうとすると、この差が見えなくなります。
アンダーコートレーキが合わない子でも、換毛期に何もできないわけではありません。層が1つなら、抜けた毛は上毛の網に引っかからず、そのまま外へ落ちていきます。被毛の中に溜まらないので、そもそも引き出す相手がいない、という状態です。だから、合わないと分かったときにやることは、別の道具を探すことであって、同じ道具を強く当てることではありません。この違いが、道具の話でいちばん大事なところだと思っています。
道具を当てる前に、被毛の側の条件を整えておきます。乾いた時期は静電気で毛先が広がり、歯の入りも層の見分けも変わるので、先に一手間かけるほうが早く進みます。ここで使っているのが mofuwa グルーミングスプレーです。三室ダブルイン型の電解技術(特許5253483)でつくった電解還元水そのもので、無香料、界面活性剤も入っていません。毛に直接吹きかけて、毛の流れに沿って一往復。立っていた毛先が下りるので、歯が上毛のあいだへ入りやすくなります。換毛期のブラッシングは毎日の話になるので、洗う日にモイストシャンプー、その間の日にグルーミングスプレー、という2本立てで回しています。道具の当て方を変えなくても、被毛の側の条件が変わると、通り方は変わります。
アンダーコートレーキとは、上毛のあいだを通り、下毛だけを引き出す道具です。歯のあいだが広いのも、先が曲がっているのも、上毛を拾わずに通り抜けるためです。だから、この道具が働くのは、上毛と下毛が分かれている子だけになります。層が分かれていない被毛では、歯は通り抜ける先を持たず、目の前にある毛そのものを引っかけます。取れた量ではなく、すっと通ったかどうかで判断する。この一行が、換毛期にこの道具を持つときの目印になります。
最後に、道具の話から外れる線を1本引いておきます。抜け毛の量が急に変わった、いつもと違う場所だけ薄くなった、地肌が赤い、同じところをなめ続けている、ブラシを当てると痛がる。こうした変化があるときは、道具を替えたり回数を増やしたりする前に、動物病院にご相談ください。換毛期の量として説明できる変化と、体の側で起きている変化は、家では切り分けられません。いつから、どのあたりが、どう変わったかをメモして持っていくと、その場で見てもらえます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
