C05犬種・猫種別ケア

アイリッシュウルフハウンドはなぜ肉球の乾燥が起きやすいのか。ワイヤーコートから考える

公開日 2025年8月5日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の床に、剛毛の大型犬が静かに伏せている
足先まで硬い毛が続いています。肉球は、その毛を指でどけたあとに、はじめて出てきます。

散歩から帰ってアイリッシュウルフハウンドの前足を持ち上げると、手のひらにのってくるのは硬い毛の束です。足の甲も、指のあいだも、同じ質の毛でおおわれています。指を2本入れて左右へ分けると、そこでようやく、肉球の黒っぽい面がのぞきます。肉球を見る前に、毛をどけるという一手が入る。これが、この犬種と暮らしはじめた人が最初につまずくところです。手順が1つ増えるだけの話に見えますが、その一手を省いた日が続くと、乾燥は見えないところで進みます。この記事は、その一手の話をします。

肉球を見るまでに、一手ある|アイリッシュウルフハウンドと暮らして最初につまずく経験

玄関で足を拭こうとして、前足を1本持ち上げる。犬と暮らしていれば毎日の動作です。ところがアイリッシュウルフハウンドでは、この動作の続きが違います。持ち上げた足を裏返しても、そこにあるのはまず毛です。足の甲から指の先、そして指と指のあいだまで、体と同じ硬い毛が続いています。肉球は、その下に隠れています。

指の腹で毛をなでても、肉球にはふれません。親指と人さし指を毛の中へ差し込んで、左右へ開く。そこではじめて、指球と大きな掌球が見えます。慣れると数秒の動作ですが、慣れるまでは「どこを見ればいいのか分からない」という感覚になります。小さな犬や短毛の犬では、持ち上げた瞬間にすべてが見えていたはずです。

この差は、毎日のケアの中でじわじわ効いてきます。見えているものは毎日見ますが、見えないものは、思い出した日にしか見ません。アイリッシュウルフハウンドの肉球は、意識して毛をどけない限り、何か月も見ないまま過ぎることがあります。乾燥が進んでから気づくのは、変化が速いからではなく、見るまでの手数が多いからです。

実際に、迎えてしばらくの飼い主が口をそろえるのは次のような経験です。足を拭く習慣はあった。散歩から帰るたびに布でぬぐっていた。それでも、ある日たまたま毛を分けて見たら、肉球のふちが白っぽくかさついていた。拭いていなかったのではなく、拭いていた場所が違っていた。ここが、この犬種の足先で最初に起きることです。

Note毛をどける一手は、ケアではなく観察です

毛を分けるのは、何かを塗るためでも、拭くためでもありません。今日の肉球がどうなっているかを見るためだけの動作です。ここを「面倒な前準備」と考えると省きたくなりますが、順番としてはこれが一手目です。見てから、拭くかどうか、うるおいを置くかどうかを決めます。逆にすると、何も分からないまま手だけが動きます。

指のあいだまで剛毛が届いている背景|アイリッシュウルフハウンドのワイヤーコートと足先

なぜ足先にまで硬い毛が生えているのか。ここはアイリッシュウルフハウンドという犬種の来歴から説明がつきます。アイルランドの湿った草地と森で、大型の獣を追った犬です。雨の多い土地で、草や低木のあいだを高い速度で走る。そのときに皮膚を守るのが、硬くて粗い被毛でした。目の上とあごの下の毛がとくに硬いのも、同じ理由からです。

この被毛は、体の上だけの話ではありません。走る犬にとって、いちばん先に草や枝に当たるのは足先です。だから脚から足の甲、指の先まで同じ質の毛が続いています。指と指のあいだにまで毛が生えているのは、地面と皮膚のあいだにもう一枚はさむための作りだと考えると、筋が通ります。アイリッシュウルフハウンドの足先は、被毛の端ではなく、被毛がいちばん働く場所です。

硬い毛には、もうひとつ性質があります。水を弾きますが、いちど毛の束の中へ入った水は、抜けるのが遅い。1本ずつは水をはじいても、束になった毛のあいだには細いすきまが並びます。そこへ入った水は、表面張力で留まります。雨の日に体をなでると表面は乾いているのに、指を沈めると内側だけが湿っている。あの感覚が、足先の指のあいだでも起きています。

地肌の側から見ると、条件はさらに変わります。指のあいだの皮膚は、体の皮膚とくらべて薄く、日ざしにも風にも当たりません。そこが濡れたまま、毛の下でゆっくり乾いていく。湿度の高い季節はこの時間が長くなり、暖房を入れた乾いた部屋では逆に短くなります。同じ足先で、季節ごとに反対のことが起きるので、一年を通して同じやり方では追いつきません。

アイリッシュウルフハウンドの足先で、季節によって変わること
時期指のあいだで起きること肉球の側で起きること
雨の多い時期毛の束が水を抱えたまま残るふやけたあと、乾くときに硬くなる
湿度の高い季節乾くまでの時間がいちばん長いふちが白く粉をふくことがある
暖房を入れた乾いた部屋毛は乾くが、地肌が先に乾く面の中央より、ふちから変わる
雪や凍った路面のあと毛に付いたものが溶けて残る冷えたあと、室内で急に温まる

こうして並べると、アイリッシュウルフハウンドの肉球が乾きやすいのは、肉球そのものの作りより、その上にある毛の条件によるところが大きいと分かります。毛が水を抱える、乾くまでが長い、そして毛があるから見えない。3つとも、被毛の話です。だから、肉球の話をしているつもりでも、実際に手を入れる相手は毛のほうになります。

布が毛に取られて、肉球には届かない|アイリッシュウルフハウンドの肉球が乾く理由

ここからが本題です。毎日足を拭いているのに肉球が乾く。この矛盾には、3つの理由が重なっています。どれも、毛が上にあることから来ています。順番に見ていきます。

1つ目。布が、毛の面で止まっています。足を持ち上げて布でぬぐうとき、手が感じているのは硬い毛の抵抗です。しっかりぬぐえたという手ごたえは、毛をぬぐった手ごたえであって、肉球をぬぐった手ごたえではありません。毛は硬くて弾力があるので、布を押しつけても内側へは沈みません。力を入れるほど、毛は倒れて面をつくり、その下へは布が入らなくなります。

2つ目。指のあいだの毛が、水を抱えたまま残ります。拭いた直後の足先は、外側だけが乾いています。指を開かないと、内側の毛には手が届きません。抱えられた水は、そのあと数十分から数時間かけて、ゆっくり抜けていきます。この「ゆっくり乾く」時間が、肉球のふちにとっては長すぎます。濡れて、ふやけて、そのあと乾いて硬くなる。この往復が1日に何度も起きると、ふちから順に変わります。

3つ目。変化に気づくのが遅れます。毛をどけないと肉球が見えないので、状態を見ているのは「見ようと決めた日」だけです。週に1回しか見ていなければ、次に見るのは7日後です。7日のあいだに何があったかは、記録に残りません。皮膚の変化はゆっくり進むので、7日ごとの写真では差が分かりません。気づく回数が少ないこと自体が、この犬種の肉球で起きている問題の一部です。

3つの理由と、どこに手を入れると変わるか
起きていること手を入れる場所
布が毛の面で止まる布を押しつける前に、毛を指で分ける
指のあいだの毛が水を抱える拭くより先に、指を1本ずつ開いて風を通す
変化に気づく回数が少ない見る日を決める。拭く日ではなく、見る日

ここで、洗う回数を増やす方向へ寄せないでください。洗いすぎは、この足先ではとくに割に合いません。アイリッシュウルフハウンドの足先は毛の量があるので、洗えば洗うほど、そのあとに「乾くまでの長い時間」が増えます。濡れている時間を減らしたいのに、濡れる回数を増やすことになります。皮膚のうるおいのもとになる皮脂も、洗うたびに減ります。足先だけを頻繁に洗う習慣がある方は、まず回数のほうを見直してください。

ブラッシングについても、足先は忘れられがちな場所です。体の被毛には毎日ブラシを入れていても、足の甲までコームを通す人は多くありません。足の甲の毛が寝て固まっていると、指を差し込むときに毛ごと引っぱることになります。週に一度、足の甲だけコームを通しておくと、毛が起きて、指が入りやすくなります。見るための下ごしらえだと考えてください。

毛をどけるところから始める|アイリッシュウルフハウンドの肉球に向き合う毎日の考え方

やることは増やしません。いま毎日やっている「足を拭く」の前に、「毛を分けて見る」を差し込むだけです。時間にして10秒ほど。それでも、見る回数が週に1回から毎日に変われば、気づくまでの日数はそのぶん縮みます。順番は次のようになります。

  1. 布を持つ前に、指で毛を分ける

    親指と人さし指を足の甲側から差し込み、指と指のあいだを1か所ずつ開きます。前足なら4か所です。いきなり肉球を見ようとせず、指のあいだから開いてください。ここがいちばん濡れが残る場所で、いちばん見えない場所です。硬い毛は指で押しても倒れるだけなので、開くように動かします。

  2. 開いたまま、湿っているかどうかだけを見る

    汚れを取るのは次の工程です。ここでは湿りの有無だけを確かめます。指の腹が濡れるなら、そこはまだ乾いていません。濡れている場所を先に見つけてから、布を当てる場所を決めます。乾いている場所は、その日は触らなくて構いません。

  3. 指のあいだに布の角を差し込んで、押さえて待つ

    こすらないでください。硬い毛の中でこすると、布は毛に取られて、皮膚には届きません。布の角を差し込んで、3〜4秒押さえたまま置く。水は布へ移ります。1か所ずつ、布の面を替えながら回します。前足2本で、慣れれば1分かかりません。

  4. 最後に肉球の面とふちを、指の腹で確かめる

    見るだけでなく、ふれてください。中央より先に変わるのはふちです。ざらつく、白っぽく粉をふいている、細かい線が入っている。気づいた日と、どの足のどの指かをメモしておくと、翌週に比べられます。写真より、指ざわりの記録のほうが差が出ます。

  5. 乾いたことを確かめてから、うるおいを置く

    濡れたままの上に何かを重ねると、乾くまでの時間がさらに延びます。順番は、開く・乾かす・置く。置くのは肉球の面とふちだけで、指のあいだの毛には広げません。量は米粒ほどで足ります。塗ったあと、その子が舐めてしまわないよう、少し歩かせてからにしてください。

5手目が続かなくなる理由は、たいてい塗ったあとにあります。この犬種の足先は毛の量があるので、べたつきの残るものを置くと、肉球のふちから指のあいだの毛へ移り、そこへ砂や土が付きます。翌日また指を差し込もうとすると、毛が固まっていて開きません。開く手数が増えれば、見る日はまた週に1回へ戻ります。

この足で選ぶ基準は、毛の中へはみ出さずに置けるかどうかです。mofuwa 肉球クリームは4種のヒアルロン酸を分子の大きさで組み分けているので、少ない量のまま、表面に残す側と角質層へ届く側の両方に配れます。量を増やさずに済むということは、指のあいだの毛へ回る量も増えないということです。11成分を使わない処方になっています。置くのは肉球の面とふちだけで、指のあいだの毛には広げません。前足2本なら、米粒ほどを指の腹で温めてから伸ばすと足ります。

伏せさせたまま塗って、立ち上がるまでの数十秒を待ってください。この待ち時間があるかどうかで、フローリングへ踏み出す一歩目が変わります。アイリッシュウルフハウンドは体重が大きいぶん、足の裏に残ったものが床へ移る量も増えます。開く、乾かす、置く、待つ。この4つが一続きになっていれば、量の加減で迷わなくなります。

年齢や乾燥などで硬くなってしまった肉球はひび割れしやすくなり、そこに感染や炎症が起こると痛みを伴うこともあります。肉球は普通の皮膚に比べると治療が難しく時間もかかるため、そうならないためにも日常のケアが大切になります。mofuwa肉球クリームは、配合されている4種のヒアルロン酸の効果で高い保湿力と保護効果が期待できるだけでなく、ベタつかず舐めても安心なのでおすすめできる商品です。

近藤 竜太 先生/白金高輪動物病院 院長・獣医師(麻布大学卒/比較眼科学会所属)
東京都港区白金1-2-2 白金ザ・スカイ西棟1階
※実際にお使いいただいている獣医師のご感想です。本記事の監修を受けたものではありません。

毎日4本すべてを、と考えると続きません。前足2本を毎日、後ろ足2本は週に2〜3回。この配り方で足ります。アイリッシュウルフハウンドは体が大きいので、足を持ち上げる姿勢は飼い主のほうが先に疲れます。立たせたまま持ち上げるのではなく、その子を伏せさせて、こちらが横に座るほうが、両手が使えて速く終わります。

Point湿度が高い時期は、拭くより「開ける」ほうが効きます

梅雨どきのように空気そのものが湿っている時期は、布で拭いても、そのあと乾くまでの時間が延びます。そういう日は、拭く回数を増やすより、指のあいだを開いたまま数十秒待つほうが変わります。風の通る場所へ足を置く、扇風機の風が当たる床で伏せさせる。地肌に空気が当たる時間をつくるのが目的です。ドライヤーの熱を近づける必要はありません。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

肉球が割れている、出血している、いつもより熱を持っている、指のあいだが赤い、においがある、その足だけをかばって歩く、同じ足を舐め続けている、毛を分けようとすると痛がる。いずれかに当てはまるときは、家でうるおいを足す前に動物病院にご相談ください。アイリッシュウルフハウンドの足先は毛におおわれているぶん、外から見えている情報がもともと少ない場所です。次に毛を分けて見る日まで置かず、気づいたその日のうちに電話で聞いてください。

相談するときは、どの足のどの指か、いつから気づいたか、その日に歩いた路面と天気の3つを伝えてください。この3つがあると、毛の下で何が起きていたかを組み立ててもらえます。前の晩に念入りに拭いたり、クリームを重ねたりしないでください。もとの状態が分からなくなります。

アイリッシュウルフハウンドの足先から、毛がなくなることはありません。湿った土地を高い速度で走るためにそなえた作りだからです。変えられるのは毛の量ではなく、その毛を分けて中を見るまでの日数のほうです。布を持つ前に指を差し込む。開いてから、湿っている場所だけを乾かす。乾いたことを確かめてから、うるおいを置く。アイリッシュウルフハウンドの肉球で手が入るのは、この順番のところです。

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