C05犬種・猫種別ケア
スコティッシュディアハウンドのケア|毛のもつれを減らす3つの習慣
スコティッシュディアハウンドの背中に手のひらを当てて、毛の流れと直角に滑らせると、10センチほど進んだところで一度だけ、指先が小さく引っかかります。そのまま進めると、また何もない面が続き、20センチ先でもう一度、別の場所で引っかかる。この犬種のもつれは、広い面としてではなく、離れた点として現れます。大きな塊を探して指を入れても、たいてい何も見つかりません。かわりに、米粒ほどの硬い結び目が、体のあちこちに散っています。なぜそうなるのかを先に押さえると、手順のほうは自然に決まります。この記事は、その順で書きます。
1本ずつ長さも向きも違う|スコティッシュディアハウンドのもつれが点で散らばる理由
スコティッシュディアハウンドの被毛は、硬くて、ごわついていて、指で押すと弾力が返ってきます。長さは体の場所によって変わりますが、同じ場所の中でも、1本ずつ長さが違います。7センチの毛の隣に5センチの毛があり、その隣に9センチの毛がある。生えている向きもそろっていません。手のひらでなでると、毛が一方向に寝るのではなく、途中で立ち上がる毛が混じります。
この不揃いは、この犬種がスコットランドの高地でシカを追っていたことから説明がつきます。風と雨が真横から来る場所では、毛がきれいにそろっていると、雨が一筋の道をつくって地肌まで届きます。長さと向きがばらばらであれば、当たった水は散って、皮膚まで一本道でたどり着けません。もつれやすさと引きかえに、地肌を濡らしにくい被毛になっている、という作りです。
ここから、もつれの起き方が決まります。長さのそろった絹のような毛は、隣どうしが並んで寝るので、組み合いも隣から隣へ連鎖して、広い面として進みます。いっぽうスコティッシュディアハウンドの毛は、隣どうしの長さが違うので、毛先の位置がそろいません。組み合うのは、たまたま長さと向きの近い2〜3本だけです。連鎖が隣へ広がらず、そこで止まります。
止まったところが、点になります。直径にして数ミリから1センチほど、指でつまむと硬く、押すとほとんどつぶれない結び目です。面のもつれと違って、まわりの毛はふつうに通ります。だから、コームを一方向にざっと通しただけでは、道具が点を避けて通り抜けてしまいます。とかしたのにもつれが残っている、という感覚は、ここから生まれます。
| 面から始まるもつれ | 点で散らばるもつれ | |
|---|---|---|
| 起きる毛 | 長さと向きのそろった毛 | 1本ずつ長さも向きも違う毛 |
| 広がり方 | 隣から隣へ連鎖して広がる | 組んだ数本で止まる |
| 大きさ | 手のひらほどの範囲になる | 数ミリから1センチほど |
| 見つけ方 | 目で見て、範囲が分かる | 手のひらを滑らせて、引っかかりを探す |
| 道具の当て方 | 外側から範囲を削っていく | 1点ずつ、根元を押さえて潰す |
| やってしまいがちなこと | 中心から入って広げる | 一方向にとかして、点を素通りする |
もうひとつ、点が見つけにくい事情があります。スコティッシュディアハウンドの毛はもともとごわついているので、手ざわりの差が小さいのです。絹のような毛の犬なら、もつれた場所だけ手が止まるので、すぐ分かります。この犬種では、全体がざらついている中に、少しだけ硬い点が混じっている状態です。目で探すのはさらに難しく、色も体色と変わりません。探す手段は、手のひらを滑らせることのほかにありません。
隣の毛と長さが違うので、点はそのままでは横へ広がりません。ただし、同じ点が長く残ると、そこへ次の毛が引き込まれて、少しずつ太くなります。面になるのは、点が増えて、隣どうしの距離が縮まったあとです。つまり、点のうちに潰していれば、面になる段階は来ません。急いで全身を回すより、見つけた点を1つ確実に潰すほうが、この犬種では先に効きます。
点を見つけてから触る|スコティッシュディアハウンドのもつれに家でできる5つの手順
点で散らばると分かれば、手順は決まります。探す・押さえる・根元を固定する・毛先から抜く・次へ移る。この5つです。家でできる範囲はここまでで、それ以上は道具を替えても増えません。1点あたり30秒から1分を目安にしてください。
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手のひらを、毛の流れと直角に滑らせて点を探す
コームではなく手のひらで探します。道具は点を素通りしますが、手のひらは引っかかりを拾います。首から肩、背中、腰、脇、後ろ脚のつけ根の順に、上から下へ。指を立てず、手のひら全体を面で当ててください。引っかかったところが、その日に手を入れる場所です。
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見つけた点を、そのまま指で押さえておく
いちど手を離すと、同じ点をもう一度探すのに時間がかかります。体色と同じ色で、大きさも数ミリですから、目印になるものがありません。見つけた瞬間に、人さし指を置いたまま、もう片方の手で道具を取ってください。この一手だけで、作業時間が半分になります。
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点の根元側を、指2本で挟んで固定する
点そのものではなく、点と皮膚のあいだを挟みます。ここを押さえておけば、毛先を引いても皮膚が引っぱられません。スコティッシュディアハウンドの毛は硬いので、固定せずに引くと、力がそのまま地肌へ伝わります。嫌がって動かれると、その日はもう触らせてもらえません。
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毛先の側から、1〜2本ずつ抜いていく
コームの端の歯を1〜2本だけ使い、点の毛先側の縁から、外へ向かってすくいます。中心へ入れないでください。点は数本の毛が組んでいるだけなので、外側から1本ずつ外していけば、途中で急にほどけます。最後まで硬いままなら、それは組んだのではなく、何かが芯に入っています。無理に引かず、次の手順へ進んでください。
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ほどけても、ほどけなくても、次の点へ移る
同じ点を何分も触らないのがコツです。皮膚も毛も、こすられた分だけ弱ります。ほどけなかった点は、位置だけ覚えて翌日に回します。1日に潰す点は3つまで、と決めておくほうが続きます。全部を1日で終わらせようとすると、その子が動かなくなり、翌日から嫌がるようになります。
手順4で最後まで硬いままだった点には、翌日に回すほかに、ゆるめてから触るという道があります。mofuwa 毛玉予防ジェルを、その点にだけ直接なじませてください。塗るのはその一点だけで、ほぐしたい点がしっとり濡れる程度が目安になります。そのうえでコームの端の歯を毛先側から当てると、組んでいた数本のあいだに滑りが入っているので、外側から順に外れていきます。ゆるんでこないときは、グルーミングスプレーを少し足してもみこむと、よりほぐれやすくなります。
この道を先に用意しておく理由は、はさみです。硬い点を前にすると、家での選択肢が「切る」しかなくなります。スコティッシュディアハウンドの点は皮膚のすぐ上まで締まっていることがあり、根元で切ると皮膚まで切ってしまうことがあります。切ったあとは、そこだけ毛の長さが変わり、次の点の芯になりやすい短い毛先が残ります。ゆるめてほどけるなら、はさみを持たずに終わります。
乾ききった硬い毛は、曲げると折れます。折れた毛先は、次の点の芯になります。散歩から帰った直後や、空気が湿っている日は、同じ点でもほどけ方が違います。逆に、暖房を入れた乾いた部屋で長時間過ごしたあとは、静電気で毛が立ち、道具が入りにくくなります。触る時間帯を選べるなら、乾ききっていないタイミングを選んでください。
毎日・週に一度・季節ごと|スコティッシュディアハウンドのもつれを減らす3つの習慣
手順が分かったら、次はいつやるかです。3つ挙げますが、どれも毎日の作業にはしていません。決める単位を、1日・1週間・1年でずらしてあります。忙しい週でも、3つが同時に止まらないようにするためです。
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習慣1|毎日30秒、探すだけ。ほどかない
帰宅後でも寝る前でも構いません。手のひらを、首から腰まで2〜3往復させるだけです。この30秒では、点を潰しません。あるかないかを確かめるだけです。ほどく作業まで毎日に入れると、時間が読めなくなって続きません。点が1つも見つからない日は、そこで終わりです。見つかった日だけ、道具を取りに行きます。
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習慣2|週に一度、区画を決めて根元まで通す
全身を1日で回さず、週ごとに区画を替えます。今週は首と肩、来週は背中と腰、その次は脇と後ろ脚のつけ根。1区画なら10分ほどで終わります。ここではコームを根元まで入れて、毛先だけをなでる日常のブラッシングとは深さを変えてください。点になる前の、ゆるく組みかけた毛は、この深さでしか外れません。
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習慣3|季節の変わり目に、静電気の条件を見直す
1年に2回でいい作業です。換毛期にあたる時期と、暖房を使いはじめる時期。この2つの時期に、その子が長く触れているものを見直します。寝床の敷物、車のシートカバー、抱いたときの服。乾いた季節に静電気が起きると、不揃いな毛どうしが引き合って、点のできる場所が増えます。素材を替えるのは年に2回で足ります。
| 何をするか | 決める単位 | |
|---|---|---|
| 習慣1 | 手のひらで点を探す。ほどかない | 毎日30秒 |
| 習慣2 | 区画を1つ決めて、根元まで通す | 週に一度・10分 |
| 習慣3 | 触れているものの素材を見直す | 1年に2回・季節の変わり目 |
頻度についてよく聞かれるのが、毎日全身をブラッシングしたほうがいいかどうかです。この犬種では、頻度を上げても点の数はあまり変わりません。点は毛の不揃いから生まれるので、とかす回数を増やしても、不揃いそのものは変わらないからです。効くのは頻度ではなく、見つけてから潰すまでの日数のほうです。毎日30秒の探索を入れると、この日数が最短で1日になります。
習慣3で素材を見直しても、乾いた季節そのものは動かせません。そこで乾いた時期だけ、平時から mofuwa 毛玉予防ジェルを塗っておくやり方があります。5プッシュほどを手のひらに広げ、首から腰まで毛の流れに沿ってなじませ、そのあとコームを通す。2〜3日に1回で足ります。被毛をまとめて、静電気が起きにくい条件をつくることを目的にしたジェルです。乾いた部屋で毛が立ちにくくなれば、長さの違う毛どうしが引き合う回数も減ります。ただし、すでに硬く締まった点の上に置いて放置するのは逆です。根元にたまると、かえって指が入りにくくなります。点にはもみこんでゆるめる、平時には全体へ薄く。毛玉予防ジェルは、この2つを1本で受け持っています。
スコティッシュディアハウンドの毛は硬く、根元も強いので、引けば抜けるより先に、皮膚のほうが持ち上がります。点が動かないときは、組んでいるのではなく、芯に何か入っていることがあります。草の種、樹脂、乾いた泥。どれも引いて取れるものではありません。硬いから強く引くという順番にしないでください。取れないものは、その日はそこで止めて、トリマーか動物病院に見てもらうほうが早く終わります。
点どうしの距離が縮まったときは、スコティッシュディアハウンドの毛の不揃いでは説明がつきません
ここまでは、1本ずつ長さと向きが違うという被毛の条件で説明がつく話でした。次のような変わり方は、毛の不揃いの話として片づけないほうが安全です。手順を増やす前に、いったん立ち止まってください。
- 点どうしの距離が縮まって、面になってきた:点のうちに潰していれば、ふつうは面になりません
- いつも同じ一か所だけに戻る:首輪、ハーネス、寝床の縁。毎日そこを押さえているものを探してください
- 左右で点の数が違う:寝る向きや、体を寄せている面が関係していることがあります
- その場所を舐める、かく、床にこすりつける:もつれより先に、皮膚のほうを見てください
- 点をほどいたあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、その場で道具を置いてください
毎日30秒の探索を続けていると、「先週はこの辺に何もなかった」という記憶が積み上がります。これが、この犬種でいちばん役に立つ記録です。点の数を数える必要はありません。手のひらが引っかかる回数が、先週より増えたか減ったか。その感覚だけで、変化の向きは分かります。増えている週が2週続いたら、寝床と服の素材を先に見てください。
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所を舐め続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、点の下の皮膚が盛り上がっている、元気や食欲が落ちている。この並びのどれかが出たら、ブラッシングの回数を増やすより先に、獣医師に見てもらってください。硬い被毛の下は外から見えないので、変化が進んでから気づくことがあります。点がほどけないという用件と、皮膚を見てほしいという用件は、分けて持っていくほうが早く終わります。
相談やトリミングに行く前には、点がある場所、いつから気づいたか、その日にどこまで触ったかの3つをメモしてください。ほどけなかった点は、そのまま連れて行ってください。前の晩に頑張って引っぱると、地肌が赤くなって、もとの状態が分からなくなります。芯に何か入っているかどうかも、触られていない点のほうが判断しやすくなります。
スコティッシュディアハウンドの毛が不揃いであること自体は、変えられません。高地の風雨の中でシカを追うためにそなえた作りだからです。減らせるのは、点ができる数ではなく、できた点がそこに残っている日数のほうです。毎日30秒だけ手のひらを滑らせ、見つけた点を1つずつ潰し、季節の変わり目に触れているものを見直す。スコティッシュディアハウンドのもつれで手が入るのは、そこです。
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よくある質問
- スコティッシュディアハウンドに、スリッカーブラシは使えますか?
- 使えますが、点を潰す道具としては向きません。面をとかすための道具なので、離れた点の上を素通りします。点には、コームの端の歯を1〜2本だけ使うほうが確実です。スリッカーブラシは、週に一度、区画を決めて根元まで通すときに、コームの前段として使ってください。
- 点がほどけないとき、はさみで切ってしまってもいいですか?
- 家でははさみを入れないでください。この犬種の毛は硬く、点は皮膚のすぐ近くまで締まっていることがあります。持ち上げているつもりでも、下に皮膚が付いてくることがあります。ほどけない点は位置を覚えて、翌日にもう一度だけ試し、それでも動かないならトリマーに相談してください。
- 換毛期になると、点が急に増えるのはなぜですか?
- 抜けかけた毛は根元の固定がゆるむので、隣の毛と向きが合いやすくなります。もともと長さも向きも不揃いな毛なので、そこへ動きやすい毛が加わると、組む機会が増えます。この時期だけは、毎日の探索を30秒から1分に延ばして、区画を回す間隔を週1回から週2回に上げてください。時期が終わったら、もとに戻して構いません。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
