C09シーン別・暮らし
賃貸で暮らすを楽にする、大型犬と暮らす人の毎日の習慣
入居して2年目の冬に、その子が一度も入っていない部屋が3つあることに気づきました。廊下の幅は78センチ、洗面所とトイレの扉はどちらも内側に開きます。体高65センチ、体重32キロのその子は、廊下の途中で向きを変えられません。行き止まりまで進むと、後ろ向きに戻るしかない。何度かそれをやって、そのあとは自分から行かなくなりました。賃貸で大型犬と暮らしていると、間取りのほうが先に、その子の行ける場所を決めてしまいます。そして私は、その子が一度も触れていない床を、毎週末に2時間かけて拭いていました。ペットのにおいの手当てを家じゅうに配っていたのは、面積の割り振りを間違えていたからです。この記事は、狭さを不利ではなく「範囲が決まっている」と読み替えた1年の話です。
その子が入れない部屋が、家に3つありました|賃貸で大型犬とペットのにおいを数えた背景
間取りは2LDKです。居間と、寝室と、もう1部屋。廊下でつながっていて、途中に洗面所と浴室の入口があります。図面で見れば、床は全部つながっています。ところが、その子が実際に足を置いている面は、家の一部でしかありませんでした。入っていない部屋が3つ。入るけれど数秒で出てくる場所が2か所。長くいるのは、居間の窓ぎわと、寝室の入口側の1畳ぶんだけです。
理由は行儀ではありません。寸法です。廊下の幅は78センチで、その子の体長のほうが長い。つまり、廊下の途中で向きを変えられません。洗面所の扉は内開きなので、入ってから閉めると、その子の立つ場所がなくなります。浴室の入口には段差があり、そこで一度止まります。賃貸では、廊下の幅も、扉がどちらに開くかも、こちらでは変えられません。入居のときにもう決まっています。
最初の1年は、そこを不利だと思っていました。家具を寄せて廊下を広げようとしたり、扉を開けたままにしたり、寝室の奥へ通り道を作ろうとしたり。どれも数センチしか変わりませんでした。大型犬に必要な余白は数センチではなく数十センチなので、家具をどれだけ動かしても届きません。そして、その努力とは別に、掃除のほうは毎週末に家じゅうをやっていました。賃貸でペットのにおいが気になっていたので、床は全部同じようにこすっていたのです。
- 入らない部屋:洗面所。扉が内開きで、入ると立つ場所が残りません
- 入らない部屋:浴室の手前。段差の幅がその子の足の置き場より狭い
- 入らない部屋:もう1部屋。入口から先が家具でふさがれていて、回れません
- 数秒で出る場所:廊下。向きを変えられないので、通過するだけです
- 数秒で出る場所:玄関の内側。帰宅後に立ち止まる数十秒だけ
- 長くいる場所:居間の窓ぎわと、寝室の入口側。ここで一日の大半を過ごします
ここまで書き出してから、床の面積を測りました。2LDKの床がおよそ40平方メートル。そのうち、その子が伏せる場所と、食器のまわりと、玄関から居間までの通り道を足すと、およそ6平方メートルでした。家の床の15%です。残りの85%には、その子の体は一度も触れていません。それでも私は、85%のほうにも同じだけ時間をかけていました。賃貸でペットのにおいに向き合うとき、面積の配り方をどこにも書いていなかったからです。
行ける部屋が少ないと分かると、その子に我慢をさせている気持ちになります。ただ、これはその子の体格の問題でも、しつけの問題でもありません。廊下の幅と扉の向きという、入居のときに決まっていた条件の話です。大型犬と賃貸で暮らすなら、多かれ少なかれ全員が同じ条件に当たります。変えられないものを変えようとする時間を、変えられるほうへ移す。この記事でやっているのはそれだけです。
体が大きいほど行ける部屋は少なくなる|大型犬の生活が2部屋に収まり、ペットのにおいの範囲も決まる理由
なぜこうなるのかを、寸法の側から書きます。犬が向きを変えるには、体長ぶんの直径が要ります。体長が80センチなら、80センチ角の余白がないと回れません。賃貸の廊下は、多くが75〜85センチです。小型の子なら廊下の中でくるりと回れますが、大型犬にはその余白がありません。だから廊下は「通路」にはなっても「居場所」にはならない。同じことが、洗面所でも、家具の並んだ部屋でも起きます。
扉の向きも同じだけ関わってきます。内開きの扉は、開けた分だけ部屋の中の床を食います。1畳ほどの洗面所で内開きの扉を開けると、残る床は半畳ほどです。大型犬はそこに入って向きを変えられないので、入口で止まります。賃貸では扉の向きを付け替えられないので、この条件は住んでいるあいだ続きます。結果として、その子の生活は、扉が広く開く部屋か、扉のない続き間へ収れんしていきます。うちの場合は、居間と寝室の2部屋でした。
| 家の条件 | 小型の子の場合 | 大型犬の場合 |
|---|---|---|
| 幅78センチの廊下 | 途中で回れる。居場所になる | 通過だけ。立ち止まると戻れない |
| 内開きの扉の部屋 | 扉の陰に入れる | 開けた扉の分だけ床が消える |
| 家具のあいだ40センチ | 通れる | 肩が当たって入らない |
| 段差のある浴室の入口 | またげる | 前足だけ乗せて止まる |
| 続き間のある居間 | どこでも寝る | ここに落ち着く |
| 寝室の入口側1畳 | 使わないことが多い | 人の近くで、回れる広さがある |
居場所が2部屋に決まると、体から出るものの行き先も2部屋に決まります。大型犬は接している面積が広く、伏せたときに床へ当たる面は小型の子の数倍です。そのぶん、皮脂や、そこに混ざる雑菌や、抜けた毛が乗る面も広くなります。ただし、広いのは1回あたりの面積であって、場所そのものは動きません。同じ窓ぎわ、同じ寝室の入口側。毎日ほぼ同じ座標です。賃貸でペットのにおいが強く出るのは、この繰り返しが積み上がるからです。
食器のまわりも同じです。体が大きいと、飲む量も、こぼす量も多くなります。水がはねる範囲は、器の半径ではなく、その子の口の高さで決まります。高い位置から落ちるぶん、床の濡れる範囲が広い。そこが毎日濡れて、毎日乾く。においが立ちやすい条件がそろっているのは、家じゅうではなく、この半径50センチのところです。寝床と、伏せる場所と、食器のまわり。行ける部屋が2つしかないということは、この3つも2部屋の中にあるということです。
この15%という数字が、あとで効いてきます。大型犬と賃貸で暮らすと、家じゅうを均一に手入れするのは体力的にも時間的にも続きません。その子を持ち上げて場所を空けることもできませんし、洗うにも浴室の入口で止まります。手が届く範囲が限られているのは、間取りだけでなく、こちらの側もそうです。だとすれば、限られた手を、体が触れていない85%へ配るのはもったいない。ここが読み替えの入口でした。
範囲が決まっているほうが、手は短くて済む|賃貸で大型犬とペットのにおいを扱う考え方
考え方を1行で書くと、こうなります。行ける部屋が少ないことは、手を入れる面が最初から決まっているということです。家じゅうを自由に動く子と暮らしていると、においの出どころは家のどこにでもあり得ます。うちの場合、候補は最初から2部屋の中の3か所しかありません。候補が3つしかないなら、毎日そこだけを見ればいい。賃貸の狭さは、この意味では不利ではなく、範囲を確定させてくれる条件です。
毎日やる3か所は、次のように決めました。居間の伏せ場所(1畳ぶん)、食器と水の器のまわり(半径50センチ)、玄関から居間までの通り道(幅78センチ×2メートル)。この3つで、その子の体が触れる面のほとんどを占めます。順番は、帰宅後の動きに合わせます。玄関で足の裏、廊下、伏せ場所、最後に食器のまわり。その子が通った順にやると、あとから運ばれてくるものがありません。
-
帰宅後、玄関でその子を立たせたまま足の裏を拭く
大型犬は抱き上げられないので、片足ずつ持ち上げます。座らせずに立たせたままのほうが、体重が3本の足に乗って安定します。ここで止めれば、外から持ち帰ったものが廊下から先へ運ばれません。所要は1分ほど。賃貸では玄関が狭いので、その子が入ってすぐ座り込まないうちに終わらせるのがコツです。
-
廊下は、幅78センチ×2メートルだけを拭く
廊下はその子にとって通路なので、体が触れるのは床だけです。壁までは要りません。週に2回、この帯だけを拭き取ります。ここは通過しかしない場所なので、汚れの積もり方も遅く、毎日やる必要がありませんでした。
-
伏せ場所の1畳ぶんは、毎日
いちばん長く体が触れている面です。皮脂と、そこに混ざる雑菌と、抜けた毛が乗ります。敷いているものは、洗濯機に入る大きさのものを2枚用意して、週に1回入れ替えます。大型犬用の大きな1枚にすると洗えなくなるので、小さめを2枚並べるほうが回ります。
-
食器と水の器のまわりは、半径50センチを毎日
床が濡れて乾くのを繰り返している場所です。器そのものは毎日洗って、水は毎日入れ替えます。床のほうは、乾いてからではなく濡れているうちに拭くほうが早く終わります。乾いたあとに残るのが、においの出どころになります。
-
換気は、その子がいる2部屋の窓だけ
賃貸は窓が少なく、対角に風を通せないことがあります。ただ、通したい部屋は2つしかありません。浴室かトイレの換気扇を回した状態で、居間と寝室の窓を15分。入らない3つの部屋は、扉を閉めたままでかまいません。空気を動かす対象も、その子の行動範囲に合わせて絞れます。
| 場所 | 頻度 | 1回にかかる時間 |
|---|---|---|
| 居間の伏せ場所(1畳) | 毎日 | 2分 |
| 食器と水の器のまわり | 毎日 | 1分 |
| 玄関のたたきと足の裏 | 帰宅後に毎回 | 1分 |
| 廊下の帯(78cm×2m) | 週に2回 | 2分 |
| 伏せ場所に敷いた布 | 週に1回、2枚を入れ替え | 洗濯機に入れるだけ |
| 入らない3部屋と、体が触れない床 | 月に1回 | 30分 |
体の側も、範囲を決めます。腹と、脇と、後ろ足のつけ根は、伏せているあいだずっと床に接している面です。接している時間がいちばん長い面が、その子が自分では口も前足も届かない面でもあります。体が大きいほど、そこは人が代わるしかありません。ただ、賃貸の浴室でそれをやろうとすると、入口の段差と、泡立ててかき分けて流すまでの時間で行き詰まります。mofuwa 入浴シャンプーは、お湯に溶かして、湯そのものを洗浄液にするタイプです。被毛をかき分けて泡を届かせる工程がないので、擦らずに地肌まで届き、すすぎも軽く済みます。うちでは、浴槽に膝下ほどの湯を張って溶かし、その子を立たせたまま入れます。段差をまたぐのは行きと帰りの1往復だけで、浴室にいるのは10分ほどです。散歩から帰った日は、玄関のたたきに桶を出して、そこへ同じものを溶かし、足先だけを浸ける形にしています。廊下から先へ持ち込まないという点では足の裏を拭くのと目的が同じで、こちらは指のあいだまで湯が入ります。所要は3分ほど、その子を立たせたままできます。
体重が30キロを超えると、掃除のためにその子をよそへ連れて行くだけで一仕事になります。だから、手を入れる場所は「その子が伏せたままでも届くか」で選びました。伏せ場所の布は端から引き出せるものにして、食器は動かさずに床だけ拭ける位置に置きます。賃貸では家具の配置が限られますが、その子の周りの数十センチだけは、こちらの都合で決められます。範囲が狭いぶん、決めきることができました。
2部屋を毎日、残りは月に1度|大型犬と賃貸で1年かけて出たペットのにおいの変化
この形にして1年が過ぎました。いちばん大きく変わったのは、かけている時間です。毎週末に2時間かけていたものが、毎日5分と、月に1回の30分になりました。合計で見ると月に約4時間から約3時間へ、それほど減っていません。ただ、2時間まとめて取る必要がなくなったので、実際にやれた回数は増えました。賃貸でペットのにおいに手が回らなくなるのは、総量よりも、まとまった時間が取れないことのほうです。
| 以前 | 1年後 | |
|---|---|---|
| 手を入れる床の範囲 | 家じゅう40平方メートル | 毎日は6平方メートル |
| まとめてやる日 | 毎週末に2時間 | 月に1回30分 |
| 1日あたりの手当て | なし | 5分(3か所) |
| 洗う回数 | 月1回、半日がかり | 季節ごと。ふだんは水を使わない日のケア |
| 体に触る回数 | 洗う日だけ | 毎日3分、立たせたまま |
| 入らない部屋への手当て | 毎週やっていた | 月1回にまとめた |
におい方も変わりました。以前は、夕方に居間へ入ると強く感じる日と、そうでない日の差が大きく、理由が分かりませんでした。いまは、強い日はほぼ食器まわりの床を拭き忘れた翌日です。候補が3つしかないので、逆算できるようになりました。これは掃除がうまくなったからではなく、対象を3つに絞ったからです。40平方メートルを均一に見ていたころは、どこが原因かを言い当てる方法がありませんでした。
その子の側にも変化がありました。行ける部屋を増やそうとするのをやめて、居間の窓ぎわと寝室の入口側の2か所を、回れる広さで確保し直しました。家具を寄せて通路を作るより、いる場所を広く取るほうが、その子にとっては使える空間が増えます。賃貸の総面積は変わっていません。配り方を変えただけです。廊下で立ち止まって戻れなくなることも、この1年はありませんでした。
食器の位置も、途中で1度だけ動かしました。以前は台所の入口に置いていましたが、そこは通り道と重なっていて、水がはねた床を毎日誰かが踏んでいました。居間の壁ぎわへ移して、床がすぐ乾く場所にしたところ、拭き取りが1日1回で足りるようになりました。大型犬は器の位置を自分では選べません。選べるのはこちらなので、動かせるものは動かします。動かせない廊下の幅や扉の向きに時間を使うより、成果が早く出ました。
範囲を決めて手を入れていると、説明のつかない変化のほうが目立つようになります。拭いた翌日にはもう同じ強さに戻る、特定の1か所だけが急に強くなった、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、水を飲む量が明らかに増えた、後ろ足のつけ根に触ると嫌がる。こうした変化が重なっているときは、拭き取りの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。大型犬は体重があるぶん、動きの変化が床の上での姿勢に先に出ます。伏せ場所を替えた日付や、いつから続いているかを控えて持っていくと、その場で切り分けてもらえます。迷ったときは早いほうを選んでください。
最後に、この1年でいちばん変わった見方を書いておきます。入れない部屋が3つあることは、手を入れなくていい部屋が3つあるということでした。広い家に住んでいれば、その子はもっと自由に動けたかもしれません。同時に、においの出どころも家じゅうに散らばって、毎日どこを見ればいいのか分からなくなっていたはずです。賃貸で大型犬と暮らす条件は、間取りの側から範囲を確定させてくれます。狭さを不利として数えるのをやめて、決まっている範囲として数え直すと、毎日の手当ては5分に収まりました。
同じことは、間取りが違っても組み直せます。まず、その子が一度も入っていない部屋を数える。次に、長くいる場所を2つか3つに絞る。最後に、そこと食器のまわりと通り道だけを毎日の対象にする。賃貸でペットのにおいをどうにかしたいと思ったとき、最初にやることは掃除ではなく、この数え上げでした。大型犬と暮らしていると、家の中で使える面が最初から少ないぶん、数え上げも短時間で終わります。
Product
mofuwa 入浴シャンプー
400ml / 3,410円(税込)
浸かるだけで洗える入浴タイプ。「泡立て・ごしごし・すすぎ」の3手間を省けるので、高齢のペット・大型犬・多頭飼いのご家庭に向いています。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
