C09シーン別・暮らし

防災と避難、多頭飼いの人はどうしている?

公開日 2026年3月21日|文=mofuwa編集部

明るく片づいた部屋で、並んで落ち着いてすわっている淡い色の猫が2匹
そろえられるのはキャリーの数までで、一度に運べる数はそこから増えません。写真:DALONG JIANG/Pexels

防災の支度として、3頭ぶんのキャリーを玄関に並べるところまでは10分で終わりました。そこから先が動きませんでした。両手で持てるのは2つで、3つ目が残ります。車まで往復すれば戻ってこられますが、そのあいだ、残った1頭はどこで待っているのか。多頭飼いの家でペットの防災を考えるとき、話はたいてい持ち物の数から始まります。中身をそろえ、キャリーを頭数ぶん用意して、そこで終わりにしてしまう。けれど多頭飼いで先に足りなくなるのは、ものの数ではなく、一度に運べる数のほうです。この記事では、ペットの防災を運ぶ順番の側から組み立てる手順を、帰宅後の室内でできる5つに分けて書きます。

キャリーが3つあっても、1往復で出せるのは2つ|多頭飼いのペット防災が順番の話になる前提

玄関にキャリーを並べたあと、しばらく動けませんでした。両手で持てるのは2つです。3つ目は、いったん車まで運んでから戻ってくることになります。玄関から駐車場まで、うちは片道40秒ほどでした。往復で1分半。その1分半のあいだ、3頭目は玄関に置かれたキャリーの中で待つことになります。多頭飼いの家でペットの防災がむずかしいのは、この「待つ時間が必ず生まれる」ところです。

多頭飼いの制約は、ふだんの手入れでは「1頭あたりの時間が頭数で割られる」という形で出てきます。ブラッシングの時間も、爪を切る時間も、頭数で割られて短くなる。ところが運び出す場面では、時間は割られるのではなく、縦に並びます。2往復すれば2倍、3往復すれば3倍です。多頭飼いのペットの防災で数えるべき数字は、頭数そのものではなく、往復の回数のほうになります。

そして、この場面で自由に増やせるものは1つしかありません。キャリーの数は買えば増えます。けれど手の数は増えませんし、車に積める容量も決まっています。キャリーだけをそろえると、増やせるものだけが増えて、増やせないもののほうが手つかずのまま残ります。多頭飼いの家で防災の準備が「終わった気がしない」のは、たいていこの状態です。

頭数と運ぶ人数で、1往復に出せる数がどう変わるか(キャリーの大きさによっても変わります)
頭数運ぶ人1往復で出せる数必要な往復
2頭1人2つ(両手)1往復
3頭1人2つ2往復
3頭2人3つ1往復
4頭1人2つ2往復
4頭2人3〜4つ1〜2往復
5頭以上1人2つ3往復以上

表の右端が、多頭飼いの家でいちばん見落とされる列です。往復が2回になった時点で、最後に運ばれる子の待ち時間が、片道の2倍以上になります。ここを縮める方法はほとんどありません。縮められないのなら、先に決めておけるのは順番だけです。ペットの防災を多頭飼いの側から組み直すというのは、そういう意味です。

Noteここで書くのは、家の中で先に決めておけることだけです

避難するかどうか、いつ動くか、どこへ向かうかは、住んでいる地域から出ている案内に従ってください。この記事で扱うのは、その判断のあとに家の中で起きることだけです。多頭飼いの家では、動くと決めてから玄関を出るまでのあいだに、頭数ぶんの手順が並びます。そこは家でできる備えの範囲なので、平日の帰宅後にでも決めておけます。

入る速さで順位をつける|多頭飼いのペットの防災を毎日の帰宅後に組み立てる5つの手順

ここからが手順です。5つありますが、1日にやるのは1つだけで足ります。どれも特別な道具はいりませんし、毎日の帰宅後、室内で10分あれば終わります。多頭飼いの家では準備そのものが頭数ぶんに増えるので、1日に複数をやろうとすると、そこで止まります。

  1. キャリーに入る速さで、順位だけをつける

    1週間、帰宅後に扉を開けたキャリーを室内に置いて、その子が自分から入るまでを見ます。ここで見るのは秒数ではなく、順位です。いちばん先に入る子、2番目、いちばんあとの子。3頭なら1・2・3と紙に書くだけで終わります。速さを縮めようとしないでください。多頭飼いの防災で使うのは、その子が速いか遅いかではなく、頭数の中で何番目かという情報のほうです。順位は数か月で入れ替わることがあるので、季節が変わったころにもう一度見れば十分です。

  2. いちばん時間がかかる子を、最初に運ぶと決める

    順位が出たら、運ぶ順番は逆になります。いちばんあとに入る子を、いちばん先に運ぶ。速い子を先に出したくなりますが、そうすると、いちばん時間のかかる子が最後に残ります。入るのに時間がかかり、さらに往復を待つことになるので、待ち時間がその子だけ二重になります。逆にしておけば、最後に残るのはすぐ入る子です。多頭飼いのペットの防災で、順番を決めるだけで減らせる時間はここにあります。

  3. 待たせる子の場所を、部屋の名前で決めておく

    往復のあいだ、残った子はどこにいるのか。玄関に置いたままにしないでください。荷物を運ぶ人が通る場所なので、扉の開け閉めが増えます。決めるのは「扉が閉まる部屋」を1つ、部屋の名前で。うちは寝室にしました。キャリーごとその部屋に入れて扉を閉め、運び終わってから戻ります。室内のどこかに1部屋あればよく、広さは関係ありません。

  4. 1往復で運べる数を、実際に測る

    紙の上で数えず、一度やってみてください。空のキャリーに、その子と同じくらいの重さのもの(水のボトルなど)を入れて、玄関から車まで運びます。何個持てたか、片道が何秒だったか、階段があるなら途中で持ち替えたか。うちは2つで片道40秒でしたが、階段のある家では1つになることもあります。この数字が、多頭飼いの防災でいちばん現実的な数字になります。1回測れば、数年は使えます。

  5. その数を超えた頭数ぶんだけ、頼む人を先に決める

    1往復で運べる数より頭数が多いなら、超えたぶんは手の数を増やすしかありません。当日に探すのではなく、いま名前を書いておきます。同じ建物に住んでいる人、近くの家族、休みの曜日が合う友人。3頭で1往復2つなら、必要なのは1人です。ペットの防災でこの一手だけは家の中で完結しないので、いちばん後回しになります。順番としては最後で構いませんが、抜けたままにはしないでください。

5つの手順を、帰宅後の毎日に割り当てる
いつやることかかる時間
1週目の毎日扉を開けたキャリーを室内に置いて、入る順位を見る1日5分
1週目の週末順位を紙に書く。運ぶ順番を逆に並べ直す5分
2週目の帰宅後待たせる部屋を1つ決めて、扉が閉まるか確かめる5分
2週目の休日重りを入れたキャリーで、玄関から車まで1往復する10分
3週目のどこか足りない手の数だけ、頼む人の名前を書く5分
季節が変わったころ入る順位だけ、もう一度見る1日5分

全部をやりきる必要はありません。1つだけ選ぶなら、4つ目の「1往復で運べる数を測る」です。この数字がないと、順位をつけても運ぶ順番が決まりませんし、頼む人が何人必要かも出ません。逆に、いちばん後回しにしていいのは1つ目の順位です。多頭飼いの家では、飼い主のほうが「あの子は時間がかかる」と体感で分かっていることが多く、紙に書くのは確認の意味合いが強くなります。

3頭目を待たせる部屋で起きること|多頭飼いのペット防災でつまずく3か所と、上げていい頻度

手順を実際にやってみると、つまずく場所はだいたい3つに決まっています。どれも多頭飼いの家に固有のもので、1頭で暮らしている家では起きません。

3つ目に関係して、頻度の話をしておきます。ペットの防災の準備で頻度を上げていいのは、練習の回数ではなく、確かめる側です。多頭飼いの家は、頭数が増えるほど「どの子に何をしたか」が混ざります。上げる頻度と上げない頻度を先に分けておくと、毎日の負担が増えません。

多頭飼いの家で、上げていい頻度と上げないほうがいい頻度
内容そう決める理由
上げないキャリーに入れる練習の回数頭数ぶんに増えるので、続く量を超えます
上げない全頭を同時に玄関へ出す回数運ぶ側の足元が埋まり、順番の意味がなくなります
上げない持ち出す荷物を見直す回数中身は年に2回で足ります。増やすと毎日が重くなります
上げる入る順位を見る頻度季節が変わるごと。1日1頭で一巡すれば足ります
上げる待たせる部屋の扉を確かめる頻度月に1回。物が置かれて閉まらなくなることがあります
上げる頼む人と連絡が取れるか確かめる頻度半年に1回。名前だけ書いて放置しないためです

待たせる部屋については、もう1つだけ。多頭飼いでは、同じ部屋に順番に入ることで、においが互いに移ります。これはふだんの暮らしでも起きていることで、寝床を共有している家ではとくに分かりにくくなります。防災の練習で1部屋にまとめる回数が増えると、その部屋の布に頭数ぶんのにおいが集まります。気になったら、布を1枚だけ替えて、数日後にもう一度鼻を近づけてみてください。替えて変わるなら布の側、変わらないならその子の側です。多頭飼いの家では、この切り分けだけでも手の入れどころが1か所に絞れます。

Point練習のあとの1分を、前足の側に置く

キャリーの練習をしたあとは、その子の口の周りと前足に、ふだんより手が触れています。前足の裏と指のあいだは、その子が自分では開けない場所です。舐めて届くのは表面までですし、多頭飼いだと、ほかの子が寄ってきて途中で終わります。mofuwa 入浴シャンプーは、お湯に溶かして、湯そのものを洗浄液にするタイプです。擦って泡を届かせる工程がないので、洗面器に張った湯へ前足を入れて、押さえずに待つだけで済みます。1頭あたり1分、練習を終えた子から順に。運ぶ順番を決めたのと同じ順で回すと、どの子まで終わったかが混ざりません。においを消すためではなく、頭数ぶんの手が同じ場所に触れた日に、そこだけ整えておくためのものです。

1往復の数を超えたぶんは、家でできる備えの外にあります|頼む人を先に決めておくコツ

最後の手順に戻ります。1往復で運べる数を測って、それが頭数より少なかったとき、足りないぶんはどうやっても家の中では埋まりません。ここが、多頭飼いのペットの防災でいちばん先送りされるところです。人に頼む話になるので、道具を買うようには片づきません。ただ、当日に探すよりは、いま名前を1つ書いておくほうが確実に早く終わります。

紙に書く3つを絞っているのには理由があります。多頭飼いの家では、その子ごとの事情が細かくあります。この子は抱かれるのが苦手で、この子は前から手を出すと下がる。それを全部書くと、頼まれた側は何も実行できません。コツは、頼む相手に渡す情報を「運ぶこと1つ」に絞ることです。細かい事情のほうは、飼い主が運ぶ順番の側に組み込んでおきます。順位をつけて、時間のかかる子を最初にしておくのは、そのためでもあります。

ここまでを1枚にすると、多頭飼いの防災はかなり短くなります。頭数と、1往復で運べる数と、その差だけ。差がゼロなら、頼む人はいりません。差が1なら、必要なのは1人です。毎日やることが増えるわけでもありません。増えるのは、決めておく数字が3つだけです。

Caution練習のあとに続く変化は、防災の話として扱わないでください

キャリーの練習を始めてから、食べる量が数日戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、歩き方が変わった、隠れて出てこない日が続く。こうした変化があるときは、練習の回数をどうするか考える前に、動物病院にご相談ください。多頭飼いの家では、1頭の変化がほかの子の動きに紛れて見えにくくなります。頭数と、いつから練習を始めたかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。迷ったときは早いほうを選んでください。

多頭飼いの家でペットの防災を考えると、最初に浮かぶのは持ち物です。頭数ぶんのキャリー、頭数ぶんの食べもの、頭数ぶんの器。それはそれで必要ですが、そろえても、玄関から先は変わりません。変わるのは、運ぶ順番を先に決めたときです。いちばん時間のかかる子を最初に運ぶ、待たせる子は扉が閉まる部屋に置く、1往復で運べる数を一度測る、超えたぶんだけ頼む人を書く。どれも帰宅後の室内で終わりますし、毎日の習慣として残るのは、季節ごとに順位を見直す5分だけです。多頭飼いの防災は、増やす話ではなく、順番を決める話にしておくほうが続きます。

Product

mofuwa 入浴シャンプー

mofuwa 入浴シャンプー

400ml / 3,410円(税込)

浸かるだけで洗える入浴タイプ。「泡立て・ごしごし・すすぎ」の3手間を省けるので、高齢のペット・大型犬・多頭飼いのご家庭に向いています。

商品ページを見る

よくある質問

頭数が多くて、1往復で全部は無理だと分かりました。何頭までなら家の中で完結しますか。
測った数がそのまま答えになります。両手で2つ運べる家なら2頭までです。3頭目からは往復が必要になり、待つ時間が生まれます。多頭飼いの防災では、この境目を知っておくこと自体が準備になります。境目を超えている家は、超えた頭数と同じ人数だけ、頼む人の名前を書いておいてください。
入る速さの順位は、その子の性格と関係がありますか。
運ぶ順番を決めるための番号として使ってください。入る速さは、その日の時刻や、キャリーを置いた場所や、直前に何をしていたかで変わります。数か月で入れ替わることもあります。順位が低いことをその子の問題として扱うと、練習を増やす方向へ進んでしまい、多頭飼いの家では手が足りなくなります。
待たせる部屋がありません。ワンルームの場合はどうすればいいですか。
扉のある場所を1つ探してください。洗面所でも構いません。広さは関係なく、必要なのは「運ぶ人が通らない」ことと「扉が閉まる」ことの2つだけです。どうしても取れないときは、運ぶ順番を先に決めておくほうへ寄せてください。待つ場所を動かせないなら、待つ時間の短い側にその子を置いて調整します。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。