C09シーン別・暮らし
防災と避難、多頭飼いの人はどうしている?
防災の支度として、3頭ぶんのキャリーを玄関に並べるところまでは10分で終わりました。そこから先が動きませんでした。両手で持てるのは2つで、3つ目が残ります。車まで往復すれば戻ってこられますが、そのあいだ、残った1頭はどこで待っているのか。多頭飼いの家でペットの防災を考えるとき、話はたいてい持ち物の数から始まります。中身をそろえ、キャリーを頭数ぶん用意して、そこで終わりにしてしまう。けれど多頭飼いで先に足りなくなるのは、ものの数ではなく、一度に運べる数のほうです。この記事では、ペットの防災を運ぶ順番の側から組み立てる手順を、帰宅後の室内でできる5つに分けて書きます。
キャリーが3つあっても、1往復で出せるのは2つ|多頭飼いのペット防災が順番の話になる前提
玄関にキャリーを並べたあと、しばらく動けませんでした。両手で持てるのは2つです。3つ目は、いったん車まで運んでから戻ってくることになります。玄関から駐車場まで、うちは片道40秒ほどでした。往復で1分半。その1分半のあいだ、3頭目は玄関に置かれたキャリーの中で待つことになります。多頭飼いの家でペットの防災がむずかしいのは、この「待つ時間が必ず生まれる」ところです。
多頭飼いの制約は、ふだんの手入れでは「1頭あたりの時間が頭数で割られる」という形で出てきます。ブラッシングの時間も、爪を切る時間も、頭数で割られて短くなる。ところが運び出す場面では、時間は割られるのではなく、縦に並びます。2往復すれば2倍、3往復すれば3倍です。多頭飼いのペットの防災で数えるべき数字は、頭数そのものではなく、往復の回数のほうになります。
そして、この場面で自由に増やせるものは1つしかありません。キャリーの数は買えば増えます。けれど手の数は増えませんし、車に積める容量も決まっています。キャリーだけをそろえると、増やせるものだけが増えて、増やせないもののほうが手つかずのまま残ります。多頭飼いの家で防災の準備が「終わった気がしない」のは、たいていこの状態です。
| 頭数 | 運ぶ人 | 1往復で出せる数 | 必要な往復 |
|---|---|---|---|
| 2頭 | 1人 | 2つ(両手) | 1往復 |
| 3頭 | 1人 | 2つ | 2往復 |
| 3頭 | 2人 | 3つ | 1往復 |
| 4頭 | 1人 | 2つ | 2往復 |
| 4頭 | 2人 | 3〜4つ | 1〜2往復 |
| 5頭以上 | 1人 | 2つ | 3往復以上 |
表の右端が、多頭飼いの家でいちばん見落とされる列です。往復が2回になった時点で、最後に運ばれる子の待ち時間が、片道の2倍以上になります。ここを縮める方法はほとんどありません。縮められないのなら、先に決めておけるのは順番だけです。ペットの防災を多頭飼いの側から組み直すというのは、そういう意味です。
避難するかどうか、いつ動くか、どこへ向かうかは、住んでいる地域から出ている案内に従ってください。この記事で扱うのは、その判断のあとに家の中で起きることだけです。多頭飼いの家では、動くと決めてから玄関を出るまでのあいだに、頭数ぶんの手順が並びます。そこは家でできる備えの範囲なので、平日の帰宅後にでも決めておけます。
入る速さで順位をつける|多頭飼いのペットの防災を毎日の帰宅後に組み立てる5つの手順
ここからが手順です。5つありますが、1日にやるのは1つだけで足ります。どれも特別な道具はいりませんし、毎日の帰宅後、室内で10分あれば終わります。多頭飼いの家では準備そのものが頭数ぶんに増えるので、1日に複数をやろうとすると、そこで止まります。
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キャリーに入る速さで、順位だけをつける
1週間、帰宅後に扉を開けたキャリーを室内に置いて、その子が自分から入るまでを見ます。ここで見るのは秒数ではなく、順位です。いちばん先に入る子、2番目、いちばんあとの子。3頭なら1・2・3と紙に書くだけで終わります。速さを縮めようとしないでください。多頭飼いの防災で使うのは、その子が速いか遅いかではなく、頭数の中で何番目かという情報のほうです。順位は数か月で入れ替わることがあるので、季節が変わったころにもう一度見れば十分です。
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いちばん時間がかかる子を、最初に運ぶと決める
順位が出たら、運ぶ順番は逆になります。いちばんあとに入る子を、いちばん先に運ぶ。速い子を先に出したくなりますが、そうすると、いちばん時間のかかる子が最後に残ります。入るのに時間がかかり、さらに往復を待つことになるので、待ち時間がその子だけ二重になります。逆にしておけば、最後に残るのはすぐ入る子です。多頭飼いのペットの防災で、順番を決めるだけで減らせる時間はここにあります。
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待たせる子の場所を、部屋の名前で決めておく
往復のあいだ、残った子はどこにいるのか。玄関に置いたままにしないでください。荷物を運ぶ人が通る場所なので、扉の開け閉めが増えます。決めるのは「扉が閉まる部屋」を1つ、部屋の名前で。うちは寝室にしました。キャリーごとその部屋に入れて扉を閉め、運び終わってから戻ります。室内のどこかに1部屋あればよく、広さは関係ありません。
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1往復で運べる数を、実際に測る
紙の上で数えず、一度やってみてください。空のキャリーに、その子と同じくらいの重さのもの(水のボトルなど)を入れて、玄関から車まで運びます。何個持てたか、片道が何秒だったか、階段があるなら途中で持ち替えたか。うちは2つで片道40秒でしたが、階段のある家では1つになることもあります。この数字が、多頭飼いの防災でいちばん現実的な数字になります。1回測れば、数年は使えます。
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その数を超えた頭数ぶんだけ、頼む人を先に決める
1往復で運べる数より頭数が多いなら、超えたぶんは手の数を増やすしかありません。当日に探すのではなく、いま名前を書いておきます。同じ建物に住んでいる人、近くの家族、休みの曜日が合う友人。3頭で1往復2つなら、必要なのは1人です。ペットの防災でこの一手だけは家の中で完結しないので、いちばん後回しになります。順番としては最後で構いませんが、抜けたままにはしないでください。
| いつ | やること | かかる時間 |
|---|---|---|
| 1週目の毎日 | 扉を開けたキャリーを室内に置いて、入る順位を見る | 1日5分 |
| 1週目の週末 | 順位を紙に書く。運ぶ順番を逆に並べ直す | 5分 |
| 2週目の帰宅後 | 待たせる部屋を1つ決めて、扉が閉まるか確かめる | 5分 |
| 2週目の休日 | 重りを入れたキャリーで、玄関から車まで1往復する | 10分 |
| 3週目のどこか | 足りない手の数だけ、頼む人の名前を書く | 5分 |
| 季節が変わったころ | 入る順位だけ、もう一度見る | 1日5分 |
全部をやりきる必要はありません。1つだけ選ぶなら、4つ目の「1往復で運べる数を測る」です。この数字がないと、順位をつけても運ぶ順番が決まりませんし、頼む人が何人必要かも出ません。逆に、いちばん後回しにしていいのは1つ目の順位です。多頭飼いの家では、飼い主のほうが「あの子は時間がかかる」と体感で分かっていることが多く、紙に書くのは確認の意味合いが強くなります。
3頭目を待たせる部屋で起きること|多頭飼いのペット防災でつまずく3か所と、上げていい頻度
手順を実際にやってみると、つまずく場所はだいたい3つに決まっています。どれも多頭飼いの家に固有のもので、1頭で暮らしている家では起きません。
- 全頭を同時に呼んでしまう:名前を呼ぶと全部が集まります。集まったところから1頭だけ入れようとすると、残りが玄関に出てきて、運ぶ側の足元が埋まります。呼ぶのは1頭ずつ、待たせる部屋の扉を閉めてから
- 順位を、その子の能力の順だと思ってしまう:入る速さは、その日の場所と時刻で変わります。運ぶ順番を決めるための番号であって、その子の性格の話ではありません
- 練習の頻度を上げすぎる:多頭飼いでは、練習も頭数ぶんに増えます。毎日全頭でやると、こちらが先に続かなくなります。1日1頭で回せば、3頭なら3日で一巡します
3つ目に関係して、頻度の話をしておきます。ペットの防災の準備で頻度を上げていいのは、練習の回数ではなく、確かめる側です。多頭飼いの家は、頭数が増えるほど「どの子に何をしたか」が混ざります。上げる頻度と上げない頻度を先に分けておくと、毎日の負担が増えません。
| 内容 | そう決める理由 | |
|---|---|---|
| 上げない | キャリーに入れる練習の回数 | 頭数ぶんに増えるので、続く量を超えます |
| 上げない | 全頭を同時に玄関へ出す回数 | 運ぶ側の足元が埋まり、順番の意味がなくなります |
| 上げない | 持ち出す荷物を見直す回数 | 中身は年に2回で足ります。増やすと毎日が重くなります |
| 上げる | 入る順位を見る頻度 | 季節が変わるごと。1日1頭で一巡すれば足ります |
| 上げる | 待たせる部屋の扉を確かめる頻度 | 月に1回。物が置かれて閉まらなくなることがあります |
| 上げる | 頼む人と連絡が取れるか確かめる頻度 | 半年に1回。名前だけ書いて放置しないためです |
待たせる部屋については、もう1つだけ。多頭飼いでは、同じ部屋に順番に入ることで、においが互いに移ります。これはふだんの暮らしでも起きていることで、寝床を共有している家ではとくに分かりにくくなります。防災の練習で1部屋にまとめる回数が増えると、その部屋の布に頭数ぶんのにおいが集まります。気になったら、布を1枚だけ替えて、数日後にもう一度鼻を近づけてみてください。替えて変わるなら布の側、変わらないならその子の側です。多頭飼いの家では、この切り分けだけでも手の入れどころが1か所に絞れます。
キャリーの練習をしたあとは、その子の口の周りと前足に、ふだんより手が触れています。前足の裏と指のあいだは、その子が自分では開けない場所です。舐めて届くのは表面までですし、多頭飼いだと、ほかの子が寄ってきて途中で終わります。mofuwa 入浴シャンプーは、お湯に溶かして、湯そのものを洗浄液にするタイプです。擦って泡を届かせる工程がないので、洗面器に張った湯へ前足を入れて、押さえずに待つだけで済みます。1頭あたり1分、練習を終えた子から順に。運ぶ順番を決めたのと同じ順で回すと、どの子まで終わったかが混ざりません。においを消すためではなく、頭数ぶんの手が同じ場所に触れた日に、そこだけ整えておくためのものです。
1往復の数を超えたぶんは、家でできる備えの外にあります|頼む人を先に決めておくコツ
最後の手順に戻ります。1往復で運べる数を測って、それが頭数より少なかったとき、足りないぶんはどうやっても家の中では埋まりません。ここが、多頭飼いのペットの防災でいちばん先送りされるところです。人に頼む話になるので、道具を買うようには片づきません。ただ、当日に探すよりは、いま名前を1つ書いておくほうが確実に早く終わります。
- 誰に:同じ建物の人、徒歩圏の家族、休みが合う友人。距離の近さで選んでください
- 何を頼むか:キャリーを1つ持って、玄関から車まで運ぶ。それだけです。世話を頼むのではありません
- いつ言っておくか:いま。頼まれた側も、当日に初めて聞くより、先に知っているほうが動けます
- 紙に書く3つ:頭数、キャリーの置き場所、待たせる部屋の名前。これ以上は書かなくて構いません
- 紙をどこに貼るか:キャリーを置いてある場所の壁。玄関ではなく、キャリーのそばです
紙に書く3つを絞っているのには理由があります。多頭飼いの家では、その子ごとの事情が細かくあります。この子は抱かれるのが苦手で、この子は前から手を出すと下がる。それを全部書くと、頼まれた側は何も実行できません。コツは、頼む相手に渡す情報を「運ぶこと1つ」に絞ることです。細かい事情のほうは、飼い主が運ぶ順番の側に組み込んでおきます。順位をつけて、時間のかかる子を最初にしておくのは、そのためでもあります。
ここまでを1枚にすると、多頭飼いの防災はかなり短くなります。頭数と、1往復で運べる数と、その差だけ。差がゼロなら、頼む人はいりません。差が1なら、必要なのは1人です。毎日やることが増えるわけでもありません。増えるのは、決めておく数字が3つだけです。
キャリーの練習を始めてから、食べる量が数日戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、歩き方が変わった、隠れて出てこない日が続く。こうした変化があるときは、練習の回数をどうするか考える前に、動物病院にご相談ください。多頭飼いの家では、1頭の変化がほかの子の動きに紛れて見えにくくなります。頭数と、いつから練習を始めたかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。迷ったときは早いほうを選んでください。
多頭飼いの家でペットの防災を考えると、最初に浮かぶのは持ち物です。頭数ぶんのキャリー、頭数ぶんの食べもの、頭数ぶんの器。それはそれで必要ですが、そろえても、玄関から先は変わりません。変わるのは、運ぶ順番を先に決めたときです。いちばん時間のかかる子を最初に運ぶ、待たせる子は扉が閉まる部屋に置く、1往復で運べる数を一度測る、超えたぶんだけ頼む人を書く。どれも帰宅後の室内で終わりますし、毎日の習慣として残るのは、季節ごとに順位を見直す5分だけです。多頭飼いの防災は、増やす話ではなく、順番を決める話にしておくほうが続きます。
Product
mofuwa 入浴シャンプー
400ml / 3,410円(税込)
浸かるだけで洗える入浴タイプ。「泡立て・ごしごし・すすぎ」の3手間を省けるので、高齢のペット・大型犬・多頭飼いのご家庭に向いています。
商品ページを見るよくある質問
- 頭数が多くて、1往復で全部は無理だと分かりました。何頭までなら家の中で完結しますか。
- 測った数がそのまま答えになります。両手で2つ運べる家なら2頭までです。3頭目からは往復が必要になり、待つ時間が生まれます。多頭飼いの防災では、この境目を知っておくこと自体が準備になります。境目を超えている家は、超えた頭数と同じ人数だけ、頼む人の名前を書いておいてください。
- 入る速さの順位は、その子の性格と関係がありますか。
- 運ぶ順番を決めるための番号として使ってください。入る速さは、その日の時刻や、キャリーを置いた場所や、直前に何をしていたかで変わります。数か月で入れ替わることもあります。順位が低いことをその子の問題として扱うと、練習を増やす方向へ進んでしまい、多頭飼いの家では手が足りなくなります。
- 待たせる部屋がありません。ワンルームの場合はどうすればいいですか。
- 扉のある場所を1つ探してください。洗面所でも構いません。広さは関係なく、必要なのは「運ぶ人が通らない」ことと「扉が閉まる」ことの2つだけです。どうしても取れないときは、運ぶ順番を先に決めておくほうへ寄せてください。待つ場所を動かせないなら、待つ時間の短い側にその子を置いて調整します。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
