C09シーン別・暮らし
引越しの前後を楽にする、大型犬と暮らす人の毎日の習慣
引越しの当日、作業の方が3往復目で「ワンちゃん、別のお部屋にお願いできますか」と言いました。そのとおりにしたかったのですが、家じゅうの扉が開いていて、荷物の出ていない部屋が1つもありませんでした。うちの子は伏せると全長が1メートルを超えます。廊下の幅は78センチでした。玄関の上がり口に伏せると、それだけで通り道が塞がります。呼べば立ちますが、10秒もすればまた同じ場所に戻ってきました。大型犬と暮らしていると、引越しの当日にいちばん難しいのは荷物ではなく、その子をどこに置いておくかです。そして当日にできることは、ほとんど残っていません。この記事は、犬の置き場所を引越しの計画のほうへ入れる、という話です。
作業が止まったのは、玄関に伏せていた体のほうでした|大型犬と引越し当日の経験
その日の流れを、順番に書きます。朝9時に3人来て、居間の家具から運び出しが始まりました。最初の30分はよかったのです。うちの子は寝室で伏せていました。ところが寝室のベッドが運び出されると、その部屋にいる理由がなくなります。次に移った先が玄関でした。人が出入りしている場所なので、犬にとってはいちばん面白い場所です。
玄関の上がり口に伏せられると、作業の方は横を通れません。伏せた体の長さが、廊下の幅とほぼ同じだからです。小型犬なら、同じところに伏せていても脇を通れます。うちの子はそれができない大きさでした。呼べば立って、こちらへ来ます。ただ、抱えて移すことはできません。40キロ近くあるので、片手どころか両手でも運べません。移動は、その子が自分で歩くのが前提になります。
「別の部屋に」と言われて、家の中を見て回りました。空いている部屋が1つもありませんでした。居間は運び出しの途中、寝室は空になっていて扉を閉めても何もない、和室は段ボールの置き場になっていて、その段ボールをこれから運び出す。扉が閉まって、なおかつ荷物が出ていく予定のない場所は、浴室と洗面所だけでした。大型犬を洗面所に2時間入れておくのは、無理があります。
- ケージに入れる:大型犬のケージ自体が大きな荷物です。当日は真っ先に運び出される側にいます
- 車に乗せる:季節と停める場所によります。4月でも、日の当たる駐車場では室内と条件が変わります
- 外につないでおく:玄関の前は、作業の方が何十往復もする通路そのものです
- 抱えて移す:大型犬ではできません。歩いてもらう以外の手がありません
- 誰かに見ていてもらう:当日その場にいる大人は、たいてい荷物の指示で手がふさがっています
結局、その日は5回ほど呼び戻して、最後の1時間は玄関の外でリードを持って立っていました。作業そのものは2時間半で終わりましたが、そのうちのかなりの時間を、犬の場所を作ることに使っていました。引越しの当日にやることは荷物の側にあると思っていたので、これは想定に入っていませんでした。
当日だけ、玄関が作業の通路に変わる|大型犬の引越しで置き場所が消える背景
なぜ大型犬だけがこうなるのか。理由は3つに分かれます。どれも体の大きさから来ていますが、効いてくる場所がそれぞれ違います。
| 条件 | 小型犬の場合 | 大型犬の場合 |
|---|---|---|
| 伏せたときの占有 | 廊下の脇を人が通れる | 廊下や上がり口を、体の長さでほぼ塞ぐ |
| 移動のさせ方 | 抱えて移せる | 歩いてもらう以外にない |
| ケージ | たためる。運び出しが最後でも困らない | そのものが大きな荷物。先に出ることが多い |
| 待たせる場所 | 洗面所や脱衣所でも成り立つ | 伏せられる直線が要る。狭い場所では立ったままになる |
| 車で待つ | 短時間なら選びやすい | 季節と駐車場所の条件が重くなる |
そしてもう1つ、間取りの側にも背景があります。引越しの当日は、家じゅうの扉が開きます。すべての部屋が荷物の出口になるからです。ふだんは扉を閉めて使っている部屋も、当日は開けっぱなしになります。つまり、「扉が閉まる部屋」という条件が、当日だけ家から消えます。大型犬の置き場所を当日に探すのが難しいのは、ここが理由です。ふだんなら成り立っていた場所が、その日にかぎって成り立ちません。
玄関のほうも、当日だけ性質が変わります。ふだんの玄関は、帰宅後に出入りする場所で、1日に数回しか人が通りません。当日は、そこが作業の通路になります。3人の作業で往復が何十回にもなり、扉が開いたままの時間が長くなる。人の出入りが続いている場所は、犬にとっていちばん行きたい場所です。呼び戻しても戻ってくるのは、しつけの問題ではなく、その日だけ玄関の意味が変わっているからです。
室内のにおいも、この数時間で変わっていきます。家具が出て、カーペットが出て、布のものがなくなると、その子が毎日基準にしていたにおいが薄くなります。玄関に向かうのは、残っているにおいがそこにいちばん多いから、という面もあります。大型犬に限った話ではありませんが、体が大きいぶん、行きたい場所へ行かれると、こちらが物理的に止められません。
見積もりの日に決めておく2つの選択肢|大型犬と引越しをする人の考え方
ここからが、この記事で書きたかったことです。大型犬の置き場所は、当日に工夫する話ではありません。当日は、扉の閉まる部屋が家から消えていて、こちらの手も荷物でふさがっています。決められるのは、業者に見積もりを頼む日、あるいは日程を決める日です。引越しの計画に、犬の行き先を1行入れておく。考え方としては、これだけです。
選択肢は2つしかありません。預け先を取るか、その子だけの1部屋を計画に組み込むかです。どちらが向いているかは、搬出と搬入が同じ日かどうかで決まります。同じ日なら、旧居と新居の両方に立ち会うことになるので、家の中に犬の場所を作るのは難しくなります。日が分かれているなら、部屋を1つ残す形が取れます。
| 向いている場合 | いつ決めるか | |
|---|---|---|
| 預け先を取る | 搬出と搬入が同じ日/立ち会う大人が1人 | 日程が決まった日。引越しの多い時期は先に埋まります |
| 預け先を取る | 新居が遠く、移動が長くなる | 同じく日程が決まった日 |
| 1部屋を残す | 搬出と搬入で日が分かれている | 見積もりの日。作業の順番に関わります |
| 1部屋を残す | その子が知らない場所で落ち着きにくい | 同じく見積もりの日 |
預け先を取る場合、押さえておきたいのは日数です。当日だけで取ると、たいてい足りません。搬出が終わってから新居の搬入が終わるまで、こちらは動き続けます。前日の夕方から翌日の午前まで取っておくと、迎えに行く時間を落ち着いて決められます。犬にとっても、引越しの当日の朝にいきなり預けられるより、前の日から場所が変わっているほうが、変化の数が1つ減ります。
1部屋を残す場合は、条件を数字で決めておきます。大型犬では、広ければいいという話にならないからです。
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扉が閉まること
当日は家じゅうの扉が開くので、閉まる扉があること自体が条件になります。引き戸でも開き戸でもかまいません。閉めたときに、外から荷物を運ぶ人が開けずに済む位置かどうかも見ておいてください。
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伏せて全長ぶん入る直線が取れること
うちの子は伏せて1メートルほどでした。その長さの直線が壁沿いに取れないと、大型犬はずっと立ったままになります。2畳あっても、真ん中に荷物が残っていれば直線は取れません。広さではなく、壁沿いの直線で測ってください。
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その部屋を最後に空ける、と伝えられること
これが見積もりの日に言っておくことです。「この部屋は最後にしてください」の一言で、作業の順番が変わります。当日の朝に頼むと、すでに動線が組まれているので難しくなります。頭数と体格も一緒に伝えておくと、玄関の使い方も配慮してもらえます。
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新居の側にも、同じ条件の部屋を決めておくこと
搬入の日も同じことが起きます。新居で1部屋を先に空けたままにしてもらうと、その子の場所が最初からあります。間取り図をもらった時点で、どの部屋にするかを決めておくと、当日に考えずに済みます。
計画が決まったあと、当日までにやることは1つだけです。その部屋の扉を、毎日閉めておく。大型犬の家では、扉を閉め切らずに暮らしていることが多いと思います。扉の前で待たれると人が通れないので、開けたままにしておくほうが楽だからです。当日にいきなり閉めると、その日だけ新しい条件が1つ増えます。引越しの1〜2週間前から、帰宅後の時間帯にその部屋の扉を閉めた状態にしておくと、当日には毎日の並びの中に入っています。練習として反応を見るのではなく、閉まっているのがふつう、という状態にしておくだけです。
計画に1行入れた2回目で、寝床に伏せるまでの時間が短くなりました|大型犬に出た変化
2回目の引越しでは、見積もりの日に3つ伝えました。犬が1頭いること、体重が40キロ近いこと、和室を最後に空けてほしいこと。作業の方は、その場で運び出しの順番を組み直してくれました。特別なお願いだと思っていたのですが、体格を先に聞けたほうが助かる、という反応でした。玄関の使い方も、こちらが言う前に決めてもらえました。
当日は、和室の扉を閉めて、そこに寝床とふだんの水の器を置きました。前の週から扉を閉める時間を作っていたので、その日だけ特別な部屋になっていません。こちらが呼び戻しに使った回数は、1回目が5回、2回目は0回でした。玄関に出てこなかったからです。和室を運び出したのは最後の30分で、そのあいだだけリードを持って外にいました。
| 1回目 | 2回目 | |
|---|---|---|
| 犬の場所を決めた時期 | 当日の朝 | 見積もりの日 |
| 当日、呼び戻した回数 | 5回 | 0回 |
| 外でリードを持っていた時間 | 1時間ほど | 30分ほど |
| 新居で寝床に伏せるまで | その日は落ち着かず、翌日 | 着いた日の夕方 |
| こちらが荷物に使えた時間 | 断続的に中断 | ほぼ通しで使えた |
いちばん変わったのは、最後の2行です。新居で寝床に伏せるまでの時間が、翌日から当日の夕方に縮みました。理由は単純で、新居でも先に1部屋を空けておいてもらったからです。着いてすぐ、その部屋に寝床と器を置きました。旧居で当日を過ごした部屋と、新居で最初に入る部屋が同じ形をしているので、その子にとっては同じ場所が続いている扱いになります。引越しの前後で、毎日の中に変わらないものが1つ残ります。
そのあとの数日でやったことも、多くはありません。新居では帰宅後に、口の周りと前足だけに手を入れました。大型犬の前足は、その犬が自分でなめても、指のあいだまでは届きません。引越しの前後は外に出る回数が増えるので、そこに残るものも増えます。使っているのは mofuwa 入浴シャンプーで、湯に溶かしてしまえば、かき分けなくても地肌に届きます。40キロの体を泡でかき分けていくやり方だと、届く前にこちらの手が終わっていました。段ボールに囲まれているうちは浴室まで連れて行かず、玄関に桶を1つ出して、前足だけを沈めています。1回1分ほどです。大型犬は体の面積が広いので、全身をやろうとすると、荷ほどきの合間には終わりません。触る場所を2か所に決めておくと、毎日続きます。
変化を見るなら、数えられるものを2つだけ決めておくと楽です。食べた量と、水の減り方。引越しの前の1週間と、後の1週間を比べます。大型犬は1回に飲む量が多いので、器の減り方の変化が分かりやすい側にいます。落ち着いてきていれば、3日から1週間で前の幅に戻ります。
引越しから1週間たっても、食べる量が前の幅に戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、下痢や嘔吐が続いている、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、立ち上がり方が変わった、呼吸が落ち着かない日が続く。こうした変化があるときは、環境のせいだと決めてしまう前に動物病院にご相談ください。大型犬は体重があるぶん、立ち上がりや歩き方の変化が続くと負担が重なりやすくなります。引越しの日付と、新居に着いてからの食べた量をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。迷ったときは早いほうを選んで構いません。
引越しの当日は、朝から夕方まで、こちらの手が全部ふさがります。その日にできる工夫は、実際にはほとんどありません。大型犬と暮らしていると、そこがはっきり出ます。抱えて移せないので、置き場所は先に用意しておくしかない。用意しておく場所は、当日には家から消えている。だから、犬の行き先は、荷物の見積もりと同じ日に決めてしまうのがいちばん確実です。預け先を1つ取るか、部屋を1つ最後まで残すか。引越しの計画に入れるのは、この1行だけです。あとは、その部屋の扉を毎日閉めておく。それだけで、当日に呼び戻す回数と、新居で落ち着くまでの時間が変わります。
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
