C14トリマー/獣医師視点

トリマーが現場で使う、毛玉をほどく順番

公開日 2020年9月27日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の木の床で、落ち着いて休んでいるクリーム色の猫
毛玉に手をつける前に見ているのは、大きさより先に、外側の毛がまだ動くかどうかです。写真:Owen Mao/Pexels

毛玉を見つけたトリマーが最初に動かすのは、ブラシを持つ手より先に、毛玉の外周をなぞる指のほうです。ひとつの毛玉でも、外側の毛はまだ1本ずつ動き、内側へ入るほど毛どうしが噛み合っています。現場で毛玉をほどく順番が決まっているのは、外側の動く毛から先に抜いていくと、内側にかかっていた張りが行き場をなくして自分から緩むからです。同じ大きさの毛玉でも、ほどく順番を変えるだけで、かかる時間とその子の我慢の量が変わります。ここでは、サロンが毛玉のどこから手をつけ、どの手ごたえで次へ進んでいるのかを、家のブラッシングにそのまま移せる形で書きます。

外周の、まだ動く毛から|現場が毛玉をほどく順番を外から内へ取る理由

現場で毛玉に最初に触るのは、真ん中からいちばん遠い外周のふちです。ひとつの毛玉を指でつまむと、外側の数ミリはまだ1本ずつ動きます。内側へ入るほど毛どうしが噛み合い、中心は面のように固まっています。毛玉をほどく順番を外から内へ取る理由は、この動く部分が毛玉全体の張りを受け持っているからです。外側の毛を数本ずつ抜いていくと、内側にかかっていた張りが行き場をなくし、中心のほうが自分から緩みます。

この4段が、毛玉をほどく順番の骨格です。段を飛ばすと、飛ばしたぶんの張りが次の段へそのまま残ります。家でよく起きるのは、2段目を飛ばして3段目から入ることです。毛玉が目に入った瞬間にコームの先を差し込むと、まだ動く外側の毛ごと中心へ押し込むことになります。ほどいているつもりで、毛玉を一回り小さく固めている状態です。

外周から入ると、途中でやめても被毛の形が崩れないという利点もあります。1段目と2段目まで進んだところでその子が動き出したら、そこで止めて次の日に続きから入れます。毛玉をほどく順番が外から内なのは、手を止められる地点が各段のあいだにあるからでもあります。中心から崩しにかかると、途中で止めた場所が毛の割れ目として残り、そこへ新しい毛が入り込みます。1回で終わらせないことを前提に組める順番かどうかが、現場と家の差になりやすい部分です。

締まる向きと、ゆるむ向き|毛玉をほどく順番を根元から取らない考え方

毛玉には向きがあります。抜けた下毛と、生えている毛が、ある方向に巻き込まれながら噛み合っていきます。根元をつまんで毛先の側へ引くと、その巻き込みは強まる向きに動きます。毛先の側から少しずつ引き出すと、同じ毛が巻き込みをほどく向きに動きます。毛玉をほどく順番の考え方は、力を加える向きをこの2つのどちらにするか、という1点に集まります。

同じ毛玉に、向きの違う2つの力を加えたとき 根元の側から毛先へ向けて引くと、毛玉の中の毛は噛み合いが強まる向きに動きます。毛先の側から数本ずつ引き出すと、同じ毛が噛み合いをほどく向きに動きます。加える力の大きさではなく、向きのほうで結果が分かれます。 どちらの手つきでも、その子から見える動きはほとんど同じです 締まる向き 根元をつまんで毛先へ引く 毛玉が小さく硬くなる 地肌が一緒に持ち上がる その子が体をひねる 翌日に同じ場所へ戻る ゆるむ向き 毛先の側から数本ずつ出す 毛玉のふちが毛羽立つ 地肌が動かない その子が同じ姿勢で待てる 抜いた毛が手に残る 毛玉が小さくなったことと、ほどけたことは別々に数えます
手ごたえが重いときに足すのは力ではなく、向きを変える判断です。

地肌が一緒に持ち上がっているかどうかが、向きを見分けるいちばん早い手がかりです。片方の手で毛玉の根元を押さえ、もう片方の手で毛先の側を動かす。この持ち方をすると、地肌に届く力が押さえた手で止まります。毛玉をほどく順番で最初に覚えるのは手つきではなく、両手のうち片方が常に動かない側に回る、という役割分担のほうです。

Point押さえる手を置く場所は、毛玉の上ではありません

押さえるのは毛玉そのものではなく、毛玉と地肌のあいだに残っている毛の根元です。毛玉の上から押さえると、動かしたい側と押さえたい側が同じ場所になり、引いた力がそのまま地肌へ抜けます。根元を挟むように指を置けば、毛玉がどれだけ重くても、その子の皮膚は動きません。片手で押さえられない大きさになっているときは、ほどく順番の前に、その日は外周だけで手を止める判断のほうが先です。

換毛期は、この向きの違いがいちばん大きな差になる時期です。抜けた下毛は体の外へ出ていかず、生えている毛のあいだに留まります。留まった毛は毎日少しずつ巻き込まれ、同じ場所に毛玉が戻ってきます。換毛期に同じ場所を3回ほどいたなら、ほどき方ではなく、抜けた毛が滞っている場所を疑います。毛玉をほどく順番を守っていても、供給が続いているあいだは何度でも作り直されるからです。脇の下、耳のうしろ、しっぽの付け根、後ろ脚の内側。この4か所は、抜けた毛が外へ落ちにくく、被毛の中に残りやすい場所です。

指が止まる場所で段を切り替える|毛玉をほどく途中に起きる手ごたえの変化

次の段へ進んでよいかどうかは、見た目ではなく手ごたえで決めます。毛玉は外から見ても中身が変わったことが分かりません。外側が減って中心が薄くなっても、輪郭の大きさはあまり変わらないからです。現場では、指やコームの先が毛の中をどこまで進んで、どこで止まるかという変化を合図にしています。

手ごたえの段階と、そこでやること
そのときの手ごたえ毛玉の中で起きていること次にやること
指がふちで止まる外側の毛もまだ噛み合っている指の腹でふちをなぞり、動く毛を探す
指が数ミリ入って止まる外周がほどけ始めている毛先の側から数本ずつ引き出す
コームの先が半分まで入る中心の面が薄くなってきた同じ場所を続けず、反対側のふちへ回る
コームが根元まで抜けるその毛束はほどけている隣の毛束へ移り、毛玉の輪郭を作り直す
どの向きでも動かない毛が地肌の側で束になっているその日は止めて、翌日に外周から入り直す

この表の上から2行目と3行目のあいだで、多くの人が手を止めてしまいます。外周がほどけて毛玉が毛羽立つと、ほどけたように見えるからです。毛羽立ちは、ほどけた合図ではなく、外側の段が終わった合図です。ここでブラシに持ち替えて全体をとかすと、毛羽立った毛が中心に戻って、もう一度同じ手順をやり直すことになります。毛玉をほどく順番の中で、いちばん巻き戻りが起きやすい地点です。

音も変化の手がかりになります。コームが毛の中を進むとき、ほどけている場所は音がしません。噛み合いが残っている場所では、細かく途切れる音が続きます。音が途切れなくなった側から順に進めていくと、その子の体の上で「終わった場所」と「まだの場所」が手と耳の両方で分かれます。目で見て探すより早く、同じ場所を二度なぞる回数が減ります。

1か所にかける時間は、2分を上限にしておくと組み立てやすくなります。2分で終わらない毛玉は、その日のうちには終わりません。時間で区切ると、その子にとっては「いつ終わるか分からない時間」ではなくなります。毛玉をほどく順番を守る目的の半分は、次の日も同じ場所を触らせてもらえる関係を残すことです。2分で外周だけ進めて終わる日を3日続けたほうが、1日で押し切るより、結果として早く終わることのほうが多くあります。

順番を家のブラッシングへ移す|毛玉をほどく経験を翌週に残す

家で順番が崩れる原因の多くは、手つきではなく、被毛が乾いたまま作業に入っていることです。乾いた被毛はコームの通り道で静電気が起き、毛先どうしが引き合います。ほどいた毛が離れずに、そのまま隣の毛と手をつなぎ直します。外周から内へ進めていても、進んだ先から戻されるので、手ごたえが軽くなりません。うるおいがある状態から始めれば、同じ順番がそのまま通ります。

ブラッシングの前に mofuwa グルーミングスプレー を毛全体に吹きかけておくと、コームを入れる時点で静電気が起きにくい状態から始められます。犬も猫も体から脂を出すので、散歩に行く子ほど毎日汚れます。毎日シャンプーはできませんし、サロンにも毎日は通えません。この1本は、その毎日のほうを受け持つためのものです。アルカリ電解水が油となじんで乳化するので、汚れのもとになっている余分な皮脂が浮いて落ち、地肌に要る皮脂は残ります(deck p16)。舐めても問題のない基準でつくられているため、量を気にせず、毛玉のある場所へたっぷりかけられます。

  1. 毛玉のある場所へ先にかける

    全身へ広げる前に、毛玉とその周り5センチへ吹きかけます。ほどく順番でいう1段目の外周が、ここで湿ります。

  2. 30秒だけ待つ

    かけた直後は表面だけが濡れています。30秒おくと毛の内側まで行き渡り、指を入れたときの抵抗が変わります。

  3. 指の腹で外周をなぞる

    コームより先に指です。動く毛と動かない毛の境目が、乾いているときよりはっきり分かります。

  4. 毛先の側から数本ずつ

    ここまでの段を飛ばさなければ、コームを入れるのは全体の3分の1が減ってからで足ります。

  5. 終わったら全身へ一度かける

    毛玉のあった場所だけ湿っていると、そこだけ質感が変わります。仕上げに全身へ回すと、被毛の状態がそろいます。

mofuwa グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、毛玉がない日にも同じ手順がそのまま使えます。毛玉をほどく作業と、毛玉ができる前のブラッシングが、同じ1本と同じ動作でつながります。お風呂そのものが負担になるシニアの子や猫にとっては、体を濡らして乾かす工程を挟まずに被毛を整えられる点が、そのまま続けやすさになります。

Caution毛玉の下で起きていることが、順番では説明できないとき

ほどいている途中で地肌が赤くなる/毛玉を外したあとの皮膚がじくじくしている/同じ場所の毛玉が2週間のうちに3回戻る/毛玉のない場所まで指で触ると痛がる。こうした形は、ほどく順番や手つきの問題では説明がつきません。毛玉ができた日付と、戻ってきた間隔を書き出して、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。毛を落として地肌を確かめる判断は、家ではできない領域です。

毛玉をほどく経験は、その日に終わった数ではなく、翌週に残る記録のほうで積み上がります。どの場所を、何段目まで進めて止めたか。カレンダーの端に「脇・2段目」と書いておくだけで、次に触るときの入り口が決まります。毎日のブラッシングは、その記録の続きから始められます。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

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300ml / 2,970円(税込)

特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。