C14トリマー/獣医師視点

カットしやすい毛質とは、どういう状態か

公開日 2020年12月20日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床で、静かに休んでいる長毛の犬
毛質を見分ける手がかりは、毛先の見た目ではなく、コームが根元まで落ちるかどうかにあります。写真:Sarah Chai/Pexels

乾いた毛にコームを一度だけ入れ、歯が根元まで落ちるかどうかで毛質を見ます。止まる位置が根元なら絡み、中間なら毛のうねり、毛先だけなら乾き。トリミングの現場では、ハサミを持つ前のこの一往復で、その日の進め方がほぼ決まります。毛質を整えるというのは、毛先の形をそろえる作業ではなく、コームが落ちる深さを戻していく作業です。カットしやすい状態というのも、やわらかいとか細いとかいう生まれつきの話ではありません。この記事では、止まる位置で3つに分ける見方と、犬と猫で条件が入れ替わる部分、そして家で続けられる形を順番に置きます。

触る前に一度だけ|毛質チェックは、コームが止まる位置から始まる

現場でいちばん最初にやるのは、乾いた毛にコームを一度だけ入れることです。洗う前、ブラシを当てる前、その子の体をまだほとんど触っていない段階で行います。濡らしてしまうと毛が寝て、絡みも毛先の乾きも手ざわりの中に紛れます。ブラシを先に当てても同じで、表面の毛が整った見た目になるぶん、下の層で何が起きているかが分からなくなります。毛質チェックが触る前と決まっているのは、まだ何も動かしていない状態でしか、止まる位置が正直に出ないからです。

  1. 背中の中央に1回

    いちばん条件のよい場所です。ここで止まるなら、ほかの場所はもっと深いところで止まります。基準として最初に取ります。

  2. 腰からしっぽの付け根へ1回

    体の後ろ半分は、その子自身の口も人の手も届きにくい場所です。背中との差が、届いていない時間の長さを表します。

  3. 耳のうしろに1回

    毛の向きが変わる場所で、細い毛が集まっています。ここだけ根元で止まる子は珍しくありません。

  4. 内股と脇に1回

    こすれて熱と湿りがこもります。背中が通るのにここが止まるなら、原因は毛ではなく環境の側にあります。

この4か所を、同じコームで同じ力で通します。道具を替えたり力を変えたりすると、比べる相手がなくなります。素人とプロの差が出るのは腕の強さではなく、比べられる形で毎回同じことをやっているかどうかです。4か所のうち何か所が根元まで落ちたかを数えておくと、それがそのまま今日の記録になります。

毛質を整えるために見ているのは、この数字の動きです。飼い主への説明でも、サロンでは「毛が硬い」「毛が細い」といった生まれつきの言葉を使わず、「背中は通りますが、腰で止まっています」という言い方をします。生まれつきの部分は変えられませんが、止まる位置は、次に会うまでの2週間で動くからです。

止まる位置で分かれる3つ|切りやすい毛質が続く子に、共通していること

止まる位置は、根元・中間・毛先の3つに分かれます。どこで止まったかで、毛の側で起きていることも、その日にやることも変わります。同じ「絡んでいる」という見え方でも、根元で止まる子と中間で止まる子では、手を入れる順番が逆になります。

コームが止まる位置と、そのとき毛の側で起きていること
止まる位置指に来る手ごたえ毛の側で起きていることその日にやること
根元で止まる最初の数ミリで引っかかって進まない抜けた毛が根元に残り、生えている毛と組んでいる毛を起こしてから、下の層だけを先に抜く
中間で止まる途中まで軽く、真ん中で重く沈む毛の途中がうねり、隣の毛と噛み合っている根元側から少しずつ、短い距離を何度も通す
毛先で止まるさらっと落ちて、最後だけ引く毛先が乾いて割れ、先端どうしが引っかかる切る量を減らし、毛先の乾きの側を見る
どこでも止まらない歯が地肌まで一息で落ちる毛が一本ずつ独立して立っているそのまま切れる。カットしやすい毛質はこの状態

切りやすい毛質が続く子の家に共通しているのは、高い道具でも長い時間でもありません。止まる位置が浅いうちに、短い手が入っていることです。根元まで進んだ絡みをほどくには、毛を起こして下の層を分ける時間が要ります。中間で止まっている段階なら、通す回数を増やすだけで戻ります。毛先だけなら、その日に触らなくても構いません。毛質が続くというのは、毎日長く触っている状態ではなく、深いところまで進む前に一度通している状態のことです。

逆に、週に一度まとめて時間を取る家では、止まる位置がだんだん深くなります。1回あたりの時間は長いのに、根元の絡みは減りません。毛質を整える作業は、まとめて取り返せる種類のものではないと考えてください。トリミングの間隔が同じ2か月でも、間の日に一度も通していない子と、短く通している子では、次に来たときの止まる位置が違います。

犬と猫で、毛質が続く条件は入れ替わる

犬は上から崩れ、猫は下から崩れます。犬で最初に止まるようになるのは背中と腰で、猫は内股・脇・お腹の側から止まり始めます。同じ「毛質が続かない」でも、原因の入り口が反対側にあるので、見る場所を入れ替えないと空振りします。

猫の場合、毛質が続く条件をつくるのは、触る回数よりもその子が自分で届かなくなった場所を人が肩代わりしているかどうかです。犬の場合は、乗ったものが乾ききる前に一度通しているかどうか。どちらも、毛そのものを変えようとする作業ではありません。整えるのは毛の状態ではなく、毛が絡む条件の側です。

犬と猫で、毛質を整えるときに先に見る場所
先に止まり始める場所動いている条件先に手を入れる場所
犬背中・腰・しっぽの付け根散歩で乗るものと、乾くまでの時間帰宅後の背中から腰へ、毛の流れに沿って1往復
猫内股・脇・お腹・腰の後ろその子の体が後ろへ届くかどうか舐めなくなった場所を、短時間に分けて何度か
長毛の子耳のうしろ・首の下毛の向きが変わる場所に力が集まる毛を起こしてから、下の層を先に通す
シニアの子体を丸めたときに下になる側同じ姿勢で寝ている時間が長い寝床の面と当たる側から、力をかけずに通す

シニアの子について、現場では入浴そのものを減らす提案をすることがあります。洗えない子だからではなく、風呂の時間そのものが負担になる子だからです。湯に入れないと決めたぶん、間の日に毛へ触れる回数を増やしておくと、止まる位置は保てます。ここが、毛質を整える手の置きどころが年齢で変わっていく部分です。

毎日のひと手間で毛質を整える|毛質の変化から受診を考える線

mofuwa グルーミングスプレーは、毎日きれいにしてあげたいという気持ちを、実際に毎日やれる形にした1本です。犬も猫も体から脂を出しますから、昨日整えた毛は今日また汚れます。とはいえ毎日シャンプーをする家はまずありませんし、サロンへ毎日連れていくこともできません。吹きかけてコームかブラシを通す、その一往復だけで済むので、止まる位置を確かめる動作と、整える動作が同じ一手に収まります。

この1本で落ちるのは、汚れのもとになっている余分な脂です。アルカリ電解水が油となじんで乳化するため、地肌に要る皮脂は残ります。根元で止まる原因の多くは、抜けた毛と脂が一緒に固まっていることなので、そこがほどけると止まる位置は浅いほうへ動きます。毛質そのものを別のものに変えるわけではありません。変わるのは、コームが落ちる深さです。

量を気にしなくてよいのも、毎日続けるうえでは大きい点です。舐める場所にそのまま使えることを前提につくられているので、背中でも内股でも、場所を選んで手を止めずに済みます。グルーミングスプレーであると同時にブラッシングスプレーでもあるので、乾いた季節に毛が浮いて逆立つ状態も起きにくくなります。静電気で毛が散ると、コームの歯が毛先で引っかかって、止まる位置が正しく読めません。

使う場所は、犬なら帰宅後の背中から腰、猫なら最近舐めなくなった側です。整えるために新しい時間を取る必要はありません。犬は玄関で足を拭くとき、猫は膝に乗ってきたとき。すでにある場面に重ねると、2週間のあいだに10回以上の手が入ります。まとめて30分取るより、この積み上げのほうが止まる位置には差が出ます。

Caution止まる位置が動かないまま2週間が過ぎたとき

同じ場所で同じ深さに止まり続けて2週間動かない/左右で止まる深さが違ったまま戻らない/毛を起こしたときに地肌が赤い、かさぶたや湿りがある/同じ場所だけ毛が細くなり、抜けた毛が根元にたまり続ける/通すたびにその子が体をひねって逃げる。こうした残り方は、毛質の話から外れます。いつから、どの場所で、コームがどこで止まっていたか。この3つを書いた紙を持って、動物病院で診てもらう日を取ってください。毛の状態は日ごとに変わるので、その場で見せられるのは当日の姿だけです。2週間ぶんの記録があると、変化の向きまで伝わります。

2週間後、同じ場所にコームを入れる|毛質の様子見を切り上げる形

様子見という言葉に期限を付けておくと、迷う時間がなくなります。毛質の様子見は2週間です。最初の日に4か所を通して、止まった位置を書いておく。2週間後、同じ4か所を同じコームで通す。それだけで、続けてよいのか、手を変えるのかが決まります。

2週間後の比べ方と、そのあとの動き
2週間後の止まる位置読み取れること次の2週間
浅いほうへ動いた入れている手が条件に合っている同じ手をそのまま続ける
場所が減った止まる原因が一か所に絞れてきた残った1か所だけに時間を寄せる
変わらない手の回数か、入れる場所が合っていない回数を倍にするか、場所を入れ替える
深いほうへ動いた毛以外の条件が動いている様子見を切り上げて、記録を持っていく

毛質を整える作業に終わりの日はありません。カットしやすい状態というのは、一度つくれば保たれるものではなく、止まる位置が浅いところに戻り続けている状態のことです。今日できるのは、背中の中央にコームを一度入れて、どこで止まったかを紙の端に書いておくことだけです。比べる相手が1行あれば、次の2週間は迷わずに済みます。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

mofuwa グルーミングスプレー

300ml / 2,970円(税込)

特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。

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よくある質問

毛質は生まれつきのもので、家でできることはあるのでしょうか。
生まれつき決まるのは毛の太さと本数、そして下毛があるかどうかです。この部分は動きません。日によって動いているのは、根元に残った抜け毛の量と、毛先の乾きの度合いのほうです。コームが止まる位置は、この2つでほとんど決まります。つまり家で整えるのは毛そのものではなく、毛が絡む条件です。生まれつき硬い毛の子でも、根元に何も残っていなければ歯は地肌まで落ちますし、やわらかい毛の子でも、抜け毛が残っていれば数ミリで止まります。毛質の良し悪しという言い方をやめて、止まる位置という言い方に置き換えると、家でやれることが具体的に見えてきます。
ブラシとコーム、どちらで毛質を確かめればよいですか。
確かめる道具はコームです。ブラシは面で当たるので、表面の毛を寝かせながら進みます。見た目は整いますが、歯が下の層まで入っていないので、どこで止まっているのかが分かりません。コームは歯が一本ずつ独立していて、根元まで入ろうとする道具なので、止まった位置がそのまま指に返ってきます。日常のブラッシングはブラシで構いません。確かめる1回だけをコームにして、同じ場所、同じ力で通してください。歯の間隔も毎回そろえます。粗い歯と細かい歯を混ぜると、前回との比較ができなくなります。
トリミングの前日に整えておいたほうがよいですか。
前日だけ手を入れても、止まる位置はほとんど動きません。根元で組んでいる毛は、一晩では分かれないからです。差が出るのは、その前の2週間のほうです。逆に、前日に強く通すと、地肌が敏感になった状態でカットの日を迎えることになります。前日にやるなら、毛の流れに沿って軽く一往復して、止まる場所をメモしておく程度で十分です。そのメモを当日に渡してもらえると、現場では最初の確認を省けるので、その子が台に乗っている時間を短くできます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。