C14トリマー/獣医師視点
サロンが「予洗い」を大事にする理由
サロンの浴室では、シャンプー剤のボトルに手が伸びるまでの2分から5分を、ぬるま湯だけの予洗いに使います。洗う工程の前に置かれた、泡の立たない時間です。この数分に何の意味があるのかを飼い主へ説明できるかどうかで、家のシャンプーの仕上がりが変わります。予洗いの意味は、汚れを落とすことと、そのあとに泡が立つ条件をつくることの2つに分かれます。どちらも、水が毛の表面で止まっているあいだは進みません。ここでは現場が予洗いの終わりをどこで判断しているのかを、水のはじき方という目に見える形にして書きます。
泡が立たない数分を何に使っているか|最初にやる予洗いのチェック
予洗いとは、シャンプー剤をつける前に、ぬるま湯だけで被毛と地肌を濡らして流す工程のことです。現場では、この工程に全体の3割前後の時間をあてます。泡が立たないので、外から見ていると何も進んでいないように見えます。実際にはここで、土・砂・抜けた毛・古くなった皮脂といった、水だけで動くものを先に外へ出しています。シャンプー剤の仕事は、水で動かなかったぶんを引き受けることです。予洗いの意味は、この分担を先に決めてしまうところにあります。
もうひとつの意味は、泡が立つ条件をつくることです。乾いた被毛にシャンプー剤を落とすと、剤は毛の表面で濃いまま止まります。濃いまま止まった剤は広がらず、泡にもなりません。地肌まで水が入ったあとなら、同じ量でも全体へ広がります。予洗いを飛ばすと、シャンプー剤の量が増え、そのぶんすすぎに使う時間も水も増えます。使う量を減らすためにやっている工程だ、という説明のしかたのほうが、飼い主には伝わりやすい部分です。
- 予洗いのチェック1:手を当てた場所の毛が、はりついたまま戻らないか。戻るなら水は表面で止まっています
- 予洗いのチェック2:毛をかき分けたときに、地肌が濡れて色が変わっているか
- 予洗いのチェック3:流れていく水に、砂や毛が混ざらなくなったか
- 予洗いのチェック4:手のひらで押したときに、毛の中から水が出てくるか
予洗いを「3分」と時間で覚えてしまうと、毛の少ない子には長すぎ、毛の多い子には足りない数字になります。同じ3分でも、水が地肌まで届いている子と、表面で止まったままの子がいます。予洗いの意味は時間の側ではなく、水の届いた深さの側にあります。上の4つのチェックは、どれも1秒で確かめられるものです。時計を見るかわりに、この4つのうち2つを毎回見る形にしておくと、その子ごとの時間が自然に決まります。
水のはじき方で3つに分かれる|現場が使っている予洗いの目安
予洗いの目安は、被毛に湯を当てた最初の10秒で分かれます。湯が毛の上を玉になって転がるのか、毛に入って広がるのか、当てた場所だけ重く垂れるのか。この3つは、そのあとに必要な時間も、手の入れ方も違います。現場では、この最初の10秒で残りの組み立てを決めています。
| 湯を当てた直後の様子 | 毛と地肌で起きていること | そこからの予洗いの目安 |
|---|---|---|
| 玉になって転がり落ちる | 皮脂が層になって毛の表面をおおっている | 湯の温度を1度上げ、指で毛を割って当て直す |
| 当てた場所だけ重く垂れる | 外側の毛だけが濡れ、下の層が乾いている | 毛の流れに逆らって当て、下の層へ入れる |
| すっと入って広がる | 水が地肌まで届いている | 流れる水が澄むまで続け、そこで止める |
| 入るが、すぐ乾いた面が戻る | 抜けた毛が層になって水をはね返している | 先にブラシで抜けた毛を減らす |
| 部分によって3つが混ざる | 場所ごとに汚れの種類が違う | 混ざる場所を基準にせず、いちばん遅い場所に合わせる |
表の最後の行が、家でいちばん取りこぼされるところです。背中は入っているのに、脇の下と後ろ脚の内側はまだ玉になっている、ということが普通に起こります。全身の予洗いは、いちばん遅い場所が終わった時点が終わりです。早く終わった場所に合わせて次へ進むと、遅い場所だけが乾いたままシャンプー剤を受け取ります。その場所は泡が立たず、あとで「ここだけ落ちていない」という形で残ります。
トリミングの現場で予洗いの意味が強調されるのは、仕上がりの差が最初のこの数分でほとんど決まってしまうからです。剤を増やしても、時間を延ばしても、あとから取り戻すのは難しい。予洗いは洗う前の準備ではなく、洗う工程の1段目として数えられています。
毛の量と生え方で手が変わる|犬の予洗いの目安と、猫の場合
犬の予洗いの目安を左右するのは、毛の長さより、下毛があるかどうかです。下毛のある子は、上の毛が濡れても、その下に乾いた層が残ります。水はその層の上を横に流れていくので、時間を延ばしても深さは変わりません。手でやることは1つ、毛を割って湯の当たる面を作ることです。
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毛を割ってから湯を当てる
指で毛を分け、地肌が見える線をつくります。その線に沿って湯を流すと、下の層から濡れていきます。
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背中は後ろから前へ
毛の流れに逆らう向きで当てると、毛の根元が持ち上がって水の入り口ができます。犬の予洗いの目安としては、ここがいちばん時間の差が出る場所です。
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脇と内股は最後に回さない
汚れがたまりやすく、乾いたままになりやすい場所です。早い段階で一度当てておき、最後にもう一度確かめます。
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顔まわりは湯量を落とす
耳の中へ入らない向きに手を添え、流す量を減らします。ここだけは深さより、入れない向きのほうを優先します。
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流れる水が澄んだら止める
澄んだあとも流し続けると、必要な皮脂まで動きます。止める判断も、予洗いの意味の一部です。
猫の場合は、同じ手順を最後まで通せないことのほうが多くなります。水そのものが負担になる子では、予洗いの途中で体が硬くなり、そこから先は何をしても進みません。猫では、全身を1回で終わらせる前提を外して、汚れている場所だけを選んで先に済ませる組み方に変えます。あごの下、しっぽの付け根、後ろ脚の内側。この3か所が終わっていれば、その日はそこまでで止めても、被毛の状態はほとんど変わりません。
飼い主への説明で伝わりやすいのは、時間ではなく手の動きのほうです。「3分流してください」より「毛を割って、地肌の色が変わるまで」のほうが、その子の毛量に合わせて自然に調整されます。予洗いの目安を数字で渡すと、毛の量の差がそのまま抜け落ちます。現場が飼い主へ渡しているのは、時計ではなく確かめ方です。
どこで止めるかを決めておく|予洗いが続く時間と、長すぎたときに出るもの
予洗いが続く時間には上限があります。水が地肌まで届いたあとも流し続けると、落とさなくてよい皮脂まで動きます。地肌が乾きやすい状態になり、洗ったあとにフケが出たり、その子が同じ場所をなめたりします。予洗いの意味は「先に落としておく」ことなので、落とす対象がなくなった時点で目的は終わっています。
| 出るサイン | 何が起きているか | そのときの手 |
|---|---|---|
| 流れる水がずっと澄んだまま | 落とすものが残っていない | 止めてシャンプー剤へ移る |
| 毛が指にきしみ始める | 表面の皮脂が減りすぎている | すぐ止め、その日は洗う時間を短くする |
| その子が足を踏みかえ続ける | 体温が奪われている | 湯の温度ではなく、時間のほうを削る |
| 洗ったあとにフケが出る | 前回の予洗いが長すぎた可能性 | 次回は流れる水が澄んだ時点で止める |
この4つのサインのうち、家で見落とされやすいのは2番目です。きしみは「よく落ちた合図」と受け取られやすく、そのまま続ける理由になってしまいます。きしみは、落ちたことのサインではなく、落としすぎの入り口です。予洗いのチェックで見た4つは「まだ足りない」を見るためのもので、この表の4つは「もう足りている」を見るためのものです。両方を持っておくと、続く時間がその子ごとに決まります。
現場では、予洗いに使う時間の上限を、体の大きさではなくその子が同じ姿勢でいられる時間で決めています。踏みかえが増えたら、残りの工程を組み替えて早く出す。トリミングの浴室でいちばん避けたいのは、予洗いを完璧にして、そのあとの工程でその子が耐えられなくなることです。予洗いは長くやるほど良い工程ではありません。
洗う日と洗う日のあいだへ渡す|予洗いの意味を毎日の側に置くと出るサイン
予洗いでやっているのは、水で動くものを水のうちに外へ出しておく、という一点です。この一点だけなら、湯を使わない日にも置けます。散歩から帰ってきた日、抜けた毛が増える時期、地面の土がついた日。そのたびに浴室へ連れていくことはできませんが、水で動くものを外へ出す動作は、その場でできます。
洗う日と洗う日のあいだにこの動作を置くなら、mofuwa グルーミングスプレーを毛全体に吹きかけて、ブラシを通すだけで足ります。体から出る脂は毎日続くものなので、外へ出る子ほど、前の日に落としたぶんの上に新しい汚れが重なります。毎日きれいにしてあげたいという前提を、シャンプーの回数だけで受け止めることはできません。アルカリ電解水が油となじんで乳化するため、汚れのもとになっている余分な皮脂は浮いて落ち、地肌に要る皮脂は残ります(deck p16)。予洗いで起きていることと、浮かせて落とすという点では同じ方向を向いています。
量を気にせず使えるのも、この使い方には向いています。mofuwa グルーミングスプレーは舐めても問題のない基準でつくられているので、汚れた場所へたっぷりかけて、そのまま拭き取れます。お風呂そのものが負担になるシニアの子や猫では、この形にしておくと、体を濡らして乾かす工程を挟まずに済みます。洗う日の予洗いが短くなるのは、あいだの日にすでに外へ出ているぶんがあるからです。
予洗いを短くしても洗ったあとのフケが2週間以上続く/地肌の同じ場所だけ赤みが引かない/湯を当てた瞬間に鳴く、または体をひねって逃げる/前は平気だった温度で足を踏みかえる。こうした残り方は、流し方や時間の組み立てでは変わりません。いつから出ているか、体のどこかを書き出して、地肌の状態を動物病院で見てもらってください。毛の下で何が起きているかを確かめる工程は、家の浴室にはない領域です。
家で予洗いを続けるうえで持っておくものは2つだけです。水が地肌まで届いたかを見る4つのチェックと、もう足りていることを知らせる4つのサイン。この2つがあれば、その子の毛量が変わっても、季節で汚れ方が変わっても、止める場所は毎回決められます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 予洗いのあいだ、シャワーの温度は何度にしておくのがよいですか。
- 現場では人の手でぬるいと感じる温度、おおよそ35度前後を使います。高いほど皮脂は動きやすくなりますが、同時に落としたくないぶんまで動きます。温度を上げて時間を短くするより、温度はそのままで毛を割って当てる面を増やすほうが、地肌まで届く速さは変わります。湯が玉になって転がる子では、1度だけ上げて様子を見る形にとどめ、それでも入らないときは温度ではなく当て方を変えてください。
- 予洗いをしたあと、シャンプー剤はどのくらい減らせますか。
- 量を先に決めずに、泡の立ち方で決めるほうが確実です。地肌まで水が入っていれば、同じ量の剤が倍近い範囲に広がります。結果として、いつもの量では余ることになります。余った剤はすすぎの時間として戻ってくるので、最初に手のひらへ出す量を半分にして、足りなければ足す順番にしてください。足すのは簡単ですが、減らすことはできません。
- シャンプーの日に予洗いだけで終わらせてしまっても大丈夫ですか。
- その日の汚れが土や砂、抜けた毛だけなら、予洗いに当たる工程だけで被毛の状態はかなり戻ります。においや脂っぽさが残っているなら、水で動かないものが残っているということなので、そこはシャンプー剤の担当です。予洗いだけで終える日をつくること自体は問題ありませんが、毎回それで済ませていると、水で動かないぶんが少しずつ積み上がります。2回に1回は最後まで通す形にしておくと、積み上がりに気づける間隔が保てます。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
