C14トリマー/獣医師視点

「汚れが付きにくくなる」は本当か

公開日 2021年1月17日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色のブランケットの上に並んで休んでいる犬と猫
汚れが付きにくい状態というのは、毛の表面の話ではなく、汚れが引っかかるすきまが減っている状態です。写真:https://kaboompics.com//Pexels

同じ公園を同じ時間だけ歩いた2頭が、翌日になると別々の見え方をします。片方は前足の先だけがうっすらくすみ、もう片方は足の付け根まで色が変わったままです。トリミングの現場で「この子は汚れが付きにくい」と言うとき、指しているのは散歩中に汚れなかったという意味ではありません。どちらの毛にも同じだけ土は乗っていて、翌日に残っているかどうかだけが違います。汚れが付きにくいという言葉は、毛の表面が何かで覆われて弾いている状態ではなく、汚れが引っかかるすきまが少ない状態を指しています。この記事では、その背景にあるものと、家で動かせる条件を順番に見ていきます。

翌日に残るかどうかで見る|汚れが付きにくいという言葉の背景

汚れが付きにくいかどうかを、現場は散歩の直後には判断しません。帰ってきた直後の足は、どの子も同じように汚れています。差が出るのは、そこから乾くまでの数時間と、翌朝です。翌日にまだ色が残っている子と、乾いたあとに払っただけで元の色に戻る子がいます。この差のほうを、飼い主への説明では「汚れが付きにくい」と呼んできました。

言葉としてはあいまいですが、現場では便利な言い方でした。飼い主が気にしているのは、散歩の途中の見た目ではなく、家の床やソファに移る量と、次にサロンへ来るまでのあいだの手間だからです。付きにくいという言葉が実際に指していたのは、付着する量ではなく、留まる時間のほうです。この2つを分けておかないと、毛質そのものが変わったのかどうかも分からなくなります。

同じ量の土が乗ったあと、翌日までに起きること
時間留まりやすい毛で起きていること留まりにくい毛で起きていること
帰宅直後湿った土が毛の根元まで落ちる湿った土が毛の中ほどで止まる
乾くまでの数時間毛どうしのすきまで固まり、毛を抱き込む毛の表面で乾き、粉になって落ち始める
その日の夜触ると指に色が移る払うと大半が落ちる
翌朝色が残り、におい も残る元の毛色に戻っている
2日目以降上から乗った土が前の層に重なる前の層が残っていないので重ならない

表の下の2行が、いちばん大きい分かれ目です。前の日の土が残っている毛には、次の日の土が重なります。重なった層は乾くたびに締まるので、日を追うごとに落としにくくなります。汚れが付きにくいと言われる子は、この重なりが起きていないだけです。毛そのものが特別なのではなく、前の日にゼロへ戻っているという背景があります。

毛の表面ではなく、すきまの数|汚れが留まる理由と、汚れの考え方

土が留まる場所は、毛の表面ではなく毛と毛のあいだです。一本の毛はつるりとしていて、そこに土だけが張り付き続けることはほとんどありません。留まるのは、毛が寝て隣の毛と重なった部分、抜けた毛が根元に残ってできた束の中、そして毛の根元に出ている脂と混ざった場所です。この3つがすきまの正体で、数が多いほど汚れは長く残ります。

逆に言えば、毛が一本ずつ独立して立っている状態では、土が引っかかる場所そのものが少なくなります。乗った土は毛の表面で乾き、その子が体を振ったときや、人が払ったときに粉になって落ちます。汚れが付きにくいという言い方の中身は、この構造の差です。毛を覆う何かを足して弾かせるという考え方ではなく、引っかかる場所を減らしておくという考え方になります。

土が乗ってから、翌日までの分かれ道 同じ量の土が乗っても、毛のあいだにすきまが多いと、乾く段階で固まって留まります。すきまが少ないと、同じ土が粉になって落ちます。分かれるのは乗った瞬間ではなく、乾く途中です。 土が乗る 犬も猫も同じ量が乗る 乾く数時間 ここで分かれる 翌日の見え方 残るか、戻るか すきまが多い毛 すきまが少ない毛 毛を抱き込んで固まる 翌日も色が残る 次の日の土が上に重なる 表面で乾いて粉になる 払うと大半が落ちる 翌朝には元の毛色へ戻る
分かれるのは土が乗った瞬間ではなく、乾いていく数時間のほうです。

この考え方に立つと、汚れの話は落とし方の話から離れます。強く洗う、こすって取るという方向へ進むと、毛は途中で切れてささくれ、かえって引っかかる場所が増えます。汚れが付きにくい状態をつくる作業は、落とす力を上げる作業ではなく、すきまを減らしていく作業です。現場が飼い主へ伝えたいのも、この向きの違いです。

犬と猫では、汚れが乗る背景が入れ替わる|家で動かせる条件

犬の汚れは下から乗り、猫の汚れは接している面から乗ります。犬は地面から跳ね返る土と、草むらで足に触れるもの。背景にあるのは外の環境です。猫はほとんど外へ出ませんが、寝床の布、窓際の埃、自分で毛づくろいをするときに口から移る唾液の湿りが背景になります。どちらも「その子が長く触れている面」から乗ります。

汚れが乗る背景と、そこで動かせる条件
汚れが乗る背景翌日まで残りやすい場所家で動かせる条件
犬地面からの跳ね返りと草むら前足の先・後ろ足の内側・腹の下帰宅後、乾ききる前に一往復する
猫寝床の布と、毛づくろいの湿り内股・脇・あごの下寝床の布を替える間隔を短くする
長毛の子毛が地面に近く、面で拾う腰から後ろの下半分下の層から先に通して束をほどく
シニアの子同じ姿勢で寝ている時間が長い体を丸めたときに下になる側寝床の面と当たる側を先に触る

この表の右端が、家で実際に動かせるところです。土が乗ること自体は止められません。散歩に行かせないという選択はありませんし、猫を寝床から下ろすわけにもいきません。動かせるのは、乗ったものが乾いて固まるまでの数時間だけです。ここに一手入るかどうかで、翌日に残るかどうかが変わります。

その一手として現場で使われてきたのが、吹きかけてブラシを通すという形です。mofuwa グルーミングスプレーは、毎日きれいにしてあげたいという気持ちを、毎日やれる分量に収めた1本です。犬も猫も体から脂を出しますから、土が脂と混ざる前に一度動かしておくと、乾いたあとに粉になって落ちる側へ寄ります。アルカリ電解水が油となじんで乳化するので、落ちるのは汚れのもとになっている余分な脂で、地肌に要る皮脂は残ります。

グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、乾いた季節に毛が浮いて逆立つ状態も起きにくくなります。静電気で毛が立つと、空気中の細かい埃を拾い、毛どうしが絡んですきまが増えます。汚れが付きにくい状態をつくるという意味では、土そのものより、毛が絡まないまま保たれていることのほうが先にあります。舐める場所にそのまま使えることを前提につくられているので、猫の内股でも犬の口のまわりでも、場所を選んで手を止めずに済みます。

Caution汚れの残り方が、背景で説明できなくなったとき

散歩へ行っていない日も同じ場所が汚れて見える/片側だけ色が残り、反対側は戻る/払っても取れない粉が毛の根元に増え続ける/その場所を舐め続けて毛が薄くなってきた/においが日ごとに強くなる。こうした残り方は、外から乗ったものでは説明がつきません。いつから、どの場所で、何日たっても残っているのか。この3つを書いた紙を持って、動物病院で診てもらう日を取ってください。毛の見え方は洗った直後に変わるので、洗う前の写真を1枚残しておくと、当日に見せられるものが増えます。

2週間前の写真と並べる|汚れの変化は言葉では追えない

付きにくくなったかどうかは、記憶では比べられません。毎日見ている人ほど、少しずつの変化には気づかなくなります。現場でもこれは同じで、2か月ぶりに来た子の変化に気づけるのは、前回の状態を忘れているからではなく、そのあいだの姿を見ていないからです。家で汚れの変化を追うなら、同じ条件で撮った写真を2週間ごとに並べるのがいちばん早い方法です。

この3つをそろえると、2週間後の1枚が前の1枚と比べられます。翌朝に戻る日が増えていれば、入れている一手が条件に合っています。戻らない日が続くなら、動かしているのが背景の側ではないということです。犬なら乾くまでの時間、猫なら寝床の布。変えるのは手の強さではなく、どの条件を動かしているかのほうです。

汚れが付きにくくなるという言い方は、そのままでは確かめようがありません。翌朝に元の毛色へ戻っているかどうか、という一文に置き換えると、家でも現場でも同じものを見られます。今日できるのは、前足の先を1枚撮っておくことだけです。比べる相手が1枚あれば、2週間後の話は感想ではなくなります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。