C12Q&A・豆知識

妊娠中・授乳中の子にケア用品を使っていい?

公開日 2020年12月18日|文=mofuwa編集部

明るく静かな部屋で、淡い色の布の上に落ち着いて横たわっている淡い色の犬
妊娠中・授乳中は、いつもの手順をそのまま続けていいのかを、いちばん確かめたくなる時期です。写真:https://kaboompics.com//Pexels

妊娠していると分かった日の夜に、棚のスプレーとブラシを全部下ろして、ラベルの裏を一つずつ読み直した、という話を聞きます。この記事は「使っていい」とも「やめたほうがいい」とも書きません。妊娠中・授乳中の犬や猫にケア用品を使ってよいかは、その子を診ている獣医師にしか決められないからです。ただ、「動物病院に相談してください」という一行だけで終わらせると、相談の場で何を聞けばいいのか分からないまま診察が終わります。実際、いちばん多いつまずきは「聞き忘れた」ではなく「何を聞けばいいか分からなかった」のほうです。この記事では、妊娠中・授乳中のケアについて、動物病院で聞くべきことを5つに分けて渡します。持っていくもの、そのまま読み上げられる質問文、そして「使っていい」と言われたあとに家で決めておくことまでを、8つの問答で並べました。

「妊娠中の犬にケア用品を使っていいですか」に、この記事は答えを出しません

答えから書きます。妊娠中・授乳中の犬や猫にケア用品を使っていいかどうかは、この記事では決められません。使ってよいとも、やめたほうがよいとも書きません。ごまかしているのではなく、決める材料をこちらが持っていないからです。決められるのは、その子のお腹の中で何が起きているかを実際に見ている獣医師だけです。

材料が足りない、というのは具体的にこういうことです。妊娠の何日目なのか、何頭いるのか、食欲と体重がどう動いているのか、皮膚に別の変化が出ていないか。この4つが分からないと、同じ製品でも答えが変わります。ケア用品の側の情報だけをどれだけ集めても、その4つは埋まりません。だから、ここで「妊娠中の犬でも使えます」と書くのは、材料を見ずに判断を代行することになります。

もう一つ、製品の側にも理由があります。日常のケア用品は、妊娠中・授乳中の使用を前提にした試験を通っているとは限りません。通っていないから危ない、という意味ではありません。「調べられていない」と「安全ではない」は別のことです。ただ、調べられていない領域について、売っている側が「大丈夫です」と言い切ることはできません。ここは、書き手が正直でいるべき場所だと考えています。

Cautionこの記事の位置づけ

本記事は、日常のケアについての情報提供です。妊娠中・授乳中の犬や猫にどのケア用品を使ってよいかは、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。この記事は、その相談を短く、具体的にするための下準備として書いています。相談の代わりにはなりません。

妊娠中・授乳中のケアとは、何が入れ替わることを指すのですか

先に言葉の中身をそろえます。妊娠中・授乳中のケアとは、新しい道具を足すことではありません。いつもの手順のうち、体に負担がかかる工程を外すことです。ここを取り違えると、「妊娠中の犬に使える製品を探す」という方向に進んでしまい、いつまでも答えが出ません。探すのは製品ではなく、外していい工程のほうです。

ふだんのケアを分解すると、こうなります。抱き上げる、姿勢を保つ、濡らす、こする、乾かす、切る。このうち妊娠中に重くなるのは、道具の中身ではなく「姿勢を保つ時間」と「濡れている時間」です。お腹が大きくなると、仰向けや立たせたままの姿勢が続けられません。授乳中は、子が乳を飲む間隔があるので、そもそも長く離せません。工程の話だと分かると、聞くべきことも変わります。

授乳中に「使う場所」が問題になるのは、この最後の2つのためです。腹部と乳のまわりに使ったものは、子が口をつける場所に残ります。製品として舐めても問題のない基準で作られているかどうかとは別に、その場所に何かを足すこと自体が、まだ目も開いていない子にとっては環境の変化です。だから相談では「使っていいか」だけでなく「どこに使っていいか」を分けて聞くことになります。

被毛のほうも書いておきます。この時期は毛が抜けやすくなることがありますが、それが妊娠によるものなのか、皮膚の側で別のことが起きているのかは、家では切り分けられません。被毛の変化を見つけたら、ケアを増やす前に動物病院で見てもらってください。毎日見ている人ほど、変化の始まった日を覚えています。その日付が診察でいちばん役に立ちます。

なぜ、成分が同じでも「大丈夫」と言い切れないのですか

「成分表を見せたら大丈夫と言われた」という話と、「同じものを別の病院で止められた」という話が、どちらも起きます。矛盾しているように見えますが、そうではありません。製品の安全性についての情報は、必ず「ある条件のもとで」しか成立しないからです。条件が違えば、同じ成分でも答えは変わります。

同じ製品でも答えが変わる、4つの条件
条件何が変わるか家では決められない理由
どこに使うか背中と腹部では、子が口をつける可能性がまるで違います授乳の様子を見ていないと判断できません
どのくらいの量を、どのくらいの頻度で1週間に1回と毎日では、積み上がる量が違いますその子の体重と時期で見方が変わります
いまが何週目か妊娠の初期と後期、出産直後では、優先することが違います交配日や超音波の所見が要ります
ほかに何が起きているか皮膚に別の変化があると、順番が入れ替わります診察で見ないと分かりません

この4つのうち、家で分かるのは上の2つだけです。下の2つは、診てもらわないと埋まりません。だから相談が必要なのであって、飼い主の知識が足りないからではありません。妊娠中の犬や猫のケアで迷うのは、情報が足りないからではなく、判断に必要な情報の半分が診察室の側にあるからです。

逆に言うと、上の2つは持ち込めます。どこに使っているか、どのくらいの頻度で使っているか。この2つを正確に持っていくと、診察室の側は残りの半分を足すだけで答えが出せます。相談を短くするコツは、質問をうまくすることではなく、こちらが持っている半分を先に渡すことです。次の項で、その渡し方を具体的にします。

動物病院へ持っていくものは、この5つです

ここがこの記事の中心です。妊娠中・授乳中のケアについて相談するとき、持っていくものは5つあります。言葉で説明しようとすると、たいてい3つ目くらいで曖昧になります。物と数字で持っていくと、診察の3分で答えが出ます。

5つのうち、①と⑤は忘れやすい割に決定的です。①は「成分が読める形」で持っていくのが要点です。パッケージの表側の写真だけを撮ってしまう人が多いのですが、判断に使うのは裏側です。⑤は、聞かれてから思い出そうとすると数日ずれます。カレンダーの写真でもかまわないので、日付が見える形にしておいてください。

Point使っているものが複数あるときは、全部持っていく

スプレー、ブラシに付ける液、耳のまわりを拭くもの、寝床に使っている洗剤。1つに絞らず、その子の体に触れているものを全部並べてください。妊娠中の犬や猫のケアでは、1つずつ見るより、まとめて見たほうが早く線が引けます。「これは関係ないだろう」という判断は、こちらではなく診察室の側でしてもらうものです。

診察室で、そのまま読み上げられる質問文

持っていくものが決まったら、次は聞き方です。下の6つは、そのまま声に出して読める形で書いてあります。診察室では、思っていたことの半分しか言えないのがふつうです。読み上げるだけの文にしておくと、聞き忘れが減ります。スマートフォンのメモに貼っておいてください。

  1. 「いま使っているこれを、この時期に続けていいですか」

    現物を見せながら聞きます。「使っていいですか」ではなく「続けていいですか」にすると、すでに使っている前提が伝わり、答えが具体的になります。

  2. 「使っていいとしたら、体のどこまでですか」

    全身なのか、背中と足だけなのか、腹部と乳のまわりは外すのか。場所の線をここで引いてもらいます。この一問があるかないかで、家に帰ってからの迷いが変わります。

  3. 「頻度はどのくらいまでにしておきますか」

    毎日なのか、週に何回までなのか。数字で聞いておくと、家で毎日の手順に落とせます。曖昧なまま帰ると、たいてい元の頻度に戻ります。

  4. 「この子がなめてしまう場所に使っても差し支えありませんか」

    なめる可能性は、飼い主のほうがよく知っています。「なめます」と先に言ってから聞くと、答えがそこに合わせて返ってきます。

  5. 「出産までのあいだに、やめておいたほうがいいことはありますか」

    使ってよいものを聞くだけでなく、やめる側を聞きます。爪切り、長く保定する手入れ、体を濡らす手入れ。この時期は、外す工程のほうが答えとして返ってきやすい部分です。

  6. 「次に相談したほうがいいのは、どういう変化が出たときですか」

    受診の目安を、その場でもらっておきます。皮膚が赤い、同じ場所をなめ続ける、食べる量が落ちた、といった具体的な線を聞いておくと、次に迷いません。

この6つのうち、いちばん飛ばされやすいのが最後の2つです。相談は「今日どうするか」で終わりがちですが、必要なのは「次にどうなったら来るか」のほうです。妊娠中・授乳中は状態が動く時期なので、今日の答えが2週間後にも当てはまるとは限りません。次の線を一緒にもらってきてください。

「続けて大丈夫」と言われたあとに、家で決めておくこと

相談の結果、続けて差し支えないという答えをもらったとします。そこで終わりにせず、家に帰ってから3つだけ決めてください。診察室でもらった答えは条件つきです。条件を家の側で固定しておかないと、1週間で元の使い方に戻ります。

家に帰ってから決める3つと、書いておく場所
決めること決め方どこに書くか
使う場所言われた部位だけに限る。増やさない容器に直接、貼り紙をする
回数週に何回、と数字で決めるカレンダーに印をつける
やめる線この変化が出たら止める、を1つ決める同じカレンダーの端に書く

容器に貼り紙をする、というのは地味ですが効きます。この時期は、家族の誰かが代わりに世話をする場面が増えます。「背中だけ」と容器に書いてあれば、聞かなくても伝わります。妊娠中の犬や猫のケアで起きる行き違いのほとんどは、悪意ではなく、決めたことが自分の頭の中にしか無いことから起きています。

「やめる線」は1つでかまいません。おすすめは「同じ場所を続けてなめている」です。皮膚の変化は色や形で見ようとすると分かりにくいのですが、行動なら気づけます。この線を1つ持っておくと、迷ったときに手が止まります。止めたあとで動物病院に電話をすればいい、という順番を先に決めておくのが大事です。

毎日の記録も、1行で足ります。日付と、使った場所と、その日に気になったこと。3行以上書こうとすると3日で止まります。1行なら続きますし、次の診察でそのまま見せられます。授乳が始まってからは、母親側の記録が子の側の手がかりにもなります。

この時期に短くしておくのは、道具ではなく工程のほうです

ここで手を入れるのは、道具ではなく工程です。結論は「工程を減らす」です。新しいものを始めるのではなく、いまやっていることのうち、長い工程と濡れる工程を短くしておきます。予約が数日先になる家でも、今日から動かせるのはこちら側です。

乾いた布で拭くだけでも、被毛の表面に乗ったものはかなり動きます。目的を「きれいにすること」から「量を増やさないこと」に切り替えてください。数日のあいだであれば、それで足ります。皮膚の側に変化が出ていない限り、この期間に手を増やす必要はありません。

ふだんのケアに mofuwa グルーミングスプレーを使っている家も多いと思います。この時期に、その置き場所が変わるわけではありません。高機能性電解還元水(アルカリ電解水)でできた、布に含ませて被毛に使うケア用品です。布の大きさで、濡れる面と濡れている時間の両方をこちらが決められるので、この期間にいちばん重い「長い工程」が増えません。そのうえで、妊娠中・授乳中に続けてよいかどうかは、現物を持って動物病院で確かめてください。ふだん使っているものがあるなら、それが相談のときに持っていく「①現物」そのものです。棚から下ろして、鞄に入れてください。

Note「使わない期間」を悪いことだと思わなくていい

数日から1〜2週間、いつものケアを止めることになっても、それで何かが崩れるわけではありません。毎日のケアは、積み上げてきた分がある人ほど、少し空けても戻せます。この時期に増やすべきなのは手の回数ではなく、見る回数です。食べる量、水の減り方、寝ている場所。数字で見られるものを毎日1回見ておくと、診察で話せることが増えます。

5つの答えを、自分が決めることと決めないことに分ける

最後に、ここまでを時間の順に並べ直します。妊娠中・授乳中のケアは、判断そのものを診察室に預けたうえで、その前後を飼い主が受け持つ形になります。下の表は、やることを増やすためのものではなく、どこまでが自分の担当かを分けるための表です。

相談の前・当日・あとで、それぞれ受け持つこと
いつ誰が決めるかやること
相談の前飼い主使っているものを全部並べる。現物か、成分表示の面の写真を用意する
相談の前飼い主使っている場所と頻度を、部位の名前と数字で書き出す
相談の前飼い主交配日・出産予定日・産んだ日・子の日齢を、日付で用意する
相談の当日獣医師続けてよいか、どこまでか、どの頻度までかを決める
相談の当日獣医師次に相談する目安(どういう変化が出たとき)を決める
相談のあと飼い主場所・回数・やめる線の3つを、グルーミングスプレーの容器とカレンダーに書いて固定する
相談のあと飼い主1日1行だけ記録する。日付、使った場所、気になったこと

この表の真ん中の2行だけが、こちらでは決められない部分です。逆に言えば、それ以外は全部こちらで準備できます。準備をして行くと、診察の時間が「情報を集める時間」ではなく「判断してもらう時間」に変わります。妊娠中の犬や猫を連れて何度も通うのは、それ自体が体に負担になるので、1回の相談で終わらせられる形にしておくのは意味のあることです。

この記事が最後まで「使っていい」と書かなかったのは、線を引く場所を間違えないためです。ケア用品の情報は、こちらから出せます。その子の体の情報は、診察室からしか出ません。2つがそろって初めて答えになります。片方だけで答えの形をした文章を書くことはできますが、それは答えではありません。

Cautionこの時期は、迷った時点で動物病院にご相談ください

妊娠中・授乳中に、食べる量が落ちた、水を飲む量が変わった、同じ場所をなめ続けている、皮膚が赤い、被毛の抜け方が急に変わった、乳のまわりを触られるのを嫌がる、元気の落ち方が続いている。こうした変化があるときは、家でのケアを調整する前に動物病院にご相談ください。この時期は状態が動くので、様子を見る期間を長く取らないほうが結果として短く済みます。使っているものの現物と、変化に気づいた日付を持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。