C05犬種・猫種別ケア

秋田犬のダブルコート|抜け毛を毎日のケアで防ぐ

公開日 2021年2月23日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の木の床に、大きな体の日本犬が静かに座っている
構造が同じでも、面積が変われば総量が変わります。秋田犬の抜け毛は、時間の割り当てから考えます。写真:Lum3n/Pexels

秋田犬の肩から始めて、40分たっても腰まで届いていない。足元には毛の山ができていて、ブラシの目はとっくに詰まっている。それでも、体の半分がまだ残っています。抜け毛でつまずくのは、量が多いからというより、始めるまで総量が読めないからです。被毛の作りそのものは、柴犬とよく似ています。違うのは、その作りが載っている体の面積のほうです。この記事では、なぜ途中で終わってしまうのかという理由と、時間の割り当てから組み直す考え方を書きます。

秋田犬の抜け毛は、始めてみるまで総量が分かりません

春のよく晴れた朝、庭に出て、ブラシを片手に秋田犬の肩から始める。最初の5分は気持ちのいい作業です。下毛がふわりと持ち上がり、面白いほど取れます。10分で足元に山ができ、20分でブラシの目が詰まる。そこではじめて、まだ肩と背中の一部しか終わっていないことに気づきます。

抜け毛が多い犬だとは聞いていた。覚悟もしていた。それでも計算が合わないのは、覚悟していたのが「量」で、実際に足りなくなるのが「時間」だからです。総量は、始めてみるまで分かりません。そして分かったときには、もう片手がふさがっています。

ここで多くの方が、いったんやめます。犬のほうも飽きてきますし、こちらの腕も止まる。翌日にまた続きから、と思ってブラシを持つと、今度はどこまでやったのか分からなくなっている。昨日終えたはずの肩からも、また下毛が出てくるからです。

秋田犬と暮らしはじめて最初の換毛期に、この形でつまずいた経験を持つ方は少なくありません。やり方が間違っていたわけではありません。時間の見積もりだけが、体の大きさに合っていなかったのです。

Note終わらないのは、続かないからではありません

途中で止まると、集中が続かなかった、根気が足りなかった、と受け取ってしまいがちです。けれど1回の長さを延ばしても、この形は解けません。2時間続けられる人でも、換毛期の秋田犬の全身を1回で終えるのは現実的ではないからです。変えるのは、続ける長さではなく、1回で受け持つ範囲のほうです。

同じダブルコートでも面積が違う|秋田犬の抜け毛が終わらない理由

秋田犬の被毛は、外側の硬い上毛と、内側のやわらかく密な下毛でできたダブルコートです。上毛が雨と風を受け、下毛が空気をためて体温を保ちます。寒い土地で育った日本犬に共通する作りで、柴犬の被毛と、構造としてはほとんど同じものです。換毛期に下毛がまとまって抜けるところも同じです。

だから、柴犬の抜け毛について書かれた記事は、秋田犬にもそのまま当てはまるように読めます。上毛と下毛の話も、換毛期の時期の話も、根元から毛先へという向きの話も、間違っていません。それでも、そのとおりにやると途中で終わります。構造は同じでも、その構造が載っている面積が違うからです。

体高が倍近く、胴回りも倍近くあれば、被毛が生えている面はそのぶん何倍にもなります。1平方センチあたりに生えている毛の密度が同じでも、面が広ければ、抜ける総量はそのまま比例して増えます。同じ密度で、面が数倍。ここが秋田犬の抜け毛の中心にあります。量の差ではなく、面積の差です。

構造が同じでも、面積が変わると何が変わるか
小柄な日本犬秋田犬
被毛の構造上毛と下毛のダブルコート同じ。上毛と下毛のダブルコート
換毛期の起こり方春と秋に下毛がまとまって抜ける同じ。時期のずれ方も似ています
1回で全身を回る時間区切れば、一続きで終えられる一続きでは、まず終わりません
1回で出てくる量袋の底が埋まる程度袋がいくつも要ります
途中でやめたとき残りが少なく、次で取り戻せる残りのほうが多く、翌日も続きます
道具の目詰まり一度取れば足りる作業の途中で何度も外す必要があります

この表で見ておきたいのは、上の2行と下の4行の性質が違うということです。上の2行は、知っていれば足ります。下の4行は、段取りを変えないと解けません。柴犬向けの情報が役に立たないのではなく、上の2行までしか運んでくれない、ということです。

もうひとつ、面積が広いことは、手が届く順番にも効いてきます。人が立ったまま届くのは、肩から背中にかけての面です。腰から下、後ろ脚の内側、しっぽのつけねは、しゃがむか、犬に向きを変えてもらわないと届きません。広い面をもつ犬では、届きやすい場所と届きにくい場所の差が、そのまま抜け毛の残り方の差になります。

Note毛の量が多いのではなく、面が広いのだと考える

「毛が多い犬」と考えると、対策は「たくさん取る」に向かいます。すると1回を長くする方向にしか進めません。「面が広い犬」と考えると、対策は「面を分ける」に向かいます。同じ抜け毛の話でも、この言い換えだけで、次にやることが変わります。秋田犬の抜け毛では、後者のほうがうまくいきます。

1日で全身をやめる|秋田犬の抜け毛に時間を割り当てる考え方

変えるのは、道具でも力加減でもなく、時間の設計です。1回で全身を終える、という前提を先に外してください。そのうえで、体をいくつかに割り、日ごとに受け持つ場所を決めます。1周するのに何日かかっても構いません。周り続けているかぎり、どこかが放置されることはなくなります。

体を4つに割って、日ごとに受け持つ
日受け持つ場所この場所の特徴
1日目首まわりと胸毛が厚く、下毛が溜まりやすい面です
2日目背中と体の側面立ったまま届く、いちばん進めやすい面です
3日目腰としっぽのつけね後回しになりやすく、残りが出やすい面です
4日目後ろ脚と、脚の内側しゃがむ必要があり、嫌がる子もいる面です
5日目以降1日目に戻る換毛期は、この周回を止めないことが軸になります

4つに割るのは一例です。3つでも6つでもかまいません。大事なのは、始める前に「今日はここだけ」と決めておくことです。決めていないと、その日の勢いで進んだところまでが今日の範囲になり、翌日にどこから始めるかが分からなくなります。

  1. 体を割って、場所に名前をつける

    「首」「背中」「腰」「後ろ脚」のように、口に出せる名前にしておきます。カレンダーや冷蔵庫に4行だけ書いておくと、思い出す手間がなくなります。覚えておこうとしないでください。換毛期は2か月ほど続きます。覚えていられる長さではありません。

  2. 始める前に、その日の範囲を口に出す

    「今日は腰だけ」と言ってから始めます。決めておくと、終わりが来ます。終わりがある作業は、翌日も始められます。逆に、範囲を決めずに始めた日は、必ず途中で終わったという感覚だけが残ります。秋田犬の抜け毛で消耗するのは、たいていこの感覚のほうです。

  3. 根元に指を入れてから、毛先へ向かって運び出す

    上毛の上をなでても、下毛は出てきません。指を根元まで入れて毛を分け、その線に沿って、根元から毛先の向きへ運び出します。抜けた下毛を「取る」というより、外まで「運ぶ」作業です。1か所を何度も往復するより、線を少しずつずらしていくほうが進みます。

  4. 道具の目が詰まったら、その場で外す

    面が広いぶん、途中で必ず詰まります。詰まったまま続けると、毛が乗らなくなるだけでなく、上毛の表面を滑るだけになります。外すための入れ物を、手の届くところに置いてから始めてください。取りに行くために立ち上がると、そこで終わってしまいます。

  5. 空気が乾く時期は、静電気を先に落とす

    冬から春先にかけては、とかすほど毛先が広がって寄ります。グルーミングスプレーを布に含ませ、上毛の表面を一度なでてからにしてください。表面がしっとりしたら、その日のうちに乾かしきるところまでを1セットにします。洗う回数そのものを増やすと、地肌のうるおいまで一緒に減ります。

この割り方に変えると、1回は10分から15分ほどで終わります。短くしたのではなく、範囲を決めたぶん、終わりが来るようになっただけです。1日の合計時間は、以前とそれほど変わらないこともあります。変わるのは、やり残しが積み上がらなくなることのほうです。

Point換毛期の外は、周回の間隔をあけて構いません

換毛期は毎日1か所ずつ回る形になりますが、それ以外の時期は、同じ4か所を3日おき、あるいは週に一度でも足ります。やめてしまうのではなく、間隔をあけるだけにしてください。周回そのものが止まると、次の換毛期にまた「どこから始めるか」から考えることになります。

毎日きれいにしておきたい、という日に使うのがグルーミングスプレーです。布に含ませて、その日に受け持つ場所だけを、毛の流れに沿ってなでるように拭いてください。体を割って回るやり方と、同じ区切りで使えます。秋田犬は面が広いので、全身へ一度にかけるより、その日の1か所ぶんだけに使うほうが手が止まりません。とかす前に毛先の滑りがそろっていると、ブラシが上毛の表面を滑るのではなく、根元の側まで道具が入ります。舐めても差し支えない基準(清涼飲料水の規格基準)をクリアしているので、面の広い犬でも量を気にせず使えます。ブラッシングスプレーとしても使えるため、乾いた時期に毛先が広がって寄るのも起きにくくなります。

抜け毛の量ではなく、毛先と根元の変化のほうを見る

換毛期の秋田犬と暮らしていると、抜けた毛の量そのものは、日によってかなり違います。多い日もあれば、ほとんど出ない日もある。量は、その日の天気や湿り、前回からの間隔で動きます。だから量の増減だけを追っても、その子の変化はつかめません。

見ておきたいのは、毛先と根元のほうです。毛先がぱさついて広がってきていないか。根元に指を入れたとき、地肌までまっすぐ届くか。同じ場所を、同じ順番で触っていれば、前と違うことには気づけます。体を割って周回する形にしておくと、この確認が毎日の作業に自然に入ります。

Caution換毛期のせいにしないで、地肌を診てもらう場合

地肌が赤い、じくじくしている、いつもと違うにおいがする、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が丸く広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、換毛期だからと様子を見ずに、動物病院にご相談ください。被毛の厚い犬は、地肌の変化が外から見えにくく、気づいたときには進んでいることがあります。地肌が丸く見えている場所が1か所なのか、周回表のどの日の場所なのか、最後に触ったのがいつなのかまで控えておいてください。

相談の前には、気づいた場所、いつからか、その日にどこまで手を入れたかをメモしてください。体を割って回している方は、その周回表がそのままメモになります。いつその場所を最後に触ったかが分かると、変化がどのくらいの速さで起きたのかも一緒に伝えられます。

秋田犬の抜け毛は、少なくなることはありません。広い面に、密な下毛が生えている犬だからです。減らそうとするのではなく、受け持つ範囲を決めて回り続ける。最初の換毛期にうまくいかなかった経験は、やり方が悪かったからではなく、時間の設計が体の大きさに追いついていなかっただけです。設計を変えれば、同じ毎日のケアがそのまま続くものに変わります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。