C05犬種・猫種別ケア
甲斐犬はなぜアンダーコートの詰まりが起きやすいのか。ダブルコートから考える
甲斐犬の背中をとかしていたら、コームの先に小さな種のようなものが引っかかった。草地を歩いた日の、夕方のことです。指で毛を分けてみると、抜けた下毛と一緒に、乾いた土のかたまりと、細い枝の折れたかけらが混ざっていました。アンダーコートの詰まりは、抜けた毛だけでできているとはかぎりません。山の斜面を歩く犬として使われてきた作りが、そのまま毛の中に外のものを持ち帰ります。抜け毛だけの詰まりと、混ざりものを抱えた詰まりでは、ほぐす順番が変わります。この記事では、なぜそうなるのかを先に、そのうえで取りかかる前に何を見るのかを書きます。
甲斐犬のアンダーコートには、抜け毛以外のものが混ざります
甲斐犬の被毛は、硬く張りのある上毛と、その内側の細かく密な下毛でできたダブルコートです。体格は中型で、無駄のない締まった体つきをしています。この犬種は、山の斜面や沢筋を歩く猟の相棒として使われてきました。藪をくぐり、草の中を進み、落ち葉の積もった斜面を上り下りする。被毛は、その環境で体を守るためにできています。
外側の上毛が硬いことには、意味があります。枝や草が直接地肌に当たらないように、外で受け止めているからです。ただし、受け止めたものすべてが弾かれるわけではありません。上毛の隙間をくぐって、内側まで入ってくるものがあります。そして入ったものは、密な下毛に受け止められ、そこで止まります。
散歩から帰って体をなでても、たいてい何も感じません。上毛の表面はさらりとしていて、外から見ても分かりません。入り込んだものは、上毛ではなく下毛の層にあります。指を根元まで入れて毛を分けたときに、はじめて姿を見せます。
- 草の種、のぎ:先が細く、毛の流れに沿って奥へ進みます。脇や内股、耳のうしろに残りやすいところです
- 土と砂:地面に近い腹側や脚の下半分に入り、乾くと粒のまま毛にはさまります
- 細い枝、落ち葉のかけら:背中や脇腹で上毛にひっかかり、動くうちに内側へ落ちます
- 泥:湿ったまま乾くと、毛どうしを束ねたまま固まります
- 抜けた下毛そのもの:換毛期には、上の4つと同時に大量に出てきます
ここが、甲斐犬のアンダーコートの詰まりを考えるときの出発点です。抜けた下毛だけが溜まっているのか、それとも外から入ったものが芯になっているのか。同じ「指が途中で止まる」という手ざわりでも、中身が違えば、手の入れ方が変わります。
しかも、この2つは混ざります。抜けた下毛は、それだけでは面のまま広がるだけですが、そこに種や土のかけらが入ると、まわりの毛を巻き込んで芯になります。さらに皮脂がまとめ役になって、束のまま固まっていきます。抜け毛と外来物と皮脂が、同じ場所で一つになる。これが、抜け毛だけの詰まりとは扱いが変わる理由です。
同じ甲斐犬でも、河川敷を歩く子と、舗装された道だけを歩く子とでは、毛の中に入るものが違います。まず、その子がどこを歩いているかを思い出してください。草地や土の上を歩く時間が長いほど、抜け毛だけの詰まりとして扱うと合わなくなります。歩く場所を変える必要はありません。帰ってから見る場所が変わるだけです。
見る・外す・運び出す|甲斐犬のアンダーコートをほぐす順番
手順の最初に置くのは、ブラシではありません。取りかかる前に、何が混ざっているかを見ることです。見ないまま道具を入れると、外せば済んだはずの種や枝を、毛ごと引っぱることになります。順番としては、見る、外す、運び出す。この3つの向きで進めます。甲斐犬のアンダーコートに手を入れるときは、この順番そのものが手順です。
| 混ざっているもの | 留まりやすい場所 | 先にすること |
|---|---|---|
| 草の種・のぎ | 脇、内股、耳のうしろ、指のあいだ | 毛をほぐす前に、種のほうを指で外す |
| 土・砂 | 腹側、脚の下半分、地面に近い面 | 乾いてから、毛の流れに沿って落とす |
| 細い枝・落ち葉 | 背中、脇腹、しっぽのつけね | 入ってきた向きへ、そのまま戻して抜く |
| 乾いた泥 | 脚の内側、胸の下 | 湿らせてゆるめてから、毛を動かす |
| 抜けた下毛だけ | 首まわり、腰、後ろ脚の後ろ側 | 根元から毛先へ向けて運び出す |
表の上から4行は、外せるものです。いちばん下の行だけが、運び出すものです。この2つを同じ動作でやろうとすると、どちらもうまくいきません。外すものが残ったままとかせば芯が動かず、運び出すものに指先だけで向かえば、いつまでも減りません。
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明るいところで、毛を分けて中を見る
窓際か、同じ照明の下に場所を決めます。毛の流れと直角に、親指と人差し指で上毛を左右へ開き、地肌までの層を見てください。この最初の一手を飛ばさないことが、甲斐犬でのいちばんのコツです。見るのは、脇、内股、耳のうしろ、脚の下半分、しっぽのつけね。散歩で草をくぐった日は、ここから始めます。
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外せるものを、毛より先に外す
種や枝のかけらは、指でつまんで、入ってきた向きへ戻すように抜きます。横に引くと、まわりの毛を巻き込みます。先の細い種は、毛の流れと同じ向きに奥へ進む性質があるので、奥へ押さない向きを選んでください。指で取れないものは、無理をせずそのまま残して構いません。
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土と乾いた泥は、乾かしてから落とす
湿っているうちにこすると、かえって毛の間へ広がります。乾いてから、毛の流れに沿って手で払い、そのあとに目の粗いコームを入れます。固まった泥は、布をわずかに湿らせて表面をゆるめてから動かしてください。ゆるめるのは泥で、毛ではありません。
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抜けた下毛を、根元から毛先へ運び出す
外すものが片づいてから、はじめて全体をとかします。指を根元まで入れて毛を分け、その線に沿って、根元から毛先の向きへ運び出します。1か所を往復するより、線を少しずつずらしていくほうが進みます。換毛期は、この段階でいちばん量が出ます。
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終わったら、地肌を指の腹で確かめる
とかし終わった場所に、もう一度指の腹を入れます。地肌までまっすぐ届けば、そこは終わりです。まだ途中で止まるなら、残っているのは抜け毛ではなく、外から入ったものかもしれません。最初の「見る」に戻ってください。
全身を毎日ほぐす必要はありません。草地や土の上を歩いた日だけ、脇・内股・耳のうしろ・脚の下半分・しっぽのつけねの5か所に指を入れる。これを帰宅後の流れに入れてしまうと、思い出さなくても回るようになります。何も混ざっていない日は、そこで終わりで構いません。毎日のケアは、ここまでで足ります。
束のまま動かないときのコツ|引かずにゆるめるやり方
見て、外して、それでも束のまま動かない場所が残ることがあります。芯に何かが入ったまま、皮脂と抜けたアンダーコートが巻きついて固まっている状態です。ここで力を足しても、動くのは毛ではなく皮膚のほうです。やり方を、引く方向からゆるめる方向へ切り替えてください。
| やりがちなこと | 起きること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 根元からコームを入れる | 束ごと皮膚が持ち上がる | 根元を指ではさんで支え、毛先の側から入れる |
| 一度でほどききろうとする | 途中で嫌がられ、次が難しくなる | 1日に少しずつ、何日かに分ける |
| 強く引いて抜く | 毛が切れ、地肌に負担がかかる | 束を指で二つに割って、細くしてから戻る |
| 濡らして力任せに動かす | 水を含んで、かえって締まる | 布で表面だけ湿らせ、ゆるんだ分だけ動かす |
| はさみを入れる | 先が地肌に届くことがあります | 触らずに残し、サロンに場所を伝える |
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束の根元を、指ではさんで支える
親指と人差し指で、束の根元と地肌のあいだをはさみます。こうしておくと、コームを入れたときの力が皮膚まで伝わりません。支える手が先で、動かす手はそのあとです。片手で支えられない大きさなら、その日はほぐさずに残してください。
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毛先の側から、少しずつ上へ移す
束の外側、毛先に近いところから、目の粗いコームを浅く入れます。ほどけた分だけ、少し根元寄りへ移す。これをくり返します。1回でほどききらなくてかまいません。今日は外側だけ、と決めて終えるほうが、翌日に続きます。
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太い束は、二つに割ってから戻る
太いまま向かうと、どこにも動きません。指で束を縦に二つに割り、細くしてから、それぞれに毛先の側から入ります。割るときも、根元は必ず支えたままにしてください。
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その日にどこまで進んだかを、書いておく
場所と日付を1行だけ残します。甲斐犬のアンダーコートは、換毛期には毎日状態が変わります。前回どこで止めたかが分かると、翌日は続きから始められます。書いていないと、毎回いちばん目立つ場所からやり直すことになります。
束を早く取ろうとして、引き抜く・はさみを入れる、はどちらも避けてください。固まった束の下には、引っぱられて持ち上がった皮膚があります。はさみの先が、毛ではなく皮膚に届きます。芯に枝や種が入っている場合はなおさらです。ほどけないものは無理をせず、トリミングサロンに場所を伝えて任せてください。
草をくぐった日に毎日きれいにしておきたい、という場面で使っているのが mofuwa グルーミングスプレーです。布に含ませて、脇や内股のようにこすれる面を、毛の流れに沿ってなでてください。とかす前に毛先の滑りがそろっていると、コームが上毛の表面で跳ねずに、下毛の層まで入ります。甲斐犬は上毛が硬いので、滑りが足りないまま入れると、歯が表面を滑って同じ場所を往復することになります。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーとしても使える1本で、舐めても差し支えない基準(清涼飲料水の規格基準)をクリアしているので、自分で舐める脇や内股にも量を加減せずに使えます。すでに固まって動かない束には吹きかけず、指で割ってゆるんだところへ入れてください。
混ざりものが見当たらないのに固まるときは、皮膚のほうを見る
ここまでは、外から入ったもので説明のつく詰まりの話でした。毛を分けて見ても何も混ざっていないのに、同じ場所が固まり続けるときは、別の見方をしてください。舗装された道しか歩いていない日が続いているのに束ができる、換毛期を過ぎても一か所だけ戻らない、といったときです。
- 何も混ざっていないのに、同じ場所だけ固まる:ハーネス、首輪、寝床の縁など、毎日同じ場所を押さえているものがあるかもしれません
- その場所を気にしている:なめる、かく、地面にこすりつける。詰まりより先に、皮膚のほうを見てください
- ほどいたあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
- 種を外した跡が、ふさがらない:先の細い種は、外したあとの地肌に跡が残ることがあります
地肌が赤い、じくじくしている、いつもと違うにおいがする、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、指のあいだを気にし続けている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、自己判断でほどこうとせず、動物病院にご相談ください。上毛の内側は外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。5か所を見ても混ざりものが見つからず、同じ場所が2週間戻らないときは、その場所を伝えてください。
相談やトリミングの前には、気づいた場所、いつからか、直前にどこを歩いたかをメモしてください。歩いた場所が分かると、混ざりものによる詰まりなのかどうかを、その場で切り分けられます。ほどけなかった束は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。ほどこうとした跡があると、もとの状態が分からなくなります。
甲斐犬のアンダーコートに何かが入ることは、なくなりません。山を歩いてきた犬の被毛が、そういう作りをしているからです。入らないようにするのではなく、入ったものを見てから手をつける。見る、外す、運び出す。この順番を守るだけで、同じ場所が何度も固まるということは、ずいぶん減ります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 甲斐犬のアンダーコートは、抜け毛だけをとかしていれば大丈夫ですか?
- 草地や土の上を歩く子では、抜けた下毛に草の種や土、枝のかけらが混ざります。混ざったものが芯になって束をつくるので、とかすだけでは同じ場所が繰り返し固まります。とかす前に毛を分けて中を見て、外せるものを先に外す順番にしてください。
- 散歩から帰るたびに、全身をブラッシングしたほうがいいですか?
- 全身でなくてかまいません。草地や土の上を歩いた日だけ、脇、内股、耳のうしろ、脚の下半分、しっぽのつけねの5か所に指を入れて中を見てください。何も混ざっていなければ、その日はそこで終わりで足ります。換毛期だけ、全体をとかす日を足す形にすると続きます。
- 束になった毛が動かないとき、家でどこまでやってよいですか?
- 根元を指ではさんで支え、毛先の側から目の粗いコームを浅く入れるところまでです。1回でほどききる必要はありません。引き抜く、はさみを入れるのは避けてください。芯に枝や種が入っていることがあり、先が地肌に届きます。地肌が赤い、痛がるといったときは、先に動物病院にご相談ください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
