C09シーン別・暮らし
賃貸でにおいが気になる人のための新幹線・飛行機|5分で終わらせるケア
新幹線の指定席に座ってキャリーを足元に置いた瞬間、家では一度も気にしたことのない距離に、自分の鼻がありました。膝から30センチ。賃貸の部屋なら、寝床は廊下の先で、こちらはソファにいます。同じにおいでも、その距離で嗅いだことがありません。賃貸でにおいが気になる人ほど、外へ出た日に判断ができなくなります。家では自分の鼻が基準でしたが、その鼻は毎日同じ空気を吸って慣れているぶん、外では当てになりません。この記事は、周囲にどう思われるかという話ではありません。新幹線や飛行機でペットと移動する日に、賃貸で使っていた基準がなぜそのまま使えないのかを書いて、出発前の5分で終わる手順に落とします。
乗った瞬間に、においの基準が入れ替わる|賃貸で気にしていたことと、新幹線での変化
賃貸で暮らしていると、においの基準は自分の部屋のどこかに置かれています。玄関を開けた1秒目、寝床のそば、食器を洗うとき。その3か所で毎日確かめているうちに、こういうものだという線ができます。ところがペットと新幹線に乗ってキャリーを足元に置くと、その線が使えません。距離が違い、時間が違い、換気の条件も違います。同じ子の同じにおいでも、測る道具のほうが入れ替わっています。
変わっているのは3つです。まず距離。賃貸の部屋なら、寝床とこちらのあいだには何メートルかあります。新幹線の座席では、キャリーは膝から30センチのところにあります。次に時間。家では気になれば窓を開けますが、ペットを連れた車内では2時間、そこから動けません。そして換気。飛行機も新幹線も窓が開きません。家で使っていた「気になったら換気する」という手が、まるごと外れます。
| 賃貸の部屋 | 新幹線・飛行機 | |
|---|---|---|
| 鼻までの距離 | 数メートル | 30センチ前後 |
| 嗅いでいる時間 | 気づいたときだけ | 乗っているあいだずっと |
| 換気 | 窓を開ければ入れ替わる | 自分では動かせない |
| 自分の鼻 | 毎日吸っていて慣れている | 慣れの外にある距離で嗅ぐ |
| 逃げ場 | 別の部屋へ移れる | 座席から動けない |
| 判断できるか | できる。基準がある | 基準が入れ替わっていて、できない |
ここで大事なのは、においが強くなったわけではないということです。ペットと新幹線に乗った日に落ち着かないのは、においの量が増えたからではなく、測り方が変わったからです。賃貸で気にしていた人ほど、外での違和感を「ふだん気づいていなかっただけかもしれない」と受け取ります。実際には、家では届かない距離で嗅いでいるだけ、ということのほうが多くあります。
もう一つ、外の基準について書いておきます。キャリーに入っていれば、周囲に強く届くことはほとんどありません。布や樹脂の壁があり、通気口は限られていて、車内には空調が回っています。届いているのは、まずキャリーのすぐ上にいる自分のところです。だから、外で気になったからといって、賃貸の部屋のほうが悪かったという結論にはなりません。測る条件が違う2つを、そのまま比べないでください。
新幹線でにおいが気になった日の夜に、賃貸の部屋を隅々まで拭き上げたくなることがあります。そこは切り離して構いません。外で使った基準は、30センチの距離で2時間という、家では起きない条件のものです。家に戻ったら、いつもの3か所――玄関・寝床・食器――で確かめてください。基準を2つ持って、混ぜない。これだけで、外出のたびに部屋の掃除が増えることを避けられます。
自分の鼻が当てにならなくなる背景|賃貸で毎日同じ空気を吸っているということ
なぜ賃貸で暮らす人ほど、外で判断できなくなるのか。理由は単純で、毎日同じ空気を吸っていると、その空気のにおいだけが分からなくなるからです。これは体の作りの話で、意識の問題ではありません。同じ刺激が続くと、鼻はそれを背景として扱うようになります。よその家に入った瞬間だけにおいを感じて、5分もすると分からなくなるのは、そのためです。自分の家では、その5分が最初からありません。
賃貸の間取りだと、この慣れが早く進みます。玄関から居間までが近く、扉で仕切られていないことが多い。部屋のどこにいても、吸っている空気は同じです。家の中に、基準になる「においのしない場所」が作れません。広い家なら、めったに使わない部屋に入ったときに差が分かりますが、賃貸ではその比較対象がないまま毎日が進みます。だから、外へ出た日に初めて差に触れることになります。
もう一つの背景が、移動そのものが条件を変えるという点です。ペット用キャリーの中は密閉に近く、日の当たる窓側に置けば温度が上がります。温度が上がると、体の表面に出ている皮脂は動きやすくなり、毛の表面へ広がります。同時に、閉じた空間では体から出た水分が逃げないので、被毛がわずかに湿った状態が続きます。湿りと皮脂がそろうと、皮膚の表面にいる常在菌が働きやすい条件になります。
ここは言い方に気をつけたいところです。キャリーの中で雑菌が繁殖して悪臭を放ちますと書きたくなりますが、そこまで断定できる話ではありません。確かなのは、湿っている時間が長いほど、においが出ている時間も長くなるということだけです。新幹線で2時間、飛行機なら移動と待ち時間を足して4時間。賃貸の部屋にいる日には起きない長さの、湿った時間ができます。手を入れられるのは、この時間の長さのほうです。
この3つの背景――鼻の慣れ、換気ができないこと、湿る時間が長いこと――は、どれも新幹線や飛行機に乗った日だけの条件です。賃貸の部屋のにおいが悪かったから外で気になった、という順番ではありません。順番を取り違えると、帰宅後に部屋のほうを直そうとして、いつまでも終わらなくなります。外の条件は外で解く。そのための手が、次の5分です。
体より先にキャリーの布に手を入れる理由|新幹線に乗る日の5分の配り方
5分あります。それ以上は、当日の朝には取れません。その5分を、体ではなく布に配ってください。においを保っているのは繊維だからです。体の表面は拭けば減りますが、キャリーの底に敷いた布や、寝床から持ってきたタオルは、繊維の奥に入ったものをこすっても出しません。体を拭いても、布が前回のままなら、キャリーに入れた瞬間に元に戻ります。
しかも布は、当日の朝に何もできません。洗って乾かすには時間がかかります。だから、5分のうち大半は前の晩に置きます。新幹線に乗る日のケアは、当日の作業ではなく前日の作業です。賃貸でにおいが気になる人にとって、これは都合のいい話でもあります。前の晩なら、家の中でいつもの3か所を確かめる余裕があります。
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前の晩:キャリーに敷く布を、洗って乾かしたものに替える
ここが5分のうちの3分にあたります。寝床でいつも使っている布をそのまま入れると、家で溜めたぶんを持ち出すことになります。かといって、まったく知らない布だとその子が落ち着きません。同じ布を2枚用意して、交代で使うのがいちばん簡単です。1枚を洗っているあいだ、もう1枚が寝床にあります。
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前の晩:食器と水入れを、別の袋に分けて詰める
食器は、においが乗りやすいのに見落とされます。寝床の布と同じ袋に入れると、移動のあいだ中ずっと接しています。袋を分けるだけで、何もしないのと同じ手間です。洗って完全に乾かしてから詰めてください。濡れたまま袋に入れると、閉じた袋の中で湿った時間ができます。
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当日の朝:口のまわり・前脚・尾のつけ根を、拭き取りで1往復
ここが残りの2分です。3か所だけ、と決めてください。全身をやろうとすると時間が足りず、しかもその子が朝から疲れます。わずかに湿らせた布で、当てて滑らせるだけ。乾いた布はにおいのもとを空気へ舞い上げるので、少しだけ湿らせたほうが向いています。ごしごしこする必要はありません。
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当日の朝:家を出る30分前までに終わらせて、換気した部屋に置く
拭いた直後にキャリーへ入れると、湿ったまま閉じた空間に入ることになります。乾く時間を先に取ってください。賃貸なら、玄関といちばん遠い窓を5分だけ同時に開ければ、空気は一度入れ替わります。新幹線に乗ってからは換気ができないので、出発時点の状態がそのまま2時間続きます。
| いつ | 何に | 時間 |
|---|---|---|
| 前の晩 | キャリーに敷く布を洗ったものに替える | 3分 |
| 前の晩 | 食器と水入れを別の袋に分ける | 30秒 |
| 当日の朝 | 口のまわり・前脚・尾のつけ根の拭き取り | 1分30秒 |
| 出る30分前 | 換気した部屋に置いて、乾かす | 0分(置くだけ) |
| 乗ってから | 何もしない | 0分 |
当日の朝の2分、3か所に当てる布に含ませておくのがグルーミングスプレーです。その子に直接吹きかけるのではなく、布に含ませてから口のまわり・前脚・尾のつけ根をなでる使い方にしてください。清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口のまわりに当てる布にも量を気にせず含ませられます。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、前の晩に布を替えるついでに被毛の面を通すときにも使えます。使うのは家を出る30分前までです。乗る直前に使うと、乾く時間がないまま閉じた空間に入ることになります。賃貸で毎日きれいにしておきたいと思っている人ほど、この1本は移動の日にも家の日にも同じ形で入ります。
新幹線でも飛行機でも、ペット用キャリーは足元に置きます。通気口の向きを、通路や隣の席ではなく自分の側へ向けておいてください。これはにおいの話であると同時に、その子の側の話でもあります。通路を人が通るたびに視界が動くより、こちらの脚が見えているほうが落ち着きます。向きを決めておくだけなので、時間はかかりません。
2回めからは前の晩に終わる|新幹線でペットと移動した経験が、賃貸の毎日に戻ってくる
1回目は、当日の朝に体を拭くところから始まります。時間が足りず、家を出る直前まで触っていて、キャリーに入れた時点で湿っている。2回目は、前の晩に布を替えるところから始まります。朝にやることが3か所の拭き取りだけになるので、5分が本当に5分で終わります。3回目には、布を洗うタイミングが出発の2日前に移ります。乾かす時間まで含めて計算できるようになるからです。
| 布 | 拭き取り | 当日の朝にかかる時間 | |
|---|---|---|---|
| 1回目 | そのまま入れる | 当日の朝に全身 | 15分以上 |
| 2回目 | 前の晩に替える | 当日の朝に3か所 | 5分 |
| 3回目 | 2日前に洗って干す | 当日の朝に3か所 | 2分 |
| それ以降 | 移動用の1枚を固定する | 3か所。順番も固定 | 2分 |
帰宅後にも、決めておくことが1つだけあります。移動で使ったペット用キャリーの布は、玄関で袋に入れてください。持ったまま居間を横切ると、通り道に置いていくことになります。賃貸は玄関から居間までが近いので、この数メートルが効きます。袋に入れて洗濯機まで運び、その日のうちに洗う。翌日には、いつもの2枚の交代に戻ります。
そして、外で使った基準は外に置いてきてください。新幹線の座席で気になったことは、賃貸の部屋の判断材料にはなりません。帰宅後に確かめるのは、いつもの3か所――玄関を開けた1秒目、寝床のそば、食器を洗うとき――だけで足ります。移動の翌日は、その子も疲れていますし、こちらも疲れています。部屋の側を大がかりに動かす日ではありません。
回を重ねると、もう一つ気づくことがあります。新幹線に乗る日のために作った手順が、そのまま賃貸の毎日のケアの形になっていることです。寝床の布を2枚で回す、食器を乾かしてからしまう、帰宅後は玄関で終わらせる。どれも移動のために始めたことですが、家にいる日にも効いています。外の条件のために組んだものが、家の条件にも合っていた、という順番です。
移動から3日たっても、出発前の状態に戻らない。においの質そのものが変わった。体の片側だけ、あるいは特定の一か所だけが強い。同じ場所をなめている、かいている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、食欲や元気が落ちている。移動から3日という線を越えているときは、拭き取りの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。長い移動のあとは、環境の変化のせいだと考えて様子を見てしまいがちです。移動した日と、においが出ている場所をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
新幹線や飛行機でペットと移動する日は、賃貸の部屋で積み上げてきた基準がいったん使えなくなります。使えないのは基準が間違っていたからではなく、測る条件のほうが変わったからです。変えられるのは、換気ができない時間の長さと、その時間に持ち込む布の状態だけ。手を入れる場所がその2つに絞られていると分かれば、移動の日はむしろ短い準備で済みます。あとは、外で気になったことを家に持ち帰らないことです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
