C09シーン別・暮らし

賃貸でにおいが気になる人のための新幹線・飛行機|5分で終わらせるケア

公開日 2021年4月17日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡い色の布製キャリーの中に落ち着いて伏せている白っぽい猫
外へ持ち出すのは体だけではありません。いっしょに動くのは、いつも敷いている布のほうです。写真:Francesco Ungaro/Pexels

新幹線の指定席に座ってキャリーを足元に置いた瞬間、家では一度も気にしたことのない距離に、自分の鼻がありました。膝から30センチ。賃貸の部屋なら、寝床は廊下の先で、こちらはソファにいます。同じにおいでも、その距離で嗅いだことがありません。賃貸でにおいが気になる人ほど、外へ出た日に判断ができなくなります。家では自分の鼻が基準でしたが、その鼻は毎日同じ空気を吸って慣れているぶん、外では当てになりません。この記事は、周囲にどう思われるかという話ではありません。新幹線や飛行機でペットと移動する日に、賃貸で使っていた基準がなぜそのまま使えないのかを書いて、出発前の5分で終わる手順に落とします。

乗った瞬間に、においの基準が入れ替わる|賃貸で気にしていたことと、新幹線での変化

賃貸で暮らしていると、においの基準は自分の部屋のどこかに置かれています。玄関を開けた1秒目、寝床のそば、食器を洗うとき。その3か所で毎日確かめているうちに、こういうものだという線ができます。ところがペットと新幹線に乗ってキャリーを足元に置くと、その線が使えません。距離が違い、時間が違い、換気の条件も違います。同じ子の同じにおいでも、測る道具のほうが入れ替わっています。

変わっているのは3つです。まず距離。賃貸の部屋なら、寝床とこちらのあいだには何メートルかあります。新幹線の座席では、キャリーは膝から30センチのところにあります。次に時間。家では気になれば窓を開けますが、ペットを連れた車内では2時間、そこから動けません。そして換気。飛行機も新幹線も窓が開きません。家で使っていた「気になったら換気する」という手が、まるごと外れます。

賃貸の部屋と、新幹線・飛行機で、条件がどう違うか
賃貸の部屋新幹線・飛行機
鼻までの距離数メートル30センチ前後
嗅いでいる時間気づいたときだけ乗っているあいだずっと
換気窓を開ければ入れ替わる自分では動かせない
自分の鼻毎日吸っていて慣れている慣れの外にある距離で嗅ぐ
逃げ場別の部屋へ移れる座席から動けない
判断できるかできる。基準がある基準が入れ替わっていて、できない

ここで大事なのは、においが強くなったわけではないということです。ペットと新幹線に乗った日に落ち着かないのは、においの量が増えたからではなく、測り方が変わったからです。賃貸で気にしていた人ほど、外での違和感を「ふだん気づいていなかっただけかもしれない」と受け取ります。実際には、家では届かない距離で嗅いでいるだけ、ということのほうが多くあります。

もう一つ、外の基準について書いておきます。キャリーに入っていれば、周囲に強く届くことはほとんどありません。布や樹脂の壁があり、通気口は限られていて、車内には空調が回っています。届いているのは、まずキャリーのすぐ上にいる自分のところです。だから、外で気になったからといって、賃貸の部屋のほうが悪かったという結論にはなりません。測る条件が違う2つを、そのまま比べないでください。

Note外で気になったことを、家の基準に持ち帰らないでください

新幹線でにおいが気になった日の夜に、賃貸の部屋を隅々まで拭き上げたくなることがあります。そこは切り離して構いません。外で使った基準は、30センチの距離で2時間という、家では起きない条件のものです。家に戻ったら、いつもの3か所――玄関・寝床・食器――で確かめてください。基準を2つ持って、混ぜない。これだけで、外出のたびに部屋の掃除が増えることを避けられます。

自分の鼻が当てにならなくなる背景|賃貸で毎日同じ空気を吸っているということ

なぜ賃貸で暮らす人ほど、外で判断できなくなるのか。理由は単純で、毎日同じ空気を吸っていると、その空気のにおいだけが分からなくなるからです。これは体の作りの話で、意識の問題ではありません。同じ刺激が続くと、鼻はそれを背景として扱うようになります。よその家に入った瞬間だけにおいを感じて、5分もすると分からなくなるのは、そのためです。自分の家では、その5分が最初からありません。

賃貸の間取りだと、この慣れが早く進みます。玄関から居間までが近く、扉で仕切られていないことが多い。部屋のどこにいても、吸っている空気は同じです。家の中に、基準になる「においのしない場所」が作れません。広い家なら、めったに使わない部屋に入ったときに差が分かりますが、賃貸ではその比較対象がないまま毎日が進みます。だから、外へ出た日に初めて差に触れることになります。

もう一つの背景が、移動そのものが条件を変えるという点です。ペット用キャリーの中は密閉に近く、日の当たる窓側に置けば温度が上がります。温度が上がると、体の表面に出ている皮脂は動きやすくなり、毛の表面へ広がります。同時に、閉じた空間では体から出た水分が逃げないので、被毛がわずかに湿った状態が続きます。湿りと皮脂がそろうと、皮膚の表面にいる常在菌が働きやすい条件になります。

ここは言い方に気をつけたいところです。キャリーの中で雑菌が繁殖して悪臭を放ちますと書きたくなりますが、そこまで断定できる話ではありません。確かなのは、湿っている時間が長いほど、においが出ている時間も長くなるということだけです。新幹線で2時間、飛行機なら移動と待ち時間を足して4時間。賃貸の部屋にいる日には起きない長さの、湿った時間ができます。手を入れられるのは、この時間の長さのほうです。

新幹線に乗る日、においが出やすくなる条件がそろうまで キャリーの中は換気ができず、温度が上がって被毛がわずかに湿ります。湿った時間が長いほど、においが出ている時間も長くなります。手を入れられるのは出発前です。 布と体 出発前 キャリー 温度上昇 車内の鼻 30センチ そのまま入れる 2時間そのまま 前の晩に何もしない場合 布のにおいが先にある 換気できず、戻せない 布を替えて5分入れる場合 出発時点の量が下がる 湿る時間だけが残る
出発してからは換気ができません。触れるのは、乗る前の5分だけです。

この3つの背景――鼻の慣れ、換気ができないこと、湿る時間が長いこと――は、どれも新幹線や飛行機に乗った日だけの条件です。賃貸の部屋のにおいが悪かったから外で気になった、という順番ではありません。順番を取り違えると、帰宅後に部屋のほうを直そうとして、いつまでも終わらなくなります。外の条件は外で解く。そのための手が、次の5分です。

体より先にキャリーの布に手を入れる理由|新幹線に乗る日の5分の配り方

5分あります。それ以上は、当日の朝には取れません。その5分を、体ではなく布に配ってください。においを保っているのは繊維だからです。体の表面は拭けば減りますが、キャリーの底に敷いた布や、寝床から持ってきたタオルは、繊維の奥に入ったものをこすっても出しません。体を拭いても、布が前回のままなら、キャリーに入れた瞬間に元に戻ります。

しかも布は、当日の朝に何もできません。洗って乾かすには時間がかかります。だから、5分のうち大半は前の晩に置きます。新幹線に乗る日のケアは、当日の作業ではなく前日の作業です。賃貸でにおいが気になる人にとって、これは都合のいい話でもあります。前の晩なら、家の中でいつもの3か所を確かめる余裕があります。

  1. 前の晩:キャリーに敷く布を、洗って乾かしたものに替える

    ここが5分のうちの3分にあたります。寝床でいつも使っている布をそのまま入れると、家で溜めたぶんを持ち出すことになります。かといって、まったく知らない布だとその子が落ち着きません。同じ布を2枚用意して、交代で使うのがいちばん簡単です。1枚を洗っているあいだ、もう1枚が寝床にあります。

  2. 前の晩:食器と水入れを、別の袋に分けて詰める

    食器は、においが乗りやすいのに見落とされます。寝床の布と同じ袋に入れると、移動のあいだ中ずっと接しています。袋を分けるだけで、何もしないのと同じ手間です。洗って完全に乾かしてから詰めてください。濡れたまま袋に入れると、閉じた袋の中で湿った時間ができます。

  3. 当日の朝:口のまわり・前脚・尾のつけ根を、拭き取りで1往復

    ここが残りの2分です。3か所だけ、と決めてください。全身をやろうとすると時間が足りず、しかもその子が朝から疲れます。わずかに湿らせた布で、当てて滑らせるだけ。乾いた布はにおいのもとを空気へ舞い上げるので、少しだけ湿らせたほうが向いています。ごしごしこする必要はありません。

  4. 当日の朝:家を出る30分前までに終わらせて、換気した部屋に置く

    拭いた直後にキャリーへ入れると、湿ったまま閉じた空間に入ることになります。乾く時間を先に取ってください。賃貸なら、玄関といちばん遠い窓を5分だけ同時に開ければ、空気は一度入れ替わります。新幹線に乗ってからは換気ができないので、出発時点の状態がそのまま2時間続きます。

ペットと新幹線・飛行機に乗る日、5分をどこに配るか
いつ何に時間
前の晩キャリーに敷く布を洗ったものに替える3分
前の晩食器と水入れを別の袋に分ける30秒
当日の朝口のまわり・前脚・尾のつけ根の拭き取り1分30秒
出る30分前換気した部屋に置いて、乾かす0分(置くだけ)
乗ってから何もしない0分

当日の朝の2分、3か所に当てる布に含ませておくのがグルーミングスプレーです。その子に直接吹きかけるのではなく、布に含ませてから口のまわり・前脚・尾のつけ根をなでる使い方にしてください。清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口のまわりに当てる布にも量を気にせず含ませられます。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、前の晩に布を替えるついでに被毛の面を通すときにも使えます。使うのは家を出る30分前までです。乗る直前に使うと、乾く時間がないまま閉じた空間に入ることになります。賃貸で毎日きれいにしておきたいと思っている人ほど、この1本は移動の日にも家の日にも同じ形で入ります。

Pointキャリーの通気口は、通路側ではなく自分の側へ

新幹線でも飛行機でも、ペット用キャリーは足元に置きます。通気口の向きを、通路や隣の席ではなく自分の側へ向けておいてください。これはにおいの話であると同時に、その子の側の話でもあります。通路を人が通るたびに視界が動くより、こちらの脚が見えているほうが落ち着きます。向きを決めておくだけなので、時間はかかりません。

2回めからは前の晩に終わる|新幹線でペットと移動した経験が、賃貸の毎日に戻ってくる

1回目は、当日の朝に体を拭くところから始まります。時間が足りず、家を出る直前まで触っていて、キャリーに入れた時点で湿っている。2回目は、前の晩に布を替えるところから始まります。朝にやることが3か所の拭き取りだけになるので、5分が本当に5分で終わります。3回目には、布を洗うタイミングが出発の2日前に移ります。乾かす時間まで含めて計算できるようになるからです。

回を重ねると、新幹線に乗る日の準備がどう前へ移るか
布拭き取り当日の朝にかかる時間
1回目そのまま入れる当日の朝に全身15分以上
2回目前の晩に替える当日の朝に3か所5分
3回目2日前に洗って干す当日の朝に3か所2分
それ以降移動用の1枚を固定する3か所。順番も固定2分

帰宅後にも、決めておくことが1つだけあります。移動で使ったペット用キャリーの布は、玄関で袋に入れてください。持ったまま居間を横切ると、通り道に置いていくことになります。賃貸は玄関から居間までが近いので、この数メートルが効きます。袋に入れて洗濯機まで運び、その日のうちに洗う。翌日には、いつもの2枚の交代に戻ります。

そして、外で使った基準は外に置いてきてください。新幹線の座席で気になったことは、賃貸の部屋の判断材料にはなりません。帰宅後に確かめるのは、いつもの3か所――玄関を開けた1秒目、寝床のそば、食器を洗うとき――だけで足ります。移動の翌日は、その子も疲れていますし、こちらも疲れています。部屋の側を大がかりに動かす日ではありません。

回を重ねると、もう一つ気づくことがあります。新幹線に乗る日のために作った手順が、そのまま賃貸の毎日のケアの形になっていることです。寝床の布を2枚で回す、食器を乾かしてからしまう、帰宅後は玄関で終わらせる。どれも移動のために始めたことですが、家にいる日にも効いています。外の条件のために組んだものが、家の条件にも合っていた、という順番です。

Cautionにおいの質そのものが変わったときは、動物病院で相談してください

移動から3日たっても、出発前の状態に戻らない。においの質そのものが変わった。体の片側だけ、あるいは特定の一か所だけが強い。同じ場所をなめている、かいている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、食欲や元気が落ちている。移動から3日という線を越えているときは、拭き取りの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。長い移動のあとは、環境の変化のせいだと考えて様子を見てしまいがちです。移動した日と、においが出ている場所をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

新幹線や飛行機でペットと移動する日は、賃貸の部屋で積み上げてきた基準がいったん使えなくなります。使えないのは基準が間違っていたからではなく、測る条件のほうが変わったからです。変えられるのは、換気ができない時間の長さと、その時間に持ち込む布の状態だけ。手を入れる場所がその2つに絞られていると分かれば、移動の日はむしろ短い準備で済みます。あとは、外で気になったことを家に持ち帰らないことです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。