C09シーン別・暮らし

車でのおでかけを楽にする、多頭飼いの人の毎日の習慣

公開日 2021年4月10日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの差す車の中で、淡い色のシートに静かに伏せている白っぽい犬
同じ空気の中に何頭かいる時間は、1頭ずつのケアではなく、置く場所のほうで決まります。写真:3194556/Pixabay

高速を30分走って、目的地の駐車場で後ろの扉を開けた瞬間に、乗せる前にはなかった一つのにおいがありました。3頭ぶんが並んでいるというより、混ざって別のものになっていました。どれが誰のものか、鼻では分けられません。犬と猫の多頭飼いで車での移動を続けていると、この混ざり方のほうが先に気になってきます。1頭ずつ拭けばいいと分かってはいても、車に乗せる前の時間は頭数で割られていて、3頭なら1頭あたり1分ありません。この記事は、手を増やす話ではありません。乗せる場所と降ろす順番を先に決めておくだけで、同じ移動でも混ざり方が変わる。その並べ方の話です。

扉を開けた瞬間に、誰のにおいか分からなくなる|多頭飼いの車での移動で起きる変化

犬2頭と猫1頭を車に乗せて、動物病院まで30分。着いて扉を開けると、そこにあるのは3頭ぶんのにおいではなく、1つに混ざった別のにおいです。家の中なら、犬の寝床のあたりと猫の食器のあたりで、においの出どころは分かれています。それぞれの子がどこにいるかも分かっています。ところが車の中では、その分かれ方が30分でなくなります。多頭飼いの家で、車での移動が独特なのはここです。

混ざるという言い方をするのは、単に強くなるのとは違うからです。犬1頭だけで乗せたときは、30分走っても「その子のにおいが少し強くなった」で終わります。2頭以上になると、強さではなく、においの質のほうが変わります。知っているはずの子のにおいなのに、家では嗅いだことのない形になっている。多頭飼いの人が車の扉を開けたときに戸惑うのは、たいていこの変化のほうです。

この状態で困るのは、帰宅後です。混ざったにおいは、そのまま室内に運び込まれます。玄関で1頭ずつ拭こうとしても、どこを拭けばいいのかが分かりません。出どころが分からないものは、手の入れようがないからです。結果として、多頭飼いの家では車での移動のたびに、部屋の側だけが少しずつ蓄積していきます。床を拭いても変わらないのは、においが床ではなくソファやカーペットの繊維に入っているからです。

頭数が増えると、車での移動の前後に使える時間はこう変わります
頭数乗せる前に1頭あたり降りたあと1頭あたり現実に起きること
1頭5分5分全身を1往復できる
2頭2分30秒2分30秒足先と口のまわりまで
3頭1分40秒1分40秒足先だけで終わる
4頭以上1分未満1分未満1頭も終わらないまま出発する

表の一番下が、多頭飼いの現実に近いところです。時間は頭数で割られますが、やることの量は割られません。1頭あたり1分を切ると、順番待ちの犬が動き出して、最初に拭いた子をもう一度押さえることになります。ここで「もっと早く起きればいい」という方向へ行くと、車での移動そのものが億劫になります。毎日の習慣にできるのは、時間を増やさずに済む手だけです。

Note混ざったにおいを、体調の変化として読まないでください

多頭飼いの車での移動のあと、いつもと違うにおいがすると、どれかの子の体で何かが起きたのではないかと心配になります。ほとんどの場合、それは混ざったことによる変化です。降りて15分から30分もすると、それぞれのにおいに戻ります。判断するなら、車の中ではなく、家に上がって落ち着いてから、1頭ずつ確かめてください。車内は判断に向かない場所です。

1頭ずつのケアが車の中では効かない背景|閉じた空間で、においが動く2つの経路

なぜ混ざるのか。経路は2つしかありません。空気を通る経路と、体が触れる経路です。車の中は閉じた空間で、しかも走っているあいだ人は運転しているので、後ろの犬にも猫にも手を出せません。この2つが30分間、止まらずに働き続けます。1頭ずつ拭くというケアは、この2つのどちらも止められません。だから、乗せる前にどれだけ丁寧に拭いても、降りたときには同じところに戻ります。

1つ目の空気の経路には、はっきりした向きがあります。車のエアコンは前の吹き出し口から出て、後席を通り、いちばん後ろへ抜けていきます。つまり車内には上流と下流があり、後ろに行くほど下流です。下流に置かれた子は、前にいる子のにおいを30分ぶん受け取り続けます。上流に置かれた子は、ほとんど受け取りません。同じ車に乗っていても、条件は席によって違います。

2つ目が接触です。多頭飼いで車での移動をするとき、後席にキャリーを2つ並べるか、シートに直接乗せるかのどちらかになります。並べたキャリーが触れていれば、揺れるたびに壁ごしに擦れます。シートに2頭を乗せていれば、カーブのたびに体が寄ります。触れた場所には、空気より濃い形で移ります。皮脂を含んだものは空気より接触で動くので、隣り合わせた子のあいだでだけ、強く入れ替わります。

1頭ずつ拭く手と、置く場所を決める手 多頭飼いの車での移動では、拭く時間が頭数で割られます。同じ時間を、乗せる場所と順番を決めるほうへ回すと、走っているあいだの条件が変わります。 同じ30分の移動で、何が変わるか 1頭ずつ拭いてから乗せる 1頭あたり1分40秒しかない 乗せた瞬間に混ざり直す 接触の経路は止まらない 頭数が増えるほど破綻する 誰をどこに置くかを決める 決めるのは最初の1回だけ 走行中ずっと効いている 接触を物理的に断てる 頭数が増えても同じ手間 拭くのをやめる話ではなく、拭く前に決めておく話です
手を増やさずに変えられるのは、走っているあいだの条件のほうです。

この2つの経路を並べると、1頭ずつのケアが効きにくい理由が見えてきます。拭くという手は、乗せる直前の1点にしか効きません。そこから先の30分は、空気と接触が働き続けます。一方、誰をどこに置くかという決め方は、走っているあいだずっと効いています。多頭飼いで時間が足りない家ほど、効いている時間が長いほうへ手を移したほうが合理的です。

温度についても書いておきます。車内は日が差すと短時間で温度が上がり、体の表面が湿ります。湿った毛は、乾いた毛よりにおいを空気へ出しやすい。多頭飼いだと、同じ空間で湿る体が頭数ぶんあります。車内で雑菌が繁殖してにおいを発生させますと書きたくなるところですが、そこまで断定できる話ではありません。確かなのは、湿っている時間が長いほど、においが出ている時間も長いということです。

後席のどこに誰を置くか|犬と猫を同じ車に乗せる日に、先に決めておく3つの軸

並べる軸は3つです。空気の上流と下流、体が触れるかどうか、乗せ降ろしの順番。この3つを一度決めてしまえば、次からは考えません。多頭飼いの車での移動で毎回の負担になっているのは、じつは作業そのものより、その場で判断していることのほうです。判断を最初の1回に寄せると、2回目からは動くだけになります。

  1. 軸1:においがいちばん強く出る子を、下流に置く

    エアコンの風は前から後ろへ抜けます。いちばん後ろの席か荷室が下流です。ここに、においが強く出る子を置きます。上流に置くと、その子のにおいが後ろの全員に届きます。逆に、いちばん受け取りやすい子――被毛が長い犬や猫、湿りやすい子――を上流の側に置いてください。多頭飼いでは、この1回の入れ替えだけで降りたときの印象が変わります。

  2. 軸2:隣り合わせない。キャリーは背中合わせにする

    接触の経路を物理的に断ちます。キャリーが2つなら、扉の向きを外側へ向けて、背中合わせに置く。触れる面積をゼロにできなくても、通気口どうしを向かい合わせないだけで違います。シートに直接乗せる犬が2頭いるなら、あいだに1つ空けるか、片方を足元に下ろしてください。カーブで寄る回数が減ります。

  3. 軸3:最後に乗せた子から、最初に降ろす

    乗せ降ろしは時間の軸です。最後に乗せた子は、車内にいた時間がいちばん短い。その子を最初に降ろすと、帰宅後に室内へ最初に入るのが、いちばん受け取っていない子になります。逆にすると、いちばん長く乗っていた子が先に部屋へ入ります。玄関から居間までの通り道は、最初に通った子のにおいで決まります。

3つのうち、どれか1つだけ選ぶとしたら軸2です。接触は空気より濃く移り、しかも一度置き方を決めれば毎回同じだからです。軸1は季節で変わります。冬に暖房を足元から入れると流れが変わりますし、窓を開けられる時期は上流も下流もありません。軸3は目的地によって変わります。変わらないのは、隣り合わせないという1点だけです。

多頭飼いの車での移動で、誰をどこに置くか
置く場所向いている子理由
助手席側の後席(上流)被毛が長い、湿りやすい子受け取る量がいちばん少ない
運転席側の後席(上流)落ち着かず、動きたがる犬こちらから様子が見える
後席の中央置かない両隣に触れる。多頭飼いでは空けておく
いちばん後ろ・荷室(下流)においが強く出る子前へ戻る量が少ない
足元小さい子。揺れに弱い子体が寄らず、温度も上がりにくい

誰が下流なのかを決めるには、材料が要ります。車に乗せる前に、自分の鼻で順位をつけておいてください。首のうしろ・耳のつけ根・前脚の指のあいだ。この3か所を、頭数ぶん順に嗅いで、強い順に1・2・3と紙に書くだけで足ります。毎日やる必要はありません。季節の変わり目に1回で構いません。多頭飼いだと、この順位はけっこう入れ替わります。

毎日きれいにしておきたいのに、多頭飼いだと全頭には手が回りません。そこで、手を入れる相手を先に1頭へ決めます。下流に置くと決めた子の、口のまわりと前脚だけ。グルーミングスプレーを布に含ませて、車に乗せる30分前になでておきます。直接吹きかけずに布へ含ませるのは、ほかの子が近くにいる場所でも同じように使えるからです。乗せる直前にやると湿ったまま閉じた空間に入ることになるので、乾く時間を先に取ってください。

3回めの移動から手が減っていく|多頭飼いが車での往復を毎日の習慣にするまでの経験

並べ方を決めても、1回目は迷います。キャリーの向きを直しているうちに犬が1頭外へ出ようとして、結局いつもの位置に戻す。2回目に、置く場所だけメモを見ずに再現できるようになります。3回目には、荷物を積む前に空いている位置が目に入るようになって、考えずに置けます。多頭飼いの車での移動で変わるのは、ここまでの3回ぶんです。

3回めから減るのは、時間ではなく判断の回数です。やることの量は同じなのに、迷っている時間がなくなるぶんだけ早く終わります。実際に測ると、3頭で1分から1分半しか変わりません。それでも体感はまったく違います。多頭飼いの家で毎日の習慣として続くかどうかは、かかる時間よりも、その場で考えなくて済むかどうかで決まります。

回を重ねると、車での移動の前後で何が変わるか
乗せる前走っているあいだ降りたあと
1回目置く場所を紙で確かめる後ろが気になって何度も見る誰のにおいか分けようとする
2回目同じ位置に置ける1回だけ確かめる下流の子から順に降ろす
3回目荷物より先に位置が決まる見ない降ろす順が固定される
それ以降考えずに置く季節で軸1だけ見直す玄関で足先だけ拭く

帰宅後についても、決めておくことは1つだけです。降ろす順番を、そのまま室内へ入る順番にしてください。多頭飼いだと、玄関で全頭を待たせることはできません。先に入った子が、玄関から居間までの通り道を作ります。いちばん受け取っていない子を先に通せば、その通り道は薄いままです。最後に入る子の足先だけ、玄関でグルーミングスプレーを含ませた布でなでておけば、通り道に足す量もそこで止まります。ここまでが、軸3を決めておく意味になります。

室内に入ってからやることは、頭数にかかわらず同じで構いません。窓を1か所と、いちばん遠い窓を、5分だけ同時に開ける。車での移動から帰った直後は、荷物を運び込むために玄関が開いています。その時間に合わせて奥の窓を開けておけば、余計な手間はかかりません。長く開けておく必要はありません。混ざったにおいは、空気が一度入れ替われば薄れます。

季節については、軸1だけ見直してください。窓を開けて走れる時期は、上流と下流の差がほとんどなくなります。暖房を足元から入れる冬は、下が上流になります。年に2回、置き方を1回だけ確かめる。それ以外の日は、決めた位置に置くだけです。多頭飼いの車での移動を毎日の習慣にするなら、見直しの回数まで決めておくほうが続きます。

Caution並べ替えても1頭だけにおいが強くなるときは、動物病院へ

置く場所を変えて何回か往復しても、特定の1頭のにおいだけが強くなっていく、においの質そのものが変わった、体の一か所だけが強い、その場所をなめている、地肌が赤い、耳を振る回数が増えた、食欲や元気が落ちている。こうした変化があるときは、拭き取りを増やす前に動物病院にご相談ください。多頭飼いだと、においが混ざるぶん、1頭の変化に気づくのが遅れます。車に乗せた日と、においが出ている場所をメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

多頭飼いで車での移動を続けていると、1頭ずつ丁寧にやるという理想はどこかであきらめることになります。あきらめたぶんを、置く場所と順番に振り替える。拭く時間は頭数で割られますが、並べ方を決める時間は割られません。1回決めれば、頭数がいくつでも同じです。犬と猫が同じ車に乗る日の条件を変えられるのは、走り出す前の、その1分だけです。犬にも猫にも、追加で何かをしてもらう必要はありません。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。