C09シーン別・暮らし

来客の前を楽にする、保護犬・保護猫を迎えた人の毎日の習慣

公開日 2021年5月8日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡い毛色の犬と猫がそれぞれ静かに休んでいる
来客の日に手を伸ばすより先に、その子が自分で入れる場所をひとつ空けておくほうが、部屋のにおいも落ち着きます。写真:Ricardo Oliveira/Pexels

来客の30分前、ブラシと拭き取り用の布を出して床に座ったところで、インターホンが鳴りました。その音でその子はソファの裏へ入り、用意した手はどこにも届きませんでした。保護犬・保護猫を迎えた家の来客の日は、ペットのにおいをどうするかという問題と、その子が知らない人をどう受け取るかという問題が、同じ30分の中で重なります。迎えて2か月、その子が以前どんなふうに暮らしていたのかは分かりません。分からないまま、こちらの都合で手を伸ばすことになります。この記事は、来客の前にその子を人前に出せる状態へ整えようとして、うまくいかなかった日から始まります。3回目の来客で当日の手が2つ減るまでに、何を先に置き換えたのかを書きます。

迎えて2か月、はじめての来客で分かったこと|保護犬・保護猫と暮らす家の、においをめぐる経験

迎えて2か月がたった土曜日に、友人が2人来ることになりました。前の週から気になっていたのは、ペットのにおいが部屋にどれだけ残っているかでした。自分では分からなくなっていて、他の人が入ってきたときにどう感じるのかが読めません。そこで来客の30分前に、ブラシと拭き取り用の布を出して床に座りました。背中を数回なでて、口のまわりを拭いて、それで終わりにするつもりでした。

実際に起きたのは、そこから先です。インターホンが鳴った瞬間にその子はソファの裏へ入り、手を伸ばしても出てきませんでした。用意した布は使われないまま床に残り、においについては何もできていません。来客の前にやろうとしたことが、来客の音でまるごと止まりました。2人が帰ったあと、ソファの裏をのぞくと、その子はまだそこにいました。ペットのにおいについては、結局その日は何も動かせていません。

このとき分かったことが2つあります。1つは、保護犬・保護猫を迎えた家では、来客の前のケアが「やる・やらない」ではなく「届く・届かない」で決まるということです。手順を組んでも、その子が受け取らなければ実行されません。もう1つは、部屋のにおいのほうは、その子に触れなくても動かせる部分があったということです。触ることを前提にした計画だったので、触れなかった時点で全部が止まってしまいました。

2回目の来客までに変えたのは、順番です。触ることを前提にした手順を、触らなくても進む手順に組み替えました。結果として、来客の前にやることは減りました。減ったのに、部屋のにおいについては前より落ち着いています。この記事で書きたいのは、その組み替えの中身です。

来客の前に触るほど、においの出どころが動く理由|保護犬・保護猫にとっての知らない人

ペットのにおいは、体だけから出ているわけではありません。出どころは4つあります。体の毛と皮脂、寝床の布、食器と水皿、そして床です。このうち、来客の前の数分でいちばん動かしにくいのが体で、いちばん動かしやすいのが食器と床です。ところが多くの人は、来客の前に体から手をつけます。においの元だと感じるのが体だからです。

保護犬・保護猫を迎えた家では、この順番の問題がもう一段深くなります。触られることにまだ慣れていない子にとって、来客の直前という時間は、いつもと違う空気の中でいつもと違う手が来る時間です。その子の側には、こちらの都合が見えていません。逃げれば追いかけられ、追いかけられれば奥へ入ります。奥というのは、たいていの場合、寝床かソファの裏です。

ここで何が起きるかというと、においの出どころが移動します。体に付いていた皮脂が、その子の逃げ込んだ布に移ります。寝床の布は、毎日その子が体を預けている場所なので、もともと皮脂の溜まりやすい場所です。そこへ、来客のたびに追加されます。布に残った皮脂は、乾ききらないまま置いておくと、においのもとになります。雑菌という言葉で語られる部分ですが、家でできることは2つだけです。洗うことと、湿らせたままにしないことです。

ペットのにおいの出どころと、来客の前に手が入るかどうか
出どころ来客の直前に手が入るか保護犬・保護猫を迎えた家での扱い
体の毛と皮脂入りませんその子が寄ってきた日に、少しずつ。来客の日には触りません
寝床の布入りません前日の夜に洗って乾かしておきます。当日は触りません
食器と水皿入ります来客の前に下げて洗います。2分で終わります
床入りますその子が通る場所だけを拭き取ります。全面はやりません
空気入ります換気を先にします。窓は2か所開けて、風の通り道を作ります

表の右側を見ると、ペットのにおいに来客の直前から手が入るのは、食器と床と空気の3つだけだと分かります。そして、この3つはどれも、その子に触れずにできます。体と寝床の布は、来客の日ではなく前の日までの仕事です。順番をこう分けておくと、インターホンが鳴っても止まりません。

帰宅後にまとめてやる形も同じです。人が外から帰ってくること自体、その子にとっては小さな来客です。帰宅後すぐに手を伸ばさず、まず換気と食器から始めると、その子は自分のタイミングで出てきます。毎日この順番でやっていると、来客の日だけ順番が変わる、ということもなくなります。

出せる状態にするより、隠れられる場所を先に作る|来客の日のペットのにおいへの考え方

来客の日の目標を、ひとつ書き換えます。その子を人前に出せる状態にすることではなく、その子が自分で入れる場所を1か所空けておくことにします。保護犬・保護猫を迎えた家では、こちらのほうが結果としてうまくいきます。隠れられる場所がある子は、そこにいるだけで済みます。ない子は、部屋の中を移動し続けます。移動が増えるほど、毛と皮脂が広い範囲に散ります。

隠れ場所には条件があります。来客の動線から外れていること、出入り口がその子から見えること、そして布が敷いてあることの3つです。玄関と居間を結ぶ線の上に寝床があると、その子は来客のたびに移動しなければなりません。寝床の位置を1メートル動かすだけで、来客の日にその子が動く距離が変わります。

  1. 来客の前日の夜|寝床の布を洗って、しっかり乾かす

    においの出どころとして、いちばん量のあるのが寝床の布です。前日にやっておけば、当日その子に触る必要がありません。洗ったあとは、生乾きのまま戻さないこと。湿ったまま敷くと、翌日には前より気になります。予備の布を1枚持っておくと、洗っているあいだも空きません。

  2. 来客の30分前|窓を2か所開けて、換気を先に済ませる

    空気は、来客の直前でも動かせます。1か所だけ開けても空気は入れ替わりません。対角にある2か所を開けて、通り道を作ります。その子が寒がる場所は先に確かめて、その部屋の窓は開けないでおきます。5分で閉めて構いません。

  3. 来客の15分前|食器と水皿を下げて洗う

    食器はペットのにおいの出どころとして見落とされがちです。口が毎日触れる場所なので、ぬめりが残ると、そこだけ別のにおいになります。下げて洗い、水皿は新しい水に替えます。来客のあいだ、食器は出しておかなくて構いません。

  4. 来客の10分前|その子が通る場所の床だけを拭き取る

    部屋全体はやりません。寝床から水皿まで、その子が毎日通る線の上だけを拭き取ります。毛と皮脂が落ちているのは、その線の上です。全面をやろうとすると、時間が足りずに途中で終わります。

  5. 来客の直前|隠れ場所を空けて、その子に触らない

    ここが今回いちばん書きたいところです。来客の日は、その子に触りません。ブラシもかけず、体も拭きません。隠れ場所の入り口を空けて、そのまま迎えます。触らないことは、手を抜いているのではなく、その日の手当てのひとつです。

ケアの記事で「触らない」と書くのは、ずいぶん後ろ向きに見えます。ただ、保護犬・保護猫を迎えた人にとって、触っていい回数はその子が決めています。こちらの都合で回数を使ってしまうと、その子が自分から寄ってきた日に使える分が減ります。来客の日は、こちらの都合がいちばん強く出る日です。だからこの日は使わない、と決めておきます。

Point体に手を入れるのは、その子が自分から寄ってきた日に

来客の予定がない日、その子が自分から近くに来て、床に伏せたとき。そこが体に手を入れられる時間です。mofuwaのグルーミングスプレーのような洗い流さないものを布に含ませて、背中を数回なでるところまでにしてください。背中は、多くの子がいちばん受け入れやすい場所です。全身をやろうとせず、数回でやめる。やめるところを先に決めておくと、次の日もその子は寄ってきます。洗わない日のケアは、回数ではなく、続けられるかどうかで決まります。

この5つの手順のうち、その子に触れるものは1つもありません。それでも、来客が入ってきたときの部屋の空気は変わります。においの出どころのうち、量の多い寝床の布と食器と床が、前の日と当日に分けて処理されているからです。体は、そのあとでいい。順番の話です。

触らない日をはさんだ3か月で起きた変化|来客の前に、当日の手が2つ減るまで

2回目の来客は、1回目から3週間後でした。前日に寝床の布を洗い、当日は換気と食器と床だけをやりました。その子はやはりソファの裏に入りましたが、1回目と違ったのは姿勢です。奥で丸くなるのではなく、出入り口のほうを向いて伏せていました。来客の途中で一度だけ顔を出して、また戻りました。ペットのにおいについて、友人から何か言われることもありませんでした。

3回目は、そこからさらに2か月後です。この日は、来客が座って20分ほどたったころに、その子が自分から出てきました。人のいるほうへは来ず、部屋の隅で伏せています。出てきたのは、こちらが何かをしたからではなく、出てきても何も起きない日が続いたからです。触らない日を重ねたことが、そのまま経験として残っていました。

3回の来客で、当日にやることがどう変わったか
1回目2回目3回目
前日にやることなし寝床の布を洗う寝床の布を洗う
当日、体に触るやろうとして届かずやらないやらない
当日、ブラシをかけるやろうとして届かずやらないやらない
当日やること3つ。どれも届きませんでした換気・食器・床の3つ換気・食器・床の3つ
その子の居場所ソファの裏の奥ソファの裏。入り口を向く部屋の隅で伏せる

表の見方で大事なのは、当日の手が2つ減って、前日に1つ増えているところです。合計では減っていますが、それ以上に、当日に残った3つがどれも「その子に触れない仕事」になりました。届くかどうかに左右されないので、来客のたびに同じように実行できます。実行できる手順だけが、経験として積み上がります。ペットのにおいへの手当ても、続けられた回数のぶんだけしか積み上がりません。

毎日の側でも、ひとつだけ変えました。帰宅後に手を伸ばすのをやめて、先に換気と食器をやるようにしたことです。その子にとって、人が帰ってくる時間は毎日の小さな来客です。そこで手が伸びてこない日が続くと、こちらが動いていても部屋の隅に居続けられるようになります。来客の日にだけ特別なことをするより、毎日の帰宅後を同じ形にしておくほうが、その子には分かりやすいようでした。

Cautionにおいの変化が、環境の話ではないとき

においが急に強くなった、においの質が変わった、地肌が赤い、じくじくしている、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、食べない、水を飲む量が急に増えた。こうした変化があるときは、来客や環境の話として片づけず、動物病院にご相談ください。保護犬・保護猫を迎えてまもない時期は、その子のふだんがまだ分かりません。迷ったときは、様子を見る期間を長く取らないでください。いつから気づいたかをメモしておくと、相談がそのぶん早く進みます。

来客の前を楽にする、という話の答えが「触らない」になるのは、書いている側でも据わりが悪いところがあります。それでも、保護犬・保護猫を迎えた家では、触れる回数をその子が決めているという前提が先にあります。ペットのにおいの出どころは4つあって、そのうち3つはその子に触らずに動かせます。残りの1つ、体に手を入れる日は、来客の予定がない日に回す。この分け方をすると、来客の日にやることが減って、しかも部屋のにおいは落ち着きます。

3か月で変わったのは、その子の性格ではありません。変わったのは、こちらが来客の日に何をしないと決めたかのほうです。隠れられる場所を1か所空けて、前日に布を洗い、当日は換気と食器と床だけをやる。それを何度かくり返したあとで、その子は自分から部屋の隅に出てきました。次の来客でどうなるかは分かりませんが、やることの中身は変えずに続けます。同じ形がくり返されることそのものが、その子にとっての手がかりになっているからです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。