C09シーン別・暮らし
来客の前を楽にする、保護犬・保護猫を迎えた人の毎日の習慣
来客の30分前、ブラシと拭き取り用の布を出して床に座ったところで、インターホンが鳴りました。その音でその子はソファの裏へ入り、用意した手はどこにも届きませんでした。保護犬・保護猫を迎えた家の来客の日は、ペットのにおいをどうするかという問題と、その子が知らない人をどう受け取るかという問題が、同じ30分の中で重なります。迎えて2か月、その子が以前どんなふうに暮らしていたのかは分かりません。分からないまま、こちらの都合で手を伸ばすことになります。この記事は、来客の前にその子を人前に出せる状態へ整えようとして、うまくいかなかった日から始まります。3回目の来客で当日の手が2つ減るまでに、何を先に置き換えたのかを書きます。
迎えて2か月、はじめての来客で分かったこと|保護犬・保護猫と暮らす家の、においをめぐる経験
迎えて2か月がたった土曜日に、友人が2人来ることになりました。前の週から気になっていたのは、ペットのにおいが部屋にどれだけ残っているかでした。自分では分からなくなっていて、他の人が入ってきたときにどう感じるのかが読めません。そこで来客の30分前に、ブラシと拭き取り用の布を出して床に座りました。背中を数回なでて、口のまわりを拭いて、それで終わりにするつもりでした。
実際に起きたのは、そこから先です。インターホンが鳴った瞬間にその子はソファの裏へ入り、手を伸ばしても出てきませんでした。用意した布は使われないまま床に残り、においについては何もできていません。来客の前にやろうとしたことが、来客の音でまるごと止まりました。2人が帰ったあと、ソファの裏をのぞくと、その子はまだそこにいました。ペットのにおいについては、結局その日は何も動かせていません。
このとき分かったことが2つあります。1つは、保護犬・保護猫を迎えた家では、来客の前のケアが「やる・やらない」ではなく「届く・届かない」で決まるということです。手順を組んでも、その子が受け取らなければ実行されません。もう1つは、部屋のにおいのほうは、その子に触れなくても動かせる部分があったということです。触ることを前提にした計画だったので、触れなかった時点で全部が止まってしまいました。
- 来客の日は、時間が数分しかない:インターホンから玄関までのあいだに終わることしかできません
- その子にとって来客は知らない人:家族が落ち着いていても、その子の側の条件は変わりません
- 以前どうしていたかは分からない:保護犬・保護猫を迎えた人は、そこを空欄のまま進めることになります
- ペットのにおいの出どころは、体だけではない:寝床の布、食器、床、そして空気
- 触れないと止まる計画は、毎回止まる:来客のたびに同じところでつまずきます
2回目の来客までに変えたのは、順番です。触ることを前提にした手順を、触らなくても進む手順に組み替えました。結果として、来客の前にやることは減りました。減ったのに、部屋のにおいについては前より落ち着いています。この記事で書きたいのは、その組み替えの中身です。
来客の前に触るほど、においの出どころが動く理由|保護犬・保護猫にとっての知らない人
ペットのにおいは、体だけから出ているわけではありません。出どころは4つあります。体の毛と皮脂、寝床の布、食器と水皿、そして床です。このうち、来客の前の数分でいちばん動かしにくいのが体で、いちばん動かしやすいのが食器と床です。ところが多くの人は、来客の前に体から手をつけます。においの元だと感じるのが体だからです。
保護犬・保護猫を迎えた家では、この順番の問題がもう一段深くなります。触られることにまだ慣れていない子にとって、来客の直前という時間は、いつもと違う空気の中でいつもと違う手が来る時間です。その子の側には、こちらの都合が見えていません。逃げれば追いかけられ、追いかけられれば奥へ入ります。奥というのは、たいていの場合、寝床かソファの裏です。
ここで何が起きるかというと、においの出どころが移動します。体に付いていた皮脂が、その子の逃げ込んだ布に移ります。寝床の布は、毎日その子が体を預けている場所なので、もともと皮脂の溜まりやすい場所です。そこへ、来客のたびに追加されます。布に残った皮脂は、乾ききらないまま置いておくと、においのもとになります。雑菌という言葉で語られる部分ですが、家でできることは2つだけです。洗うことと、湿らせたままにしないことです。
| 出どころ | 来客の直前に手が入るか | 保護犬・保護猫を迎えた家での扱い |
|---|---|---|
| 体の毛と皮脂 | 入りません | その子が寄ってきた日に、少しずつ。来客の日には触りません |
| 寝床の布 | 入りません | 前日の夜に洗って乾かしておきます。当日は触りません |
| 食器と水皿 | 入ります | 来客の前に下げて洗います。2分で終わります |
| 床 | 入ります | その子が通る場所だけを拭き取ります。全面はやりません |
| 空気 | 入ります | 換気を先にします。窓は2か所開けて、風の通り道を作ります |
表の右側を見ると、ペットのにおいに来客の直前から手が入るのは、食器と床と空気の3つだけだと分かります。そして、この3つはどれも、その子に触れずにできます。体と寝床の布は、来客の日ではなく前の日までの仕事です。順番をこう分けておくと、インターホンが鳴っても止まりません。
帰宅後にまとめてやる形も同じです。人が外から帰ってくること自体、その子にとっては小さな来客です。帰宅後すぐに手を伸ばさず、まず換気と食器から始めると、その子は自分のタイミングで出てきます。毎日この順番でやっていると、来客の日だけ順番が変わる、ということもなくなります。
出せる状態にするより、隠れられる場所を先に作る|来客の日のペットのにおいへの考え方
来客の日の目標を、ひとつ書き換えます。その子を人前に出せる状態にすることではなく、その子が自分で入れる場所を1か所空けておくことにします。保護犬・保護猫を迎えた家では、こちらのほうが結果としてうまくいきます。隠れられる場所がある子は、そこにいるだけで済みます。ない子は、部屋の中を移動し続けます。移動が増えるほど、毛と皮脂が広い範囲に散ります。
隠れ場所には条件があります。来客の動線から外れていること、出入り口がその子から見えること、そして布が敷いてあることの3つです。玄関と居間を結ぶ線の上に寝床があると、その子は来客のたびに移動しなければなりません。寝床の位置を1メートル動かすだけで、来客の日にその子が動く距離が変わります。
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来客の前日の夜|寝床の布を洗って、しっかり乾かす
においの出どころとして、いちばん量のあるのが寝床の布です。前日にやっておけば、当日その子に触る必要がありません。洗ったあとは、生乾きのまま戻さないこと。湿ったまま敷くと、翌日には前より気になります。予備の布を1枚持っておくと、洗っているあいだも空きません。
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来客の30分前|窓を2か所開けて、換気を先に済ませる
空気は、来客の直前でも動かせます。1か所だけ開けても空気は入れ替わりません。対角にある2か所を開けて、通り道を作ります。その子が寒がる場所は先に確かめて、その部屋の窓は開けないでおきます。5分で閉めて構いません。
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来客の15分前|食器と水皿を下げて洗う
食器はペットのにおいの出どころとして見落とされがちです。口が毎日触れる場所なので、ぬめりが残ると、そこだけ別のにおいになります。下げて洗い、水皿は新しい水に替えます。来客のあいだ、食器は出しておかなくて構いません。
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来客の10分前|その子が通る場所の床だけを拭き取る
部屋全体はやりません。寝床から水皿まで、その子が毎日通る線の上だけを拭き取ります。毛と皮脂が落ちているのは、その線の上です。全面をやろうとすると、時間が足りずに途中で終わります。
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来客の直前|隠れ場所を空けて、その子に触らない
ここが今回いちばん書きたいところです。来客の日は、その子に触りません。ブラシもかけず、体も拭きません。隠れ場所の入り口を空けて、そのまま迎えます。触らないことは、手を抜いているのではなく、その日の手当てのひとつです。
ケアの記事で「触らない」と書くのは、ずいぶん後ろ向きに見えます。ただ、保護犬・保護猫を迎えた人にとって、触っていい回数はその子が決めています。こちらの都合で回数を使ってしまうと、その子が自分から寄ってきた日に使える分が減ります。来客の日は、こちらの都合がいちばん強く出る日です。だからこの日は使わない、と決めておきます。
来客の予定がない日、その子が自分から近くに来て、床に伏せたとき。そこが体に手を入れられる時間です。mofuwaのグルーミングスプレーのような洗い流さないものを布に含ませて、背中を数回なでるところまでにしてください。背中は、多くの子がいちばん受け入れやすい場所です。全身をやろうとせず、数回でやめる。やめるところを先に決めておくと、次の日もその子は寄ってきます。洗わない日のケアは、回数ではなく、続けられるかどうかで決まります。
この5つの手順のうち、その子に触れるものは1つもありません。それでも、来客が入ってきたときの部屋の空気は変わります。においの出どころのうち、量の多い寝床の布と食器と床が、前の日と当日に分けて処理されているからです。体は、そのあとでいい。順番の話です。
触らない日をはさんだ3か月で起きた変化|来客の前に、当日の手が2つ減るまで
2回目の来客は、1回目から3週間後でした。前日に寝床の布を洗い、当日は換気と食器と床だけをやりました。その子はやはりソファの裏に入りましたが、1回目と違ったのは姿勢です。奥で丸くなるのではなく、出入り口のほうを向いて伏せていました。来客の途中で一度だけ顔を出して、また戻りました。ペットのにおいについて、友人から何か言われることもありませんでした。
3回目は、そこからさらに2か月後です。この日は、来客が座って20分ほどたったころに、その子が自分から出てきました。人のいるほうへは来ず、部屋の隅で伏せています。出てきたのは、こちらが何かをしたからではなく、出てきても何も起きない日が続いたからです。触らない日を重ねたことが、そのまま経験として残っていました。
| 1回目 | 2回目 | 3回目 | |
|---|---|---|---|
| 前日にやること | なし | 寝床の布を洗う | 寝床の布を洗う |
| 当日、体に触る | やろうとして届かず | やらない | やらない |
| 当日、ブラシをかける | やろうとして届かず | やらない | やらない |
| 当日やること | 3つ。どれも届きませんでした | 換気・食器・床の3つ | 換気・食器・床の3つ |
| その子の居場所 | ソファの裏の奥 | ソファの裏。入り口を向く | 部屋の隅で伏せる |
表の見方で大事なのは、当日の手が2つ減って、前日に1つ増えているところです。合計では減っていますが、それ以上に、当日に残った3つがどれも「その子に触れない仕事」になりました。届くかどうかに左右されないので、来客のたびに同じように実行できます。実行できる手順だけが、経験として積み上がります。ペットのにおいへの手当ても、続けられた回数のぶんだけしか積み上がりません。
毎日の側でも、ひとつだけ変えました。帰宅後に手を伸ばすのをやめて、先に換気と食器をやるようにしたことです。その子にとって、人が帰ってくる時間は毎日の小さな来客です。そこで手が伸びてこない日が続くと、こちらが動いていても部屋の隅に居続けられるようになります。来客の日にだけ特別なことをするより、毎日の帰宅後を同じ形にしておくほうが、その子には分かりやすいようでした。
においが急に強くなった、においの質が変わった、地肌が赤い、じくじくしている、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、食べない、水を飲む量が急に増えた。こうした変化があるときは、来客や環境の話として片づけず、動物病院にご相談ください。保護犬・保護猫を迎えてまもない時期は、その子のふだんがまだ分かりません。迷ったときは、様子を見る期間を長く取らないでください。いつから気づいたかをメモしておくと、相談がそのぶん早く進みます。
来客の前を楽にする、という話の答えが「触らない」になるのは、書いている側でも据わりが悪いところがあります。それでも、保護犬・保護猫を迎えた家では、触れる回数をその子が決めているという前提が先にあります。ペットのにおいの出どころは4つあって、そのうち3つはその子に触らずに動かせます。残りの1つ、体に手を入れる日は、来客の予定がない日に回す。この分け方をすると、来客の日にやることが減って、しかも部屋のにおいは落ち着きます。
3か月で変わったのは、その子の性格ではありません。変わったのは、こちらが来客の日に何をしないと決めたかのほうです。隠れられる場所を1か所空けて、前日に布を洗い、当日は換気と食器と床だけをやる。それを何度かくり返したあとで、その子は自分から部屋の隅に出てきました。次の来客でどうなるかは分かりませんが、やることの中身は変えずに続けます。同じ形がくり返されることそのものが、その子にとっての手がかりになっているからです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
