C05犬種・猫種別ケア
ニューファンドランドのダブルコート|脇や内股の蒸れを毎日のケアで防ぐ
全身を拭き終えて、最後に前脚を持ち上げて脇へ指を入れると、そこだけまだ濡れていました。背中はもう乾いています。おなかも、脚の外側も。それなのに、差し込んだ指先が冷たい。ニューファンドランドと暮らしていると、この場面に何度も出会います。蒸れは、拭き忘れから起きているのではありません。拭ける面と、拭けない面があるというだけの話です。そしてその分かれ目は、この犬種の体の作りで決まっています。この記事は、そこからたどっていきます。
拭き終えたはずの脇が濡れている|多くの飼い主が持っている経験
雨の日の散歩から帰ってきて、玄関で全身を拭きます。背中、腰、脚の外側、しっぽ。布が重くなるほど水を吸って、もう十分だと思えるところまで拭きました。最後に前脚を軽く持ち上げて、脇に指を入れます。まだ濡れています。ニューファンドランドと暮らしている方の多くが、この経験を持っています。
同じことが、内股でも起きます。おなかの表面は乾いているのに、後ろ脚の内側と体が合わさっている面だけ、指を入れると温かく湿っている。乾いた面と、湿った面が、同じ体の上に同時にあります。そして湿っているほうは、たいてい外から見えません。
この経験を「拭き方が足りなかった」と受け取ると、次の日はもっと強く拭くことになります。ところが、強く拭いても結果はあまり変わりません。布が届いていないのではなく、布を当てる面がそもそも開いていないからです。脇と内股は、体そのものの重みで閉じています。そこを開けないまま上から押さえても、内側の水は動きません。
- 脇(前脚の付け根の内側):前脚と胸が合わさる面。立っていても閉じています
- 内股(後ろ脚の内側):左右の脚と、おなかの下側が向かい合う面です
- 首の下から胸へ続く面:あごを下げると閉じ、被毛がいちばん厚く重なります
- 耳のうしろと、しっぽの付け根:毛が向きを変える場所で、水がとどまりやすくなります
この4か所を、拭き終えたあとに指で確かめる。それだけで、その日の蒸れがどこに残るかが分かります。目で探しても見つかりません。この犬種では、手のほうが早いです。指の腹を根元まで差し込んで、冷たいか、温かく湿っているかを確かめてください。乾いていれば、そこは今日は大丈夫です。
背中から始めて脇で終わると、脇にたどり着くころには布が水を吸いきっています。脇と内股を先に、乾いた布で押さえてから、背中と外側を拭く。順番を入れ替えるだけで、いちばん乾きにくい面にいちばん乾いた布が当たります。道具も時間も増やさずにできる、最初のひとつです。
水に入るために作られた被毛|ニューファンドランドの背景にある仕事
背景から順に見ていきます。ニューファンドランドは、北大西洋の冷たい海に面した土地で、水辺の仕事を担う犬として形づくられてきました。船から落ちた綱を引き、水に入って人や物を岸へ運ぶ。その仕事に必要だったのは、冷たい水の中でも体温を保てる被毛と、大きな体でした。
被毛は二重になっています。外側の上毛は太くて長く、油分を含んでいて、水をはじきながら流します。内側の下毛は細くて密に生えていて、そのあいだに空気を抱えます。この空気の層が、冷たい水と皮膚のあいだの断熱材になります。水に入っても地肌まで一気に冷えないのは、この層があるからです。
| 体の作り | 水の中で役に立つこと | 上がったあとに起きること |
|---|---|---|
| 上毛が太く、油分を含む | 水をはじき、体の外へ流す | 表面は早く乾き、乾いたように見える |
| 下毛が細く、密に生える | 空気を抱えて、体温を保つ | 抱えた水が抜けにくく、内側に残る |
| 被毛全体が厚い | 冷たい水を地肌まで届かせない | 外の空気も地肌まで届かない |
| 体が大きい | 水の中で押し負けない | 面と面が閉じ、乾く場所が減る |
表の右の列が、この記事の主題です。水を防ぐために作られた被毛は、水から上がったあと、乾くのにも時間がかかります。空気を抱えられるということは、水も抱えられるということだからです。上毛は数十分で乾いて、手のひらで触ると乾いたように感じます。けれど下毛の層と地肌のあいだには、まだ水が残っています。
そして、いまの暮らしで海に入る子はほとんどいません。それでも同じことは起きます。シャンプーのたび、雨の日の散歩のたび、夏に水遊びをしたあと。体が水に濡れる場面は、仕事をしていた時代より少なくなっただけで、なくなってはいません。作りのほうは、そのまま残っています。
誤解のないように書いておくと、これは手のかかる犬種だという話ではありません。厚い被毛は、この体が持っている性能そのものです。ただ、その性能は水に入るために働くようにできているので、上がったあとの数十分だけ、人が少し手を貸す形になります。貸す場所は、いつも同じ4か所です。
体の重みで、脇と内股が閉じている|蒸れが残る理由
被毛が厚いことに、もうひとつの条件が重なります。体が大きいということです。ニューファンドランドの前脚は太く、胸は深く、後ろ脚もしっかりしています。立っていても、前脚の内側と胸のあいだにはすき間がほとんどありません。伏せれば、さらに閉じます。
小さな犬でも脇はありますが、体が軽いぶん、動けば面が開きます。ニューファンドランドでは、その面が体そのものの重みで押し合っています。閉じた面の内側では、空気が動きません。空気が動かなければ、そこにある水は蒸発する先を持ちません。これが、脇と内股に蒸れが残る理由です。
湿った状態が長く続くと、そこは皮膚にとって条件のよくない場所になります。地肌がふやけて柔らかくなり、毛が寄って束になり、においが出てくることもあります。ここで大事なのは、水そのものが問題なのではなく、抜けない時間の長さが問題だということです。同じ量の水でも、30分で抜けるのと、半日かけて抜けるのとでは、皮膚の側で起きることが違います。
だから、蒸れを防ぐためにできることは1つに絞れます。閉じている面を開いて、空気を通す時間をつくること。乾かす道具を強くすることでも、拭く力を強めることでもありません。面を開けば、あとは空気が仕事をしてくれます。
湿度の高い時期は、外の空気そのものが湿っているので、抜けるまでの時間が延びます。冬は暖房で室内が乾くぶん早く抜けそうに思えますが、寒いと脚を体に寄せて丸くなるので、面はむしろ強く閉じます。季節で変わるのは抜ける速さで、閉じているという条件のほうは1年を通して同じです。
乾ききるまでの30分に起きる変化|手を入れる順番を決める
濡れた体を拭いたあと、表面が乾いたように見えるまではそれほどかかりません。問題はその先で、脇と内股の内側が乾ききるまでには、そこから長い時間がかかります。この時間帯に何をするかで、その日の蒸れの残り方が決まります。やることは多くありません。
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前脚を持ち上げて、脇の面を開く
立たせたまま、前脚を体から少し離して持ち上げます。無理に高く上げる必要はなく、面が開けば十分です。開いた状態で、乾いた布を根元に当てて押さえます。こするのではなく、押さえて水を布へ移します。左右それぞれ、布の当たる面を変えながら数回ずつ。
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内股は、横になっているときに手を入れる
立たせて後ろ脚を広げようとすると、嫌がる子が多くなります。横になって落ち着いているときに、上側になっている脚のほうから触ると続きます。1日で左右そろえなくて構いません。今日は右、明日は左でも、毎日どちらかに触れていれば変化に気づけます。
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ブラッシングで、被毛の層を立てて空気を通す
下毛が寝たままだと、その上に上毛がかぶさって空気の道がふさがれます。目の粗いブラシで根元から毛を起こすと、層のあいだに道ができます。乾かす前のブラッシングは、水を取る作業ではなく、空気を通す作業です。毛が濡れて絡んでいるときは、先に指で分けてからブラシを入れてください。
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風を当てるなら、面を開いたまま、温度は低めで
ドライヤーを使うときは、閉じた面の外から当てても内側までは届きません。脇を開いた状態で、根元に向けて風を送ってください。温度は低めのほうが、地肌に届く時間を長く取れます。熱い風を短く当てると、表面だけが先に乾いて、内側が残ったまま終わります。
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30分後にもう一度、同じ4か所を指で確かめる
終わったつもりの30分後に、脇と内股と首の下としっぽの付け根に、もう一度指を入れます。まだ湿っていれば、そこがその子でいちばん抜けにくい面です。翌日から、その1か所だけは時間を長めに取る。全部を均等にやるより、続きます。
洗う回数についても、この犬種では考え方が変わります。被毛が厚いぶん、洗えばそのぶん乾かす時間も要ります。洗いすぎは、地肌のうるおいを毎回リセットするだけでなく、乾ききらない時間を増やすことにもつながります。においが気になるからと回数を上げると、蒸れの側の条件が悪くなる、ということが起こります。全身を洗う回数は増やさず、汚れた面だけを部分的に拭く日を挟んでください。
そこで、毎日の側にもう一手を置きます。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて、脇と内股の面を開いた状態でなでる使い方です。この犬種は洗えば洗うだけ、乾かす時間も要ります。毎日きれいにしておきたい面と、できれば水をかけたくない面が、ここでは同じ場所にあります。吹きかけて布で押さえるだけなら、乾かす時間を新しく増やさずに一日ぶんを片づけられます。
量は気にしなくてかまいません。この体格では、脇と内股の左右を回るだけで小型犬の何倍か要ります。mofuwa グルーミングスプレーは舐めても差し支えない基準でつくられているので、脇のように犬が自分で舐める面でも、足りない量で済ませる必要がありません。ブラッシングの前に使えば、下毛を根元から起こすときの引っかかりも減ります。使ったあとは、その面を乾いた布で押さえて終わりにします。
人の目の高さと、犬が寝ている床の近くでは、湿度の数字が違います。その子がいちばん長くいる場所の床に、湿度計を1つ置く。数字が高い日は、乾ききるまでの時間が延びていると分かります。梅雨どきに「今日はいつもより長くかかる日だ」と先に知っていれば、風を当てる時間を延ばす判断ができます。
湿りが引いても戻ってくるとき|ニューファンドランドの蒸れが条件から外れる線
ここまでは、被毛の厚さと、面が閉じているという条件で説明のつく蒸れの話です。条件で説明がつくということは、条件を外せば動くということでもあります。面を開いて乾かした日に、脇の湿りが引く。湿度の低い日は、そもそも短い時間で乾く。そういう動き方をしているなら、この記事の枠の中にいます。
逆に、次のような変化は、毎日のケアの範囲では説明がつきません。乾かし方を変えても戻ってくるとき、あるいは湿っていない日にも残っているときです。
- 濡れていない日にも、同じ場所が湿っている:外から入った水では説明がつきません
- 左右のどちらか片側だけに出ている:脇も内股も左右で同じ条件なので、片側だけという理由がありません
- 地肌が赤い、じくじくしている、ただれている:手ざわりではなく、見て分かる変化になっています
- においが変わった、強くなった:湿りが引いたあとも残るにおいは、別の見方が要ります
- 同じ場所をなめ続ける、かき続ける、床にこすりつける:かゆみや痛みのサインとして扱ってください
- 毛が根元から抜けて、地肌が広く見えている:面積が広がっているかどうかで見てください
- 触ろうとすると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、ただれている、においが変わった、同じ場所をなめ続ける・かき続ける、毛が抜けて地肌が広く見える、触ると痛がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、家での手入れを続けるより先に、動物病院にご相談ください。脇と内股は外から見えない場所なので、変化が進んでから気づくことがあります。脇の湿りは待てますが、地肌のただれは待てません。
相談に行く前に、いつからか、どの面か、最後に濡れたのはいつか、乾かすのにどれくらいかけているか、家で使っているものは何かをメモしてください。診察室では、脇を開いた状態を再現するのに時間がかかります。家で毎日指を入れて確かめている人の言葉が、いちばん確かな手がかりになります。同じ場所を同じ明るさで撮った写真があれば、それも持って行ってください。
ここまで書いてきたことは、結局ひとつに絞れます。ニューファンドランドの厚い被毛は、直すべきものではありません。冷たい水の中で体を守るために積み上げられてきた作りで、この犬と暮らす理由そのものの一部でもあります。ただ、水から上がったあとの数十分だけ、その作りは乾きにくさとして表に出ます。前脚を持ち上げて、脇を開いて、乾いた布を当てる。ニューファンドランドの蒸れに対して毎日できることは、突きつめればそれだけです。今日拭いたあとに、指を1本入れてみるところから始めてください。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
