C09シーン別・暮らし
多頭で暮らすを楽にする、多頭飼いの人の毎日の習慣
3頭めを迎えて2週間がたった夜、玄関で使った布を数えたら5枚になっていました。2頭で暮らしていたころは2枚でした。頭数は1.5倍になっただけなのに、布は2.5倍です。多頭飼いを始めるとき、たいていの人は「頭数×時間」で計算します。2頭で10分なら3頭で15分だろう、と。ところが実際に増えるのは時間ではなく、誰と誰が触れ合うかという組み合わせの数のほうでした。2頭なら組み合わせは1つ。3頭になると3つに増えます。多頭飼いの家で毎日の習慣が崩れるのは、時間が頭数ぶんしか増えないのに、体についたものが移る経路だけが3倍になるからです。この記事では、多頭飼いで1頭増えたときに何が変わるのかを、頭数ではなく組み合わせの数で数え直します。
頭数は1.5倍なのに、玄関の布は5枚になった|多頭飼いで時間の計算が合わない背景
布が増えた理由は、数えてみると単純でした。2頭で暮らしていたころ、帰宅後に玄関で使う布は1頭に1枚、合わせて2枚です。3頭になると3枚。ここまでは頭数のとおりです。増えた2枚は、どの子のものでもありません。玄関で3頭が体を寄せ合った直後にもう一度使う1枚と、先に上がった子が室内で別の子の寝床へ入ったあとに使う1枚です。
多頭飼いの毎日で時間を食っているのは、この「どの子のものでもない手」のほうです。1頭ずつのケアは、頭数ぶんしか増えません。増えているのは、1頭ずつのケアとケアのあいだで起きていることのほうです。拭き終わった子が、まだ拭いていない子に体をこすりつける。3頭めが上がるのを待っているあいだに、1頭めが室内へ入っていく。
室内でも同じことが起きます。寝床が3つになると、洗う日を3つに分けることになります。ところが実際には、3頭が3つの寝床をきれいに使い分けることはありません。夜のあいだに、誰かが誰かの寝床で寝ています。だから朝、洗う予定ではなかった1枚が湿っている。食器も同じで、3つ並べても、先に食べ終えた子が隣をのぞきに行きます。
| 2頭で暮らしていたころ | 3頭になってから | |
|---|---|---|
| 玄関で使う布 | 2枚 | 5枚 |
| 帰宅後に玄関でかかる時間 | 8〜10分 | 18〜22分 |
| 待たせている子の数 | 1頭 | 2頭。待つ時間そのものが長くなります |
| 洗う予定ではなかった寝床 | 週に0〜1枚 | 週に3〜4枚 |
| においが混ざる場所 | 玄関と寝床 | 玄関、寝床、食器のまわり、通り道 |
この表で目立つのは、時間の行です。頭数は1.5倍なのに、帰宅後の時間はおよそ2倍になっています。1頭あたりの手間が増えたわけではありません。1頭ずつのケアは、2頭のときとまったく同じ手順です。それでも合計が倍になるのは、待たせている子の数が1頭から2頭に増え、待っているあいだに起きることが増えたからです。
多頭飼いを長く続けている人ほど、この差を「慣れの問題」とは言いません。慣れて速くなるのは1頭ずつの手のほうで、あいだで起きることは速くならないからです。では、あいだで起きていることの正体は何なのか。数え方を変えると、はっきり見えてきます。
1頭増えると、組み合わせは3倍になる|多頭飼いで毎日の習慣が追いつかなくなる理由
数えるのは頭数ではなく、誰と誰が触れ合うかという組み合わせの数です。2頭なら、組み合わせは1つしかありません。AとBの1組だけです。ここに1頭増えて3頭になると、AとB、BとC、AとCの3組になります。頭数は1.5倍ですが、組み合わせは3倍です。
続けて数えると、増え方の速さが見えます。4頭で6組、5頭で10組。1頭増えるたびに、そのときの頭数から1を引いた数だけ、組が新しく生まれます。4頭めを迎えた日には3組、5頭めを迎えた日には4組が一度に増える計算です。一方で、こちらが使える時間は1日ぶんのまま動きません。
組み合わせの数がそのまま何を意味するかというと、体についたものが移る経路の数です。外から持ち帰ったもの、毛、皮脂、寝床の湿り、においのもと。これらは1頭の中で完結しません。多頭飼いの室内では、1組につき1本ずつ、行き来する道があります。3頭なら3本、5頭なら10本です。
| 移るもの | どこで移るか | 気づくまでの時間 |
|---|---|---|
| 外から持ち帰ったもの | 玄関。上がる順番を待っているあいだ | その日のうち |
| 抜けた毛 | 寝床、ソファ、通り道の床 | 2〜3日 |
| においのもと | 同じ寝床、同じ布、体をこすり合う場所 | 1週間ほど。慣れると分からなくなります |
| 湿り | 帰宅後に体が乾ききる前の接触 | その日のうち |
| 食器のまわりのもの | 先に食べ終えた子が隣をのぞきに行く | 気づかないことが多い |
犬と猫がいっしょに暮らしている家では、同じ1組でも中身が違います。犬どうしは、体をぶつけ合って移します。並んで歩き、押し合い、同じ場所で伏せる。接触は短くて回数が多い。猫が入っている組では、寝床と毛づくろいが経路になります。直接ぶつからなくても、同じ布の上で順番に寝ることで移ります。こちらは接触が長くて回数が少ない。
この違いは、手の入れどきに直結します。犬どうしの組は、回数が多いぶん帰宅後のような区切りで断てます。猫が入っている組は、寝ているあいだに時間をかけて移るので、断てる場所は布のほうです。多頭飼いで「同じことをしているのに、この子だけ結果が違う」と感じるとき、たいていは組の質が違っています。
ここまでを一言でまとめると、時間は足し算でしか増えず、経路は掛け算に近い形で増える、ということです。だから「全頭に均等に時間を割る」という組み立てでは、頭数が3頭を超えたあたりから追いつかなくなります。多頭飼いの毎日が急に重くなる境目が3頭めにあるのは、ここに理由があります。
全頭ではなく、濃い2組だけを選ぶ|多頭飼いの毎日を軽くする考え方
組の数が10まで増えるなら、全部に手を入れることはできません。やることは1つで、濃い組を2つだけ選ぶことです。濃い組というのは、接触の回数か時間のどちらかが飛び抜けている組のことです。5頭10組のうち、実際に濃いのはたいてい2組か3組しかありません。残りは、同じ家にいるだけで、ほとんど触れ合っていません。
どの組が濃いのかは、見ているつもりでも案外わかりません。記憶ではなく、1週間の記録で決めてください。やることは少なく、次の4つだけです。多頭飼いの家では、この1週間の記録がその後の何か月ぶんの時間を決めます。
-
1日1枚だけ、寝床を撮る
毎日、決まった時刻ではなく、通りかかったときで構いません。誰と誰が同じ場所にいるか、それだけを残します。7日ぶん並べると、いつも同じ2頭が写っている組が浮かびます。それが、寝床を経路にしている組です。
-
食器を離れる順番と、そのあと誰が近づくかを見る
食べ終えた子が隣の器をのぞきに行く相手は、毎回だいたい同じです。これは接触の時間は短いのに、口のまわりが直接触れる組です。回数が多ければ、濃い組に数えてください。
-
取っ組み合いをする組に、正の字を書く
1週間で何回あったかだけを数えます。犬どうしなら1日に何度もある組と、まったくない組にはっきり分かれます。数えると、思っていた組と違うことがよくあります。いちばん仲がいいと思っていた組が、実は静かに離れて寝ているだけ、ということも起こります。
-
7日たったら、上位2組にだけ丸をつける
3組めから下は、この時点で切ります。手を入れる先を2組に絞ると、毎日の手はほとんど増えません。多頭飼いで続かなくなるのは、全部の組を見ようとしたときです。2組なら、頭数が5頭でも回ります。
選んだ2組に対してやることは、経路を1本だけ切ることです。全部の接触をやめさせるのではありません。いちばん濃い経路を1本だけ、物理的に外します。同じ寝床で寝ている組なら、寝床を2つに分けて置く位置を1メートル離す。食器の組なら、器を離して置き、食べ終えた子を先に別の部屋へ通す。取っ組み合いの組なら、帰宅後に拭く順番をその2頭から始める。
| 濃い2組 | 残りの組 | |
|---|---|---|
| 帰宅後 | 先に拭く。順番を固定します | 順番は決めません |
| 寝床 | 布を分ける。洗う曜日も分けます | まとめて週に1回 |
| 食器 | 位置を離す。食べ終わりを見届けます | そのまま |
| 毎日の記録 | 1行。同じ場所を気にしていないか | 週に1回、見るだけ |
| においの確認 | 布に鼻を寄せる。週に1度 | 部屋に入った第一印象だけ |
濃い2組に毎日使う道具が、mofuwa グルーミングスプレーです。犬も猫も体から脂を出すので、玄関で布をあてる3分は頭数にかかわらず毎日発生します。吹きかけて拭くだけなので、この3分の中に収まります。多頭飼いでは、1頭ずつ布を替えてください。同じ布を持ち替えると、せっかく分けた経路を、こちらの手で1本つないでしまうことになります。舐めても問題のない基準でつくられているので、4頭ぶんの布に含ませても量を気にせずに済みます。布は使ったぶんだけ箱に落とし、その日のうちにまとめて洗う。グルーミングスプレーの減り方は頭数に比例しますが、手順の数のほうは1頭のときと同じままです。
残りの組は、放っておいて構いません。手を入れない組があることは、手抜きではなく設計です。10組すべてに毎日1分ずつ割くと、それだけで10分が消えます。2組に絞って3分ずつ使うほうが、結果として濃い経路に届きます。多頭飼いの毎日を軽くする考え方は、増やすことではなく、どこを見ないと決めるかのほうにあります。
3年めに残っていた習慣は、帰宅後の3分だけ|犬と猫の多頭飼いで、経験が削っていくもの
多頭飼いを続けている家に、何が残っているかを並べると、意外なほど少なくなります。頭数が増えるほど、続く習慣の数は減ります。増やしたものは、たいてい半年で消えている。3年めまで残っているのは、次の3つくらいです。
- 帰宅後の3分:玄関で、濃い2組の4頭ぶんだけ。残りは室内に入ってから、気づいたときに
- 週の同じ曜日に、寝床の布を洗う:頭数が増えても曜日は増やしません。1回で回す枚数だけが増えます
- 1日1行の記録:誰がどこを気にしていたか。書かない日があっても続けます
逆に、頭数が増えても増やさないと決めているものが2つあります。1つは道具の種類です。頭数が5頭になっても、使う道具は布とブラシだけにしておく。種類が増えると、どの子に何を使ったかを覚えていられなくなります。もう1つは時刻です。多頭飼いでは、決めた時刻に全頭がそろうことがまずありません。時刻ではなく、玄関を上がるという行為に習慣をつないでください。
経験の中でいちばんはっきり間違いだったと分かるのは、全頭を同じ日に洗おうとしたことです。1頭ずつは短くても、乾かす順番待ちが出ます。待っているあいだ、濡れた子と乾いた子が同じ室内にいる。せっかく分けたはずの経路が、その日だけ全部つながります。犬と猫がいる家ではとくに、猫の側が濡れた犬から離れる場所を失います。日を分けたほうが、合計時間も短くなります。
においについても、多頭飼いには固有の落とし穴があります。頭数が多い部屋では、自分の鼻がいちばん早く慣れます。毎日いる人ほど、変化に気づけません。だから、週に1度は寝床の布に鼻を寄せて、前の週と比べてください。部屋全体のにおいではなく、布1枚ぶんで比べると差が分かります。玄関を開けた瞬間の第一印象を覚えておくのも、同じ役に立ちます。
多頭飼いでは、1頭の変化がその子だけの話なのか、家の側の条件なのかが分かりにくくなります。見分け方は数のほうにあります。同じ場所をなめる・かく子が2頭になったら、それは家の側で起きていることとして扱ってください。そして、地肌が赤い、フケが増えた、毛が抜けて地肌が見えている、においの質が変わった、食欲や元気が落ちている。いずれかがあれば、ケアの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。多頭飼いでは1頭あたりを見る時間が短くなるぶん、気づくのが遅れます。様子を見る日数を足すより、2頭めが出たその週のうちに連絡してください。
動物病院で話すときは、頭数と、その子が誰といちばん長くいるかを先に伝えてください。多頭飼いという条件がわかると、同じ症状でも見る順番が変わります。1頭だけを連れて行くときも、家に何頭いて、その子とどの子が同じ寝床を使っているかは持って行ってください。
多頭飼いで数えるものは、最後まで頭数ではありませんでした。数えるのは組み合わせで、手を入れるのはそのうち2組だけ。1頭増えるたびに増えるのは時間ではなく経路で、経路は減らせます。寝床を離す、器を離す、拭く順番を固定する。どれも1度やれば形が残る手です。毎日の側でやることは、そのあと3分しかありません。頭数が増えるほど、決めごとは減っていきます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
