C09シーン別・暮らし

シニア犬と暮らす人が車内のにおいで困ること、その手当て

公開日 2022年3月5日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの差し込む車の座席に、淡い毛色の年老いた犬が静かに横になっている
同じ場所に座り続ける子ほど、においは車の一か所に集まります。手を入れる面積は、そこで決まります。写真:Pexels/Pixabay

後部座席のドアを開けた瞬間の車のにおいが、去年の秋から変わりました。車は同じままで、乗る回数だけが増えました。月に1回だった通院が、いまは週に1回。老犬になってから、ペットと車で出かける用事のほとんどが動物病院になりました。回数が増えたぶん、車の中の条件そのものが以前とは別物になっています。手を入れる場所は、乗る前・乗っているあいだ・降りたあと・停めているあいだの4つ。このうち老犬と暮らす人にはどれが使えないのかを先に決めると、残りの組み替え方が決まります。7つの問いに、短く答えていきます。

通院が月1回から週1回になって、車のにおいは何が変わったのですか|老犬と暮らす人に最初に出る疑問

変わったのは車ではなく、車が空になっている時間の長さです。月に1回の通院なら、乗せてから次に乗せるまで4週間あります。そのあいだに人だけが乗る日が何日もあって、ドアは何度も開き、前回のにおいは薄まっていきます。週に1回になると、この4週間が5日になります。前回の残りが薄まりきる前に、次の通院が重なる。老犬になって車のにおいが気になり出すのは、その子の体が変わったからだけではありません。

もうひとつ、1回あたりの乗車時間も伸びています。老犬は乗せるまでに時間がかかり、降ろすのにも時間がかかります。診察が終わるのを車で待つ日もあります。ペットを車に乗せている合計の時間が、若いころの倍近くになっていることがあります。回数と1回の長さが同時に増えているので、車内の条件は以前とは別物です。

そこへ温度が乗ります。停めているあいだの車内は、春先でも日が当たれば数時間で温度が上がります。布と樹脂に入ったものは、温度が上がると空気の側へ戻ってきます。ドアを開けた瞬間に感じる車のにおいは、その日についたものではなく、前回までに入って戻ってきたぶんです。だから、乗せた直後よりも、しばらく停めたあとのほうが強く感じます。

月に1回のころと、週に1回になってからで、車の何が変わったか
月に1回のころ週に1回になってから
次に乗せるまでの日数4週間5日
においが薄まる時間人だけが乗る日が20日以上ある薄まりきる前に次が重なる
1回の乗車時間移動のあいだだけ待つ時間を含めて2倍近く
ペットが動く範囲座席の上を移動する乗ってから降りるまで同じ場所
手を入れる面積車全体に薄く広がる一か所に濃く集まる
Note老犬になったから、という話ではありません

体の側にも変わったところはあります。ただ、においが目立ち始めた理由の大きいほうは、通院という用事が増えて、車の使われ方が変わったことです。ここを取り違えると、答えが「その子をもっと洗う」に寄ってしまいます。老犬を洗う回数を増やすのは、立たせておく時間を増やすことでもあります。先に見るのは車の側の条件で、体の側はそのあとです。

乗る前と降りたあと、どちらに手を入れればいいですか|老犬の通院で順番を知りたいとき

乗る前です。においの理屈だけで言えば、ついた直後の降りたあとに手を入れるほうが早い。けれど老犬と暮らす人には、降りたあとの時間が空いていません。車から降ろしたあとは、足取りを見ながら歩かせて、水を出して、休める場所へ連れていく。ここに人の手が全部使われます。車へ戻る余力は残っていません。

だから、前回の後片づけを、今回の準備に付け替えます。やることは同じで、やる時刻だけを次の通院の10分前へ動かす。週に1回の通院なら、後片づけを5日先送りしているだけです。忘れても、次に車へ行くときに必ず思い出せる位置に置いてあるので、抜けません。降りたあとに気力が残っていた日は、そのときやれば前倒しになります。

  1. 出発の10分前に、人だけ先に車へ行く

    老犬を連れ出す前です。この10分は、犬を待たせていない時間なので気持ちに余裕があります。両側のドアを開けて、対角線に風が抜ける状態にしておきます。エンジンをかける必要はありません。

  2. 座らせる場所に敷いてある1枚を、外へ出す

    前回の通院でその子が乗っていた面です。この1枚に、においのいちばん濃いぶんが入っています。車の外に出して、洗濯機に回せる日は回し、回せない日は風の通るところへ立てかけておきます。持ち出せる単位にしてあることが、この手順の全部です。

  3. 接地面だけを拭いて、乾いた1枚を戻す

    座席の全面をやろうとしないでください。老犬が体をつけていた範囲は、だいたい手のひら8枚ぶんくらいです。濃いところは狭い。そこだけを拭いて、替えの1枚を敷けば終わります。時間は3分ほどです。

  4. ドアを閉めるのは、犬を連れてくる直前にする

    10分開けておくと、戻ってきていた空気のぶんは抜けます。ペットを乗せる直前に閉めれば、車内が温まる前に出発できます。夏場は逆に、閉めてからエアコンを回す時間を先に取ってください。

Point降りたあとに何もしない、という意味ではありません

その子が落ち着いて、人が座れたあとに車へ戻れる日は、戻ってください。決めておくのは「必ずやる時刻」のほうで、乗る前はその締め切りです。老犬の通院は予定が動きます。診察が長引く日も、思ったより早く終わる日もある。締め切りを出発前に置いておくと、どちらに転んでも回収できます。

毎回同じ場所に座らせても大丈夫ですか|老犬が車の中で動かなくなったあとの座らせ方

同じ場所のほうがいいです。においを散らさないため、というより、手を入れる面積を決めるためです。若いころは、走っているあいだに座席の上を移動していました。座って、伏せて、また立って窓の外を見る。そのぶん、体から出たものは車の中に薄く広がっていました。

老犬になると、乗ってから降りるまで姿勢がほとんど変わりません。同じ面に、同じ体温で、同じ時間だけ体をつけている。薄く広がる代わりに、一か所へ濃く集まります。においとしては強く感じますが、手を入れる側から見れば、場所が決まっているぶん楽になっています。座る場所を毎回変えると、濃い一か所が車のあちこちに増えるだけです。

場所を固定すると、においとは別のところでも楽になります。乗せるときの支え方、下ろすときに足を置く高さ、体を寄せる向き。毎回同じ手順で乗り降りできることは、老犬にとっては姿勢の負担が減るということです。ペットの側の都合と、車のにおいの都合が、ここでは同じ方向を向いています。

座る場所を固定した場合と、その日ごとに変えた場合
毎回同じ場所その日ごとに変える
においの出方一か所に濃く集まる車全体に薄く広がる
拭く面積手のひら8枚ぶんほど座席のどこを拭くか決まらない
敷く1枚1枚を持ち出せばよい複数の面が同時に汚れる
乗り降りの手順毎回同じ支え方でよい支える高さと向きが毎回変わる
季節でずらすもの日が当たる側かどうかだけ全部が毎回変わる
Note季節で1つだけ動かします

固定するのは車の中の位置ですが、日が当たる側かどうかだけは、季節で入れ替えてください。3月でも、南向きに停めた側の座席は昼過ぎに温度が上がります。老犬は自分で日陰へ動きません。においの話としても、温度が上がる面に体をつけている時間が長いほど、布に入る量は増えます。停める向きが決まっている駐車場なら、左右どちらに座らせるかで調整できます。

シートカバーは買い替えたほうがいいですか|これは、やらなくて構いません

買い替えなくて構いません。7つのうち、これだけは手を減らす側の答えです。車のにおいを決めているのは、シートカバーの素材や新しさではなく、接地面に置かれた1枚と、車が閉じている時間の長さのほうだからです。新しいカバーに替えても、週1回の通院を3回もすれば同じ状態になります。

それに、シートカバーは車から外すのに手間がかかります。老犬の通院で時間が足りない人が、月に1度も外せないものを、においの受け皿にしないでください。受け皿は、片手で持ち出せるものにします。洗って乾かせる小さい1枚を上に重ねて、それだけを回していけば、カバーそのものは受け皿になりません。

ここでよくあるのが、においが取れないからと、シートそのものを丸ごと交換するという判断です。費用も手間も大きいわりに、変わるのは最初の数回だけです。ペットを乗せる車で先に動かすのは、布の種類ではなく、その布が閉じた車の中に置かれている時間のほうになります。

Caution強いにおいで上書きしないでください

香りの強いものを車内に置いて隠す、という手も避けてください。老犬は嗅覚の変化があるとはいえ、閉じた車内で長時間そのにおいの中にいることになります。車酔いをしやすい子では、移動そのものを嫌がる理由が増えます。においを足して隠すより、持ち出せる1枚を外へ出すほうが、結果として早いです。

停めているあいだの車内とは、どういう状態ですか|人が乗らない時間の車のにおい

車は、人とペットが乗っている時間より、誰も乗っていない時間のほうがずっと長い乗り物です。週1回の通院で往復1時間なら、残りの167時間は閉じたまま停まっています。においの条件を決めているのは、この167時間のほうです。乗っている1時間で何をするかより、残りの時間に何が入ったままかを見てください。

閉じた車内では、温度が朝と昼で大きく動きます。温度が上がると、布と樹脂に入っていたものが空気の側へ戻り、下がるとまた表面に落ちます。これを毎日くり返しているので、車のにおいは日ごとに強くなるのではなく、日ごとに位置を変えています。ドアを開けた瞬間に強く感じるのは、空気の側へ戻ってきたタイミングに当たったからです。

だから、換気という言葉を「窓を開けておく」の意味で使うと行き詰まります。防犯の都合で開けておけませんし、開けたところで167時間のうちの数分です。ここでできるのは、換気ではなく持ち出しです。においが入っているものを1つ決めて、閉じた車の中に置きっぱなしにしない。それだけで、戻ってくる量そのものが減ります。

  1. 帰宅したら、まず犬の側を済ませる

    歩かせて、水を出して、休ませる。老犬の通院はここまでで一区切りです。車のことは、この時点では何もしません。

  2. 落ち着いたら、敷いていた1枚だけを取りに戻る

    2分あれば足ります。持って出るのは1枚だけと決めておくと、疲れている日でも動けます。座席を拭くのは、次の出発前の3分に回します。

  3. その1枚を、閉じた場所に置かない

    洗濯機に入れるか、風の通るところへ広げます。ここで袋に入れて置くと、閉じた車内と同じ条件をもう1つ作ることになります。乾かせる場所へ、が基準です。

  4. 車には、乾いた1枚を置いておく

    次の通院までの5日間、車の中には乾いたものだけがある状態にします。人が乗らない167時間に、においの元を置いておかない、というのがこの手順の目的です。

においは車と老犬、どちらから出ているのですか

両方です。ただし、車の側の条件を先に整えたあとで残ったぶんが、体の側から来ています。老犬になると、自分の体をなめて整える量が減ります。後ろへ首が回りにくくなり、腰をひねる姿勢が減り、届かない場所が少しずつ増える。そこに皮脂が残り、体をつけた面へ移っていきます。

移りやすいのは、上から見えるところではありません。脇の下、内ももの付け根、しっぽのつけ根、腰寄りの背中。どれも、座っているときに座席と接しているか、その近くにある場所です。車のにおいの出どころを探すなら、背中の毛並みではなく、この4か所を先に見てください。

届かなくなった4か所は、その子が自分では手入れできない場所です。ただ、老犬にとって洗うことは長く立っている時間が増えることでもあるので、通院のたびに洗うのは現実的ではありません。動かせるのは洗う回数ではなく、1回にかかる時間のほうです。全身をやろうとせず、接地面に近い順に手を当ててください。

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  1. 布に含ませてから当てる

    ぬるま湯で湿らせた布を固く絞って、体にではなく布のほうを当てます。音と冷たさに驚かせないためです。老犬は体勢を立て直すのに時間がかかるので、驚かせない持ち方から入ります。

  2. しっぽのつけ根から始める

    座席にいちばん長く接している場所です。毛の流れに沿って、往復させずに一方向へなでます。ここが済むと、車に持ち込まれる量のいちばん大きいぶんが減ります。

  3. 内ももの付け根と脇の下を、立たせずに

    横になっているときに、上側になっているほうだけを先に。反対側は次の通院の日に回して構いません。1回で全部やろうとすると、立たせる時間が増えます。

  4. 腰寄りの背中で終わりにする

    首の後ろや顔まわりは、この日はやらなくて大丈夫です。車のにおいという目的から見れば、接地面から遠い場所の優先度は低くなります。所要時間は3分ほどです。

Note洗う回数を増やす方向へは寄せません

皮脂が気になると、洗う回数を増やしたくなります。ただ老犬の場合、洗う時間そのものが立たせておく時間で、乾かしきるまでの時間も若いころより長くかかります。においが気になる週は、洗う回数ではなく、拭く場所を接地面の側に寄せてください。サロンや動物病院で洗ってもらった週は、家では何もしない日を作って構いません。

においの質が変わったときは、動物病院に伝えたほうがいいですか

伝えてください。ここまでの6つは、においが「車の条件」と「毛に残った皮脂」で説明できる範囲の話です。次のような変わり方は、その説明では届きません。週に1回通っているのですから、次の診察のときに一言添えれば足ります。ただし、急に変わったときは次の予約を待たないでください。

Caution早めに相談してください

においの出どころが一か所に絞れる、質が変わった、同じ場所をなめ続けている、拭いても翌日には戻る、食欲や元気が落ちている。いずれかに当てはまるときは、車の掃除や拭き方を変える前に、動物病院にご相談ください。老犬は通院の機会そのものが多いので、次の受診で伝えられる場面が必ずあります。急な変化のときは、その予約を待たずに連絡してください。

伝えるときは、いつから、どこから、どんなにおいかの3つをメモしておくと早いです。車という閉じた空間は、家より先ににおいの変化に気づける場所でもあります。毎週その空間に乗せている飼い主は、その変化にいちばん早く触れている人です。気のせいかもしれない、で止めずに、そのまま伝えて構いません。

7つの答えを、通院の1日に置き直す|老犬とペットの車移動で動かせるところ

最後に、7つの答えを時刻の順に並べます。合計しても、車のためだけに使う時間は8分ほどです。老犬の通院は、それ自体で1日の予定が埋まります。ここに大きな手順を足しても続きません。動かすのは量ではなく、やる時刻のほうです。

通院の日に、車のにおいのために手を動かす場所と時間
時刻やることかかる時間
出発の10分前人だけ先に車へ行き、両側のドアを開ける0分(開けておくだけ)
出発の8分前前回敷いていた1枚を外へ出す1分
出発の6分前接地面だけを拭いて、乾いた1枚を戻す3分
乗せる直前しっぽのつけ根と、上側の脇を布で拭く3分
車内で毎回同じ場所に座らせる。日が当たる側は季節で入れ替える0分
降りたあと犬の側だけを済ませる。車には戻らない0分
帰宅して落ち着いてから敷いていた1枚だけを取りに戻る2分
次の通院まで車の中には乾いたものだけを置いておく0分

この並びで抜けているのは、シートカバーの買い替えと、降りた直後の車掃除の2つです。前者は条件が変わらないので3回で元に戻ります。後者は、老犬と暮らす人の手がそこに残っていません。やらないと決めた2つがあるから、残りの8分が毎週回ります。

通院が増えることは、その子と過ごす時間が減ることではありません。車の中で過ごす時間が増えた、というだけです。ペットにとって、車は診察室へ向かうための場所であると同時に、飼い主と2人きりで静かにしている場所でもあります。減らせるのは車のにおいそのものではなく、においが車の中に留まっている時間のほうです。その1枚を持ち出すだけで、次に開けるドアの一呼吸は変わります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。