C12Q&A・豆知識
ヒアルロン酸とは?分子量で届く深さが変わる
成分表のいちばん下のほうに、「ヒアルロン酸Na」と1行だけ書かれていることがあります。ヒアルロン酸とは、水を抱え込む性質をもつ成分のことです。もともと犬や猫の体の中にもあって、皮膚の奥や関節、目の中で水を抱えて形を保っているとされています。ただ、表示の1行からは、どのヒアルロン酸が入っているのかまでは分かりません。分子量――分子1つの大きさ――が違うと、届くとされる深さが変わるからです。大きいものは表面にとどまって膜のようになり、小さいものは角質のすきまへ入っていく。同じ名前で呼ばれていても、置かれる場所が違います。この記事は、「ヒアルロン酸配合」という5文字だけでは、何も決まらないという話です。
「ヒアルロン酸配合」の5文字の前で、何も決められなかった|表示に書かれていないこと
棚に並んだ2本のうち、片方に「ヒアルロン酸配合」と書いてありました。もう片方には書いていません。それだけを手がかりに選ぼうとして、手が止まりました。書いてあるほうが、何がどう違うのかを説明できなかったからです。入っているのは分かる。ただ、どれくらい入っているのか、どういうヒアルロン酸なのか、それで何が変わるのかが、表示のどこにも書かれていません。
まず、言葉のほうから片づけます。ヒアルロン酸とは、水を抱え込む性質をもつ成分のことです。化粧品の成分表では「ヒアルロン酸Na」「加水分解ヒアルロン酸」といった形で書かれます。人にも犬にも猫にもあって、外から足すものというより、もともと体が作っているものだとされています。皮膚の奥のほう、関節の中、目の中。水を抱えて、そこに厚みや弾力をもたせている、という説明のされ方をします。
「水を抱える」というのは、比喩ではありません。ヒアルロン酸は長い鎖のような形をしていて、その鎖のまわりに水の分子が集まった状態でいるとされています。だから乾いた粉の状態からは想像がつかないくらい、水を含みます。1グラムで数リットルぶんの水を抱えられるとされる、という言い方をよく見ますが、これは条件のそろった環境での目安で、そのまま皮膚の上で起きることではありません。数字は幅のあるものとして読んでください。
次に「配合」という2文字です。配合とは、入っているという事実だけを指す言葉です。量は示していません。順番も示していません。どういう大きさのものかも示していません。成分表は多い順に並ぶ決まりがありますが、下のほうに並んでいる成分がどれくらい少ないのかまでは分かりません。「配合」は、あるかないかの二択の情報です。それ以上の意味を読み取ろうとすると、書かれていないことを自分で足すことになります。
| 読み取れる | 読み取れない | なぜ読み取れないか |
|---|---|---|
| 入っていること | どれくらい入っているか | 配合量の表示義務がありません |
| 成分表での並び順 | その順番が示す実際の差 | 並び順は多い順という以上を示しません |
| 名称の表記 | 分子量の大きさ | 同じ名称で大きさの違うものがあります |
| 何種類か書いてあれば種類の数 | それぞれの割合 | 内訳は表示されません |
| どこに使う製品か(用途表示) | その子に何が起きるか | 体質も状態も1匹ずつ違います |
| 作り手が挙げている設計の意図 | 設計どおりに働くかどうか | 使ってみないと分かりません |
この表を作ってから、選び方が変わりました。「ヒアルロン酸配合」と書いてあるかどうかで2本を比べるのは、比べる軸として細すぎるのです。入っているという1点だけが同じで、あとは何もそろっていません。犬や猫の毎日のケアで使うものを選ぶなら、ほかに見るところがいくらでもあります。用途、使う場所、香りの有無、容器の形。成分名を1つ拾って比べる、という読み方から先に降りるほうが、選びやすくなります。
分子量とは何を指す数字なのか|ヒアルロン酸が大きさで分かれる背景
ここから、この記事の中心です。分子量とは、分子1つの重さの目安を表す数字のことです。大きい分子は重く、小さい分子は軽い。ヒアルロン酸は同じ単位がいくつも鎖のようにつながった形をしているとされていて、鎖が長いほど分子量が大きくなります。つまり分子量の違いとは、鎖の長さの違いです。
同じ「ヒアルロン酸」という名前でも、この鎖の長さには幅があります。数万くらいのものから、百万を超えるものまで。上と下で、桁がいくつも違います。もともと体の中にあるものは長い鎖のほうで、短いものは、その長い鎖を切って作られます。成分表に「加水分解ヒアルロン酸」と書かれているのは、水を使って鎖を切ったもの、という意味だとされています。
数字そのものは、ここでは1つに固めません。製品ごとに違いますし、同じ「低分子」という呼び方でも、どこからを低分子と呼ぶかの決まりがあるわけではないからです。大事なのは、正確な数値を覚えることではなく、同じ名前で呼ばれているものの中に、桁の違う大きさが混ざっているという構図のほうです。
この図で書きたかったのは、左右のどちらかが優れている、という話ではないということです。表面にとどまることには、表面にとどまることの役割があります。すきまに入ることには、すきまに入ることの役割があります。役割が違うものを、同じ「ヒアルロン酸」という1つの名前で呼んでいるだけです。
そして、ここが「配合」の2文字がつまずくところです。表示は、鎖の長さを書きません。「ヒアルロン酸Na」とだけ書かれていれば、それが長い鎖なのか短い鎖なのかは、表示から分かりません。作り手が製品ページで説明していることはありますが、成分表そのものは教えてくれない。だから「ヒアルロン酸配合」という5文字だけでは、置かれる場所すら決まらないことになります。
大きいものが膜になり、小さいものがすきまに入るとされる理由|届く深さが変わる考え方
なぜ大きさで届く場所が変わるのか。理由は、通り道のほうにあります。皮膚のいちばん外側には角質という層があって、そこは細胞が何層にも積み重なった構造だとされています。積み重なった細胞のあいだには、脂質が詰まっていて、すきまはとても狭い。狭いすきまを通れるかどうかは、通ろうとするものの大きさで決まります。
鎖の長いヒアルロン酸は、この狭いすきまを通りにくいとされています。だから表面にとどまります。とどまったまま水を抱えるので、皮膚と被毛の上に、薄い水の層のようなものができる。これが「膜になる」と言われている状態です。膜という言葉から硬いものを想像しがちですが、実際には水を含んだ層で、指で触れるとしっとりした手ざわりとして残ります。
鎖を短く切ったものは、すきまを通りやすいとされています。通ったあと、角質のすきまの側で水を抱える。表面には残りにくいので、塗ったあとの手ざわりは早く引きます。べたつかないのは、成分が消えたからではなく、置かれた場所が表面ではないから、という説明になります。
広告でよく見る「浸透」という言葉は、化粧品の分野では角質層までを指す言い方として使われます。角質より奥へ入っていく、という意味では使われません。分子量の小さいヒアルロン酸が「入りやすい」と言われるときも、入る先は角質のすきまの側です。深く入るほどよい、という軸そのものが、この分野の言葉づかいには置かれていません。この線を知っておくと、表示や説明の読み方が一段はっきりします。
ここまでを、ひとつの考え方にまとめておきます。ヒアルロン酸とは、どこに置かれるかで役割が変わる成分です。表面に置かれれば、外との境目で水を抱えます。すきまに置かれれば、すきまの側で水を抱えます。抱える性質そのものは同じで、置かれる場所だけが違う。そして、その場所を決めているのが分子量です。
| 分子量が大きいもの | 分子量が小さいもの | |
|---|---|---|
| 鎖の長さ | 長い | 短く切ってある |
| 角質のすきま | 通りにくいとされる | 通りやすいとされる |
| 置かれる場所 | 表面 | 角質のすきまの側 |
| 塗った直後の手ざわり | しっとりが残りやすい | 早く引く |
| 数時間後の手ざわり | 表面の感触として残ることがある | 表面には残りにくい |
| どちらがよいか | 場所が違うだけで、優劣ではありません | 同左 |
だから、複数の分子量を組み合わせた設計というものが出てきます。1種類だと、置ける場所が1つに決まってしまうからです。大きさの違うものを混ぜれば、表面とすきまの両方に配りやすくなる、という考え方になります。これはこれで1本の記事になる話なので、ここでは分子量という軸の説明にとどめます。
最後に、この記事で書けない線も引いておきます。分子量が小さければよく効く、大きければ長持ちする、という言い方はできません。置かれる場所の話と、その子の皮膚や被毛に何が起きるかの話は、別の段です。犬も猫も、皮膚の状態はその日の湿度でも季節でも変わります。低分子ヒアルロン酸配合だから奥まで効きます という書き方は、成分の性質から一足飛びに結果へ跳んでいます。
表示の1行から先は、手ざわりで見る|ヒアルロン酸との付き合い方が変わるところ
分子量とは何かが分かると、家での見方が1つ増えます。塗ったあとの手ざわりが、どれくらいの時間で引くか。これは表示に書いていませんが、自分の指で確かめられます。しっとりした感触が表面に残り続けるのか、数分で引いていくのか。残り方の違いは、置かれた場所の違いをそのまま反映しています。
犬や猫のケアでこれを見るときは、比べる相手を自分の中に置いてください。他の製品と比べるのではなく、同じ製品を同じ場所に使ったときの、先週と今週。季節で空気の乾き方が変わりますし、被毛の状態も変わります。同じものを使っていて手ざわりの残り方が変わったなら、変わったのは製品ではなく、その子か環境のほうです。
- 塗った直後:表面にしっとりが乗るか、すっと引くか
- 10分後:まだ残っているか、もう分からなくなっているか
- 翌日の同じ時刻:被毛の手ざわりが、使う前と比べてどうか
- 同じ場所で1週間:日ごとの差が出るか、ほぼ同じか
- 季節が変わったとき:同じ製品でも残り方が変わることがあります
- 記録するのは1つだけ:残ったか、引いたか。それ以上は増やさないほうが続きます
そのうえで、成分名で製品を選ぶという習慣そのものを、少し下げてもいいと思います。「ヒアルロン酸配合」は、あるかないかの情報でしかありません。毎日のケアで実際に効いてくるのは、続けられるかどうか、使う場所に合っているかどうか、その子が嫌がらないかどうかのほうです。成分表は、選ぶための道具というより、選んだあとに読むための道具に近い。
mofuwa の製品でいえば、スキンケアミストは「入れていないもの」を8つ挙げる形で設計を説明しています。アルコール、添加物、香料、界面活性剤、鉱物油、オイル、着色料、防腐剤。これは何かが入っているという話ではなく、何を入れずに作ったかという話です。成分名を1つ拾って比べるのとは、別の軸の情報になります。中身は電解水100%なので、成分表そのものが数えるほどの行数で終わります。ヒアルロン酸も、ほかの保湿成分も入っていません。膜をつくる方向の処方には膜をつくる方向の役割があって、この1本はそこに立っていない、というだけのことです。
手ざわりが何分で引いたかは、表示にも書いていませんし、その子も教えてくれません。毎日のケアで使う1本を決めるときに最後まで残るのは、成分表ではなく、自分の指が覚えている残り方のほうです。気になる部分に当てて、10分後に同じ場所へもう一度触る。この2回で分かることのほうが、「ヒアルロン酸配合」の5文字より細かい。ヒアルロン酸とは何かを知ることの価値は、こういうふうに選び方の軸を1本減らせるところにあります。
同じ場所をなめ続ける、地肌が赤い、フケが増えた、被毛がごわついたまま戻らない、においが以前と違う、触られるのを嫌がるようになった。こうした変化が2週間ほど続くときは、ヒアルロン酸をはじめ成分を調べて製品を替えるより先に、動物病院にご相談ください。犬も猫も、皮膚と被毛の変化は体の内側から来ていることがあります。いつからか、どこか、そのあいだに何を使ったかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。
この記事で残したいのは、成分の知識そのものではありません。「ヒアルロン酸配合」と書いてあるのを見たときに、その5文字では何も決まっていない、と分かること。分子量とは何かを知ると、同じ名前の中に桁の違う大きさが混ざっていて、置かれる場所が違うことまで見えます。表示は、そこから先を書いてくれません。書かれていないことを自分で足さない、というのが、成分表といちばん長く付き合っていける読み方だと思います。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
