C14トリマー/獣医師視点

寝たきりの子の体位変換とケアの組み合わせ

公開日 2022年5月8日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、やわらかいクリーム色のブランケットの上に静かに横たわっているシニア期の淡い色の犬
見えているのは上を向いた面だけで、皮膚どうしが重なった場所は返す途中しか開きません。写真:Olivier Leysen/Pexels

寝たきりの子の体を2時間おきに返している家でも、その面が実際に目に入っているのは、返している最中の3〜4秒だけです。返し終わると、さっきまで上を向いていた面が今度は下になり、次の2時間は誰の目にも触れません。体位変換を「向きを変える作業」として数えていると、この3〜4秒は毎回そのまま過ぎていきます。介護の現場で体位変換をしている人が見ているのは、返した回数そのものよりも、この数秒に何を乗せられるかのほうです。寝たきりの体位変換とケアは、別々の予定として並べるより、同じ数秒の中へ重ねて置くほうが回ります。

返している3〜4秒だけ開く場所|寝たきりの見分け方は、接している面の外側から始まります

寝たきりの子の体は、床に接している面と、上を向いている面の2つに分けて語られがちです。実際に手当てが遅れるのは、そのどちらでもない場所でした。脇の下、内ももの付け根、前脚の付け根と胸のあいだ、耳の下から首の横、しっぽの付け根の内側。体が横向きに寝ているあいだ、この5か所は皮膚どうしが重なって閉じています。上から見ても見えず、下になっていた面を整えるときにも開きません。体位変換で体が斜めに浮いた、その数秒だけ開きます。

接している面と、閉じている場所 接している面は、返せば空気に触れます。皮膚どうしが重なって閉じている場所は、返しても向きが変わるだけで、閉じたままのことがあります。手当てが遅れるのは後者の側です。 同じ1回の体位変換で、片方は自動的に、もう片方は意識しないと開きません 接している面 背中・腰の上・肩 上から見て色が分かる 返せば空気に触れる 体重のかかり方が変わる 2時間おきに自動的に開く 閉じている場所 脇の下・内もも・耳の下 重なって見えない 返しても閉じたまま 湿りとにおいが残る 浮いた3〜4秒しか開かない 右側は、支える手を決めていない日には一度も開きません
返した回数で守られるのは左側だけで、右側は開いた数秒に手が入ったかどうかで決まります。

5か所に共通しているのは、どれも体重がかかる面ではないという点です。接している面には体重がかかりますが、返せば空気に触れて乾きます。重なっている側は体重こそかかりませんが、空気が入らないので乾く時間がありません。寝たきりの見分け方は、面の色を見るより先に、閉じている場所が今日何秒開いたかを数えるところから始まります。

介護の現場で体位変換を2人でやるのは、力の問題だけが理由ではありません。1人が支えているあいだに、もう1人の手が、開いた数秒へ入れるからです。家で1人でやるなら、開く時間を長く引き延ばすより、開いた瞬間に手が届く位置へ道具を置いておくほうが現実的です。寝たきりのケアで最初に変えるのは、手つきよりも道具の置き場所でした。返す前に腰の高さへ集めておくだけで、3〜4秒に入る手の数が1つから3つに増えます。

押した跡が戻るまで何秒か|犬の寝たきりの見分け方を、秒数と左右の差で分ける

開いた数秒で見るのは、色よりも先に、押した跡の戻り方です。指の腹で3秒押して離し、白くなった部分が元の色に戻るまでを数えます。1〜2秒で戻るなら、その面にかかっていた体重は抜けています。5秒たっても白いまま、あるいは離した瞬間から赤いままなら、同じ向きで寝ていた時間のほうが長すぎたということです。犬の寝たきりの見分け方として家で数えられるのは、この秒数と、左右の差の2つです。

押した跡の戻り方と、その回の体位変換で足す手
押した跡の戻り方次に返したときの残り方その回に足す手
1〜2秒で戻る次の2時間後には残っていない湿りを取って乾かすところまで
3〜4秒かかるうっすら形が見えるが翌朝には消えるその面を下にする時間を30分短くする
5秒たっても白い返すたび同じ場所に同じ形で出る向きの割り振りを組み直し、記録に日付を入れる
押す前から色が違う1日たっても薄くならないその面を下にしない日をつくる
左右で戻る速さが違う片側だけが続く支える手を、遅いほうの側から入れる
においが混ざる湿りを取った直後に戻る乾く時間を先につくり、拭く回数は増やさない

表の見方で大事なのは、行そのものよりも同じ行が何日続いたかです。1日だけなら、前の晩に同じ向きで長く寝てしまった話で終わります。3日続くなら、寝かせている向きの割り振りのほうに理由があります。寝たきりの見分け方を1回の観察で決めようとすると、その日の寝方に振り回されます。3日分を並べてはじめて、その子の体の話と、こちらの段取りの話が分かれます。

Note最初の1週間で、その子の秒数を決めておく

戻るまでの秒数は、体格や毛量、寝床の沈み方で変わります。だから「何秒なら安心」という共通の数字を先に置かず、調子が落ち着いている週に、脇の下と内ももで何秒かかるかを測って、それをその子の基準にします。基準が2秒の子が4秒になったことと、もともと4秒の子が4秒のままであることは、同じ数字でも意味がまったく違います。介護が長くなるほど、この最初の1週間の数字で差が出ます。

支える手を決めてから触る|寝たきりのケアで、部位ごとの頻度の目安を決める順番

体位変換にケアを組み合わせるときの順番は、返してから手を入れるのではなく、返す前に置くものを決めるところから始まります。浮いている3〜4秒のあいだに考えごとが1つ入ると、それだけで手が1つ減ります。現場で手順が速い人ほど、返す前の動きが多く、返している最中の動きが少なくなっています。

  1. 返す前に、使うものを腰の高さへ集める

    床に置くと、しゃがむ動作が毎回入ります。ベッド脇の台や椅子の上など、体を支えたまま片手が届く高さに並べます。使い方を変えるより先に、ここで秒数が変わります。

  2. 支える手を先に決める

    頭側を支えるのか腰側を支えるのかで、開く場所が変わります。頭側を支えると耳の下と首の横が開き、腰側を支えると内ももの付け根が開きます。今日どちらを見たいかで、支える手を選びます。

  3. 浮いた数秒で、さわる前に見る

    先に手を当ててしまうと、色も湿りも分からなくなります。目で見るのが1秒、押して秒数を数えるのが3秒。ここまでが体位変換の「見る」部分です。

  4. 開いているあいだに湿りを取る

    閉じてからでは届きません。重なりが開いている数秒のうちに、湿っている側から先に手を入れます。こするのではなく、当てて待つほうが、毛の向きが乱れません。

  5. 戻す前に、次に下になる面へ空気を通す

    返し終わる直前に、これから下になる面を数秒だけ開けておきます。乾いた状態で接地させるかどうかで、次の2時間の湿り方が変わります。

寝たきりのケアで、部位ごとに見る頻度と手を入れる頻度の目安
部位見る頻度手を入れる頻度
内ももの付け根返すたび排泄のあと毎回
脇の下返すたび1日2回
耳の下・首の横1日2回よだれが出た日は毎回
背中と腰の上1日1回2日に1度
しっぽの付け根の内側1日1回汚れた日だけ

見る頻度と手を入れる頻度をわざと別の列にしているのには理由があります。全部の部位に毎回手を入れようとすると、手が足りなくなって、いちばん見たい場所まで届かなくなるからです。見るだけなら数秒で済みます。手を入れるのは、その日に秒数が動いた部位からでかまいません。部位ごとの使い分けは、体の作りではなく、こちらの手の本数から決めるほうが続きます。

体位変換とケアの組み合わせで多いつまずきは、返す回数のほうを増やそうとすることです。2時間おきを1時間おきにすると、1日の回数は倍になりますが、1回あたりに入れられる手は減ります。回数を増やす前に、いまの1回に入る手が1つなのか3つなのかを数えてください。3つ入るようになってから回数を見直すほうが、同じ労力で届く範囲が広がります。

開いた数秒に置く1本|寝たきりのサインが同じ場所に出はじめたときの手当て

開いている数秒で使うものは、片手で持てて、拭き取る手順の要らないものに絞ります。両手が要るもの、時間を置くもの、使ったあとに別の布で取るものは、この数秒には入りません。介護が長くなると、入らないものは棚に残り、結局その部位だけ手当てが飛びます。

毎日その数秒に置く1本として、mofuwa スキンケアミストを使っています。高機能性電解酸化水100%でできていて、舐めても問題のない基準でつくられています。寝たきりの子は自分で向きを変えられないぶん、届く場所を繰り返し舐めます。内ももの付け根も、前脚の付け根も、口が届く範囲です。使える場所が限られる品だと、そのたびに手が止まり、開いた数秒が終わってしまいます。場所を選ばずに済むと、見た順にそのまま手が動きます。

スキンケアミストの使い方は、開いているあいだに吹きかけて、そのまま乾かすところまでです。拭き取る工程が要らないので、支えている手を持ち替えずに済みます。無香料なので、部屋を閉め切りがちな介護の時期でも、においが家の中に積み上がりません。耳の下でも口のまわりでも同じ1本で通せるぶん、置き場所も1か所にまとめられます。頭側と腰側の両方に手が届かない部屋なら、支える手を決めた側の近くへ置いてください。

2週間ほど続けると、記録の上で差が出るのは返した回数のほうではありませんでした。開いた数秒に手が入った回数のほうが、押した跡の秒数と並んで動きます。1日8回返して手が入ったのが2回の日と、1日6回で6回とも手が入った日では、翌朝の湿り方が変わります。体位変換の回数を記録するなら、その横に「手が入った回数」をもう1列つくっておくと、見直す場所が分かります。

Caution秒数と向きの記録を持っていく日

押した跡が5秒たっても戻らない日が3日続いた/同じ場所の赤みが、返すたびに同じ形で出る/開いた場所から今までと違うにおいがして、湿りを取っても翌日には戻っている/片側だけ、返しても体が元の向きへ落ちてしまう。こうした続き方になったら、家で数えられる範囲を越えています。寝かせている向きと時刻、押した跡の秒数を書いた記録を持って、動物病院で診てもらってください。口頭では伝わりにくい変化でも、3日分の秒数が並んでいれば、そのまま材料になります。家で続けるのは、そのあいだも記録を切らさないところまでです。

何週目に入ったかで変わるもの|寝たきりの体位変換が続くときの記録の残し方

体位変換が続く家で差が出るのは、道具の数よりも、記録の形です。毎日同じ紙に、返した時刻と、そのとき下になっていた側だけを書きます。ここに秒数の列と、手が入った回数の列を足して、1日4列。それ以上増やすと、書くこと自体が飛びます。介護の記録は、続かない日に書けるかどうかで形を決めます。

週が進むにつれて、記録から読めるものが変わる
時期記録から読めるもの見直す場所
1週目その子の秒数の基準測る時間帯をそろえる
2〜3週目左右どちらが遅いか支える手を入れる側
4週目以降同じ向きが何時間続いているか夜のあいだの向きの決め方

寝たきりが続く時期に、こちらが変えられるのは向きと時刻の2つだけです。体の側は日ごとに動きますが、向きと時刻はこちらの手元にあります。記録が3週間たまると、いつも下になっている側が数字で見えてきます。だいたいの家で、テレビや人がいる側へ体が向きやすく、その反対側だけが長く下になっています。部屋の中でベッドの向きを90度回すだけで、この偏りが減ることがあります。

今日できるのは、次に返すときに、支える手を決めてから触ることだけです。決めていれば、開く数秒は毎回同じ長さになります。寝たきりの体位変換が続く家に最後まで残るのは、増やした道具ではなく、その数秒に何を置いたかという記録のほうでした。

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よくある質問

体位変換は2時間おきと聞きました。この間隔は、寝たきりの子に共通の目安ですか。
共通の数字として先に置くより、押した跡の秒数から決めるほうが、その子に合います。体格が大きい子ほど1か所にかかる体重が増え、寝床が沈むほど接している面が広がります。2時間で戻りが1〜2秒に収まっているなら、その子には2時間が合っています。同じ2時間で5秒かかるようになったら、間隔のほうを先に詰めます。逆に、夜だけどうしても長くなる家では、夜の前に最後に返す向きを、その日いちばん下になっていなかった側にしておくと、朝までの時間を1回ぶん稼げます。数字を守ることより、朝いちばんに見る場所を決めておくほうが役に立ちます。
返そうとすると嫌がって鳴きます。無理に体位変換を続けていいのでしょうか。
鳴くタイミングがどこかで、こちらの手の入れ方が分かれます。持ち上げた瞬間に鳴くなら、支える場所が関節に寄っていることが多く、胸と腰の下に手のひら全体を入れ直すと収まることがあります。返し終わってから鳴くなら、新しく下になった面のほうを見ます。最初から最後まで鳴き続ける、あるいは触る前から声が出るときは、家での持ち方の話を越えています。その日の時刻と、どの向きのときに出たかを書き留めておいてください。鳴き方の変化は、記録に残っていないと後から思い出せません。
猫でも犬と同じように体位変換をしますか。見る場所は変わりますか。
猫は体が軽いぶん、自分でわずかに向きを変えられる期間が犬より長く続きます。その代わり、動けるうちは人の手を避けて同じ姿勢に戻るので、下になっている側が固定されやすくなります。見る場所も少し変わります。あごの下から首の前、前脚の付け根、後ろ脚の付け根の内側。犬より皮膚が薄く、押した跡の戻りも速いので、基準の秒数は短めに出ます。返すときは体全体を持ち上げず、肩と腰を順に転がすように動かすと、嫌がられにくくなります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。