C05犬種・猫種別ケア
アイリッシュウルフハウンドのワイヤーコート|毛のもつれを毎日のケアで防ぐ
玄関で待っているアイリッシュウルフハウンドの背中は、立ったまま下ろした手のひらが、ちょうど届く高さにあります。屈まなくていいので、出かける前の数十秒、そこをなでて終わりにします。硬くてまっすぐな毛のあいだを指がすっと抜けるので、その日の手ざわりに困ることはありません。ところが、床に伏せて横向きになった日に、胸の下の毛が寄って束になっているのを見つけます。もつれが進むのは、手のひらが通る高さの下——胸の下、脇、内股です。この記事では、人の手が届く高さと、その子の体でもつれる高さがずれていること、そのずれがどこから来ているのかを書きます。
なでる手の高さと、もつれる毛の高さ|アイリッシュウルフハウンドと暮らす経験
アイリッシュウルフハウンドと暮らしている方の多くが、同じ順番でこの話に行き当たります。毎日なでている。手ざわりも悪くない。それなのに、ある日ふいに、指では割れない毛の束が見つかる。しかもその束は、いつもなでている場所には出ていません。出るのは、床に伏せた姿勢になってはじめて目に入る場所です。
順を追うと、こうです。玄関で待っているとき、その子は立っています。この犬種は最大級の体高を持っているので、立っている背中は、人が腕を自然に下ろした位置とほとんど同じ高さにあります。屈む必要がありません。だから手は、いつも背中の上を通ります。首から肩、肩から腰へ。硬くてまっすぐなワイヤーコートは指の通りがよく、毛先まで抜けます。この数十秒が、毎日くり返されます。
一方、その子が横向きに寝そべった日に、はじめて胸の下側が上を向きます。前脚の付け根の内側、後ろ脚のあいだ、肋骨の下のカーブ。そこに、根元の側から寄って束になった毛があります。指を入れても、途中で押し返されます。毛先だけを引いても動きません。もつれは、毛先ではなく根元の側で始まっているからです。
- 毎日なでている場所:首の上、肩、背中、腰。人が立ったまま届く高さ
- もつれが進む場所:胸の下、脇、内股、後ろ脚の付け根。人が屈まないと見えない高さ
- 気づくきっかけ:伏せた、寝返りを打った、抱き寄せて体の下に手を回した
- そのときの手ざわり:毛先はほどけるのに、根元の側が動かない
- 共通しているのは:ブラッシングの回数ではなく、手が通っている高さのほう
アイリッシュウルフハウンドのもつれが見つかったとき、「ブラッシングが足りなかった」と受け取る必要はありません。毎日、同じだけの時間をかけていても、通っている高さが同じなら、通っていない高さはずっと通らないままです。増やすべきなのは回数ではなく、手が入る高さの種類のほうです。ここを取り違えると、背中に対する時間だけが延びていきます。
胸の下・脇・内股が人の目に入らない背景|アイリッシュウルフハウンドの体高とワイヤーコート
なぜ、その3か所だけが残るのか。答えは被毛の質そのものより、体の高さと、人の姿勢の組み合わせにあります。アイリッシュウルフハウンドは、犬の中でも高い体高を持つ作りをしています。立っているときの背中の位置は、人の腰より上にくることも珍しくありません。人は立ったまま手を下ろすだけで背中に届くので、屈む理由がありません。
同じ理由で、胸の下と内股は、人の目線からいちばん遠い場所になります。上から見下ろすと、視界に入るのは背中と体の側面までです。体の下側は、その子自身の胴に隠れます。四つ脚で立っているあいだ、そこは屋根の下にある面です。光も入らず、視線も届きません。ここが、この犬種のもつれを考えるときの背景です。
被毛の側も見ておきます。ワイヤーコートは、硬く、太く、まっすぐで、体から立ち上がる性質を持っています。この作りは、アイルランドの野で獲物を追っていた仕事の名残です。雨と風、そして草や藪に対して、外側の硬い毛が壁の役をします。だから背中や体の側面は、なでている手にも硬く感じられ、実際もつれにくい面です。ただし、被毛の性質は体じゅうで同じではありません。
| 体の面 | 人の手が届く高さか | 毛の条件 | そこで起きること |
|---|---|---|---|
| 首の上・肩・背中 | 立ったまま届く | 硬く、まっすぐ、立ち上がる | 毎日なでられ、指が通っている |
| 体の側面(肋骨の外) | 立ったまま届く | 硬めだが、やや寝ている | 手が滑って通る。もつれは出にくい |
| 脇(前脚の付け根) | 屈まないと届かない | 短くやわらかい毛が混じる | 動くたびに擦れ、根元から寄る |
| 胸の下 | 伏せないと見えない | 長さが不ぞろいで、下向き | 湿りが残り、寄った毛が締まる |
| 内股・後ろ脚の付け根 | 持ち上げないと見えない | 細くやわらかい。密度が低い | 左右の面がこすれ合う |
| 尾の付け根の下側 | 見落としやすい | 長さが変わる境目 | 座るたびに押さえられる |
表のとおり、人の手が届く高さと、毛がやわらかくなる高さが、ちょうど逆になっています。硬い毛の面はよく手が通り、やわらかい毛の面には手が通らない。アイリッシュウルフハウンドのもつれが下側に集まるのは、この2つがぶつかった結果です。犬種の毛質だけでも、飼い主の手数だけでも説明がつきません。
換毛期に下毛が動く時期は、抜けた毛が外へ出ていく必要があります。背中の側は、なでる手とブラッシングが毎日その通り道をつくっています。手が通っていない胸の下と内股では、抜けた毛が体から離れないまま、そこに残ります。空気が乾いて静電気が起きやすい時期は、離れかけた毛がまわりの毛に貼りついたままになります。同じ換毛期でも、上と下で起きていることが変わります。
立っている限り、そこは見えません|アイリッシュウルフハウンドのもつれが下から進む理由
見えないことに加えて、その3か所には、もう一つの条件が重なります。擦れと、湿りです。脇は前脚が前後に振れるたび、内股は後ろ脚が交差するたびに、毛どうしがこすれ合います。歩く、走る、立ち上がる。日常の動きのすべてが、そこで毛を横向きに動かしています。硬い毛でも、根元の側は動かされます。
こすれた毛は、まっすぐな向きから外れます。外れた毛は隣の毛と角度を持って重なり、重なったところがほどけないまま次の一歩で押されます。もつれは、この繰り返しで、毛先ではなく根元の側から積み上がっていきます。だから毛先を引いても動きません。動かない理由は、力が足りないからではなく、締まっている場所が手の届く側になかったからです。
湿りのほうも見ておきます。胸の下と内股は、地面にいちばん近い面です。朝の草の露、雨上がりの散歩、水を飲んだあとの滴。それから、伏せているあいだは体重で床に押さえつけられます。濡れることそのものより、乾ききらない時間が続くほうが問題になります。湿ったまま擦れた毛は、乾いたときにその角度で固まります。うるおいが足りないという話ではなく、乾くまでの時間の話です。
- 脇:前脚が振れるたびに毛が横へ動く。1日の歩数のぶんだけ回数が増えます
- 内股:左右の面が向かい合って接している。空気が通らず、乾く時間が長くかかります
- 胸の下:伏せた姿勢のあいだ、体重で押さえられ続けます
- 後ろ脚の付け根:座る、立つの動きで、同じ場所が繰り返し折れます
- 共通条件:擦れる・湿る・見えない。3つが同時にそろっている場所だけが残ります
逆に言えば、この3つのうち1つでも外せる場所は、もつれが進みにくくなります。擦れをなくすことはできませんし、地面に近いことも変えられません。変えられるのは、見えないという条件だけです。見えるようにすれば、そこに手が入ります。手が入れば、根元の側で寄りはじめた段階で気づけます。アイリッシュウルフハウンドのもつれで動かせるのは、実際にはここだけです。
もう一つ、背中の側だけを見ていると気づけないことがあります。それは、もつれの手前にある「毛が寄っている」段階です。寄っている段階なら、指2本で毛を左右に分けるだけで元に戻ります。締まってしまうと、道具が必要になります。この差は数日から1週間ほどで進みます。週に1回でも下側に手が入っていれば、寄っている段階のまま止められることがほとんどです。
手の高さのほうを下げる|アイリッシュウルフハウンドのもつれに向き合う毎日の考え方
ここからが毎日のケアの話です。やることを増やすのではなく、すでにやっている数十秒の、手が通る高さを変えます。毎日のケアでもつれを防ぐ、というときに実際に動かせるのは、時間の長さではなく手の位置のほうです。この犬種は体が大きいので、全身を一度に回そうとすると続きません。1日に1面、と決めてしまうほうが結果として届きます。
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自分が屈む。犬を立たせたまま、片膝を床につく
犬の姿勢を変えさせるより、人が下がるほうが早く済みます。片膝をついた高さから見ると、胸の下と脇がそのまま視界に入ります。この位置で手のひらを体の下側に沿わせ、毛の流れに逆らわずに滑らせてください。引っかかった場所が、その日に手を入れる場所です。すべての面を回す必要はありません。
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指2本で毛を左右に分けて、根元まで見る
上から道具を当てる前に、まず分けます。分けたときに地肌が見えるなら、そこはまだ寄っているだけです。見えないまま毛が持ち上がるなら、根元の側で締まっています。締まっている場所は、その日にほどききらなくて構いません。外側から少しずつ量を減らして、翌日に残りを進めるほうが、その子も嫌がりません。
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下から上へ、短い距離で道具を動かす
背中で使っている「毛の流れに沿って長く通す」動きは、下側では効きません。胸の下や内股では、締まっている面の外側の縁に道具を当てて、短く手前へ動かします。縁に当てる前に、湿らせた布でその面を一度なでておくと、道具の入りが軽くなります。一度に奥まで入れると、生えている毛と皮膚を一緒に引くことになります。嫌がる、声を出すというときは、その場で止めてください。
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伏せている時間を、そのまま点検の時間にする
毎日の点検を別枠でつくると続きません。その子が横向きに伏せているあいだに、上を向いている面へ手を入れるだけで足ります。そのとき見えているのは、立っているあいだ一度も見えなかった面です。1日1面、週に4面回れば、もつれの手前で見つかる回数が変わります。
| 背中・肩(立って届く高さ) | 胸の下・脇・内股(屈んで届く高さ) | |
|---|---|---|
| 人の姿勢 | 立ったまま | 片膝をつく/その子が伏せている時間に |
| 最初にすること | 手のひらで流れをそろえる | 指2本で毛を分けて根元を見る |
| 道具の動かし方 | 毛の流れに沿って、長く | 締まった面の縁から、短く手前へ |
| 1回にかける範囲 | 首から腰まで、ひと続き | 1日1面だけ |
| 見ているもの | 毛先の流れ | 根元の側に地肌が見えるかどうか |
mofuwa グルーミングスプレーは、毎日きれいにしてあげたいという前提で作られた無香料のスプレーです。布に含ませて、胸の下や内股のように空気が通りにくい面を、毛の流れに沿ってなでるように拭いてください。手が通っていない面ほど、道具より先に滑りをそろえておくと、縁から短い動きでほどけます。舐めても問題のない基準でつくられているので、体の下側にも量を気にせず使えます。拭いたあとは、湿りが残らないよう乾いた面で軽く押さえてください。地面に近い場所ほど、乾くまでの時間が長くなります。換毛期は、離れかけた下毛が体の下側に残りやすい時期です。その面にグルーミングスプレーを通しておくと、抜けた毛が体から離れやすくなります。
もつれの下の地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。当てはまるものが一つでもあれば、手を入れるのはそこで止めて、動物病院で地肌を見てもらってください。アイリッシュウルフハウンドは体の下側が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。見つけた面と、気づいた日を1行残しておくと、いつから進んだのかを伝えられます。
最後に、この記事で言いたかったことを一つにまとめます。アイリッシュウルフハウンドのもつれは、手をかけている量の問題ではなく、手が通っている高さの問題です。立ったままなでる数十秒は、そのままでかまいません。そこに、片膝をつく数十秒を足す。それだけで、いままで一度も見ていなかった面が見えるようになります。見えれば、寄っている段階で気づけます。毎日のケアで動かせるのは、その一点です。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
