C12Q&A・豆知識

犬が見ている色の世界

公開日 2022年7月22日|文=mofuwa編集部

明るい公園で、淡い色の芝生の上に転がる青いボールを見ている淡い色の犬
同じボールでも、置かれた背景の色によって、見つけるまでの時間が変わります。写真:Pexels/Pixabay

芝生に投げた赤いボールの1メートル手前で、犬が鼻を下げたまま行ったり来たりしていたことがあります。転がっているあいだは目で追えていたのに、止まった場所で急に見失いました。犬の色の見え方は、赤と緑の系統が見分けにくく、青と黄は見分けやすいとされています。「色が見えない」という言い方をされることがありますが、白と黒だけの世界というわけではありません。見分けにくい組み合わせがある、というのが、いま言える範囲の言い方です。この記事では、なぜその2系統だけが近くなるのか、芝生の上で何が起きているのか、そして毎日のケアで使う道具の色をどう選べるのかを、7つの問答に分けて書きます。犬の色の見え方には個体差があり、明るさや動きによっても変わります。数字はすべて幅と条件つきで読んでください。

犬の色の見え方とは、いまどこまで言えることですか

答えから書きます。犬は、赤と緑の系統を見分けにくく、青と黄の系統は見分けやすいとされています。この2つを覚えておけば、日常の場面ではだいたい足ります。「色が見えない」「白黒に見えている」という言い方が広まっていますが、いま言われているのはそこまで強い話ではありません。見えていないのではなく、近い色として受け取られる組み合わせがある、という言い方になります。

なぜ「とされています」と書くのかも、先に断っておきます。犬に「この色は何色に見えますか」と聞くことはできません。分かっているのは、目の中にある色を受け取る細胞の種類の数と、色の違いで物を選ばせたときに、どの組み合わせで正答が下がるか、という間接的な手がかりです。言えているのは「区別しにくい組み合わせがある」ことまでで、「どんな色として見えているか」までは決まっていません。犬の色の見え方を書いた文章に幅があるのは、この差が理由です。

もう1つ、混ざりやすいところを分けておきます。見分けにくいというのは、同じに見えるという意味ではありません。赤と緑でも、明るさがはっきり違えば違いとして受け取れます。逆に、色は違うのに明るさが近いと、輪郭そのものが背景から浮かびません。犬の色の見え方を考えるときは、色の名前だけでなく、明るさの差をいつも一緒に置いてください。この記事の後半で選び方の話をするとき、条件として残るのはこちらのほうです。

Note「色が見えない」という言い方が広まった経緯

かつては、犬の見え方はモノクロだと説明されることがありました。いまは、色を受け取る細胞が複数の種類あることが知られていて、まったく色がないという説明は使われなくなっています。ただ、人と同じ数だけの物差しを持っているわけでもありません。「ゼロ」でも「同じ」でもなく、その中間にあるという位置づけが、いちばん実際に近い言い方です。この記事では、断定を避けて幅のまま書いていきます。

なぜ、赤と緑だけが犬にとって近い色になるのですか

ここが、この記事でいちばん数字の話になるところです。目の奥には、色を受け取る細胞(錐体細胞と呼ばれています)があります。人はこれを3種類もつとされ、犬は2種類とされています。3と2。比べているのは、この種類の数です。見える色の数でも、明るさの倍率でもありません。この数字は「物差しが何本あるか」を指しています。

人と犬で、色の見え方をつくっている条件を並べる(いずれも一般に言われている範囲)
人犬
色を受け取る細胞の種類3種類とされる2種類とされる
見分けやすいとされる系統赤・緑・青の全域青と黄の系統
見分けにくいとされる系統とくになし赤と緑の系統
暗いところでの見え方色が分かりにくくなる人より少ない光でも動くものを捉えるとされる
動いているものへの反応色と形で追う動きそのものが先に立つとされる
言い切れるかどうか本人に聞ける間接的な手がかりから推定するしかない

物差しが2本しかないと、色の違いは「2つの値の組み合わせ」でしか表せません。3本あれば3つの値で表せます。本数が1本減ると、区別できる組み合わせがまとめて減ります。その減った先に集まっているのが、赤からオレンジ、黄緑、緑へと続く帯です。人の目にはまったく違う色に見えるこの帯が、犬にとっては近い値の並びになると考えられています。青と黄が残るのは、2本の物差しが向いている方向がここに近いからです。

数字の扱いにも条件を付けておきます。2種類・3種類というのは種類の数であって、「見える色の数が3分の2になる」という意味ではありません。掛け算や割り算で扱える数字ではないので、犬の色の見え方を「人の何割」と表す言い方は使えません。また、この2種類という数え方そのものにも幅のある報告があります。数字は、順番と関係を読むために置いてあるものです。

もう一段だけ踏み込みます。色を受け取る細胞の種類が少ないぶん、犬の目には別の得意分野があるとされています。少ない光でも物の位置をつかむこと、そして動いているものに素早く反応することです。色に使う容量を減らして、明暗と動きに配分している、という読み方になります。ここを押さえておくと、次の芝生の話が「色だけの問題ではない」ことも見えてきます。

芝生の上の赤いボールが見つからないとき、何が起きているのですか

冒頭の場面に戻ります。芝生は緑、ボールは赤。人にとってはこれ以上ないくらい目立つ組み合わせですが、犬の色の見え方では、この2つは近い系統に寄ります。さらに、日なたの芝生と赤いボールは明るさも近いことが多いので、色の差でも明るさの差でも輪郭が浮きません。探しているのに通り過ぎるのは、そこにボールが無いように受け取られているからです。

転がっているあいだは追えていたのに、止まった瞬間に見失う。この順番も、ここまでの話でつながります。動いているものは、色が背景に近くても位置が分かります。止まると、その手がかりが消えます。残るのは色と明るさの差だけになり、その2つがどちらも小さいので、急に難しくなります。見失ったのは投げた瞬間ではなく、ボールが止まった瞬間です。

同じ場面を、2つの側から並べる 緑の芝生に赤いボールが1つ落ちている、という同じ場面です。人の側から見た条件と、犬の色の見え方から考えられる条件を並べました。 犬の側の欄は、いま一般に言われている範囲からの推定です 人が見ている場面 赤と緑がはっきり分かれる 止まっていても位置が分かる 遠くからでも1つだけ浮いて見える 色の名前で人に伝えられる 探す時間はほとんどかからない 犬の側で考えられる場面 赤と緑が近い系統に寄る 動いていれば位置が分かる 止まると輪郭が背景に沈む 明るさの差も小さい日がある 見えないぶんを鼻に切り替える 鼻を下げるのは、探すのをやめた合図ではなく、手がかりを切り替えた合図です
変わっているのは場面ではなく、そこにある手がかりの数です。

鼻を下げて行ったり来たりする動きは、こちらから見ると迷っているように見えます。実際には、目の手がかりが足りなくなったので、においという別の手がかりに切り替えている場面です。同じことは、室内でおもちゃを落としたときにも起きます。ベージュの敷物に黄土色のおもちゃが落ちると、見つかるまでの時間が急に伸びることがあります。色の名前が違っていても、犬の色の見え方では近い並びになっている、ということです。

ここまでが「見つからない側」の話です。裏返すと、こちらが選べる条件が1つあることも分かります。ボールの色ではなく、ボールと背景の関係を選べばいいということです。次のセクションでは、その選び方を場所ごとに並べます。

おもちゃや道具の色は、何を基準に選べば大丈夫ですか

答えは1行です。色そのものではなく、背景との差で選んでください。「青か黄を買えばいい」と覚えると、白い雪の上に黄色いボールを置くような選び方になります。犬の色の見え方で条件になっているのは、色の名前ではなく、その色が背景からどれだけ離れているかのほうです。大丈夫かどうかを判断する基準は、置く場所とセットになります。

場所ごとに、背景と選びやすい色を並べる
場所背景の色浮きやすい色沈みやすい色
芝生・草地緑青、濃い青赤、オレンジ、黄緑
土の地面・落ち葉茶〜黄土色青、白に近い明るい色赤、茶、こげ茶
室内のフローリングベージュ〜木目青、濃い色黄、山吹色、淡い茶
雪・白いタイル白濃い青、黒に近い色黄、淡い色全般
夜の散歩道暗い灰色明るさが強いもの色の違いだけに頼ったもの
水辺・水の中反射で変わる背景と明るさが離れたもの水面と明るさが近いもの

表の見方を1つだけ補足します。右の2列は、色の名前ではなく明るさの差で並べています。同じ青でも、水色は明るいので白い床では沈みます。濃紺なら浮きます。犬の色の見え方を道具選びに使うときは、色を決めてから明るさを合わせる、という2段階にしてください。1段階で決めようとすると、「青いのに見つけない」という結果になります。

室内の道具は、背景がベージュや木目であることが多いので、青がいちばん使いやすい色になります。ケアで使うマット、給水器、食器、ハーネス。これらを青系でそろえておくと、その子から見た位置が分かりやすくなります。逆に、黄色は室内では背景に近づきやすい色です。屋外の緑の上ではよく浮くので、場所によって役割が入れ替わります。色の良し悪しではなく、置く場所の話です。

Point買う前に、家の床の上に置いて3歩下がる

色を選ぶときにいちばん早いのは、実際に置いてみることです。買おうとしている色に近いものを、いつも遊ぶ床の上に置いて、3歩下がって目を細めてみてください。目を細めると、色の情報が減って明るさの差だけが残ります。そこで背景に沈むなら、犬の色の見え方ではもっと沈みます。この確かめ方は道具がいらず、10秒で終わります。

色より先に働いている手がかりは、どれですか

色の話をここまで書いてきましたが、実際の場面では、色は最後のほうに使われる手がかりです。順番としては、動き、明暗の差、におい、音、そして位置の記憶が先に来ます。色を変えたのに見つけないときは、そもそも色の問題ではなかった、ということが起こります。ここを知っておくと、道具を買い替える前に確かめられます。

この順番から言えることが1つあります。「見つけてほしいもの」は、色だけで解こうとしないでください。色を背景から離すのは有効ですが、それだけで足りないときは、動かす、音を出す、置き場所を固定する、といった手が残っています。犬の色の見え方は、条件の1つであって、全部ではありません。

薄暗い時間帯の散歩では、色の差はさらに使えなくなります。暗くなるほど、残る手がかりは明暗と動きに寄っていきます。夕方以降に外で遊ぶなら、色を選ぶより、光るものや音が出るものを選ぶほうが早く終わります。ここでも、色の名前を追いかけるより、その場に残っている手がかりが何かを見るほうが役に立ちます。

毎日のケアの場面でも、同じ順番が当てはまります。ブラシを近づけるとき、その子が反応しているのはブラシの色ではなく、手の動きと、こちらの体の向きです。色を整えるのは、まだ距離があるうちの話だと考えてください。近づいてからの手がかりは、色ではなく動きと音のほうに移ります。

毎日のケアで使う道具を色でそろえると、何が変わりますか

ケアの道具は、置いてある時間が長いぶん、色の働き方がおもちゃとは少し違います。おもちゃは「見つける」ためのものですが、ケアの道具は「そこにあると分かっている」ことのほうが大事です。ブラシ、マット、ボトル、ケアのときだけ敷く布。これらを毎回同じ色でそろえておくと、背景から離れているぶん、遠くからでも場所が読めます。

毎日のケアで実際に変わるのは、この「始まりと終わりが分かる」ところです。ケアの布を敷いたら始まり、しまったら終わり。色と場所を固定すると、その子の側で予定が読めるようになります。被毛や皮膚に手を入れる作業は、こちらが思っているより長く感じられていることがあります。終わりが見える形にしておくと、途中で立ち上がる回数が減ります。

道具の色を決めたら、布に含ませるものも1本に決めてしまうほうが、始まりと終わりがはっきりします。口のまわりと足の裏は、その子が自分でなめて処理しようとする場所です。なめるということは、そこに置いたものが口の中へ入るということでもあります。mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。なめても問題のない基準でつくられているので、口のまわりから足の裏まで、置き場所で分けずに同じ1本で回せます。使うときは、ケアのときだけ敷く布の上で、ボトルから直接吹きかけずに布へ移してください。音と風の刺激が減るぶん、その子が受け取る手がかりは、こちらの手の動きだけになります。

道具の色をそろえることで変わるのは、その子の見え方そのものではありません。変わるのは、こちらが「見えている前提」で動くのをやめられることです。正面に道具を出したのに反応しないとき、無視されたと感じずに済みます。犬の色の見え方を知っておく値打ちは、たぶんここがいちばん大きいところです。

色の見え方の疑問と、伝える変化は、どこで分かれますか

最後に線を引いておきます。家で確かめられるのは、「見つけるまでにかかった時間」と「近づき方」までです。色を変えたら早くなった、背景から離したら見つけた。ここまでは、犬の色の見え方の話として読めます。ところが、色や明るさを変えても変わらない、あるいは以前できていたことが急にできなくなった場合は、色の疑問として扱わないほうがいい変化です。

家の中で読める変化と、相談したほうがいい変化を分ける
気づいたことどちらの話か次にやること
緑の上の赤いものだけ見つけにくい色の見え方の話背景と離れた色に替える
止まっているものを見失う色の見え方の話動かす、音を出す
薄暗いと見つけにくい明るさの話遊ぶ時間帯を変える
家具の角にぶつかるようになった相談したほうがいい変化動物病院に相談する
段差の手前で止まる回数が増えた相談したほうがいい変化同上
目の表面の見た目が変わった相談したほうがいい変化同上
片側からの動きにだけ反応しない相談したほうがいい変化同上
Caution見え方の変化に気づいたら、動物病院にご相談ください

家具にぶつかる、薄暗い部屋で動かなくなる、段差の手前でためらう、目の表面の見た目が変わった、片側だけ反応が違う。こうした変化があるときは、おもちゃの色を替える前に動物病院にご相談ください。犬の色の見え方は生まれつきの条件であって、途中で急に変わるものではありません。急な変化は、色の話ではないところから来ています。皮膚や被毛のケアと同じで、変化に気づいた時点が、いちばん材料が多い時点です。

伝えるときは、3つだけ書き出して持っていくと切り分けが速くなります。いつから気づいたか。どのくらいの明るさの場所で起きるか。どのくらいの距離で起きるか。この3つがあると、明るさの問題なのか、距離の問題なのか、片側だけの問題なのかを分けてもらえます。動画があれば、なお早く済みます。

ここまでをまとめます。犬の色の見え方は、赤と緑の系統が見分けにくく、青と黄が見分けやすいとされている。背景にあるのは、色を受け取る細胞が人の3種類に対して2種類とされること。芝生の上の赤いボールが見つからないのは、色と明るさの両方で背景から浮かないから。だから、こちらが選べるのは色そのものではなく、背景との差のほうです。見えていないと決めつけず、見えやすい条件をこちらで作る。色の見え方の疑問として家で解けるのは、そこまでです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。