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バリカンで刈ると毛質は変わる?

公開日 2022年7月29日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡い色の毛布の上に落ち着いて伏せている、毛の短い淡い色の犬
刈ったあとに手のひらへ返ってくる短い硬さは、毛の先端の形が変わったしるしです。写真:https://kaboompics.com//Pexels

バリカンで短く刈った翌日、背中に手を置いたら、前の日までとは違う短い硬さが手のひらに返ってきました。同じ子の、同じ場所です。それでも触った感じがまるで別物になっていました。バリカンで刈っても、毛そのものの毛質が変わるわけではないとされています。変わったように感じるのは、切った断面が表面にそろって増えるからです。毛は根元が太く、毛先へ向かうほど細くなります。刈るというのは、その細い部分を落として、太い部分を表面に出す作業です。だから毛が変わるのではなく、手が触れている場所のほうが変わります。この記事では、なぜチクチクするのか、生えてこなくなるという話はどこまで言えるのか、元の手ざわりに戻るまでに何を見ればいいのかを、7つの問答に分けて書きます。犬でも猫でも、毛の作りは同じ理屈で読めます。

バリカンで刈ると、毛質は本当に変わるのですか

答えを条件で割ります。毛1本の太さや硬さといった毛質そのものが、バリカンで刈ったことによって変わるとは考えられていません。ただし、手で触ったときの感じは確実に変わります。この2つを分けずに話すと、「変わる」と「変わらない」がぶつかって、どちらも正しく聞こえてしまいます。分けて言えば、毛の性質は変わらないが、手ざわりは変わる、が答えです。

手ざわりが変わる理由は1つです。バリカンは長さで毛を切ります。切られた毛は、断面が平らになります。しかも、同じ高さでいっせいに切られるので、平らな断面が面としてそろい、指に当たる先端がすべて切り口になります。刈る前に指が触れていたのは、細くしなやかな毛先でした。刈ったあとに指が触れているのは、太くて先が平らな部分です。触っているものが違うのだから、感じが変わるのは当然です。

もう1つ、期間の条件も付けておきます。この手ざわりは、伸びるにつれて少しずつ変わります。切り口が指から遠ざかり、生え変わりで新しい毛が混ざってくると、刈る前の感じに近づきます。つまり、刈った直後にだけ現れて、時間とともに消える変化です。バリカンで毛質が永久に変わってしまったのではないか、という心配のほとんどは、この時間の条件を知らないまま数週間を過ごしたところから来ています。

Note「変わった」と感じるのは、たいてい背中と胴の上側です

同じ日に刈っていても、手ざわりが変わると感じる場所は決まっています。背中、胴の上側、肩のあたり。ふだんいちばん触っている場所だからです。逆に、腹や内ももは元の手ざわりを覚えていないので、変わったと感じにくくなります。毛質が変わったかどうかの判断は、記憶がある場所でしか下せません。ここも、この疑問が答えにくくなる理由の1つです。

刈ったあとの毛がチクチクするのは、なぜですか

毛を1本だけ抜いて、指でしごいてみると分かります。根元の側は太く、毛先へ向かうほど細くなり、先端は自然に細く尖っています。この形は、はじめから毛先が細くできているからです。伸びるにつれて先が細くなるのではなく、先が細い状態のまま長さが足されていきます。指が毛の上をすべるのは、この細い先端が寝てくれるからです。

バリカンは、この形を無視して長さで切ります。細い部分を落として、太い部分を表面に出す。残った1本の先端は、細く尖った形ではなく、平らに切られた断面になります。細い毛はしなりますが、太い毛はしなりません。しならない毛が、平らな断面を上に向けて、同じ高さでそろって立つ。手のひらを当てたときに返ってくる短い硬さは、この状態が作っています。

刈る前と刈ったあとで、指に当たっているものを並べる
刈る前バリカンで刈ったあと
指が触れている場所毛先の側毛の中ほど〜根元寄り
先端の形細く尖っている平らな切り口
1本の太さ先へ向かうほど細い太い部分がそのまま表面に出る
しなり方触れると寝るしなりにくく立ったまま
先端の高さ1本ずつばらばら同じ高さでそろう
手ざわりなめらか短く硬い

表の下から2行目が、いちばん見落とされるところです。刈る前は、毛の長さが1本ずつ違います。だから指に当たる先端の数が分散して、1本あたりの当たりが弱くなります。バリカンで刈ると、この高さがそろいます。同じ高さで、同じ形の切り口が、面としていっせいに指へ当たります。硬く感じるのは、1本が硬くなったからではなく、当たる本数が一度に増えたからという読み方ができます。

刈る長さによって感じ方が変わるのも、ここで説明がつきます。短く刈るほど、根元寄りの太い部分が表面に出ます。少し残して刈れば、まだ細い側が残ります。同じバリカンでも、当てるアタッチメントの長さが変われば、手ざわりの変わり方も変わります。次に刈るときにサロンで伝えるなら、「短く」ではなく「前回より何ミリ残して」と言うほうが、結果を寄せられます。

触っている場所が変わった、とはどういうことですか

この記事でいちばん伝えたい言い換えが、ここです。「毛質が変わった」ではなく「触っている場所が変わった」と言い直してみてください。毛は1本の中で場所によって太さが違います。刈る前に指が乗っていたのは先端の側で、刈ったあとに指が乗っているのは根元の側です。毛の側は何も変わっていないのに、こちらが触れている座標だけが移動しました。

毛1本のどこに指が触れているか 同じ1本の毛でも、先端の側と根元の側では太さも形も違います。バリカンで刈ると、指が触れる位置が根元の側へ移ります。 毛の作りは犬でも猫でも共通の読み方ができます 刈る前に触れていた場所 毛先の側に指が乗る 細くて先が尖っている 触れるとしなって寝る 先端の高さがばらばら なめらかだと感じる 刈ったあとに触れる場所 根元寄りに指が乗る 太くて先が平ら しなりにくく立っている 先端の高さがそろう 短く硬いと感じる どちらも同じ毛です。指が乗っている位置だけが違います
毛が変わったのではなく、触れている座標が移動しています。

この言い換えには、実際に役に立つ場面があります。刈ったあとに「毛質が変わってしまった、元に戻らないかもしれない」と考えると、やることが何もありません。ところが「触っている場所が変わった」と考えると、次の問いが自動的に出てきます。では、いつまた毛先の側に触れるようになるのか。戻るまでの時間の話に変換できます。

もう1つ、感じ方の側にも同じ言い換えが使えます。バリカンで刈ったあとの数週間は、なでても手ざわりが返ってきません。こちらは物足りなく感じますが、その子の側で何かが起きているわけではありません。変わったのは、こちらの手のほうの体験です。ここを切り分けておくと、必要以上に触って確かめる回数が減ります。刈ったばかりの地肌は表に出ている面が広いので、確かめるために何度もこすらないほうが落ち着きます。

刈ると毛が生えてこなくなる、と聞きましたが大丈夫ですか

この話は、よく耳にします。そう言われることがありますが、はっきりしていません。刈ったことが原因で毛が生えてこなくなる、と言い切れる根拠は示されていませんし、まったく関係がないと言い切れる形にもなっていません。大丈夫かどうかを一言で聞かれたら、「そう決まっているわけではないが、断定もできない」というのが、いま言える範囲です。

はっきりしているのは、別のことです。毛には生え変わりの周期があり、その周期は部位・季節・年齢・体の状態によって、長さも速さも違います。背中と腹では違いますし、同じ場所でも季節が変われば違います。年齢が上がると、伸びるまでの時間が延びることも知られています。この幅がもともと大きいので、刈ったあとの伸び方の差を、刈ったことだけに結びつけることができません。

だから、家でできるのは原因を決めることではなく、記録を残しておくことのほうです。刈った日付と、刈った長さと、同じ場所を上から撮った写真。この3つを残しておけば、2か月後に「伸びていない気がする」と思ったときに、気のせいかどうかを自分で確かめられます。比べる相手がないと、伸びていないという判断そのものが下せません。

1点だけ、線を引いておきます。刈った場所の一部だけ毛が戻らない、地肌が見えたままになっている、左右で明らかに差がある。こうした状態は、バリカンで刈ったかどうかの話ではなく、体の側の話として見たほうがいい変化です。写真と日付を持って、動物病院にご相談ください。刈ったからだと自分で決めてしまうと、確かめる機会をひとつ手放すことになります。

元の手ざわりに戻るまでの時間を知りたいときは、何を見ますか

長さで測ろうとすると、うまくいきません。切り口は、毛が伸びても先端に残り続けるからです。1センチ伸びても、先端は平らなままです。それでも手ざわりが戻っていくのは、別の3つが起きるからです。ここを知りたい場合は、日数ではなく、この3つが起きたかどうかを見てください。

手ざわりが戻ったと言える3つの条件
何が起きるか何を見れば分かるかだいたいの目安
切り口が指から遠ざかる手のひらで押したときに毛が寝るようになる刈った長さと伸びる速さ次第
生え変わりで新しい毛が混ざる先端の高さがばらつき始める周期が一巡するまで
切り口の角が取れる1本を指でしごいたときの引っかかりが減る日常の摩擦で少しずつ
3つが重なるなでたときに面ではなく毛の流れを感じる戻ったと判断できる
どれも起きていない短い硬さが同じまま続いているまだ途中と読む

表を「何週間で戻る」と書かなかったのには理由があります。刈った長さ、部位、季節、年齢のどれが変わっても、日数はまとめて変わります。1つの数字に固めると、その数字を過ぎたときに不安が始まります。日数ではなく起きたことで判断すれば、自分の家の条件のまま読めます。バリカンで刈った直後から、この3つを順に確かめていってください。

記録の取り方も決めておくと楽です。週に1回、同じ場所を、同じ手のひらで、同じ強さで押す。背中の真ん中あたりが向いています。押したときに毛が寝るか、押し返してくるか。この2択だけをメモしておけば、変わっていく途中経過が残ります。写真だけだと、手ざわりの変化は写りません。

Point戻る前に、もう一度刈るかどうかを決めておく

手ざわりが戻る前に次のトリミングの時期が来ることがあります。そのたびに切り口がそろい直すので、短く刈り続けているあいだは、なめらかな毛先の側に指が触れる時期が来ません。気になるなら、次の1回だけ長さを残してみてください。残す長さを変えるだけで、指が触れる場所が変わります。毛質を変えようとするのではなく、触れる場所のほうを選ぶという手です。

刈ったあとの毎日のケアで、変えたほうがいいのはどこですか

刈ったあとに変わるのは手ざわりだけではありません。毛が短くなったぶん、皮膚が外に近くなります。ブラシの歯も、布も、こちらの指も、以前より地肌に届きます。だから毎日のケアで変えるのは、道具の種類ではなく、当てる強さと回数のほうです。刈る前と同じ力で同じ回数やると、刈ったあとは強すぎることがあります。

  1. ブラシは、当てる角度を寝かせる

    毛が短いと、歯が地肌に直接届きます。立てて当てず、寝かせて面で滑らせるようにしてください。短い毛は絡みにくいので、そもそもほどく作業が要りません。ほどく必要がないのにブラシを当て続けると、皮膚に触っているだけの時間が増えます。

  2. 回数を減らして、1回を短くする

    刈ったあとは、取れる毛の量そのものが減ります。刈る前と同じ回数を続ける理由がありません。1回30秒、面を1往復。それで足りているかどうかは、ブラシに毛が付くかどうかで分かります。

  3. 地肌の様子を、触るのではなく見る

    短くなると地肌が見えるようになります。見えるようになったこと自体は、刈った結果です。気になっても、確かめるために指でこすらないでください。明るいところで、毛をかき分けずに上から見る。それで変化は追えます。

  4. こすらずに、湿らせた布で一方向に拭く

    刈ったあとは、静電気で細かい毛が体に残りやすくなります。乾いた布でこすると、地肌ごと擦ることになります。布を湿らせてから、毛の流れに沿って一方向へ。往復させないほうが、短い毛には向いています。

mofuwa グルーミングスプレーは、梳かす前に使うことを想定したブラッシングスプレーでもあります。刈った直後に効いてくるのは、そちらの側です。短く切られた毛は乾いた空気で立ちやすく、立った毛にブラシを当てると歯が引っかかって、力の行き先が地肌に向きます。グルーミングスプレーを布に含ませ、背中から尾のつけ根まで一方向に通してから、30秒のブラシを入れる。ボトルから直接吹きかけるより、布へ移してから当てるほうが、短い毛のときは力を調整しやすくなります。足先や口のまわりのように直接なじませたい場所には mofuwa スキンケアミストが使えますし、刈ったあとに全身を洗う日をつくるなら、アミノ酸系の洗浄成分で組んだ mofuwa モイストシャンプーがあります。この3つが受け持つのは毛質ではなく、短い毛の時期にこちらが当てる力のほうです。

被毛が短い時期は、こちらの手が届きやすい時期でもあります。もつれをほどく作業がないぶん、触る時間を全部「見る時間」に回せます。刈ったあとの数週間は、その子の体を上から順に見ておく機会だと考えると、手ざわりが返ってこないことも気になりにくくなります。

刈ったあとの疑問のうち、家で確かめられないのはどれですか

最後に、家で確かめられることと、確かめられないことを分けておきます。手ざわりが変わるかどうか、いつ戻るか、ブラシの当て方をどうするか。ここまでは家の話です。一方で、伸び方そのものに差が出ているかどうかは、写真と日付がなければ判断できません。そして、地肌の状態は、見た目だけでは家で決められません。

刈ったあとの疑問を、確かめられる場所で分ける
疑問どこで確かめるか必要なもの
手ざわりが変わるのはなぜか家で確かめられる指1本と、毛1本
いつ元に戻るか家で確かめられる週1回の手のひらの記録
どのくらいの長さで刈るかサロンと相談する前回残した長さの記録
伸び方に差が出ているか写真がなければ言えない刈った日の写真と日付
地肌が赤い理由家では決められない動物病院への相談
同じ場所をなめ続ける理由家では決められない同上
Caution毛質の話ではない変化に気づいたら、動物病院にご相談ください

刈った場所の地肌が赤い、フケが急に増えた、同じ場所をなめ続けている、一部だけ毛が戻らない、触られるのを嫌がるようになった。こうした変化があるときは、ブラシの当て方を工夫する前に動物病院にご相談ください。バリカンで刈ったあとは地肌が見えるので、もともとあった変化に気づきやすい時期でもあります。見えるようになっただけなのか、新しく起きたことなのかは、家では分けられません。刈った日付と長さをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

ここまでをまとめます。バリカンで刈っても、毛質そのものが変わるとは考えられていません。手ざわりが変わるのは、細い毛先を落として太い部分を表面に出したからで、切り口が同じ高さでそろうぶん、指に当たる本数も増えています。つまり、毛が変わるのではなく、触っている場所が変わる。戻るのは、切り口が指から遠ざかり、生え変わりで新しい毛が混ざったときです。日数ではなく、その2つが起きたかどうかで判断してください。

そして、生えてこなくなるという話については、そう言われることがありますが、はっきりしていません。断定しないままにしておくほうが、記録を取る手が残ります。刈った日付と写真を残す。週に1回、同じ場所を手のひらで押す。この2つを続けていれば、次に同じ疑問が出たときに、自分の家の記録から答えられるようになります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。