C12Q&A・豆知識

エタノールとは?犬や猫では、飛びきるまでの時間が効いてくる

公開日 2022年8月5日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色の麻布の上に落ち着いて座っているクリーム色の猫
残らない液体は、消えるときに何かを持っていきます。その何かの話です。写真:Kaan Keskin/Pexels

エタノールとは、アルコールの一種で、常温で揮発する液体です。犬や猫のケアでこの名前が効いてくるのは、飛びきるまでのあいだ、その液体が舐められる場所に乗っている、という一点です。揮発するから残らない。けれども、飛ぶときに熱と水を一緒に持っていきます。手の甲に一滴落とすと数十秒で消えて、消えたあとの皮膚がひやりとするのは、そこから熱が出ていったからです。残らないことと乾くことは、別々の話ではなく、同じ性質の裏表です。そして犬や猫では、飛びきるまでの時間が人の手の甲より長くなります。被毛の中は空気の流れが違いますし、乾く前に自分で舐める子がいるからです。成分表でエタノールという文字を見つけたときに知りたいのは、入っているかどうかより、どのくらいの時間、そこに液体として残るのかのほうです。この記事では、その時間に何が起きているかを、物質の側から開きます。

エタノールとは、常温で揮発するアルコールのこと|表示のどこに書かれているか

エタノールとは、アルコールの一種で、常温で揮発する液体です。アルコールという言葉は、じつは1つの物質を指す名前ではありません。よく似た構造をもつ物質のグループの呼び名です。その中で、酒に含まれているものと同じものが、エタノールです。だから、日常で「アルコール」と呼ばれているもののほとんどは、このエタノールを指しています。

「揮発する」というのも、日常の言葉に直しておきます。火にかけなくても、置いておくだけで液体が気体になっていくこと。これが揮発です。水も少しずつ蒸発しますが、エタノールはその速さが違います。皿に少し垂らして放っておくと、水なら跡が残っている時間に、エタノールはもう見えなくなっています。残らないという性質は、この速さから来ています。

製品の表示では、いくつかの書かれ方をします。成分表に「エタノール」と書かれていることもあれば、「エチルアルコール」「変性アルコール」「アルコール」と書かれていることもあります。どれも、指しているものはほぼ同じ範囲です。変性アルコールというのは、飲めないようにするための成分を少量加えたもののことで、揮発するという性質そのものは変わりません。名前が違うから中身が違う、とは限りません。

この6つを並べたのには理由があります。成分表にエタノールと書かれていることが、そのまま「消毒のために入っている」ことを意味するとは限らないからです。溶かすために入っていることもあれば、香りを立てるために入っていることもあります。名前だけでは、何のために入っているかが分かりません。犬や猫に使うものの表示でも同じです。ここが、この言葉を調べるときにいちばん取り違えられるところです。

では、何を見れば分かるのか。順番としては、成分表のどのあたりに書かれているかを見ます。成分表は、配合の多い順に並んでいることが一般的です。前のほうに書かれていれば、その製品の性質を大きく決めている成分だということになります。後ろのほうなら、少量です。これは目的そのものを教えてくれるわけではありませんが、量の見当はつきます。次のセクションで、その量が何を左右するのかを書きます。

揮発するときに、熱と水を一緒に持っていく|エタノールに起きる変化を熱の側から読む

エタノールが沸騰する温度は、およそ78度とされています。水は、およそ100度です。この2つを並べたのは、揮発の速さを説明するためです。沸点が低い液体ほど、常温でも気体になりやすくなります。22度ぶんの差が、皿の上で見える速さの違いになって出てきます。どちらも常温では液体のままですが、置いておいたときに減っていく速さが違います。

沸騰する温度を、水と並べる エタノールと水が沸騰する温度を並べた棒グラフです。常温での揮発の速さは、この差から読めます。 エタノール 約78度 水 約100度
どちらの数字も、一般に言われているおおよその値です。気圧などの条件で変わります。

ここからが、この記事の中心です。液体が気体に変わるとき、まわりから熱を奪います。この熱には気化熱という名前がついています。夏に打ち水をすると涼しくなるのも、汗をかいたあとに風が当たると冷えるのも、同じ仕組みです。エタノールは飛ぶのが速いので、短い時間のうちに、まとまった量の熱を持っていきます。手の甲がひやりとするのは、この変化が起きている数十秒のあいだです。

熱だけではありません。エタノールは水とよく混ざる物質です。混ざった状態で置かれると、飛んでいくときに、そこにあった水の分も一緒に動きます。皮膚の上でも、布の上でも、同じことが起きます。エタノールが消えたあとの面は、置く前より乾いた状態になります。これが、揮発と刺激のトレードオフと呼ばれるものの正体です。刺激という言葉が指しているのは、多くの場合この「乾く」のほうです。

エタノールを1滴置いてから、飛びきるまでに起きること
時間起きていること手で分かること
落ちた直後液体として面に広がる冷たくはない。においが立ち上がる
数秒後表面から気体になり始めるにおいがいちばん強くなる
十数秒後気化熱として熱が奪われるはっきりひやりとする
数十秒後ほとんど飛びきる冷たさが引いていく
飛びきったあとそこにあった水も減っている面が置く前より乾いている
数分後残っていた他の成分だけが残る手ざわりが変わっていることがある

表のいちばん下の行に、もう1つ大事な話が入っています。飛ぶのはエタノールだけで、混ざっていた他の成分は残ります。溶かすために使われている場合、エタノールは運び屋の役目をしています。運び終わると自分だけ消えて、運ばれた側はその場に置いていかれます。「揮発するから何も残らない」というのは、エタノールについてだけ正しい言い方です。製品全体については、そのまま当てはまりません。

ここまでをまとめると、こうなります。速く飛ぶ、という1つの性質から、3つのことが同時に出てきます。短時間で終わること。短時間に多くの熱を奪うこと。そのあいだに水も一緒に減ること。この3つは切り離せません。速さだけを選んで、熱と水は動かさない、ということができない、という意味です。トレードオフとは、都合のいいところだけを取り出せないという、この関係のことを指しています。

手の甲で1回だけ試す|家で積めるエタノールの経験と、犬や猫の体では試さない理由

試すのは自分の手の甲で、犬や猫の体では試しません。手の甲で1回やってみると、揮発と乾きの関係が10分の1の説明で分かります。用意するのは、家にあるアルコール入りの液体を1つ。手の甲の、いつも触っている側に少しだけ置いて、そのあと何もせずに見ていてください。塗り広げず、こすらず、ふきません。この記事で言っている変化は、その数十秒のあいだに全部起きます。

  1. 置いてすぐ、においを覚える

    立ち上がってくるにおいは、気体になったエタノールが鼻に届いている証拠です。においが強いのは、飛んでいる最中だからです。飛びきると、においも一緒に消えます。においの強さと、残っている量は、だいたい対応しています。

  2. 十数秒待って、冷たさを確かめる

    ここでひやりとします。この冷たさが、気化熱として持っていかれた熱です。風を当てると、もっと速く、もっとはっきり冷たくなります。飛ぶ速さが上がるぶん、同じ時間に動く熱の量が増えるからです。

  3. 冷たさが引いたら、指でなでてみる

    置く前と手ざわりが違うことがあります。エタノール自体は残っていませんが、一緒に持っていかれた水の分だけ、面が乾いています。ここが「揮発するのに乾く」と言われる部分です。残らないのに変化が残る、という言い方もできます。

  4. 条件を1つだけ変えて、もう一度やる

    量を増やす、面積を広げる、風を当てる、寒い場所でやる。変えた条件のぶんだけ、飛びきるまでの時間が変わります。1回に1つだけ変えると、何が効いているのかが分かります。エタノールの経験として家で積めるのは、ここまでです。

飛ぶ速さを決めている条件は、大きく3つです。濃度、広げた面積、そして風と温度。濃度が高いほど速く、広く薄く伸ばすほど速く、風があるほど速く飛びます。逆に言えば、狭い場所にたっぷり置いて、風のないところに置くと、飛びきるまでの時間は長くなります。同じ製品でも、使い方で「揮発するまでの時間」が何倍にも変わります。製品の名前ではなく、条件のほうが時間を決めています。

この試し方は、犬や猫の体では成り立ちません。理由は4つあります。1つめは、感じ方を聞けないこと。ひやりとしたかどうかを言葉で返してもらえないので、手の甲でやったときのような確かめ方ができません。2つめは、被毛があること。毛の中は空気の流れが違うので、飛びきるまでの時間が体の表面とは違います。3つめは、皮膚の条件が人と同じではないこと。人の手の甲で起きた通りのことが、そのまま起きるとは限りません。4つめは、飛びきる前に口に入る経路があることです。犬も猫も、体に置かれたものをあとから自分で舐めます。人が手の甲でやるときには存在しない道が、そこに1本増えます。

この4つめについては、獣医学の標準的な参考書に書かれていることを引いておきます。Merck Veterinary Manual の中毒の章には、アルコール類は消化管からも皮膚からも吸収されること、そしてアルコールを含むスプレーを動物にかけすぎたことによる中毒は珍しくないことが記されています。血中の濃度が最も高くなるのは1.5〜2時間後だとも書かれています。ここで効いているのは量と使い方で、成分表にその名前があるかどうかだけで決まる話ではありません。用途表示のとおりに使うこと、犬や猫に使ってよいと書かれていないものを体に使わないこと。読み取れるのは、この2つです。

Caution皮膚や被毛の変化は、成分の名前では判断できません

地肌が赤い、フケが急に増えた、同じ場所をなめ続けている、触られるのを嫌がるようになった、においが急に変わった。こうした変化があるときは、使っているものの成分表を調べる前に動物病院にご相談ください。エタノールという言葉を知っておく値打ちは、家で判断を下すためではなく、何を記録して持っていけばいいかが分かるところにあります。使ったものの名前、使った日、そのあと何時間で変化に気づいたか。この3つを書いておくと、相談の場で切り分けてもらえます。

家で積める経験は、自分の手の上での経験にとどまります。それでも、飛ぶ速さ、冷たさ、乾き方という3つを一度でも自分の皮膚で感じておくと、成分表の読み方が変わります。エタノールという文字を見たときに、良いか悪いかではなく、「この製品では、どのくらいの時間、何が動くのか」という問いが立つようになります。用語を知るというのは、たぶんそういうことです。

なぜ入れるのか、なぜ入れないのか|エタノールをめぐる設計の背景

エタノールを入れる理由と、入れない理由は、どちらも成り立ちます。どちらかが正しくて、どちらかが間違っている、という並び方ではありません。速く飛ぶという性質を利点として使うのか、それとも避けるのか。同じ1つの性質を、どちら側から見るかの違いです。

同じ性質が、入れる理由にも入れない理由にもなる
性質入れる側から見ると入れない側から見ると
速く飛ぶ塗ったあとに残らず、次の作業へすぐ移れる同じ時間で熱と水も動く
熱を奪うひやりとした使い心地をつくれる触れた面の温度が下がる
よく溶かす水だけでは作れない処方が組める溶かす力を別の方法で用意する必要がある
においが立つ香りを運ぶ担体として使える無香料に寄せるのが難しくなる
濃度で保存を助ける中身が変わりにくくなる場面がある濃度を確保するぶん配合の自由度が下がる
飛んだあと自分は残らない運び屋として使い切れる運ばれた成分の側は残る

表の左右を見比べると分かることがあります。右の列に書いてあるのは、危険という言葉ではありません。制約です。入れれば速く乾く代わりに、乾くという条件を引き受けることになる。入れなければ乾かない代わりに、溶かす力を別のところで用意しなければならない。どちらを選んでも、引き受けるものがあります。設計とは、その引き受け先を決める作業のことです。

mofuwa の場合は、入れない側を選んでいます。ただしそれは、エタノールが危ないからという理由ではありません。もともと、水そのものの性質の側で成り立たせる設計にしているので、成分を溶かして運ぶ担体を必要としていない、というのが理由です。運ぶ必要がなければ、速く飛ばす必要もありません。使わないのではなく、使う場所がない。これが、設計として選んでいる、という言い方の中身です。

実際の中身も書いておきます。mofuwa スキンケアミストは高機能性電解酸化水100%で、アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つが入っていません。「無添加」とだけ書くと何が入っていないのか分からないので、8つを数えて出しています。溶かして運ぶ相手を持たない処方なので、担体という役目そのものが発生していない、という順番です。スキンケアミストの中身は清涼飲料水の規格基準をクリアした成分なので、口のまわりや目のまわりのように、犬や猫が自分で舐めてしまう場所にも置けます。飛びきるまで待ってから触る、という時間が要りません。ただし、入っていないものを数え上げるだけでは、その製品を読んだことにはなりません。この製品にも、成分の性質上、わずかに塩素のようなにおいを感じることがあります。メーカーは、製品の異常ではなく品質や安全性に問題があるわけではないと説明していますが、においが立つこと自体は事実として先に書いておきます。においの出どころが、揮発の最中に立つものなのか、それとも飛ばずにそこにある成分の性質なのか。同じ「においがする」でも、指している時間の長さが違います。

1つ、言い方の線を引いておきます。アルコールが入っていないから安全ですという書き方は使いません。入っていないことは、何かを保証する言葉ではないからです。入っているかどうかは、その製品がどういう設計を選んだかを教えてくれるだけです。読むべきなのは、入っているかどうかではなく、そのぶん何を引き受けているのか、のほうです。そして、その引き受け先は、たいてい成分表の他の行に書かれています。

定義に戻って終わります。エタノールとは、アルコールの一種で、常温で揮発する液体。揮発するから残らないが、揮発するときに熱と水を持っていく。だから、残らないことと乾くことは同じ性質の裏表になる。この3行を覚えておくと、成分表でこの名前を見つけたときに、良い悪いの判断へ急がずに済みます。問うべきなのは、揮発しきるまでの時間に何が起きるか、です。その時間は、製品の名前ではなく、量と面積と風と温度が決めています。言葉を1つ知ると、確かめる場所が変わります。

Product

mofuwa スキンケアミスト

mofuwa スキンケアミスト

200ml / 3,300円(税込)

アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。

商品ページを見る

よくある質問

エタノールが入ったスプレーを、犬や猫に使ってもいいですか?
入っているかどうかより、どのくらいの量を、どこに、どのくらいの頻度で使うかで変わります。Merck Veterinary Manual には、アルコール類は消化管からも皮膚からも吸収されること、動物にアルコールを含むスプレーをかけすぎたことによる中毒が珍しくないことが書かれています。犬や猫に使う用途が表示されていないものは体に使わず、使ったあとに様子が変わったときは動物病院にご相談ください。
エタノールは何分で揮発しますか?
時間を決めているのは製品ではなく条件です。濃度が高いほど、薄く広げるほど、風があるほど速く飛びます。狭い場所にたっぷり置いて風のないところに置くと、その分だけ長くなります。犬や猫の被毛の中は空気の流れが弱いので、同じ量でも体の表面より遅くなります。
揮発したあとは、何も残らないのですか?
残らないのはエタノールだけです。溶かされていた成分や香料は、その場に置いていかれます。「揮発するから何も残らない」という言い方は、エタノールという物質については正しく、製品全体についてはそのまま当てはまりません。
猫は犬よりアルコールに弱いのですか?
犬と猫のどちらが弱いかを比べた資料は、私たちが確認できた範囲では見つかりませんでした。確かめられているのは、アルコール類が消化管からも皮膚からも吸収されること(Merck Veterinary Manual)です。猫は体をよく舐めるぶん、飛びきる前に口へ入る経路がある、という構造の違いのほうは言えます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。