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猫の夜間視力は人の何倍か

公開日 2022年8月12日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋で、淡い色の窓辺に静かに座っている淡い色の猫
少ない光で足りるのは、光を二度使う仕組みが目の中にあるからだとされています。写真:大 董/Pexels

午前2時、明かりを消したままの廊下をその子が音も立てずに歩いていって、こちらは壁に手をついてやっと進みました。この差を説明するときによく出てくるのが「猫の夜間視力は人の何倍」という言い方です。先に、その数字が何と何を比べたものかを書きます。倍率が指しているのは、ものが見えるようになるまでに必要な光の量です。同じ景色を見るのに、猫は人より少ない光で足りる、という比較で、5〜8倍といった幅で語られることが多く、測り方によって数字は動きます。そして、ここがいちばん抜け落ちる但し書きなのですが、猫も、光がまったくない場所では見えません。この記事では、人と猫の目を「必要な光の量」と「同じ光の下で見えなくなるもの」という2つの軸で比較し、最後に、夜のケアで手元をどれくらい明るくするかというところまで書きます。視力という言葉が、この話の中で2つの意味で使われていることも、はじめに整理しておきます。

「猫の夜間視力は人の何倍」は、必要な光の量を比べた数字

答えから書きます。「人の何倍」という倍率は、見え方の鮮明さを比べた数字ではありません。ものが見えるようになるまでに、どれだけの光が要るかを比べた数字です。人が「暗くて何も見えない」と感じる明るさでも、猫のほうは輪郭や動きを拾えている。その差を倍率の形にしたものが、夜間視力という言葉で紹介されている数字です。

ここで、言葉の整理を1つしておきます。「視力」は本来、どれだけ細かいものを見分けられるかを指す言葉です。視力検査で切れ目の向きを答えるあれは、細かさを見分ける力を測っています。ところが「猫の夜間視力」と言うときに指しているのは、細かさではなく少ない光でも見えるかどうかのほうです。同じ「視力」という2文字で、まったく別のものを指しているので、倍率の話は混乱しやすくなっています。

倍率が1つに定まらないのも、そのためです。夜の視力を測るときには、何をもって「見えた」とするかを先に決めなければなりません。そこを動かすと数字が動きます。5倍と書かれている資料も、6倍と紹介している記事も、8倍としているものもあります。どれかが間違っているというより、測り方が違うと考えるほうが正確です。幅で受け取っておくのが、いちばん実際に近い扱い方だと思います。

Note猫も、光がゼロの場所では見えません

夜間視力の話でいちばん落ちやすいのが、この但し書きです。猫の目がしているのは、わずかな光をむだなく使うことであって、光がないところから像を作ることではありません。窓のない部屋で扉を閉め、明かりを完全に落とせば、猫にとっても真っ暗です。夜の家がまったくの暗闇に見えないのは、カーテンのすきま、家電の表示灯、廊下の常夜灯といった、人が意識していない小さな光がいくつも残っているからです。

少ない光で足りるのはなぜか|瞳孔の開き方と、網膜の後ろで光を返す層

必要な光の量が違うのは、目の作りが3か所で違っているからだとされています。順番に見ていくと、猫の夜の見え方が、特別な能力というより光を節約する仕組みの積み重ねだということが分かります。

  1. 瞳孔が大きく開く

    明るいところでは細い線のようになり、暗いところではまん丸に近いところまで開きます。開く幅が大きいということは、取り込める光の量の幅も大きいということです。人の瞳孔も暗いところで開きますが、開く幅は猫ほどではありません。夕方から夜にかけて、その子の目が急に黒くなったように見えるのは、この動きです。

  2. 網膜の後ろに、光を返す層があるとされる

    タペタム(輝板)と呼ばれる反射層が網膜の後ろにあるとされています。一度網膜を通り抜けた光を、もう一度網膜側へ返す鏡のような層です。同じ光を二度使えるので、少ない光でも像を作りやすくなります。夜に写真を撮ると目が金色や緑色に光って写るのは、この層が返した光がレンズに戻ってきているからだと説明されています。

  3. 明暗を感じる細胞の割合が多いとされる

    網膜には、色を感じる細胞と、明暗を感じる細胞の2種類があるとされています。猫は明暗を感じる側の割合が高いと言われており、そのぶん暗いところでの感度が上がります。ただし、これは次の見出しに書くとおり、色や細かさの側と引き換えの関係にあります。

3つのうち、家で確かめられるのは1つめだけです。夕方に部屋の明かりを落としたとき、その子の瞳孔が数秒で広がるかどうか。毎日の暮らしのなかで目にしているはずの動きですが、意識して見ると、人の目より反応が速いことに気づきます。反射層のほうは分解して見るわけにいかないので、写真に写った目の色で間接的に確かめるくらいしかできません。

この3つが揃っていると、光を二度使えるぶん、同じ景色を見るのに要る光が少なくて済みます。倍率という言い方は、この「要る光の少なさ」を人と比べたものです。逆に言えば、返す光そのものが存在しない場所では、仕組みが3つ揃っていても何も起きません。夜間視力の限界は、ここにあります。

夜の見えやすさと引き換えになっているもの|細かさ・色・すぐ目の前

2つめの軸に移ります。暗いところでの感度を上げると、そのぶん別のところが落ちます。猫の目は夜に向いた作りになっているぶん、明るい場所で人が当たり前にできていることのいくつかが、苦手になっているとされます。ここを書かないと、「猫は夜も昼も人よりよく見えている」という読み方になってしまいます。

夜に強いことと引き換えになっているとされる4つ
何が猫の場合家で起きていること
細かさを見分ける力人より低いとされます。輪郭は分かっても、細部の情報は少なくなります床に落ちた小さなものを、鼻を近づけて確かめてから触ります
色の見分け青と緑の系統は見分けやすく、赤の系統は見分けにくいとされます赤いおもちゃより、動きのあるほうに反応します
すぐ目の前近すぎるものにはピントが合いにくいとされます鼻先に置いたものを、いったん後ろに下がってから見ます
動くものの捉え方動体視力は高いとされ、小さな動きによく反応します止まっている手より、動いた手のほうに顔が向きます

3つめの「すぐ目の前」は、ケアの場面でいちばん効いてきます。顔の正面から近づけた手は、その子にとって、近すぎて像がぼやける位置に入ります。そのかわり、ひげと鼻がその距離を埋めているとされています。顔まわりを拭くときに急に顔をそむけられるのは、嫌がっているというより、見えていないものが突然そこにある、という順番で起きていることがあります。

動体視力の高さも、同じところにつながります。止まっている手には反応しないのに、動かした瞬間にはっきり反応する。これは視力が低いのではなく、動きのほうを拾いやすい作りだからだと説明されています。ケアの手をゆっくり動かすと落ち着く子が多いのは、この性質と関係があるのかもしれません。毎日の被毛の手入れで手が入る速さは、こちらで調整できる数少ない条件の1つです。

Note「夜のほうがよく見える」ではありません

夜間視力の高さは、暗い条件でも見えるという意味であって、暗いほうがよく見えるという意味ではありません。猫にとっても、細かいものを見分けるには光がある昼のほうが向いています。夜に活発になるのは、見え方だけでなく、もともと薄明かりの時間帯に動く習性があるからだと説明されることが多いところです。視力の話と習性の話は、分けて考えたほうが整理がつきます。

人と猫の目を5つの項目で比較する|夜の明るさはどっちに合わせるか

ここまでの2つの軸を、人と猫で並べます。比較の目的は、どちらが優れているかを決めることではありません。夜のケアで手元をどれくらい明るくするかを、どちらの目を基準に決めるのかを見るためです。最後の1行だけは、人と猫で同じになります。

人と猫の目を、必要な光の量で並べて比較する
項目人猫
見えるまでに要る光の量多い(比較の基準)少ない(5〜8倍という幅で語られます)
瞳孔の開き方暗さに応じて開くが、幅はせまい細い線からまん丸まで、大きく開きます
網膜の後ろの反射層ないあるとされ、光を二度使えます
細かさを見分ける力高い人より低いとされます
光がまったくない場所見えない見えない
人と猫の目を、必要な光の量で並べた図 左が人の目、右が猫の目。必要な光の量、瞳孔の開き方、反射層、細かさを見分ける力、光がゼロのときの5項目を並べています。 同じ景色を見るのに、どれだけの光が要るかで並べています 人の目 見えるまでに要る光:多い 瞳孔の開く幅はせまい 網膜の後ろに反射層はない 細かさを見分ける力は高い 光がゼロだと見えない 猫の目 見えるまでに要る光:少ない 瞳孔が大きく開く 反射層があるとされる 細かさを見分ける力は低め 光がゼロだと見えない 倍率は5〜8倍という幅で語られます。測り方で動く数字です
最後の1行だけは、人と猫で同じです。

この表を、夜のケアの話に置き換えます。爪の先や耳の外側、目のまわりを見るために人が点ける明かりは、人の目を基準にした明るさです。人が手元をはっきり見られる明るさは、少ない光で足りる目にとっては、必要な量をかなり上回っている可能性があります。どっちに合わせるかと言えば、見る作業をするのは人の側なので、明るさそのものは人に合わせるしかありません。合わせられるのは、明るさの範囲と、点けている時間のほうです。

具体的には、部屋の主照明を全部つけて煌々とさせるのではなく、手元だけを照らす明かりを1つ足す。そして、点けたまま長く続けない。ケアが5分で終わるなら、明るいのは5分で足ります。夜に急に部屋全体が明るくなると、開いていた瞳孔が一気に絞られることになります。人が暗い部屋で照明のスイッチを入れたときにまぶしいと感じる、あの感覚と同じことが起きていると考えると分かりやすいと思います。

Point明かりの選び方は「範囲」と「時間」で決める

夜のケアで使う明かりを選ぶときは、明るさの数値より照らす範囲を先に見てください。手元だけを照らせるもの、向きを変えられるもの、真上からではなく斜めから当てられるもの。この3つが揃っていれば、部屋全体を明るくせずに作業できます。時間のほうは、こちらで決められます。その夜にやることを先に1つへ絞っておくと、明かりを点けている時間が自然に短くなります。夜の作業を短くするいちばん確実な方法は、手を速くすることではありません。

家でできる見分け方と、夜に使う明かりの選び方

最後に、家で見分けられることを書きます。夜間視力そのものを家で測ることはできません。できるのは、暗いところでの動き方が、その子の中でいつもと変わっていないかを見ることです。ほかの猫と比べても意味がありません。比べる相手は、先週までのその子です。

暗い場所での動きを、その子の中で比べる見分け方
見るところいつもどおり変わってきたとき
家具のあいだの通り方同じ幅を同じ速さで通ります手前で止まる、遠回りする回数が増えます
段差の降り方迷わず降ります前足で床を探ってから降ります
呼んだときの向き顔がまっすぐこちらを向きます音のした方向より少しずれて向きます
瞳孔の動き明かりを落とすと数秒で広がります広がったまま戻りにくい、左右で差がある
夜の行動量その子なりの決まった動きがあります急に減った、または落ち着かなくなった

この表は、視力の検査の代わりではありません。気づくのを早くするための表です。目の変化がゆっくり進むと、家族の側が無意識に環境を合わせてしまい、気づくのが遅れます。床に物を置かなくなった、家具を動かさなくなった、といった変化がこちら側に起きていたら、それも記録に入れておくとよいと思います。

夜の時間は、その子が落ち着いていることが多い時間でもあります。顔まわりに触れた場所は、そのあと前足でこすられ、その前足は毛づくろいで口の中に入ります。拭いた手を離れたあと、それがどこへ行くかまで含めて、置くものを決めることになります。mofuwa スキンケアミストは、清涼飲料水の規格基準をクリアした電解水でできています。飲みものの側の基準で測られているので、目のまわりから口のまわりまで、同じ1本で通せます。手か布に取って、目のまわり、頬、それから背中から尾のつけ根まで一方向になでる、くらいの範囲で足ります。顔の正面から手を出すと、近すぎてその子には像がぼやける位置に入ります。横から入れるほうが驚かせずに済み、手元の明かりを点けている時間も、そのぶん短くなります。

Caution見え方の変化が続くときは、動物病院にご相談ください

暗い場所で家具にぶつかるようになった、段差の前で長く止まるようになった、瞳孔が明るいところでも広がったまま、左右の瞳孔の大きさが違う、目の表面が白っぽく見える、目やにが増えた、まぶたを閉じている時間が長い。こうした変化があるときは、照明を調整したり夜の環境を変えたりする前に、動物病院にご相談ください。目の変化は進み方が見えにくく、家で様子を見ている数週間のあいだに条件が変わることがあります。相談に行くときは、いつごろから、家のどの場所で、どんな動きが変わったかをメモして持っていくと、切り分けが早くなります。

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よくある質問

猫の夜間視力は、結局のところ人の何倍なのですか
5〜8倍という幅で語られることが多い数字です。1つに固めないほうがよいと思います。倍率が指しているのは、ものが見えるまでに必要な光の量で、鮮明さの比ではありません。測るときに「何をもって見えたとするか」を変えると数字が動くので、資料によって5倍とも8倍とも書かれています。幅と条件をつけて受け取るのが、いちばん実際に近い扱い方です。
真っ暗な部屋でも、猫は見えているのですか
光がまったくない場所では見えません。猫の目がしているのは、わずかな光をむだなく使うことで、光がないところから像を作ることではありません。夜の家が真っ暗に見えないのは、カーテンのすきま、家電の表示灯、常夜灯といった小さな光が残っているからです。窓のない部屋で扉を閉め、明かりを完全に落とせば、猫にとっても真っ暗になります。
夜にケアをするとき、部屋の明かりはつけないほうがよいですか
作業をするのは人の側なので、手元が見える明るさは必要です。調整できるのは、明るさそのものより、照らす範囲と点けている時間のほうです。部屋全体を明るくせず、手元だけを斜めから照らせる明かりを1つ足して、終わったら消す。この形なら、人が見るために必要な明るさを確保しながら、明るい時間を短くできます。夜の作業を短くするには、その日にやることを1つに絞っておくのがいちばん確実です。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。