C12Q&A・豆知識
サマーカットは本当に涼しい?
7月の終わり、サロンから帰ってきた背中に手を置いたら、去年より地肌の温度が高く感じられて、そこではじめて「短くすれば涼しい」を疑いました。サマーカットにしても、涼しくなるとは限りません。被毛は熱を閉じ込める層であると同時に、外の熱を地肌まで通しにくくする層でもあるとされているからです。短くすると、直射日光やアスファルトからの照り返しが、そのまま地肌に届くようになります。では意味がないのかというと、そうではありません。サマーカットで確実に変わるのは、濡れたあとに乾くまでの時間です。だから判断の分かれ目は、暑がりかどうかではなく、その子に濡れる機会がどれだけあるかのほうにあります。この記事では、サマーカットという言葉の意味から、涼しさの中身、短くしたあとに家で気をつけること、そして短くしない選択をしたときの毎日のケアまで、7つの問答と最後の整理に分けて書きます。
サマーカットにすると、本当に涼しくなるのですか
答えから書きます。短くすれば涼しい、とは限りません。条件で割ると、こうなります。水に濡れる機会が多い子では、乾きが速くなるぶん涼しさにつながります。日中に屋外で直射日光を受ける機会が多い子では、地肌に届く熱が増えるので、涼しさの意味では逆に働くことがあります。同じ長さに刈っても、暮らし方が違えば結果が違う、というのが実際のところです。
この答えを「一概には言えません」で終わらせないために、理由を物として書いておきます。被毛は、熱をこもらせる層であると同時に、外から来る熱を地肌まで通しにくくする層でもあるとされています。毛と毛のあいだに空気の層があり、その空気が、外の熱と地肌のあいだに挟まっています。冬に暖かいのと、夏に外の熱が届きにくいのは、同じ仕組みの表と裏です。刈るとその層が薄くなるので、こもりにくくなると同時に、届きやすくもなります。
人の感覚とずれるのは、ここです。人は服を脱ぐと涼しくなります。汗をかいて、その汗が蒸発するときに体の熱を持っていってくれるからです。犬や猫は、肉球など一部を除いて汗をかく仕組みが人ほど発達していないとされています。だから、毛を短くしても「汗が蒸発して涼しくなる」という道筋が、人と同じようには働きません。サマーカットが人の衣替えと同じ意味を持たないのは、この一点が違うためです。
サマーカットが向いているかどうかは、その子の被毛の状態、皮膚の状態、暮らしている環境、年齢によって変わります。この記事で書けるのは、判断に使える考え方までです。実際にどこまで短くするか、あるいは短くしないほうがよいかは、その子の被毛を直接見ているトリマーと、皮膚の状態を診られる動物病院に相談して決めてください。文章で読んだ一般論を、その子の背中に当てはめるのは、いちばん間違えやすいやり方です。
そもそもサマーカットとは、どういう意味の言葉ですか
サマーカットとは、夏に向けて被毛を全体的に短く刈るカットの呼び名です。決まった長さの基準があるわけではなく、店や飼い主の希望によって、地肌が透けるくらいまで短くすることもあれば、指1本ぶんくらい残すこともあります。つまり「サマーカット」という言葉だけでは、どれくらい短くしたのかが決まりません。ここが、この言葉のいちばん扱いにくいところです。
同じ言葉を使っていても、指しているものが違う、ということが実際に起こります。カウンターで「サマーカットでお願いします」と伝えたときに、こちらが思っていた長さと、仕上がった長さが違った経験のある方は少なくないはずです。言葉の意味が共有されていないので、長さの数字か、写真で渡すほうが確実です。ミリ単位で伝えられるなら、そのほうが早く済みます。
| どれくらい | 見た目 | 変わること |
|---|---|---|
| 地肌が透けるまで | 皮膚の色が見えます | 直射が届きやすく、乾くのは最も速くなります |
| 数ミリ残す | 均一な短い毛の面になります | こすれや接触の刺激を受けやすくなります |
| 指1本ぶん残す | 短いが地肌は見えません | 空気の層はある程度残ります |
| 部分的に短く | 腹や内股など一部だけ | 全体の層は残しつつ、蒸れやすい場所だけ変わります |
| 長さは変えず梳く | 見た目は大きく変わりません | 毛の量が減り、風が通りやすくなります |
この表でいちばん見てほしいのは、いちばん下の2行です。「サマーカット」を全身を刈ることだと決めてしまう必要はありません。蒸れやすい場所だけを短くする、長さは変えずに量だけ減らす、という選び方もあります。夏の対策としてできることを、全身を刈るか刈らないかの二択にしないほうが、選べる幅は広くなります。
毛を短くすると、なぜ涼しいとは限らないのですか
理由は3つあるとされています。1つめは、被毛が外の熱を通しにくくする層でもあること。2つめは、汗の蒸発で冷えるという仕組みが人と同じには働かないこと。3つめは、地肌が直射やこすれに直接さらされるようになることです。順に見ていきます。
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空気の層がなくなる
毛と毛のあいだの空気は、熱を伝えにくい層として働くとされています。この層は、内側の熱を逃がしにくくもしますが、外側の熱を入れにくくもします。夏の屋外は、体の温度より外の温度のほうが高くなる時間帯があります。そのとき、層があるほうが地肌に届く熱は少なくなります。刈ると、この関係がひっくり返ります。
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汗で冷える道筋が人と違う
人が薄着で涼しく感じるのは、皮膚から出た汗が蒸発するときに熱を奪うからです。犬や猫は、肉球など一部を除いて全身から汗をかく仕組みが人ほど発達していないとされ、体温を逃がす主な経路は呼吸だと説明されています。毛を短くしても、汗が蒸発して涼しくなるという道筋は、人と同じようには働きません。
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地肌が直接さらされる
短くすると、直射日光、アスファルトの照り返し、カーペットとのこすれ、虫が、地肌に直接届くようになります。毛が守っていた条件が、まとめて外れるということです。短くしたあとに皮膚が赤くなった、という相談が夏に増えるのは、この変化と時期が重なるためだと考えられています。
「短くすれば涼しい」という言い方が広まったのは、たぶん人の感覚がそのまま当てはめられたからだと思います。毛が長いと暑いので、短くすれば涼しくなりますという説明は、人の衣服には当てはまりますが、四足の動物の被毛には、そのままの意味では当てはまりません。被毛は服ではなく、外との境目にある層そのものです。脱げるものではなく、削るものだと考えると、判断の仕方が変わります。
「涼しくなる」の中身を知りたい|サマーカットで実際に変わるのはどこですか
確実に変わるところが1つあります。濡れたあとに乾くまでの時間です。毛が短ければ、水を抱える量が減り、風が地肌まで届きやすくなるので、乾くのが速くなります。ここは物の条件なので、暮らし方によらず起こります。サマーカットで得られる涼しさの正体は、この「乾きの速さ」のほうにある、というのがこの記事の中心です。
乾きが速いことが、なぜ涼しさにつながるのか。水が蒸発するときには、まわりから熱を持っていきます。濡れた体が乾いていく途中は、その子にとって熱が逃げていく時間です。毛が長いと、水が毛の中に留まって、地肌の近くだけが湿ったままになりやすくなります。乾きが速いというのは、この状態が短く済むということでもあります。
| 内容 | 根拠 | |
|---|---|---|
| 変わる | 濡れたあとに乾くまでの時間 | 水を抱える量が減り、風が地肌まで届きやすくなります |
| 変わる | 蒸れている時間の長さ | 湿ったまま留まる場所が減ります |
| 変わる | 地肌に届く直射と照り返し | 遮る層が薄くなります |
| 変わる | こすれや虫の刺激の届き方 | 毛が受け止めていた分がなくなります |
| 変わらない | 汗の蒸発で体温を下げる仕組み | もともと人と同じようには働かないとされます |
| 変わらない | 呼吸で熱を逃がす経路 | 毛の長さでは変わりません |
| 変わらない | 外気温そのもの | 環境の側の条件です |
この表の「変わる」の4行のうち、3行めと4行めは、涼しさの側ではなく負担が増える側に並びます。つまり、サマーカットは、乾きと蒸れの2つを得るかわりに、直射とこすれの2つを引き受ける選択だ、ということになります。差し引きがプラスになるかどうかは、その子が濡れる時間と、屋外にいる時間のどちらが長いかで決まります。
「濡れる機会があるかどうか」で決める、とはどういう意味ですか
判断の基準を、暑がりかどうかから、濡れる回数のほうへ移すという意味です。乾きが速くなることがサマーカットの確かな効き目なら、乾かす場面が多い暮らしほど、その効き目を受け取れる回数が多くなります。逆に、濡れる機会がほとんどない子にとっては、得られるものが少ないまま、直射とこすれだけを引き受けることになります。
- 洗う回数:夏に月2回以上洗うなら、乾かす時間が毎回短くなります
- 水遊びの有無:水に入る習慣があるなら、濡れる回数はさらに増えます
- 雨の日の散歩:雨のあとに体を拭く場面が多いかどうか
- 足を洗う頻度:全身ではなく足だけでも、乾く速さは効いてきます
- 屋外にいる時間:日中の直射を受ける時間が長いほど、引き受ける側が増えます
- 室内の床の材質:短い毛でこすれる時間が長いかどうか
この6つを見て、上の4つが多くて下の2つが少ないなら、サマーカットの意味は受け取りやすい暮らしです。逆なら、全身を刈るより、蒸れやすい場所だけを短くする、量だけ減らす、といった選び方のほうが合っているかもしれません。大事なのは、他の家がどうしているかではなく、自分の家でその子が何回濡れているかです。
迷ったときは、2週間、その子が濡れた回数を数えてみてください。全身を洗った、足だけ洗った、雨で濡れた、水遊びをした。何でもかまいません。この数が2週間で4回を超えるなら、乾きが速くなることの意味は大きく受け取れます。2回以下なら、短くして得られるものは、思ったより小さいかもしれません。数字に厳密な根拠があるわけではありませんが、感覚で決めるより、自分の家の条件が見えるようになります。
短くしたあと、家では何に気をつければ大丈夫ですか
短くしたあとに変わるのは、暑さの感じ方より先に地肌の環境です。だから見るところも、そこになります。大丈夫かどうかを判断する材料は、その子の背中と腹に出ます。1週間は、いつもより少しだけ念入りに見てください。
| 場所 | 見ること | 変化があったら |
|---|---|---|
| 背中の中央 | 赤み、細かいぶつぶつ、乾き | 直射を受ける時間を減らします |
| 腹と内股 | こすれによる赤み | 床に敷くものの材質を見直します |
| 首のまわり | 首輪が当たる位置の状態 | 当たる位置が変わっていないか確かめます |
| 耳のうしろ | かき壊しの跡 | かく回数が増えていないか数えます |
| 尾のつけ根 | 赤み、皮膚の粉のようなもの | 触られるのを嫌がるかどうかも見ます |
屋外については、行く時間帯を変えるほうが確実です。短くした直後の1〜2週間は、日中の直射がいちばん強い時間帯を避けるだけで、地肌が受ける熱の量がかなり違います。アスファルトの上は、地面からの照り返しもあります。毛が短いと、その照り返しが腹側に届きやすくなります。散歩の時間を朝と夕方に寄せるのは、サマーカットをしてもしなくても効きますが、短くした年はとくに意味があります。
室内では、冷房の風が直接当たる場所を確かめてください。毛が短いと、風の当たり方が去年と変わります。去年と同じ場所で同じように寝ているのに、朝になると体が冷えている、ということが起こります。寝床の位置を50cm動かすだけで解決することもあるので、風の通り道を一度、床の高さで確かめておくとよいと思います。
サマーカットにしない場合、暑い時期の毎日のケアはどうしますか
短くしない選択をしたときにやることは、毛のあいだの空気の層を、詰まらせないでおくことです。層が熱を通しにくくするのは、空気が入っているからです。抜けた毛が絡んで詰まった状態では、その層は空気ではなく毛の塊になります。刈らずに涼しくしたいなら、減らすのは長さではなく、抜けたまま残っている毛のほうです。
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毎日1〜3分、抜けた毛だけ取る
時間を長くするより、間隔を空けないほうが結果がそろいます。毎日短く、が夏のブラッシングの基本です。取れる量は前回から何日空いたかでほぼ決まるので、毎日やっていれば1回は数分で終わります。
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蒸れやすい場所を先に見る
内股、脇の下、耳のうしろ、尾のつけ根。この4か所は、風が通りにくく、湿りが残りやすい場所です。全身をやる時間がない日でも、ここだけは通しておくと、蒸れている時間が短くなります。
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抜けた毛を取る日課に、ブラッシングスプレーを入れる
抜けた毛を取る仕事は、洗う日とは別に毎日あります。乾いた毛のまま櫛を入れると、抜けた毛が途中で絡んで層に残ります。毛に含ませてから通すと、その日に取れる量が変わります。
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乾かしきる時間を先に確保する
洗った日にいちばん効くのは、乾かす側の時間です。洗う時間を短くするより、乾かす時間を先に予定に入れておくほうが、湿ったまま留まる時間が短くなります。
3つめのブラッシングスプレーについて、具体的に書きます。mofuwa グルーミングスプレーは、毎日きれいにしておきたい日のためのケアスプレーです。布に含ませて、毛の流れに沿って背中から尾のつけ根まで一往復させる。蒸れやすい4か所は、そのあとに一か所ずつ。この記事で減らしたいのは長さではなく、抜けたまま層に残っている毛でした。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、静電気で毛が立たない状態にしてから櫛を入れられます。清涼飲料水の規格基準をクリアした中身なので、内股や脇の下のように、あとから口が届く場所でも量を決めずに使えます。無香料で界面活性剤を使っていないので、毛の表面に油分が残って束になることもありません。気になる部分だけを扱いたいときは、mofuwa スキンケアミストを直接なじませる形にすると、範囲を絞れます。洗う日には、アミノ酸系の洗浄成分を使ったmofuwa モイストシャンプーのように、洗浄成分の量を抑えた設計のものを選ぶと、乾かす前の状態が変わります。洗う日はモイストシャンプー、乾かす時間を取れない日はグルーミングスプレー。この分担にしておくと、刈らないまま夏の予定が崩れません。
去年サマーカットにしたから今年もそうする、という決め方をしなくてかまいません。年齢が変われば、屋外にいる時間も、洗う回数も、皮膚の状態も変わります。去年は水遊びに行っていたけれど今年は行かない、という一年もあります。判断の材料は毎年作り直すもので、去年の結論をそのまま持ち越すものではない、と考えておくほうが合っています。
7つの答えを並べ直す|サマーカットの意味を、涼しさ以外の言葉で言い直す
最後に、ここまでの答えを通しで並べます。サマーカットという言葉の意味を、涼しさという言葉から離して言い直すと「濡れたあとに乾くまでの時間を短くするカット」になります。この言い直しが、この記事でいちばん残したいところです。涼しさで考えると条件によって答えが割れますが、乾きの速さで考えると、答えは1つに定まります。
| 問い | 答え |
|---|---|
| 涼しくなるか | 短くすれば涼しい、とは限りません |
| 言葉の意味 | 長さの基準はなく、指す範囲は人によって違います |
| 涼しいと限らない理由 | 被毛は外の熱を通しにくくする層でもあるとされます |
| 実際に変わるところ | 濡れたあとに乾くまでの時間です |
| 判断の分かれ目 | その子に濡れる機会がどれだけあるか |
| 短くしたあと | 地肌の状態を1週間、5か所で見ます |
| 短くしない場合 | 長さではなく、抜けたまま残る毛を減らします |
この7行を1つにまとめると、こうなります。サマーカットは、暑さそのものへの手ではなく、濡れと蒸れへの手です。だから、暑がっているという理由だけで決めると、期待していたものと違う結果になることがあります。決める前に見るのは気温ではなく、その子が2週間で何回濡れたかです。
そのうえで、実際にどこまで短くするかは、文章では決められません。被毛の状態も、皮膚の状態も、その子の背中を直接見ないと分からないからです。長さの相談はトリマーへ、皮膚の状態の相談は動物病院へ、と持っていく先を分けておくと、迷う時間が短くなります。両方に同じことを聞くより、そのほうが早く答えが出ます。
短くしたあとに地肌が赤い状態が続く、細かいぶつぶつが増えた、同じ場所をなめ続けている、かく回数が明らかに増えた、皮膚から粉のようなものが出る、においが変わった、元気の落ち方が続いている。こうした変化があるときは、カットの長さや家でのケアを見直す前に、動物病院にご相談ください。夏は環境の条件が同時にいくつも動くので、原因を1つに絞りにくい時期です。いつ短くしたか、そのあと何日目から変化が出たか、屋外にいる時間はどれくらいか。この3つをメモして持っていくと、切り分けが早くなります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
