C09シーン別・暮らし
停電・断水のとき、シニア猫と暮らす人はどうしている?
断水と停電が重なった日の夕方、うちの老猫は、いつもの窓辺のクッションから動かないままでした。エアコンが止まって2時間、その場所の床に手のひらを置くと、朝よりはっきり温かくなっていました。ペットと暮らす家で停電が起きたとき、いちばん先に変わるのは体ではなく、その子がいつも寝ている場所の温度です。猫が寝床を選ぶとき、そこが涼しいか暖かいかは、空調が動いていることを前提にして決まっています。電気が止まると、その前提だけが抜けます。若い猫なら暑くなった時点で自分で移りますが、老猫は移るまでに時間がかかったり、そのまま留まったりします。この記事では、断水の日にやりたくなる「体を拭く」を後ろに回して、先に居場所の温度を確かめる手順を書きます。水が使えない数日を、家の中でどう渡すかという話です。
エアコンが止まると、老猫の寝床から温度が変わる|手をつける順番が入れ替わる理由
猫は、家の中でいちばん条件のいい場所を選んで寝ています。日の当たり方、風の通り、床の材質、人の通り道からの距離。その条件の中には、空調が作っている部分が必ず含まれています。夏なら冷たい空気がたまる場所、冬なら暖かい空気が回ってくる場所。その子が選んだのは「その部屋がその温度であるときの、いちばんいい場所」です。
停電すると、その前提だけが抜けます。場所は同じ、クッションも同じ、日の当たり方も同じ。変わったのは空気の温度だけなので、外から見ると何も変わっていないように見えます。ペットのいる家で停電が起きたときに、体のケアより先に居場所を見るのは、この見えにくさのためです。
老猫の場合、ここにもうひとつ条件が重なります。その子が自分でできる量が減っていて、人が代わる範囲が広がっているということです。若い猫は、暑くなれば立ち上がって涼しい床へ移ります。年をとると、立ち上がる回数そのものが減ります。移らないことを「気に入っているから」と読むと、温度が変わったことに気づけません。
| 止まるもの | その場所に起きること | 老猫の側で起きること |
|---|---|---|
| 冷房 | 空気の下のほうから温度が上がる | 床に体をつけたまま動かないことがある |
| 暖房 | 窓ぎわと床の近くから冷える | 体を丸める姿勢が長くなる |
| 扇風機・サーキュレーター | 空気が止まり、同じ場所にこもる | 毛の中に熱がたまりやすくなる |
| 換気扇 | においと湿気が部屋に残る | トイレの近くを避けて移動する |
| 給湯・断水 | 水が使えない | 毎日の器の入れ替えができなくなる |
断水が重なると、もうひとつ手が減ります。器を洗う水、床を拭く水、体を拭くための水。ペットのケアは、思っているより水に寄りかかっています。断水の日にやることを増やそうとすると、限られた水をどこに使うかの取り合いになります。だから順番を先に決めておきます。温度、水、体、の順です。体はいちばん後ろで構いません。
数時間で戻ることもありますし、半日以上続くこともあります。どちらになるか分からないので、どちらでも同じ順番で動けるようにしておく、というのがここでの考え方です。先の見通しを立てようとするより、いま部屋がどうなっているかを確かめるほうが、老猫と暮らす家では確実です。慌てて動く必要はありません。手のひらを床に置くところから始めれば足ります。
ケアより先に居場所の温度を確かめる|停電と断水の日に家でできる5手順
ここからが実際の手順です。5つのうち、体に触れるのは最後の1つだけです。温度、水、体の順を、前から動かさないでください。老猫は一度に受け取れる手数が少ないので、先に環境を整えておくほうが、結果としてその子の負担が軽くなります。
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手順1:その子がいる場所の床に、手のひらを30秒置く
体には触れません。床です。寝ているクッションの横、床に直接。30秒置くと、そこの温度が手に移ってきます。朝と比べて温かい、あるいは冷たいと感じたら、その場所の条件はもう変わっています。老猫は同じ場所に留まりやすいので、ここが最初の手がかりになります。ペットの体温を測ろうとする必要はありません。床で足ります。
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手順2:家の中で、いちばん温度が動きにくい場所を1か所決める
家の中心に近い部屋、窓から遠い壁ぎわ、廊下の突き当たり。外に面した窓が少なく、直射日光が入らない場所が、いちばん動きにくい場所です。停電のたびに探すのではなく、ふだんのうちに1か所決めておいてください。断水と停電が重なる日に、探すところから始めると時間がかかります。
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手順3:老猫を動かすのではなく、寝床ごと移す
抱き上げて移しても、その子は元の場所へ戻ります。戻るのは、そこが気に入っているからです。クッションや毛布を、その子のにおいがついたまま新しい場所へ移してください。移したあとは、こちらは離れます。老猫は、人が見ていないところで移動を決めることが多いので、待つ時間を作ります。数分で来ることもあれば、1時間かかることもあります。
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手順4:水の器を増やして、置く場所を分ける
断水しているときは、汲み置きの水を1か所にまとめず、小さな器に分けて2〜3か所に置きます。老猫は、水を飲むために歩く距離が長いほど、飲む回数が減ります。新しい寝床のそば、いつもの通り道、トイレから戻る途中。ペットボトルの水を使う場合も同じで、量より置く場所の数を先に増やしてください。器が洗えない日は、口をつけた器を朝と夜で入れ替えるだけでも変わります。
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手順5:ここまで終わってから、体に触れる
触る場所は、口のまわり、おしりのまわり、足先の3か所だけです。全身はやりません。布にグルーミングスプレーを含ませて、毛の流れに沿ってなでる形にします。清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、口のまわりやおしりのまわりにも量を気にせず使えます。その子に直接吹きかけないでください。音と冷たさで、老猫は途中で立ち上がります。3か所で1〜2分、それで終わりにしてください。
この5手順は、家でできる範囲だけで組んであります。特別な道具は要りません。要るのは、床に手を置く30秒と、寝床を移すための空いた1か所です。停電と断水が同時に来る日は、判断することが多くなります。判断を減らすために、順番だけを先に決めておく、というのがこの手順の意味です。
この手順でいちばん時間がかかるのは、手順2です。停電してから探すと、家じゅうを回ることになります。ふだんの週末に、家の中でいちばん温度が動きにくい場所を1か所決めて、そこを空けておいてください。物を置かない、というだけで足ります。老猫と暮らす家では、そこが夏の停電にも冬の停電にも使えます。ペットのための場所を1か所空けておく、という備え方です。
拭く頻度を上げたくなる日に、増やさないと決めておく
断水が続くと、だんだん気になってくるのが体のほうです。トイレのあとが気になる、口のまわりが汚れて見える、被毛がぱさついてきた。水が使えないぶん、拭く頻度を上げて埋めたくなります。ここが、老猫と暮らす家でいちばんつまずきやすいところです。
頻度を上げないほうがいい理由は2つあります。1つめは、触られる時間そのものが老猫の負担になること。その子が自分でできる量が減っているのは、体力が減っているからでもあります。1日に何度も体を起こされると、休む時間が細切れになります。2つめは、濡れたまま置く回数が増えることです。停電で風が動いていない部屋では、湿ったところが乾くまでの時間が長くなります。
| 増やしたくなること | 代わりに置くこと |
|---|---|
| 拭く回数を1日3回に増やす | 回数は変えず、拭く場所を3か所に絞る |
| 全身をまんべんなく拭く | 口のまわり・おしり・足先だけにする |
| 水を多めに含ませて拭く | 布を固く絞って、拭いたあとに乾いた面でなでる |
| ブラッシングの時間を長くする | 1回1分。毛の流れに沿って、同じ向きだけ |
| トイレの砂を全部替える | 汚れた部分だけ取り、全替えは水が戻ってから |
| 器を洗えないぶん、水を足し続ける | 器ごと入れ替える。足すのではなく替える |
被毛がぱさついて見えるのは、断水そのものより、部屋の空気が動いていないことのほうが効いていることがあります。停電で扇風機も換気扇も止まると、毛の中の空気が入れ替わりません。窓を少し開けられる状況なら、拭くより先に空気を動かしてください。手を増やすより、条件を1つ戻すほうが、老猫にとっては軽い手です。
皮膚のほうも見ておきます。ただし、見るのは触ってからではなく、目でです。おしりのまわりと、うしろ足のつけ根。この2か所は、老猫が自分で毛づくろいをしなくなる順番の早いところです。赤くなっている、毛が固まっている、においが強くなっている。こうした変化があるときは、拭く頻度を上げるのではなく、そこだけを1回ていねいにやってください。回数ではなく、どこをやるかで決めます。
水が使えない日ほど、少ない水で拭いて、そのままにしてしまいがちです。停電で風が動いていない部屋では、濡れた場所が乾くまでの時間が長くなります。拭いたあとは、必ず乾いた布の面で一度なでて、水気を取ってください。とくに夏は、濡れたところから体温が下がることがあります。冬は逆に、乾ききらない場所が冷えたままになります。老猫は自分で体を起こして毛づくろいをする回数が減っているぶん、乾かすところまでを人の側でやることになります。
決めることを減らして、水が戻るまでの数日を渡す|戻したあとに踏む3日の段階
水が戻るまでの数日を、どう渡すかです。コツと呼べるものは3つありました。どれも、その日にできることを増やすものではなく、決めることを減らすためのものです。
- 時刻を動かさない:停電していても、水を替える時刻とケアの時刻はいつも通りにする。老猫は時刻で1日を組み立てています
- 1日1行だけ書く:水を飲んだか、食べたか、トイレに行ったか。3つだけを紙に書く。あとで動物病院に相談するときに、これがそのまま材料になります
- やらなかったことを責めない:断水の日にできなかったケアは、水が戻ってから戻せます。取り返そうとして、まとめてやらないこと
- ペット用品は1か所にまとめておく:暗い部屋で探す時間が減ります。停電のときは、これがいちばん効きます
- その子の定位置を2つ持っておく:夏用と冬用。停電のたびに探さなくてすみます
水が戻ったあとも、すぐに元の頻度へ戻さないでください。断水のあいだ触る回数を減らしていたなら、戻すのも段階を踏みます。初日は3か所のまま、2日目に背中を足す、3日目にいつもの毎日のケアへ。老猫は、変わることそのものに時間がかかります。急に戻すと、断水の日より嫌がることがあります。
手順5で使ったグルーミングスプレーは、水が戻ってからも同じ3か所に使います。スプレーするだけなので、老猫を起こしておく時間が1〜2分で済みます。毎日きれいにしておきたいという側から入れる道具なので、水が戻ったあとの毎日にもそのまま残ります。毛の流れに沿ってなでる形にすれば、ブラシを入れる前の静電気も起きにくくなります。使う場所も、いつもと同じ3か所で足ります。
丸1日、水をまったく飲んでいない。食べる量が2日以上落ちている。おしっこの回数が減った、または出ていない。呼吸が速い、口を開けて呼吸している。ふらつく、立ち上がれない。体を触ると熱く、耳の内側も熱い。皮膚が広く赤い、じくじくしている。いずれかに当てはまるときは、停電や断水が続いていても、動物病院にご相談ください。電話がつながるなら、行く前に状況を伝えておくと、受け入れの可否がその場で分かります。老猫は変化が出てからの進み方が早いので、この記事で数えている丸1日・2日という線を、こちらで延ばさないでください。
停電と断水の日に、老猫のためにできることは、思っているより少ないかもしれません。それでも、床に手のひらを置いて温度を確かめることと、寝床を1か所移すことは、電気も水も使わずにできます。ペットと暮らす家の備えというと、物を買いそろえる話になりがちですが、この2つには何も要りません。順番だけを覚えておいてください。温度、水、体。体はいちばん後ろで構いません。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 停電したとき、老猫を涼しい部屋へ抱いて移してもいいですか?
- 抱いて移すこと自体は問題ありませんが、その子は多くの場合、元の場所へ戻ります。戻るのは、そこが自分で選んだ場所だからです。先に寝床のクッションや毛布のほうを新しい場所へ移して、こちらは離れて待ってみてください。においのついたものがそこにあると、自分で移動することがあります。断水と停電が重なっている日は、こちらが動かす回数を減らすほうが、老猫の負担が軽くなります。
- 断水しているあいだ、猫の水はまとめて大きな器に入れておいたほうがいいですか?
- 量より、置く場所の数を優先してください。大きな器を1つ置くより、小さな器を2〜3か所に分けたほうが、飲む回数が増えます。老猫は水のところまで歩く距離が長いと、飲みに行く回数そのものが減るためです。器を洗う水がないときは、朝と夜で器ごと入れ替える形にすると、足し続けるより清潔さを保ちやすくなります。
- 停電の日は、ブラッシングだけしておけばいいでしょうか?
- ブラッシングは水を使わないので、断水の日にも続けられます。ただし、時間を長くしないでください。1回1分、毛の流れに沿って同じ向きだけで足ります。老猫は同じ姿勢でいる時間が長くなると疲れます。それより先に、その子が寝ている場所の床に手のひらを置いて、温度が変わっていないかを確かめてください。ペットのケアの順番としては、そちらが先です。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
