C09シーン別・暮らし
保護犬・保護猫を迎えたを楽にする、保護犬・保護猫を迎えた人の毎日の習慣
2頭目の保護犬が家に来た日、玄関でしゃがんで手の甲を床の近くに止めたまま待っていたら、その子は10分たっても靴箱の陰から出てきませんでした。1頭目のときは、同じ姿勢で5分ほど待てば自分から鼻を寄せてきました。同じようにやったのに、同じにはなりませんでした。2頭目を迎えるときに手元にあるのは、その1頭ぶんの経験だけです。以前どうしていたのかは、迎える側には分かりません。分からないところを想像で埋めても、目の前の手つきは変わらないので、この記事ではそこには踏み込みません。保護犬でも保護猫でも、2頭目以降を迎えるときに持ち越せるのは、道具と部屋の作りと時間帯です。作り直しになるのは、触る順番と、1回にかける長さのほうです。この2つを分けておくと、1頭目の経験が「使えなかった」という話にならずにすみます。
2頭目の保護犬を迎える日に、1頭目の手順が通らなかった背景
玄関にキャリーを置いて、扉を開けて、こちらは床に座ったまま動かない。手の甲を低い位置で止めて、目は合わせない。1頭目のときにそれで届いたので、2頭目もそうしました。その子は扉から出てはきましたが、靴箱の陰に入ってそこから動きませんでした。こちらが立ち上がると奥へ移り、座り直すと止まる。1時間そうしていて、その日はそれで終わりました。手つきの問題ではなく、待ち方の目盛りが合っていませんでした。
1頭目を迎えるまで、私たちは何も知りませんでした。だから調べて、教わって、うまくいかない日をくり返して、1年かけて自分たちの手順ができました。その手順は、たしかに身についていました。ただ、身についていたことと、次の子に通ることは別でした。次の5つは、1頭目のときに固めたものです。
- 最初の1週間は、こちらから触らない:距離を詰めるのはその子の側からにする
- ケアは背中から入る:顔と足先はいちばん後ろに回す
- 1回は3分で切り上げる:途中でやめられる長さにしておく
- 毎日、同じ時間帯にやる:朝の食事のあと、と決めてしまう
- その日にできたことだけをメモに書く:できなかったことは書かない
2頭目を迎えるときにも、この5つはたしかに役に立ちました。ただし役に立ったのは、5つのうち3つだけです。時間帯と、記録のつけ方と、途中でやめられる長さにしておくという考え方は、そのまま使えました。使えなかったのは「1週間」と「背中から」の2つです。その子は1週間では足りず、背中よりも先に肩の横を許しました。
理屈にすると単純です。1頭目のときに作った基準は、1頭だけを見て作った基準です。保護犬や保護猫を迎える人が最初に持っているのは、団体や施設から渡された記録と、その日その子がした動きの2つだけで、そこから先は一緒に暮らしながら足していくしかありません。2頭目を迎えて、はじめて「これは1頭目の性格だったのか、それとも迎える子に共通することなのか」が分かれます。分かれるまでは、どちらなのか判定できません。
だから2頭目を迎えるときに起きているのは、経験が足りないという話ではありません。1例しかなかったものが2例になって、はじめて幅が見えるようになった、というだけの話です。1頭目のときより落ち着いて構えられるのは確かで、そこは持ち越せます。持ち越せないのは、その1例から引き出した具体的な数字のほうです。
2頭目を迎えると、1頭目との違いが目につきます。そこで「前はよほどのことがあったのだろう」と物語を作ってしまうと、手つきは変わらないのに、こちらの気持ちだけが重くなります。以前どうしていたかは、迎える側には分かりません。分からないものは分からないままにして、いま何ができて何ができないかだけを見てください。保護犬・保護猫を迎えるときに手元にある確かな情報は、渡された記録と、今日の動きの2つです。
同じ「保護」でも、保護猫と保護犬で許容の始まる場所が入れ替わる理由
1頭目が犬で2頭目が猫、という組み合わせで迎える人はめずらしくありません。逆もあります。このとき、1頭目の手順がそのまま通らないのは当然なのですが、「犬と猫だから違う」で片づけると、次の3頭目でまた同じところでつまずきます。違っているのは種類そのものではなく、その子が最初に許す場所と、その場所を決めている条件です。
保護犬を迎えるときは、床の上に逃げ場を作ります。部屋の隅、テーブルの下、ケージの奥。こちらは正面に立たず、斜め前か横に並んで座ります。肩から背中にかけての面は、その子から人の手が見えたまま触られる場所です。見えている手は、見えていない手より先に許されます。だから保護犬では、背中側から入るという順番が成り立ちます。
保護猫を迎えるときは、逃げ場が高いところにできます。棚の上、キャットタワー、冷蔵庫の上。人が立っていると、その子の頭より上に人の手がある状態が続くので、まず同じ高さまでしゃがみます。上から下りてくる手は、猫にとっていちばん許しにくい向きです。頬から首の横へ、下から差し出す形なら、届く日が早くなります。
| 保護犬を迎えるとき | 保護猫を迎えるとき | |
|---|---|---|
| 最初に手が届く場所 | 肩から背中。横に並んで座る | 頬から首の横。下から差し出す |
| こちらが動く向き | 正面に立たず、斜め前から | 同じ高さまでしゃがんで、待つ |
| その子が使う逃げ場 | 床の上。部屋の隅や家具の下 | 高い場所。棚の上や台の上 |
| 1回の長さの目安 | 3分で切り上げる | 1分でも長いことがある |
| 落ち着いた合図 | 尾のつけ根の力が抜ける | 毛づくろいが戻る |
| 最後まで残る場所 | 足先と口のまわり | 腹側とうしろ足のつけ根 |
2頭目以降を迎える人にとって、この表の使いどころは少し変わります。1頭目が犬で2頭目が保護猫なら、持ち越せるのは表の左の列ではありません。持ち越せるのは、表そのものの読み方です。「その子の逃げ場がどこにできるかを見て、そこから遠い側に手を置く」という考え方だけが共通していて、具体的な場所と時間はその子ごとに入れ替わります。
許容の始まる場所を決めているのは、慣れの量ではありません。その子が、いつでもそこから離れられるかどうかです。逃げ道が先にあれば、触られることを試せます。逃げ道がなければ、動かないでいるほうが安全なので、固まります。ここを読み違えると、迎えてから2週間で手が進みすぎます。動かない状態を「落ち着いている」と受け取ってしまうからです。
毎日のケアで見ておくのは、体そのものより先に、その日の逃げ道の使われ方です。昨日は棚の上にいたのに今日は下りてきた、いつもは家具の下に入るのに今日は横に来た。この動きのほうが、被毛や皮膚の状態より早く変わります。手を伸ばしてよい日かどうかは、その子の位置が先に教えてくれます。
2頭目を迎えると、どうしても1頭目が基準になります。けれど比べる相手を1頭目にすると、差が出るたびに「遅れている」と読んでしまいます。比べる相手は、同じ子の1週間前です。先週は玄関から動かなかった、今週は廊下の途中まで来た。これなら、その子の速さで進みます。保護犬でも保護猫でも、この比べ方に変えるだけで、迎える側の手が急がなくなります。
1頭目から持ち越せるものと、迎えるたびに作り直すもの|2頭目の考え方
ここまでを、実際の組み立てに落とします。2頭目を迎えるときにやることは、ゼロからやり直すことではありません。据え置く部分と、白紙に戻す部分を、先に線引きしてしまうことです。線引きを先にしておくと、通らなかったときに「1頭目のやり方が間違いだった」という結論に飛ばずにすみます。
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部屋と時間帯は、1頭目のものをそのまま使う
逃げ場の位置、ごはんと水の場所、ケアをする時刻。ここは動かさないでください。1頭目のときに部屋の側で決めたことは、次の子を迎えるときの土台になります。2頭目を迎えると新しいものを買いそろえたくなりますが、道具が増えるほど、その子にとっては見慣れないものが増えます。まずは同じ道具、同じ場所、同じ時刻から始めてください。
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触る順番だけは、いったん白紙に戻す
1頭目が背中からだったとしても、2頭目に同じ順で入らないでください。手を出さずに1日を過ごして、その子が自分から近づいた場所を1か所だけ書き留めます。3日ぶん書けば、その子の入り口が見えてきます。保護犬なら肩の横、保護猫なら頬のあたりに落ちることが多いのですが、うちの2頭目は前脚の外側でした。決めるのはこちらではありません。
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1回の長さを、その子の側で決め直す
3分という数字も、1頭目のものです。2頭目を迎えたら、その子が体をこわばらせる手前で終えることだけを守って、長さは毎日変えます。10秒で終わる日があっても構いません。途中でやめると癖になる、ということはありません。むしろ、こちらが先にやめた日の翌日のほうが、近づいてくる距離が短くなります。
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記録に「今日やめた理由」の欄を1つ足す
1頭目のときはできたことだけを書いていました。2頭目からは、やめた理由も1行だけ足します。「耳が横に倒れたから」「立ち上がったから」。やめた理由が3日で同じ言葉になったら、そこがその子の限界の場所です。次はその手前で止めます。毎日の記録が、そのまま次の判断材料になります。
体に触れる時間が短い時期に、いちばん先に汚れがたまるのは口のまわりと足先です。この2か所は、迎えたばかりの子が自分では始末しきれない場所です。犬は前脚で顔をこするところまではできても、口の横に残ったものは落とせません。猫は毛づくろいの届く体でも、迎えて間もないうちは身づくろいの回数そのものが減ります。ここは人が代わるしかありません。mofuwa スキンケアミストは、電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。舐めても問題のない基準でつくられているので、口のまわりのように必ず舌が届く場所へ、そのまま当てられます。迎えた直後は、その子に向けて吹かず、こちらの手か布のほうを湿らせてから触れてください。音も風も立ちません。3日ぶん書き留めた「その子が自分から近づいた場所」を、書いた順にそのままなぞれば、触る順番を新しく決め直さずに済みます。届かない場所は今日はやらない、で構いません。
多頭になると、体についたものが互いに移ります。1頭目が外から持ち帰ったものは、同じソファと同じ床を使っているうちに2頭目にも回ります。2頭目を迎えたあとは、1頭目のケアの回数のほうを見直してください。触らせてくれる1頭目のほうが、結果として全体の状態を決めます。新しく来た子に手をかけようとするあまり、1頭目の毎日のケアが止まる、というのは実際に起きます。
皮膚が赤い、じくじくしている、においが強くなった、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、食べる量が3日以上落ちている、下痢や嘔吐が続いている。いずれかに気づいたときは、触れるようになるのを待たずに動物病院にご相談ください。迎えてすぐの子は、こちらが体を触れないぶん、見て分かる変化のほうが手がかりになります。様子を見ていればそのうち治りますという判断は、この時期にはしないでください。健康診断のついでに、その子の触れる場所を獣医師に相談しておくと、次の受診が楽になります。
3か月で起きる変化は、その子ごとに別の場所から始まります
うちの1頭目は、迎えてから2週間で床に寝るようになり、1か月でブラシを見ても逃げなくなり、3か月で足先を持たせてくれました。順番はきれいでした。2頭目は、この順番をまったく守りませんでした。足先は迎えて10日で持たせてくれたのに、床に寝るまでには2か月かかりました。どちらが早いという話ではなく、始まる場所が違いました。
| 時期 | 1頭目に起きたこと | 2頭目に起きたこと |
|---|---|---|
| 最初の2週間 | 床に体を伸ばして寝るようになった | 食事のあいだだけ人のいる部屋にいた |
| 1か月 | ブラシを見ても逃げなくなった | 前脚と足先を持たせてくれた |
| 2か月 | 顔まわりを拭かせてくれた | はじめて床に体を伸ばして寝た |
| 3か月 | 足先を持たせてくれた | ブラシの音で立ち上がらなくなった |
この表を作ってよかったのは、2頭目が遅れているのではなく、別の順番で進んでいると分かったことでした。1頭目の3か月を基準にすると、2頭目は「2か月たっても寝ない子」になります。けれど1頭目は、同じ2か月の時点で足先を触らせてくれていませんでした。どちらの列にも、進んでいる欄と止まっている欄が並んでいます。
3頭目以降を迎える人にも、同じことが起きます。例が増えるほど平均を作りたくなりますが、保護犬・保護猫を迎えるときの平均は、目の前の1頭には当てはまりません。増えた例が教えてくれるのは、平均ではなく幅です。2週間で寝る子もいれば、2か月かかる子もいる。その幅を知っていると、待てる時間が長くなります。待てる時間が長くなることが、迎える側にとっていちばん大きい変化かもしれません。
皮膚と被毛の状態も、同じ速さでは動きません。触らせてくれる場所から順に整っていくので、3か月たっても手つかずの場所が残るのがふつうです。残っている場所を数えるのではなく、先月は触れなかったのに今月は触れた場所を数えてください。毎日のケアは、増えた場所のぶんだけ広げれば足ります。広げられない週があっても、道具と時間帯を据え置いてあれば、いつでも戻れます。
2頭目を迎えるという経験は、1頭目のときに得たものを試験にかけることでもあります。通ったものは、たぶん次の子にも通ります。通らなかったものは、その子のことだった、というだけです。保護犬でも保護猫でも、迎えるたびに作り直すのは触る順番と長さだけで、道具と部屋と時間帯は積み上がっていきます。1頭目の1年は、その積み上がった部分として、ちゃんと残っています。
Product
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