C05犬種・猫種別ケア

狆のシルキーコート|涙やけを毎日のケアで防ぐ

公開日 2022年10月4日|文=mofuwa編集部

明るい光の入る部屋で、白と黒の長い毛の小型犬が静かに伏せている
涙が落ちていく先に、溝がありません。濡れるのは細い線ではなく、輪郭のぼやけた面のほうです。

狆の目の下を朝に拭いて、夕方にもう一度のぞくと、湿っているのは拭いた場所の外側、頬のほうです。拭き残したわけでもなく、拭き方が弱かったわけでもありません。涙やけの相談で「目の下の線が消えない」という言い方をよく聞きますが、狆の顔には、その線がそもそも引かれていません。鼻が短く、顔の前面が平らな作りなので、あふれた涙は下へ落ちる前に、横へ広がっていきます。濡れるのは細い線ではなく、輪郭のぼやけた面です。この読みものでは、狆の涙やけがなぜ面のまま広がるのかを顔の作りからたどって、そのうえで毎日のケアの手を、どこへどう当てればいいのかを書きます。

拭いた場所の外側が濡れている|狆の涙やけが面のまま広がる理由

朝、目のまわりを拭きます。目頭に寄っていたものを取って、目の下を丁寧になぞって、そこはきれいになりました。それなのに夕方、同じ顔を見ると、朝ふれなかった場所が湿っています。目の下から少し外へ寄った、頬の上のあたりです。拭いた場所は乾いているのに、その外側が新しく濡れている。狆と暮らしていると、この形の涙やけに何度も出会います。

ここでつまずきやすいのが、拭く力を強くする方向へ手が向いてしまうことです。取り残しがあるように見えるので、翌朝はもう少し強く、もう少し長くこすることになります。けれど濡れている場所は毎日少しずつ移動していて、強くこすった場所と、次の日に濡れる場所は、同じところではありません。力が届いていないのではなく、範囲が合っていないのです。

鼻筋の高い犬の顔を思い出すと、違いがはっきりします。目頭からまっすぐ下へ、細い筋のように色がついていく。幅は数ミリで、輪郭がはっきりしていて、上から下へ流れているのが見て取れます。狆の涙やけには、その輪郭がありません。どこまでが濡れていてどこからが乾いているのか、指で触ってみるまで境目が決められない。だから「線が消えない」という言い方が、そもそも当てはまりません。

もう一つ、狆の涙やけを分かりにくくしているのが、湿っていることと色がついていることの時間差です。今日湿っている面と、いま色が濃く見えている面は、ぴったり重なりません。色は、その場所が濡れていた日数のぶんだけ遅れてついてきます。色を目印にして拭いていると、いつも数日前の面を追いかけることになります。

Note線を探しているあいだは、手が届きません

狆の顔で「涙やけの線」を探すと、目の下の狭い範囲だけを何度も拭くことになります。そこはたいてい、もう乾いている場所です。拭くべき場所を決めるのは、色ではなく、指先で感じる湿り気のほうです。目の下から外へ、頬の上まで指の腹を滑らせて、どこで乾いた手ざわりに変わるかを確かめる。その内側が、今日の面です。

鼻筋という溝を持たない顔|狆の涙やけの背景にある作り

なぜ面になるのか。答えは狆の顔の作りにあります。狆は鼻がとても短く、顔の前面が平らに近い犬種です。日本で長いあいだ、人のそばで暮らす犬として飼われてきた歴史があり、体は小さく、被毛は絹のようにまっすぐで細い。この「平らな顔」と「絹のような毛」の2つが、涙の行き先を決めています。

まず、涙がどこを通るかという話です。目の表面をうるおした涙は、目頭のほうへ集まります。鼻筋のある犬では、目頭のすぐ外側に、鼻の脇へ向かう浅い谷があります。あふれた涙はその谷に入り、重力にしたがって下へ落ちます。谷は幅が狭いので、通った跡も細く残ります。鼻筋の高い犬の涙やけが線に見えるのは、涙が通る道が、そもそも線の形をしているからです。

狆の顔には、この谷がほとんどありません。目のすぐ下から頬にかけて、面がなだらかに続いています。あふれた涙は、下へ導いてくれる溝を持たないまま、毛の表面に置かれることになります。置かれた水は、いちばん動きやすい方向へ進みます。下だけではありません。左右にも、斜めにも進みます。これが、線ではなく面になる背景です。

ここに絹のような被毛が重なります。狆の毛は細くてまっすぐで、寝かせるように並びます。細い毛が密に並んだ面は、毛と毛のすきまが細かい通り道になり、水はそこを伝って移動します。1滴が落ちきらずに、毛のあいだを横へ運ばれていく。拭いた場所の外側が新しく濡れているのは、朝には目のふちにあった水が、日中のあいだに毛のあいだを移動した結果です。

鼻筋のある顔と、狆のように平らな顔で、涙のふるまいが変わります
鼻筋のある顔狆のように平らな顔
涙の行き先目頭の外側の浅い谷へ入る導く溝がなく、面に置かれる
進む向き重力にしたがって下へ下・横・斜めへ広がる
濡れる形幅の狭い線輪郭のぼやけた面
濡れる場所目の下、鼻の脇目の下から頬の上まで
拭く範囲線をなぞれば足りる面を区切って押さえる
乾くまで面積が小さく、早い面積が広いぶん、時間がかかる
変色の出方線の中で濃くなる面の外周から内側へ濃くなる

狆の大きく丸い目が、やや前に位置していることも重なります。目の表面から目のふちまでの距離が短いので、ためておける量が少なく、少しの涙でも面のほうへ出ます。一度にたくさんあふれるという話ではありません。少量が一日じゅう、途切れずに面へ出続ける、という形です。まとめて拭く1回より、面が濡れている時間の合計のほうが、この犬種では大きな意味を持ちます。

顔が平らなことは、日々の場面にもつながります。水を飲むとき、狆は顔の前面ごと水面に近づきます。食器の縁が頬にふれ、口のまわりから頬の下側にかけてが濡れる。目から出た涙とは別の水分が、同じ面の下側から加わります。目のまわりだけを見ていると、この経路は見落とされます。水皿の深さや縁の形を一度見直すだけで、面の下半分の湿り方が変わることがあります。

線で拭くのをやめる|狆の涙やけに手を入れる考え方

ここからが毎日のケアの話です。考え方はひとつだけ、「なぞる」から「押さえる」へ切り替えることです。線を拭くときは、布を当てて動かします。面を拭くときは、布を当てて止めます。狆の顔では、この持ち替えがそのまま結果の差になります。動かすほど、濡れた面は外へ広がるからです。

  1. 拭く前に、指の腹で今日の面の外周を確かめる

    目の下に指を置いて、外へ向かってゆっくり滑らせます。手ざわりが湿りから乾きに変わったところが、今日の外周です。目で見て色のついているところではありません。左右で外周の位置が違うことも多いので、片側ずつ確かめてください。ここを決めてから布を持つと、拭く範囲が毎日変わることに納得がいきます。

  2. 乾いている外側から、濡れている内側へ向かって当てる

    外周のすぐ外に布を置き、そこから目のほうへ向けて進みます。濡れた面の内側から外へ向かって動かすと、水を乾いた毛のほうへ運んでしまいます。向きが逆になるだけで、翌日濡れる面がひとまわり大きくなります。狆の涙やけでいちばん結果が変わるのは、力でも回数でもなく、この向きです。

  3. こすらずに、3秒だけ押さえて吸わせる

    絹のような細い毛は、こすると寄って束になります。束になった場所は、次に水が集まる場所になります。当てて、軽く押さえて、3秒待ってから離す。これを場所を少しずつ変えながら、面の上を数回くり返します。一度で全部を乾かそうとせず、面の外周側から順に、水を布へ移していくつもりで進めてください。

  4. 目のふちの数ミリには、布を入れない

    涙やけの拭き取りで、目そのものに布や指が入るのは避けたいところです。目のふちから2〜3ミリ外側までを、人が手を入れる範囲と決めてください。そこから内側は、拭いて取るところではありません。取れないものが目のふちに残っているときは、無理に触らず、その状態のまま動物病院にご相談ください。

  5. 終わったら、毛の流れを一度そろえて離れる

    押さえたあとの毛は、少し寝癖のように乱れています。乱れたまま乾くと、毛先が同じ方向へ寄って、次の水がそこへ集まります。目のまわりから頬へ、毛の流れに沿って一度だけ整える。これで面の中に水の通り道ができにくくなります。全部で1分かかりません。

Caution顔まわりのケアで、目に入れないための線引き

スプレー状のものを、狆の顔へ直接吹きかけないでください。顔が平らなぶん、目までの距離が近く、霧が直接目に届きます。顔まわりで何かを使うときは、いったん布に含ませてから、目のふちを避けて頬の面だけに当ててください。これは中身が何であるかとは関係なく、この犬種の顔では先に引いておく線です。目のふちから2〜3ミリより内側は、拭くのも、何かを当てるのも、人の手が入る場所ではありません。

目の下から頬にかけての面は、その子が自分では手当てできない場所です。犬は前足で顔をこすることはできますが、こすれば毛が寄って、次に水が集まる筋ができるだけです。舌も、ここまでは回りません。ここは人が代わって乾かす場所だと考えてください。そのうえで置くものとして、mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。舐めても問題のない基準でつくられているので、顔まわりのように、あとから口が届く場所にも置けます。狆は水を飲むときに顔の前面ごと食器へ近づく犬種なので、頬に置いたものは、そのまま口のほうへ回ります。使うときは容器から顔へ向けず、布に含ませてから、外周のすぐ外に当てて内側へ。目のふちの数ミリには入れません。拭いたあとの毛の流れをそろえる工程まで、同じ布で続けられます。

回数についても書いておきます。狆の面は、少量の涙が一日じゅう出続けることで濡れます。だから、朝に1回まとめて長く拭くより、朝と夜に1分ずつ、面の外周だけを押さえるほうが、濡れている時間の合計は短くなります。長い1回ではなく、短い2回。これが、面で濡れる顔での毎日のケアの組み方です。

記録の取り方も、線のときとは変わります。色の濃さを写真で追いかけると、変化が出るまでに何週間もかかります。そのかわり、指で確かめた外周が、目のふちから何センチのところにあるかを、週に1回だけ書き留めてください。1.5センチが1センチになれば、濡れている面は目に見えて小さくなっています。毛の色より先に動くのは、いつもこちらです。

毛の色より、濡れている面の広さ|狆の涙やけで見ておきたい変化

毛の色は、いちど変色すると、その毛が伸びて切られるまで元に戻りません。だから色を目標にすると、手ごたえがないまま何週間も過ぎます。狆の涙やけで日々見るのは、色ではなく面です。面が小さくなっていれば、新しく伸びてくる毛が濡れている時間は減っています。色は、そのあとから追いついてきます。

ここまでは、顔の作りと水の広がり方で説明のつく涙やけの話でした。拭き方の向きを変えて2週間ほど続けても、面がむしろ広がっていくときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、毎日のケアの話として片づけないほうが安全です。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

涙の量が数日で急に増えた、片側だけが濡れ続けている、目を細める・まぶしそうにする、目やにの色や粘りが変わった、目のまわりの地肌が赤い、においがある、前足でこすり続けている。いずれかに当てはまるときは、拭き取りの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。狆は目が大きく前にあるぶん、目のまわりの小さな変化が見つけやすい犬種でもあります。気づけたら、早いほうを選んでください。

相談へ行くときは、指で確かめた外周の位置・いつから広がったか・その日の拭き取りの回数の3つを書いていってください。この3つがあると、顔の作りで説明のつく範囲なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に念入りに拭いてしまうと、もとの状態が分からなくなります。気になっていても、そのままの顔で連れて行くほうが伝わります。

狆と暮らすうえで、涙が目のふちからあふれること自体はなくなりません。短い鼻と、平らな面と、前についた大きな目。この3つは、この犬種がそういう顔として作られてきた結果です。動かせるのは涙の量ではなく、あふれたあとに面が濡れている時間のほうです。今日の外周を指で決めて、外側から内側へ、押さえて吸わせる。線を追いかけるのをやめた日から、毎日のケアは1分で終わるようになります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。