C05犬種・猫種別ケア
日本猫の短毛|抜け毛を毎日のケアで防ぐ
日本猫の背中にブラシを当てて、首から腰まで1往復。手のひらに乗せると、指の腹に薄く広がるくらいの量でした。前に暮らしていた子は、同じ1往復で、抜け毛が手のひらいっぱいになりました。どちらも日本猫で、どちらも短毛です。量が3倍近く違っても、どちらかが異常だったわけではありません。日本猫には、この猫種ならこのくらい、という目安がそもそも存在しないからです。この記事は、手順の記事ではありません。その子の毛は、その子で測るしかない。その前提から、何をどう測って、毎日のケアで何が動かせるのかを書きます。
同じ1往復で、手のひらに残る量が違う|日本猫の抜け毛に幅がある理由
日本猫という呼び方は、ひとつの品種を指す言葉ではありません。日本で長く人のそばで暮らしてきた猫たちを、まとめてそう呼んでいるだけです。キジトラ、白黒、三毛、茶トラ。見た目の呼び分けはありますが、それは毛色と模様の話であって、毛の作りの話ではありません。ここが、ほかの猫種と決定的に違うところです。
血統として管理されてきた猫種では、何世代にもわたって毛質をそろえる作業が行われてきました。だから「この猫種は下毛が厚い」「この猫種は毛が伸び続ける」と書けます。日本猫では、その作業が行われていません。毛質も、密度も、下毛があるかどうかも、1頭ずつ違います。同じ地域で生まれた兄弟でも、触ると手ざわりが違うことがあります。
実際に手で触ると、幅の大きさが分かります。上毛が硬く、下に綿のような毛がしっかり詰まっている子。上毛がやわらかく、指を入れても下毛らしいものにほとんど当たらない子。同じ短毛でも、根元まで指を沈めたときの押し返しがまるで違います。抜け毛の量が3倍違っても、どちらもその子にとってはふつうです。
- 下毛の量に幅がある:抜け毛の総量は、ここでほとんど決まります
- 上毛の硬さに幅がある:硬い子ほど、抜けた毛が体に残りやすくなります
- 毛の長さにも幅がある:短毛のなかでも、数ミリの差があります
- 毛色と毛質は結びつきません:キジトラだから、白黒だから、という目安は作れません
- 暮らし方の幅も大きい:室内だけの子と、外の光を長く浴びる子で、毛の入れ替わり方が変わります
この幅は、飼い主にとって困ることでもあります。ほかの猫種の記事なら「この作りだから、この場所にこう出る」と書けます。日本猫の抜け毛については、そこから書き出すことができません。あなたの家の子の毛について、あらかじめ言えることが何もない。これは書き手の側の限界ではなく、この猫たちの成り立ちから来ています。
品種の表がない|日本猫の抜け毛を、その子で測るという考え方
前提がないなら、どこから始めるか。答えはひとつしかありません。その子のふだんを、自分で測って基準にすることです。ほかの猫と比べるのをやめて、今日のその子と、先週のその子を比べる。日本猫の抜け毛について確かなことを言えるのは、その子と暮らしている人だけです。
この考え方に切り替えると、判断の材料が変わります。「多い」「少ない」という言葉は、ほかの誰かとの比較でしか意味を持ちません。かわりに使うのは、「先週と同じか、変わったか」です。多いか少ないかは分からなくても、変わったかどうかは分かります。そして、家庭で気づきたいのは、たいてい後者のほうです。
| 血統が管理されてきた猫種 | 日本猫 | |
|---|---|---|
| 毛の作り | おおよそ共通しています | 1頭ずつ違います |
| 抜け毛の目安 | その猫種の作りから見当がつきます | 見当がつきません |
| 比べる相手 | 同じ猫種のふつう | 先週の、その子自身 |
| 判断の材料 | 作りから予想して、確かめる | 測って記録し、そこからの差を見る |
| 変化に気づく人 | 誰でも、ある程度は | その子と暮らしている人だけ |
ここでひとつ、気をつけたいことがあります。幅があるという話は、何が起きても大丈夫という話ではありません。むしろ逆です。目安がないぶん、外から見ただけでは誰も判断できない。だから、その子の基準を持っている人の記録が、いちばん確かな材料になります。動物病院で「いつもと比べてどうですか」と聞かれたときに答えられるのは、測っていた人だけです。
日本猫と暮らしていて、抜け毛が気になり始めたとき。まずやることは、量を減らそうとすることではありません。いまの量を、記録できる形にすることです。減らす話は、そのあとに来ます。基準がないまま減らそうとすると、減ったのかどうかも分からないまま、やることだけが増えていきます。
1週間、同じ場所を同じ回数だけ|日本猫の抜け毛の変化の測り方
測り方は、できるだけ簡単なほうが続きます。難しいのは道具ではなく、条件をそろえることのほうです。抜け毛の量は、ブラシの種類、当てる場所、往復の回数、時間帯で簡単に変わります。条件が動くと、変化なのか、やり方が違っただけなのかが分からなくなります。
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ブラシと場所を、1つずつに決める
使う道具を1本に決めます。当てる場所も1か所に決めます。背中の、首の付け根から腰までの1本の線が分かりやすい場所です。脇腹やお腹は、毎回同じ場所を当てるのが難しいので避けます。短毛の子なら、先が丸くて歯の間隔が狭くないものを選んでください。地肌に立てて使う作りのものは、この測定には向きません。
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往復の回数を決めて、毎回その数で終える
5往復と決めたら、毎回5往復です。取れ方が気になっても増やしません。測っているのは抜け毛の総量ではなく、決まった動作で出てくる量です。回数が動くと、比べられなくなります。猫が途中で動いてしまった日は、その日は記録しないと決めておくほうが、あとで迷いません。
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時間帯を、生活のなかの場面で固定する
何時、で決めると忘れます。朝ごはんのあと、夜に寝る前、と場面で決めてください。猫が落ち着いている時間帯を選ぶこと。遊んだ直後や、来客のあとは、毛の立ち方が変わります。同じ場面に固定すると、体温や毛の状態もそろいます。
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取れた毛を手のひらに乗せて、写真を1枚撮る
はかりは要りません。手のひらという同じ広さの上に乗せれば、比べられます。1週間ぶんの写真が並ぶと、その子のふだんの量が見えてきます。数字にするより、並べた写真のほうが変化に気づけます。撮る場所と明るさも、できれば同じにしてください。
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1週間そろったら、それをその子の基準にする
7日ぶんのうち、いちばん多い日といちばん少ない日を外して、残りを見ます。その幅が、その子のふだんです。日本猫の抜け毛について、これがいちばん確かな基準になります。ここから先は、毎日測る必要はありません。週に2回ほど同じことをして、写真を足していけば足ります。
1週間続けると、量そのもの以外にも分かることがあります。取れた毛の色が、上毛だけなのか、根元の細い毛が混じっているのか。細い毛が急に増えた日があれば、それは量の変化より先に出るサインです。毛先の側だけが取れているうちは表面の話ですが、根元の毛が混じり始めたら、下毛が動いています。写真を並べていると、この違いは目で分かります。
季節についても、日本猫では決めつけができません。毛の入れ替わりは日照時間で動きますが、室内で長く過ごす子は、光の変化が小さいぶん、年間をとおしてゆるく抜け続けることがあります。「春だから多い」も、その子には当てはまらないかもしれません。だから記録が要ります。2年ぶんたまれば、その子にとっての春がどうなのかが分かります。
毎日のケアで防ぐ、というときに動かせる条件|その子と暮らした経験が基準になる
抜け毛そのものの量は、毛の入れ替わりで決まります。ここは家庭で動かせません。毎日のケアで防ぐ、というときに実際に動かせるのは、抜けた毛が体の上に残っている時間のほうです。抜けた毛が体に残ると、まだ生えている毛にからんで、部屋に散らかる量も増えます。防ぐという言葉の中身を、この時間に置き換えると、やることがはっきりします。
短毛の子でも、抜けた毛はすぐには落ちません。上毛が硬い子ほど、抜けた毛が根元の側で立ったまま留まります。日本猫の抜け毛で家庭ができるのは、留まっているぶんを外へ運び出すところまでです。猫は自分で毛づくろいをしますが、そのとき舌が運んだ毛は口に入ります。人が代われるのは、口に入る前に外へ出すぶんです。
| 動かせるか | どうするか | |
|---|---|---|
| 毛が入れ替わる量そのもの | 動かせません | 測って、その子のふだんを知る |
| 抜けた毛が体に残る時間 | 動かせます | 決まった場面で、決まった回数だけ運び出す |
| 部屋の乾き具合 | 動かせます | 冬は静電気で毛が寄るので、湿度を落としすぎない |
| 寝床の素材 | 動かせます | 毛の付きやすい起毛より、洗える平らな布に |
| 触る時間の長さ | 動かせます | 長くするより、毎日同じ場面に置く |
| その子の毛質 | 動かせません | 比べる相手をほかの猫にしない |
毎日のブラッシングは、長くやるほど良いというものではありません。日本猫の短毛では、1か所あたり数往復で、その日に浮いていた毛はだいたい出てきます。そこから先を続けると、まだ抜けていない毛を引くことになります。測定のときに決めた回数が、そのまま毎日の回数として使えます。測ることと、日々のケアが同じ動作でつながります。
冬は、少し条件が変わります。空気が乾くと静電気が出て、抜けた毛が体にはりつきます。毛先の側で毛どうしが寄って、ブラシを当てても外へ出てこないことがあります。部屋を乾かしすぎないこと、そして道具を当てる前に手のひらで一度なでて毛を寝かせること。この2つで、冬の取れ方はだいぶ変わります。うるおいのある状態のほうが、毛は素直に外へ出ます。
毎日きれいにしておきたい、という側から道具を並べると、ここに入るのがグルーミングスプレーです。布に含ませて、背中から腰にかけて毛の流れに沿ってなでるように拭いてください。静電気で寄った毛をほどいて、体に留まっているぶんを外へ運び出すための一本です。グルーミングスプレーは舐めても問題のない基準でつくられているので、拭いたあとに自分で毛づくろいをする猫の背中にも、量を気にせず使えます。毛が外へ出てきにくくなる冬ほど、決まった場面にこの一手を入れやすくなります。
日本猫については、本にも、この記事にも、その子の答えは書いてありません。手が覚えた手ざわりと、並べた写真だけが、その子の基準になります。1年暮らせば春と秋を一度ずつ通ります。2年たてば、去年の同じ時期と比べられるようになります。経験が積み上がるほど、判断は速く、確かになります。品種の情報が使えないぶん、その積み上げの価値がいちばん大きいのが日本猫です。
その子のふだんから外れた抜け毛に、気づいたとき
基準を持っておく理由は、変化に気づくためです。日本猫の抜け毛で家庭が判断できるのは、多いか少ないかではなく、その子のふだんから外れたかどうかだけです。次のような変わり方に気づいたときは、ケアの回数を増やす前に、記録を持って相談してください。
- いつもの回数で、取れる量が急に増えた:季節の区切りと合わない増え方かどうかを見てください
- 根元の細い毛が、急に多く混じるようになった:量より先に出ることがあります
- 一か所だけ、毛が薄くなっている:全体の抜け毛とは別の話です
- 地肌が見えている、赤い、フケが出る:抜け毛ではなく皮膚のほうを見てください
- 同じ場所をなめ続けている、かいている:抜け毛が結果として出ていることがあります
- 毛づくろいの回数そのものが減った:抜け毛が体に残る時間だけが延びます
地肌が見えるほど毛が薄くなっている、赤みやじくじくがある、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、ブラッシングの回数を足すより先に、並べてある写真を持って動物病院へ行ってください。日本猫には毛質の目安がないので、外から見た印象だけでは判断できません。あと2〜3日ぶん記録を足して確かめるより、1週間ぶんの写真をそのまま持っていくほうが早く済みます。
相談に行くときは、並べておいた写真と、いつから変わったか、使っている道具と回数を持って行ってください。この3つがあると、その子のふだんが伝わります。日本猫では、この記録の代わりになるものがありません。「毛の多い猫種だから」という説明が使えないぶん、飼い主が持っている記録の値打ちが、そのまま大きくなります。
日本猫と暮らすということは、あらかじめ用意された答えがない状態で、その子の毛と付き合うということです。最初はよりどころがなくて心細いかもしれません。けれど、1週間測って、写真を並べて、手ざわりを覚えれば、その子だけの基準が手元にできます。それは、どの猫種の表よりも、その子について正確です。日本猫の抜け毛について確かなことを言えるのは、最後まで、その子と暮らしている人だけです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
