C05犬種・猫種別ケア

サイベリアンと暮らすなら知っておきたい、毛玉の話

公開日 2023年1月17日|文=mofuwa編集部

明るい窓辺で、長い毛の大きな猫が落ち着いて座っている
表面は整い、地肌もきれいなのに、そのあいだの層だけが固い。三層の被毛では、これが起きます。

サイベリアンの背中を手のひらでなでると、指は最後まで滑ります。毛を左右に開いて地肌を見ても、赤みもフケもありません。それなのに、開いた毛を指でつまんで途中の高さを押すと、そこだけ紙を折りたたんだような固さが返ってきます。毛玉ができているのは、表面でも地肌でもなく、そのあいだです。この猫が持っているのは、上毛・中間毛・下毛という三つの層でできた被毛です。層が二つの猫より、通り抜けなければならない場所がひとつ多い。この記事では、サイベリアンの被毛を「表面」と「真ん中の層」の2か所に分けて比較し、どちらに手を入れるかを決めるところまでを書きます。

上毛・中間毛・下毛|サイベリアンの毛玉が真ん中の層でできる条件

はじめに、この記事で書く毛玉が何を指すかを決めておきます。ここでいう毛玉は、毛どうしが絡んで固まったもののことです。飲み込んだ毛が体の中でかたまりになるほうの話ではありません。サイベリアンの被毛を触って「固い」と感じる場所の話をします。

サイベリアンはロシアの寒い土地で長く暮らしてきた猫です。冬の外気に耐えるために、被毛が三つの層でできています。いちばん外側にあるのが上毛で、長く、水をはじく作りです。その内側にあるのが中間毛で、上毛より細く、下毛より長い。いちばん下にあるのが下毛で、綿のようにやわらかく、密に生えています。層が三つあることが、この猫の被毛のいちばんの特徴です。

被毛が二層の猫では、抜けた下毛は上毛のあいだを一度通れば外に出ます。三層のサイベリアンでは、そこにもう一段あります。抜けた下毛は、まず中間毛の層を抜けてから、上毛のあいだを通ることになります。通り抜ける場所がひとつ多いというだけで、途中で止まる確率は上がります。止まった毛は、中間毛にからんでその場に残ります。

中間毛は、絡まりを受け止めるのにちょうどいい作りをしています。上毛ほど硬くないので、抜けた毛を弾いて落とすことができません。下毛ほど短くないので、絡んだ毛を根元まで落としきることもできません。抜けた毛が、いちばん引っかかりやすい長さと硬さのところに層がある。これがサイベリアンで毛玉が真ん中にできる理由です。

猫は自分で毛づくろいをします。サイベリアンもよく舐めます。ただ、舌が届くのは上毛と、その少し下までです。真ん中の層で起きていることに、その子の舌は届きません。だからここは、毛づくろいが届かない場所を人が代わる、という考え方になります。全身を人が引き受けるのではなく、舌が入らない一段だけを代わります。

Note毛の量が多いから、という話ではありません

サイベリアンの被毛は量があります。ただ、毛玉のできる場所を決めているのは量ではなく、層が三つあるという構造のほうです。量の話にすると、答えは「もっと長い時間とかす」になってしまいます。構造の話にすると、答えは「どの層に手を入れるか」に変わります。かけた時間より、手が止まっている高さのほうを見てください。

表面と、真ん中の層|サイベリアンの毛玉を2か所で比較する

被毛を高さで2か所に分けて並べます。ひとつは表面、つまり上毛が流れている面。もうひとつは真ん中、つまり中間毛が立っている層です。サイベリアンの毛玉を考えるとき、この2か所は起きていることも、確かめ方も、手の入れ方も違います。同じ被毛の話として混ぜると、どちらにも届かなくなります。

表面は、目で見て判断できます。毛の流れがそろっているか、毛先が寄って束になっていないか。手のひらをなでれば、引っかかりも分かります。ところが真ん中の層は、目でも手のひらでも分かりません。上毛が長く覆っているので、下で何が起きていても外からは同じに見えるからです。ここを確かめるには、毛を開いて、指を層の高さで止める必要があります。

サイベリアンの被毛を、高さで2か所に分けて比較する
表面(上毛の面)真ん中の層(中間毛)
起きていること毛先が寄って、流れが乱れる抜けた毛が止まり、面のまま固まる
確かめ方手のひらでなでる。目でも分かる毛を開いて、指を途中の高さで止める
猫の舌が届くか届きます届きません
進み方1回とかせば、その場で戻ります放つほど締まり、戻るのに日数がかかります
手を入れる向き毛の流れに沿って、長く毛束を持ち上げて、横から短く
時期で動くか静電気の出る冬に乱れやすくなります毛が入れ替わる春と秋に、混みます
放っておくと見た目が変わります見た目は変わらないまま、固さだけ増します
表面と、真ん中の層 サイベリアンの被毛は三層で、毛玉は上毛の面でも地肌の側でもなく、中間毛の層でできます。表面が整っていることは、真ん中の層が通っている証明になりません。 同じ被毛を、高さで2か所に分ける 表面(上毛の面) 毛先が寄って、流れが乱れる 目と手のひらで分かる 猫の舌が届く場所 とかせば、その場で戻る 真ん中の層(中間毛) 抜けた毛が止まり、面になる 毛を開かないと分からない 猫の舌が届かない場所 放つほど締まり、日数がかかる 表面が整っていても、真ん中の層は手つかずのまま残ります
見えている場所と、固まっている場所が違います。確かめ方から分かれます。

この比較で、サイベリアンの毛玉がなぜ気づかれにくいのかが分かります。表面は整い、地肌もきれいで、猫も自分でよく舐めている。飼い主が確かめられる場所は、どこも問題がありません。それでも、そのあいだの一段だけが固くなっていく。気づくきっかけが、抱き上げたときの手ざわりや、トリミングで指摘されたとき、ということが起きます。

もうひとつ、放っておいたときの進み方が違います。表面の乱れは、次にとかせばその日のうちに戻ります。真ん中の層の固まりは、日がたつほど締まっていきます。抜けた毛が増えて密度が上がり、そこへ皮脂が回って毛どうしをまとめるからです。同じ「毛玉」でも、待ってよい時間がまったく違います。

上からか、横からか|サイベリアンの毛玉にどっちの向きから手を入れるか

真ん中の層に届かせるには、道具の種類より、入れる向きのほうが効きます。上から下ろす動きでは、道具は上毛の面を滑るか、一気に地肌まで抜けるかのどちらかになります。どちらも、途中の層を素通りします。サイベリアンで必要なのは、その途中で止まる入れ方です。次の順で試してください。

  1. まず上毛の面を、流れに沿って通す

    いきなり中へ入れません。表面が乱れたままだと、毛を開こうとしても束ごと動いてしまいます。先が丸く、歯の間隔に余裕のある道具で、毛先の側から流れに沿って通します。手のひらが最後まで滑るようになったら、ここで一度終わりです。今日はここまでで構いません。

  2. 毛束を持ち上げて、下から層を出す

    上から押し分けるのではなく、毛を一束つまんで持ち上げます。すると、上毛の下から中間毛の層が横向きに出てきます。出したのは一段だけで、地肌まで開いてはいけません。サイベリアンは毛が長いので、一度に開く量を少なくするほど、手元が見えます。

  3. 出した層に、横から短く道具を入れる

    持ち上げた毛束の下側に、道具を横向きに当てて、外へ向かって短く引きます。長く引かず、5センチほどで一度手を離す。止まった毛が外へ出てくれば、それが真ん中の層に溜まっていたぶんです。同じ場所で3回ほどくり返したら、次の束へ移ります。

  4. 束を持ち上げる位置を、少しずつずらす

    一か所を深追いしません。持ち上げる位置を数センチずらしながら、その一帯を横に進みます。肩、背中の中ほど、腰、後ろ脚のつけ根、脇の下。この5か所を1日で回そうとしないでください。今日は肩だけ、明日は腰だけで足ります。体が大きいぶん、区切ったほうが結果として早く進みます。

確かめた手ざわりと、その日にどっちへ手を入れるか
手ざわりどっちの話かその日にやること
手のひらが途中で引っかかる表面流れに沿って通す。中へは入らない
表面は滑るが、束の途中が固い真ん中の層束を持ち上げて、横から短く引く
束を開いても、途中に何もないどちらも通っているその場所は今日はやらなくて構いません
押すと弾力があり、指が入らない真ん中の層。日数がたっていますその日にほどききらず、外側から少しずつ
Point地肌まで一気に開かないでください

毛を大きく左右に開いて地肌を出すと、確かに中は見えます。ただ、そのとき真ん中の層は左右に押し分けられて、道具の通り道から外れています。地肌がきれいなことを確認して安心する、というのがいちばん起きやすい取り違えです。サイベリアンでは、開くのは一段だけ。束を持ち上げて、その下に出てきたところに手を入れてください。

毛が入れ替わる時期に、サイベリアンの真ん中の層で起きること

春と秋、下毛がまとまって抜ける時期があります。このとき、サイベリアンの真ん中の層で起きることは、ほかの季節と量が違うだけではありません。抜けた下毛が一度に増えるので、中間毛の層が混みます。混んだところに新しく抜けた毛が加わるので、止まる毛の割合そのものが上がります。同じ手入れを続けていても、この時期だけ追いつかなくなるのはそのためです。

時期による違いは、もうひとつあります。冬は空気が乾いて静電気が出やすく、毛どうしが寄りやすい。静電気は表面の乱れとして出ますが、寄った毛が真ん中の層に落ち込むと、そこで止まります。表面の話と真ん中の話は、季節をまたいでつながっています。冬に乱れた表面を放っておくと、春の混雑がひどくなります。

時期ごとに、どちらの層に手が要るか
時期表面で起きること真ん中の層で起きること
冬(乾いた時期)静電気で毛が寄り、流れが乱れます寄った毛が落ち込んで止まります
春(毛が入れ替わる)抜けた毛が表面にも浮きます下毛が一度に増え、層が混みます
夏落ち着いています湿気で毛が寄り、面になりやすくなります
秋(毛が入れ替わる)上毛が伸び、面が厚くなります伸びた上毛の下で、混雑が見えにくくなります

この時期にやることは、道具を増やすことではありません。束を持ち上げる回数を、1か所につき3回から5回に増やす。それだけです。持ち上げる位置をずらす幅も、いつもより狭くします。時間を長くするのではなく、同じ時間のなかで区切りを細かくする、という調整です。時期が終わったら、回数も幅ももとに戻します。

固まりに皮脂が関わっているのも確かです。ただ、洗う回数のほうを足すと、皮脂と一緒に地肌のうるおいまで減ります。サイベリアンは被毛が厚く、面が広いぶん、乾かしきるまでの時間も長くなります。乾ききらないまま毛が寝ると、真ん中の層はかえって面になりやすくなります。皮脂が気になるときにまず動かすのは、洗う回数ではなく、束を持ち上げる回数のほうです。

サイベリアンは上毛が長く、面が広いぶん、表面には毎日汚れが乗ります。表面をその日のうちに整えておきたいときに使えるのが、mofuwa のグルーミングスプレーです。布に含ませて、上毛の長い背中や後ろ脚のつけ根を、毛の流れに沿ってなでるように拭く形で使えます。グルーミングスプレーでありブラッシングスプレーでもあるので、そのまま束を持ち上げれば、表面の滑りがそろった状態で真ん中の層へ指を入れられます。冬に静電気で毛が寄る時期は、ここの差がはっきり出ます。猫は自分で毛づくろいをするので、舐めても問題のない基準でつくられていることが、量を気にせず使える理由になります。固まっている場所に直接かけて、そのまま置かないでください。

Caution固まった面を、力で引かないでください

指が入らないほど締まった面に道具を差し込んで引くと、止まっている毛ではなく、生えている毛と皮膚を一緒に引くことになります。面は1回でほどききらなくて構いません。外側から少しずつ量を減らして、残りは翌日に回してください。嫌がる、体をひねる、声を出すというときは、その日はそこで手を止めます。締まった面をはさみで切ろうとしないでください。皮膚が持ち上がっていて、境目が見えません。

三層の作りでは説明がつかない、毛玉の戻り方

ここまでは、層が三つあることで説明のつく毛玉の話でした。束を持ち上げる手入れを続けていても、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような戻り方は、被毛の作りの話として片づけないほうが安全です。

Caution束を持ち上げる前に、皮膚のほうを見てほしい戻り方

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、元気や食欲が落ちている。これらが出ているときは、束を持ち上げる回数を増やす前に、動物病院で皮膚のほうを見てもらってください。サイベリアンは上毛が長く、真ん中の層より下で起きていることが外から見えません。手ざわりで分かるのは固さまでで、皮膚の状態はそこには出てきません。

相談やトリミングの前には、固まっている場所、いつから触って分かったか、その日に持った道具の3つをメモしてください。この3つがあると、三層の作りで説明のつく毛玉なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。ほどききれなかった面は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。前の晩に頑張って手を入れると、もとの状態が分からなくなります。

サイベリアンと暮らすうえで、被毛が三層であることは変わりません。寒い土地で体温を保つための作りだからです。減らせるのは抜ける毛の量ではなく、抜けた毛が真ん中の層で止まっている時間のほうです。表面と真ん中を分けて確かめる。束を持ち上げて、横から短く引く。時期によって回数だけを変える。サイベリアンの毛玉で動かせるのは、そこです。

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よくある質問

サイベリアンの毛玉は、表面をとかしていれば防げますか?
表面をとかす手入れは、上毛の流れをそろえるところまでの仕事です。固まりができるのは中間毛の層なので、そこには届きません。表面が整っていることと、真ん中の層が通っていることは別です。毛束を持ち上げて、下から出てきた一段に横から手を入れてください。
毛を大きく開いて地肌を見ていますが、それでは足りませんか?
地肌の状態を見るという意味では役に立ちます。ただ、大きく開いたとき、中間毛の層は左右へ押し分けられていて、道具の通り道から外れています。地肌がきれいなことを確認して安心する、という取り違えが起きやすい場所です。開くのは一段だけにしてください。
毛が入れ替わる時期は、毎日とかしたほうがいいですか?
毎日でなくて構いません。増やすのは1日あたりの時間ではなく、1か所で束を持ち上げる回数です。ふだん3回のところを5回にして、持ち上げる位置をずらす幅を狭くします。体が大きいので、今日は肩だけ、明日は腰だけと区切るほうが続きます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。