C05犬種・猫種別ケア

セルカークレックスと暮らすなら知っておきたい、毛のもつれの話

公開日 2023年2月14日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の中で、ふわりとした毛の猫が明るい色の木の床に座っている
隣り合う毛が別々の向きを向いているので、そろえて並べ直す列がそもそもありません。

セルカークレックスの背中の毛を1本つまんで、根元から毛先まで指で送ってみると、途中で右へ、その先で左へと向きを変えます。すぐ隣の1本は、同じ場所から生えているのに、まったく違うところで曲がっています。もつれは、この向きのばらつきから始まります。この猫の毛には、そろった流れがありません。もつれを減らそうとするとき、たいていの家庭が最初にやるのは、ブラシを毛の流れに沿って通すことです。ところがセルカークレックスでは、その「流れ」が最初から存在しません。巻きは上毛にも下毛にもあって、規則的なウェーブではなく、1本ごとにばらばらの向きを持っています。この記事では、一方向にとかせる毛と、向きのない毛を並べて、手の動きと道具がどう変わるかを書きます。

1本ごとに巻きの向きが違う|セルカークレックスの毛に流れがない理由

巻毛の猫は何種類かいますが、セルカークレックスは巻き方が違います。上毛だけでなく下毛も、そしてひげまで巻いています。体のどこを見ても巻いている、というのがこの猫種の被毛です。しかもその巻きは、波のように一定の間隔で並ぶものではありません。1本ごとに、曲がる位置も向きもばらばらです。

毛に流れがある猫では、隣り合う毛が同じ向きに寝ています。同じ向きに寝ているから、平行に並び直せます。ブラシを上から下へ通すと、はみ出した1本が列に戻る。とかす、というのはこの「並べ直す」動きのことです。もつれは、列から外れた毛が隣に引っかかったところから始まります。

セルカークレックスでは、この前提が成り立ちません。隣り合う2本が別々の向きに曲がっているので、どうやっても平行になりません。並べ直す先の列が、そもそも無いからです。ブラシを一方向に強く通すと、巻きは一時的に伸びます。伸びた毛は、手を離した瞬間に元の巻きへ戻ります。戻るときに、隣の毛の巻きの内側へ入り込む。とかしたのにもつれた、という順番が起こるのはここです。

猫の舌のざらざらは、毛を一方向へなでながら抜けた毛をすくい取る作りです。向きのない毛では、その舌も一方向には働けません。なめても、巻きの外側をなでるだけで、内側に留まった抜け毛には届かないことがあります。セルカークレックスで人が代わるのは、その子の毛づくろいが構造として届かない、巻きの内側です。外側は自分でやっているので、放っておいて構いません。

Note巻きの出方は、その子の中でも一定ではありません

湿度の高い日と乾いた日で、巻きの締まり方が変わって見えることがあります。子猫のうちに一度巻きがゆるんで、育つにつれて戻ってくる子も多い。去年うまくいっていた手の入れ方が、今年そのまま合うとはかぎりません。回数や道具を先に決めてしまうより、その日の巻きの締まり具合を指で確かめてから決めるほうが、セルカークレックスでは合います。

一方向にとかせる毛と、向きのない毛|セルカークレックスのもつれの違い

2つの毛を、同じ項目で並べます。比べるのは毛の長さでも量でもなく、隣り合う毛が同じ向きを向いているかどうかです。ここが違うだけで、もつれの始まり方も、手の動きも、道具も変わります。

一方向にとかせる毛では、もつれは点から始まります。列から外れた1本が隣に引っかかり、そこへ抜けた毛が集まって、玉になる。だから、始まった点を探して、そこだけほどけば終わります。向きのない毛では、始まりが点ではありません。巻きどうしが面のまま噛み合うので、どこが始まりか分からないまま、面が厚くなっていきます。

隣の毛と同じ向きを向いているかどうかで、もつれの中身が変わります
一方向にとかせる毛セルカークレックスの向きのない毛
隣り合う毛同じ向きに寝ている1本ごとに違う向きに曲がる
とかすという動き列に並べ直す並べ直す列がない
もつれの始まり外れた1本という点から巻きどうしが噛み合う面から
ブラシを強く通すと毛先がそろう巻きが伸び、離すと噛み合う
手の動き根元から毛先へ通す面を小さく区切って分ける
道具の歯細かくても長く引ける粗い歯で短く。長く引かない

表の4行目が、セルカークレックスでいちばん取り違えやすいところです。ブラシを通した直後は、毛がまっすぐ伸びて、いかにも整ったように見えます。ところがそれは巻きを引き伸ばしただけで、手を離せば数秒で戻ります。戻り方は1本ずつ違うので、隣どうしが別の向きに戻って、内側で噛み合う。とかした直後がいちばんきれいで、翌朝がいちばんもつれている、ということが起こります。

一方向にとかせる毛と、向きのない毛 隣り合う毛が同じ向きに寝ている毛は、ブラシで列に並べ直せます。セルカークレックスのように1本ごとに巻きの向きが違う毛では、並べ直す列がなく、伸ばすと戻って噛み合います。 同じ「とかす」が、片方でだけ成り立ちます 一方向にとかせる毛 隣の毛と同じ向きに寝る もつれは点から始まる 根元から毛先へ通す 細かい歯でも長く引ける 向きのない毛 1本ごとに巻きが違う向き もつれは面から始まる 小さく区切って分ける 粗い歯で短く。長く引かない セルカークレックスは右側です。通す手より、分ける手のほうが先になります
もつれの中身を決めているのは毛の長さではなく、隣の毛と同じ向きを向いているかどうかです。

では、とかすのをやめればよいのかというと、そうではありません。抜けた毛は、巻きの内側に留まったままだからです。外へ出す手は要ります。変わるのは、出し方のほうです。列に並べ直して押し出すのではなく、面を小さく区切って、区切ったぶんだけ巻きをほどいて外へ運ぶ。セルカークレックスのもつれで手を入れるのは、この分ける動きです。

巻きが伸びているか、噛み合っているか|セルカークレックスのもつれの見分け方

手を入れる前に、いま目の前にあるのがどちらの状態かを確かめます。巻きが押されて伸びているだけの場所と、巻きどうしが噛み合っている場所は、見た目がよく似ています。どちらも毛がまとまって、面のように見えるからです。ただ、指を入れたときの返り方が違います。

  1. 面の上に手のひらを置いて、そのまま離す

    押して、離す。それだけです。離した瞬間に毛が起き上がって戻るなら、そこはまだ噛み合っていません。巻きが押されて伸びているだけです。押した形が残る面は、内側で組み合っています。ここが一次の見分け方になります。

  2. 毛の流れではなく、面と直角に指を1本沈める

    セルカークレックスには流れがないので、向きを探す必要はありません。どこからでもいいので、まっすぐ下へ入れてください。地肌まで届くなら、その面は今日は触らなくて構いません。途中で止まるなら、止まった深さが、噛み合っている厚みです。

  3. 止まった場所で、毛を2本つまんで左右へ開く

    引っぱるのではなく、開きます。2本が別々に離れるなら、まだ指でほどけます。一緒に動いて離れないなら、その面は巻きが組み合ったまま固まっています。固まった面は、家で無理にほどく相手ではありません。

  4. 開いた場所の地肌を、その一瞬で確かめる

    巻きの下は、外からは見えません。開いたときにだけ見えます。赤み、かさつき、湿り、においがないかを見てください。もつれをほどく作業の中で、地肌を見られる機会はここしかありません。

指で確かめた結果と、その面でやること
指で確かめたことその面でやること
押して離すと、毛が起き上がる触らなくて構いません
指が地肌まで届く毛先に浮いた抜け毛を外へ出すだけ
指が途中で止まる面を小さく区切って、分ける手を入れる
2本つまんでも離れない家ではほどかない。相談する相手です
開いた地肌が赤い、においがあるその面は分ける手の対象から外し、地肌のほうを先に見ます
Point1日で全身を見ようとしないほうが続きます

セルカークレックスは、どこから指を入れても構わない毛をしています。向きを探す手間がないぶん、今日は背中だけ、明日は脇と内股だけ、と場所で区切るほうが回ります。抱き上げたついでに、手のひらを1回置いて離す。それだけでも、噛み合っている面があるかどうかは分かります。見つけた日に分ける手を入れれば、それで足ります。

通す手と、分ける手|セルカークレックスで変わる道具の使い分け

見分けがついたら、手を分けます。セルカークレックスで使う手は2つです。毛先の抜け毛を外へ出す「通す手」と、噛み合った面をほどく「分ける手」。この2つは、道具も、動かす長さも、かける時間も違います。

通す手は、毛先だけの仕事です。歯の間隔が広く、先の丸い道具を、巻きの外側に軽く当てて、短く動かします。根元まで入れないでください。根元まで入れて長く引くと、巻きが伸びて、離したときに隣と噛み合います。目的は毛先に引っかかっている抜け毛を落とすことなので、外側をなでるくらいで足ります。1か所につき数往復です。

分ける手は、指の仕事です。噛み合った面を、両手の指で小さく区切って、区切ったぶんだけ左右へ開きます。道具は使いません。開いた中に抜けた毛がまとまっていれば、それを指でつまんで外へ出します。1か所につき、30秒で切り上げてください。ほどききらなくて構いません。面は、日をまたいで少しずつ小さくなります。

通す手と分ける手は、道具も動かす長さも違います
通す手分ける手
相手にするもの毛先に引っかかった抜け毛噛み合って固まりかけた面
使う道具歯の間隔が広く、先の丸いもの指。道具は使わない
入れる深さ巻きの外側だけ面の厚みのぶんだけ
動かし方短く、数往復小さく区切って、左右へ開く
1か所の時間10秒ほど30秒で切り上げる
やってはいけないこと根元まで入れて長く引く引っぱってほどこうとする

順番も決まっています。分ける手が先で、通す手が後です。噛み合ったままの面に道具を入れると、歯が面につかまって、そこから力がかかります。指で開いて、抜け毛を出して、面が薄くなってから、毛先だけを短く通す。ブラッシングという言葉から想像する順番とは逆になりますが、セルカークレックスではこちらのほうが早く終わります。

通す手を入れる前に、グルーミングスプレーを一度はさみます。布に含ませてから、毛先を上から軽くなでてください。乾いた部屋では細い毛先に静電気が起きて、巻きどうしが寄ります。先に湿りをそろえておくと寄る力が小さくなり、分ける手を入れる面の数が減ります。猫は入浴そのものが負担になる子が多く、毎日きれいにしておきたい気持ちと洗える回数は釣り合いません。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、指で分ける前の一手として毎日入れられます。清涼飲料水の規格基準をクリアしているため、毛づくろいでなめる猫でも量を気にせず使えます。噛み合って固まった面には、上から吹きかけて置くのではなく、指で開きながら少しずつ含ませてください。

長い巻きと短い巻き|季節で変わる道具の選び方と、家で触らない線

セルカークレックスには、毛の長い子と短い子がいます。巻きの向きがばらばらである点は同じですが、巻き1つあたりの長さが違うので、噛み合う深さが変わります。短い巻きの子は、噛み合っても浅いところで止まります。長い巻きの子は、根元の近くまで組み合います。同じ猫種でも、道具の選び方はここで分かれます。

巻きの長さで、道具の選び方が変わります
短い巻きの子長い巻きの子
噛み合う深さ毛先から中ほどまで根元の近くまで
先に持つもの指。道具は仕上げだけ指。面を区切る回数を増やす
通す手の道具先の丸い、歯の広いもの同じ。ただし当てる面を小さく
1日にさわる面2〜3か所1〜2か所。深いぶん時間がかかる
換毛期の出方毛先に抜け毛が浮く巻きの内側に抜け毛が留まる

換毛期には、抜けた毛が巻きの内側に留まります。流れのある被毛なら、抜けた毛は毛の列に沿って毛先へ運ばれますが、向きのない毛では運ばれる先がありません。その場に留まって、周りの巻きと組み合います。春と秋は、分ける手を入れる面の数を増やしてください。冬は逆に、乾いた部屋で静電気が増える時期です。うるおいの側から先に手を入れて、通す手の回数のほうは増やさないでください。

Caution巻きが組み合って固まった面は、家でほどかないでください

2本つまんでも離れない面を引っぱってほどこうとすると、抜けた毛ではなく、生えている毛と皮膚を一緒に引くことになります。巻毛は伸ばすと長さが出るので、思っているより皮膚が近くにあります。はさみを根元へ入れるのも避けてください。ほどけない面は、そのままの状態でトリミングや動物病院に相談してください。前の晩に触ってしまうと、どこから組み合っていたのかが分からなくなります。

開いた地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、食欲や元気が落ちている。これらが出ている面は分ける手の対象から外して、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。セルカークレックスは巻きの下が外から見えないぶん、変化に気づくのが遅れます。どの面が、いつから、押して離しても起き上がらなかったのかを控えておくと、その場で話が早くなります。

セルカークレックスと暮らすうえで、巻きの向きがそろうことはありません。上毛も下毛も巻いていて、1本ごとに向きが違うのは、この猫種の毛そのものだからです。変えられるのは毛の向きではなく、こちらの手の動きのほうです。とかして並べようとしない。面を小さく区切って、分けて、そのぶんだけ外へ運ぶ。通す手は毛先だけ、分ける手は指だけ。セルカークレックスのもつれで動かせるのは、そこです。

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よくある質問

セルカークレックスに、細かい歯のコームを使ってもいいですか?
毛先の仕上げに短く使うぶんには構いません。避けたいのは、根元まで入れて長く引くことです。巻きが伸びて、手を離した瞬間に元へ戻ります。戻るときに隣の毛の巻きと噛み合うので、通した直後よりも翌朝のほうがもつれている、ということが起こります。細かい歯は、当てる面を小さくして、短く動かしてください。
ブラッシングのあとに巻きが崩れて見えます。元に戻りますか?
多くの場合、時間がたつと巻きの形は戻ります。気にしたいのは見た目より、伸ばしたあとに噛み合った面が残っていないかのほうです。ブラシを入れたあと、面の上へ手のひらを置いて離してみてください。毛が起き上がって戻るなら問題ありません。押した形が残る面があれば、そこは指で分けておいてください。
湿らせてからとかしたほうが、もつれはほどけますか?
濡らすと巻きが締まって、面がかえって固くなることがあります。乾いた状態で、指で小さく区切って分けるほうが、セルカークレックスでは進みます。使うとしても、布に含ませて毛先を軽くなでる程度にとどめてください。びしょ濡れにしてから道具を入れると、乾いていく途中で巻きが組み合ったまま固まります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。