C09シーン別・暮らし

シニア犬と暮らす人がいっしょに寝るで困ること、その手当て

公開日 2023年3月4日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、低いベッドのそばの淡い色の毛布に、クリーム色の老犬が横になっている
上がれなくなった夜から、一緒に寝る場所を決めるのは、その子ではなく人の側になります。写真:3194556/Pixabay

夜中に、ベッドの横で前足を1回だけ床に置き直す音がして、そのまま上がってこない。老犬と暮らす家で、一緒に寝る習慣がいちばん最初に変わるのは、たいていこの瞬間です。飛び乗れないのではなく、助走の1歩目でやめている。ペットと一緒に寝るということは、それまでずっと、その子の側が毎晩決めていました。来る夜もあれば、来ない夜もある。上がれなくなると、その決定権が人の側に移ります。乗せるのか、乗せないのか、床に降りて隣で寝るのか。今まで考えなくてよかったことを、毎晩決めることになります。この記事は、老犬と一緒に寝る家で実際に口に出される6つの問いに、順番に答えていきます。最後に、その6つを夜の流れにつなぎ直します。答えの中には、やらなくていいことも1つ入れてあります。

老犬がベッドに上がらなくなったのは、なぜですか

上がる動きは、見た目より工程が多い動作です。後ろ足で床を蹴って、前足を高い面に掛けて、そこから体を引き上げて、着地したあとに姿勢を立て直す。4つの工程のどれか1つが遅くなるだけで、全体が止まります。老犬が上がらなくなったとき、4つのうち何が止まっているのかは、外からは同じに見えます。

止まる理由も1つではありません。足腰の力、関節の動く範囲、目の見え方、床の滑りやすさ、そして一度失敗した記憶。このうち床の滑りやすさと記憶は、家の側で動かせます。残りは動かせません。ペットと一緒に寝る話をするとき、まずこの線を引いておくと、あとの判断が楽になります。動かせるものと動かせないものを混ぜると、できないことに手をかけ続けることになります。

見ておきたいのは、いつやめているかです。助走の前でやめているのか、前足を掛けてからやめているのか、上がったあとに姿勢を崩しているのか。助走の前でやめる子は、床が滑る、あるいは踏み切る場所が決まらないことが理由になっていることがあります。前足を掛けてからやめる子は、そこから引き上げる部分が重くなっています。上がったあとに崩れる子は、着地の衝撃のほうが問題です。

Note老犬と一緒に寝ることの意味が、この日から変わります

それまでは、ペットと一緒に寝るかどうかを、その子が毎晩選んでいました。暑い夜は床、寒い夜はベッド。上がれなくなると、その選択が人の側に移ります。変わったのは能力ではなく、決めているのが誰かのほうです。この記事の6つの問いは、すべてこの1点から出てきます。

抱き上げてベッドに乗せても大丈夫ですか

結論から書くと、乗せていけないということはありません。ただ、乗せるかどうかを決める前に、1晩に何回その動作が発生するかを数えてください。1回だけなら持ち上げる話ですが、夜中に水を飲みに降りて、また乗りたがるなら1晩に4回になります。4回を毎晩というのは、人の側も続きません。一緒に寝ることを続けるための判断は、1回できるかどうかではなく、毎日の回数で決まります。

持ち上げ方そのものについては、この記事では細かく書きません。体の状態によって、支えていい場所と、支えないほうがいい場所が変わるからです。関節や背中に負担がかかる持ち方があるかどうかは、その子を見ている人にしか分かりません。動物病院やトリミングサロンで、実際にその子を持ち上げてもらいながら一度教わってください。文章で読んだ形を自己流でやるより、その場で見てもらうほうが確実です。

そのうえで、家の側で減らせることがあります。持ち上げる高さそのものを下げてしまう、という手です。ベッドの高さが変えられないなら、その子が上がる場所をベッドではなく、ベッドの横に置いた低い台にする。台の上に寝床を作れば、人の顔との距離はほとんど変わりません。老犬にとっては、上がる高さが半分になります。

1晩の回数で、選び方が変わります
1晩の回数現実的な選び方
寝るときの1回だけ持ち上げて乗せる。降りるときだけ手を貸す
2〜3回ベッドの横に低い台を置いて、上がる高さを下げる
4回以上床の側に寝床を作り、人が降りて隣で寝る夜を作る
日によって違う台と床の両方を用意し、その夜のその子に選ばせる

もう1つ、乗せたあとのことも決めておいてください。上がれない子は、自力では降りられないことが多いです。夜中に自分で降りようとして落ちるほうが、上がれないことより気にかかります。乗せると決めたなら、ベッドの横の床に厚みのあるものを敷いておく。それだけで、こちらが眠っているあいだの条件が1つ変わります。

床でペットと一緒に寝るとは、どこに何を置くことですか

床で一緒に寝ると決めた場合、置くものは3つです。寝床、滑らない面、そして水。この3つの位置関係だけで、夜のあいだの動きがほぼ決まります。老犬は、夜中に立ち上がって水を飲み、また戻るという動きを繰り返すことがあります。その経路の上に滑る床があると、そこで止まります。

  1. 寝床は、人の頭の側ではなく、体の横に置く

    頭の側に置くと、その子は人の顔を見るために首を上げ続けることになります。体の横なら、寝たまま人の位置が分かります。ペットと一緒に寝るという言葉が指しているのは、顔の近さではなく、同じ部屋で同じ時間に休んでいることのほうです。距離は1メートル以内なら十分に伝わります。

  2. 寝床から水皿までの経路に、滑らない面を1本だけ通す

    部屋じゅうにマットを敷く必要はありません。その子が実際に通っている1本だけに敷きます。どこを通っているかは、抜けた被毛が落ちている場所で分かります。朝、床を見て、毛が線状に残っているところがその経路です。

  3. 水皿は、経路の終点に置いて、位置を変えない

    老犬は、においと記憶で場所を覚えています。位置を動かすと、探して歩く距離が増えます。季節が変わっても、模様替えをしても、水皿だけは動かさない側に入れてください。毎日同じ場所にあることのほうが、器の種類より効きます。

  4. 人が降りる側の床にも、同じ面を続けておく

    人が夜中に降りて様子を見ることになります。暗い中で足を置く場所が決まっていると、こちらが物音を立てずに済みます。音を立てないことは、その子を起こさないことに直結します。老犬と一緒に寝る夜は、人の動線も設計の一部です。

床で寝ることを、格下げのように感じる方がいます。そう考える必要はありません。上がれなくなった子にとって、床は「上がらなくてよい場所」です。ベッドの上で夜通し緊張しているより、床で伸びて寝ているほうが、翌朝の起き上がり方が違うことがあります。一緒に寝るという習慣を続けるために、寝る面のほうを下ろした、というだけの話です。

夜のあいだ、どのくらいの間隔で様子を見ればいいですか

時計で決めないでください。1時間おき、2時間おきと決めると、こちらが眠れなくなります。眠れない日が続くと、日中のケアの手数が落ちます。夜の見回りを増やして日中が減るなら、合計では減っています。老犬と一緒に寝る時期は、数か月から数年続きます。続く形にしないと、途中で止まります。

代わりに、音で起きる形にしておきます。床で寝ている子が立ち上がるときは、爪が床に当たる音がします。その音がする面を、寝床のまわりに残しておく。全面をマットで覆ってしまうと、この音が消えます。滑らない面を1本だけにする理由の1つがここにあります。音が残っていれば、こちらは寝ていて構いません。

夜のあいだに見るのは、回数ではなく2つの時点です
時点見ることかかる時間
音で目が覚めたとき立ち上がれているか、その場で足踏みしていないか10秒
朝いちばん寝ていた面のどこが湿っているか、毛が寄っているか30秒
決めた曜日の朝寝床のカバーを外して、下の面まで手で確かめる2分

朝いちばんの30秒は、この時期にいちばん情報が取れる工程です。その子が一晩ほとんど動かなかったのか、何度も向きを変えたのかが、寝床の面に残ります。毛が一方向に寄っていれば同じ向きで寝ていたということ、四方に散っていれば動いていたということ。皮膚や被毛の状態も、このときにいっしょに見られます。夜中に何度も起きるより、朝の30秒のほうが確実です。

Point湿っている場所は、記録だけして原因を決めない

寝ていた面が湿っているとき、原因はいくつも考えられます。よだれ、体温、飲んだ水、排泄。家で見分けようとせず、どこが、どのくらいの範囲で湿っていたかだけを記録してください。週に何回あったかが分かる形にしておくと、動物病院で相談するときにそのまま材料になります。原因の見当を先につけると、その見当に合う情報だけを見るようになります。

毎晩やらなくていいことは、どれですか

ここまで読むと、やることが増えたように見えます。1つ、はっきり減らせるものがあります。毎晩ベッドに乗せることです。乗せない夜があっていい、と決めておいてください。今日は床で、明日は台の上で、という日があって構いません。ペットと一緒に寝るという習慣は、同じ場所で寝ることではなく、同じ部屋で同じ時間に休むことのほうにあります。

毎晩やらなくていいことを、もう2つ挙げます。1つは、夜中に時計を見て起こしに行くこと。音で起きる形にしておけば足ります。もう1つは、寝具を毎日洗うことです。老犬の寝床は、洗う頻度より、乾く速さのほうが効きます。厚手のものを週に1回洗うより、薄いものを2枚で交代させるほうが、毎日乾いた面に寝られます。

そのうえで、体を拭くことについても書いておきます。老犬は寝返りの回数も、体をひねって口を届かせる回数も減ります。床に接していた側と口のまわりは、その子が自分では手入れを終えられなくなる場所です。塗るものは舐めれば取れますし、取れたぶんは口に入ります。mofuwa スキンケアミストの中身は電解水だけで、成分は清涼飲料水の規格基準をクリアしています。口が回ってくる場所に置いても、そのままにしておけるということです。朝、寝ていた面を確かめたその手で、上になっている側だけを布で拭いて終わりにします。立たせないことが条件です。反対側は翌日で足ります。朝の30秒に足しても、1分は超えません。1分を超えないことが、この時期に続けられる工程の上限です。

Note手数を増やすと、続く期間のほうが短くなります

老犬と一緒に寝る時期は、いつまで続くかが分かりません。毎晩の工程が3分を超えると、疲れている日に飛びます。飛んだ日があると、翌日から戻りにくくなります。減らせるものを先に決めて、残ったものを短くする。この順番でないと、毎日のケアは続きません。

寝具は人のものと同じでいいのか、という疑問について

この疑問は、実際にはもう少し細かい2つに分かれます。1つは、人の寝具の上でその子を寝かせていいかという話。もう1つは、その子の寝床に人の寝具と同じものを使っていいかという話です。前者は好みの問題ですが、後者には条件があります。老犬は寝返りの回数が減るので、同じ場所が長時間押されたままになります。

押されている面には、体温と湿りがこもります。人の寝具は、人が寝返りを打つことを前提に作られています。寝返りの回数が減った体では、その前提が外れます。だから、その子の寝床に使うものは、厚みよりも、乾く速さと、洗ってすぐ戻せることのほうを優先してください。ふかふかで乾きにくいものは、この時期には向かないことがあります。

老犬の寝床に使うものを、何で選ぶか
選ぶ基準この時期の考え方
厚み沈み込みすぎると、自力で起き上がりにくくなります
乾く速さ毎日乾いた面に寝られるかどうかが、いちばん効きます
枚数1枚を洗うより、薄い2枚を交代させるほうが回ります
大きさ体からはみ出す幅があると、寝返りで落ちません
洗いやすさ洗濯機に入る大きさかどうかを先に見てください

人のベッドで一緒に寝る場合も、同じ考え方が使えます。掛け布団やシーツをそのまま使うのではなく、その子が乗る面に1枚だけ薄いものを重ねる。洗う対象がその1枚になるので、間隔を詰められます。抜けた被毛もその1枚に集まるので、洗濯の前に一方向になでて集めておけば、他の洗濯物に移りません。

皮膚の状態を見る機会としても、この1枚は使えます。外したときに、毛の量、フケの有無、においを見る。毎日見ていると差が分かりませんが、洗って戻すたびに見ると、前回との差で気づけます。ペットと一緒に寝る家では、寝具がいちばん情報の集まる場所になります。

6つの問いを、夜の順番につなぎ直す|老犬と過ごす一日の並べ方

最後に、ここまでの6つを一日の流れに並べ直します。問いの形で読むときと、実際に回すときでは、必要な順番が違います。覚えるのは工程ではなく、この並びのほうです。老犬と一緒に寝る時期に毎日動かすのは、実は3つしかありません。残りは、最初に一度決めれば済みます。

一日の中で、いつ何をするか
時間帯やることかかる時間
朝、起きてすぐ寝ていた面を手で確かめる。湿り・毛の寄り方30秒
朝の支度中寝床のカバーを、乾いているもう1枚と入れ替える1分
日中床に落ちている毛の線で、夜の経路を確かめる0秒
寝る前水皿の位置と量を見る。台か床かを、その夜に決める1分
夜、音がしたとき立ち上がれているかだけを見る10秒
決めた曜日寝床の下の面まで外して、まとめて洗う洗濯に混ぜる

最初に一度だけ決めるのは、3つです。寝床を置く場所。滑らない面を通す1本の経路。そして、乗せる夜と乗せない夜をどう選ぶか。この3つが決まっていれば、あとは毎日30秒と1分の工程が残るだけになります。決め直すのは、その子の様子が変わったときだけで足ります。

Caution寝る場所の話ではなく、体の話になっているとき

昨日までできていた動きが、1日で急にできなくなった/立ち上がるときに声を出す/同じ場所をなめ続けている/皮膚が赤い、じくじくしている/寝ていた面のにおいが今までと違う/水を飲む量や排泄の回数が急に変わった/呼んでも反応が返らない。これらは寝床の作り方で対応する話ではありません。ケアの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。老犬と一緒に寝ている人は、夜のあいだの様子を家で唯一見ている立場にいます。朝に取っている30秒の記録を、そのまま持っていってください。

老犬がベッドに上がれなくなることは、止められません。変えられるのは、上がれるかどうかではなく、一緒に寝るという習慣を続ける形のほうです。高さを下げる、経路を1本通す、乗せない夜を作る。どれも、その子の体を変える手ではなく、部屋の側を変える手です。ペットと一緒に寝る時間が、その子にとっても人にとっても負担にならない形で残るなら、寝ている場所が床でも台でもベッドでも、意味は変わりません。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。