C09シーン別・暮らし

引越しの前後、はじめて犬を迎えた人はどうしている?

公開日 2023年2月25日|文=mofuwa編集部

荷物のない明るい部屋で、白い子犬が淡い色の床に落ち着いて座っている
引越しで入れ替わるのは部屋のほうです。その子が変化にどう出るかは、部屋より先に、いまの家で確かめられます。写真:Tanya Gorelova/Pexels

引越しの荷物が半分ほど箱に入ったころ、その子が箱と壁のすきまに入って、しばらく出てこなくなることがあります。いつもの寝床でもソファの下でもなく、昨日まで存在しなかった場所です。これが困っている合図なのか、新しいすきまが面白いだけなのか、初めて犬を迎えた家では判断がつきません。初めての引越しでいちばん厄介なのは、荷物の量でも新居の広さでもなく、その子が変化にどう出るかを、まだ一度も見ていないことです。紹介されている引越しのコツはたくさんありますが、どれがその子に合うかを選ぶ材料が、こちらの手元にありません。だからこの記事は、当日の手順から始めません。引越しの前に、いまの部屋で家具の位置を1つだけ変えて、その子の反応を小さく見ておくところから始めます。反応の幅が分かってはじめて、荷造りと当日と新居の3日間を、その子に合わせて並べ直せます。

引越しのコツを探す前に、その子の反応をまだ一度も見ていない

犬にとっての引越しは、部屋が変わる出来事ではありません。床のにおいと、足音の響き方と、朝いちばんに光が入る向きが、同じ日にまとめて入れ替わる出来事です。人は間取り図を先に見ているので、新しい室内をある程度知った状態で当日を迎えます。その子は当日まで何も知りません。しかも、荷造りが始まった時点で、いま住んでいる室内のほうが先に変わり始めます。引越しは当日に起きるのではなく、2週間前から少しずつ起きています。

その変化に対して、その子がどう出るかは決まっていません。食欲が落ちる子もいれば、まったく変わらない子もいます。夜だけ落ち着かなくなる子、箱の陰から出てこない子、逆にふだんより人のそばを離れない子。どれも起こりうる反応で、どれがその子の普通なのかは、いっしょに暮らしてきた時間の長さでしか分かりません。初めて犬を迎えた家には、その時間がまだ足りていません。半年前の様子と比べる、という手が使えないからです。

だから初めての引越しでは、当日にいきなり本番が来ます。引越しのコツとして紹介されている手はたくさんあります。前の家のにおいがついたものを1つ持っていく、荷物を置く部屋を先に決める、生活用品を最後に片づける。どれももっともですが、どのコツがその子に効くかは、その子の反応を一度も見ていない状態では選べません。手は多いのに選べない。ここが初めての人のいちばん詰まるところです。

もう1つ、初めてだと気づきにくいことがあります。引越しの前後は、飼い主の毎日の時間割も崩れます。帰宅後がそのまま荷造りに変わるので、ブラッシングや体を拭く習慣がまとめて飛びます。その子の側の変化と、こちらの側の習慣の崩れが、同じ2週間に重なります。あとから元気がなかったと思い返しても、引越しがこたえたのか、手が減ったからなのか、切り分ける材料が残りません。

Note反応が出ること自体は、困ったことではありません

変化に気づいて、いつもと違う行動をとるのは、その子が周りをちゃんと見ているということです。初めての引越しで目指すのは、反応をゼロにすることではありません。どのくらいの変化で、どのくらいの反応が出て、何時間で戻るのか。その幅を先に知っておくことです。幅が分かっていれば、当日に出た反応が想定の内側なのか外側なのかを、その場で判断できます。

家具の位置を1つだけ変えてみる|引越しの前に家でできる小さな試し

やることは単純です。いまの部屋で、家具の位置を1つだけ変えて、その子がどう出るかを見ます。引越しの縮小版を、当日より前に、こちらが条件を決められる状態でやってしまう。初めて犬を迎えた家にとっては、これがいちばん安く手に入る材料です。うまくいってもいかなくても、ここでは何も失われません。元に戻せばよいだけだからです。

なぜ1つだけかというと、2つ以上動かすと、どちらに反応したのか分からなくなるからです。引越し当日は何十個も同時に動きます。それを先に小さくして、原因が1つに絞れる状態で見る。知りたいのは「変化に弱いかどうか」ではなく、「どの種類の変化に、どのくらい出るか」です。種類が混ざると、そこが読めません。次の順番で回してください。

  1. 動かすものを1つ選ぶ。ただし水皿・食器・寝床は選ばない

    選ぶのは、その子の生活の土台ではないものです。リビングの椅子、床置きのかご、観葉植物、玄関のマットあたりが向いています。水と食事と寝る場所は、引越しが終わるまで最後まで動かさない側に置いてください。ここを試しに使うと、実験ではなく本当の不便になります。

  2. 動かす距離は、同じ部屋の中で1メートル以内にする

    別の部屋へ持っていくと変化が大きすぎて、反応が出て当たり前になります。同じ室内で、向きを90度変える、壁から1メートル離す、といった幅で十分です。小さく動かして反応が出るなら、それはその子にとって意味のある変化だったということです。大きく動かすほど良い試しになる、ということはありません。

  3. 動かしたあと、こちらからは何もしない。声もかけない

    つい「大丈夫だよ」と呼びたくなりますが、声をかけると、その子はこちらの反応を見に来ます。見たいのは家具に対する反応で、飼い主に対する反応ではありません。15分、ふだんどおりに過ごしながら、目の端で見ておくだけにしてください。この15分は、初めての人にとって一番むずかしい工程です。

  4. 反応を3段階でメモする。文章にしない

    近づいて確かめてすぐ戻ったのか、遠回りして避けたのか、その場から動かなくなったのか。段階で書いておくと、次に動かしたときと比べられます。文章で書くと、そのときの気分が混ざって比べにくくなります。スマートフォンのメモに日付と段階だけで足ります。

  5. 24時間後に、同じ場所をもう一度見る

    翌日にはその位置を通れているか、まだ遠回りしているか。ここで見ているのは、変化そのものより、戻るまでにかかる時間のほうです。初めての引越しで役に立つのは、この「戻るまでの時間」の見当です。半日で戻る子と、3日かかる子では、新居での組み立てが変わります。

反応の3段階と、そこから分かること
段階その日の様子引越しのときに効いてくること
段階1近づいてにおいを確かめ、すぐいつもどおりに過ごす新居でも、当日から部屋を使える見込みがあります
段階2その一帯を遠回りする。通るが立ち止まる新居では、通り道を1本だけ先に作っておくと早いです
段階3その部屋にいる時間が減る。夜に落ち着かない新居では、荷ほどきの前に落ち着ける1か所を先に決めます

初めて犬を迎えた家では、この3段階のどれが出ても正解です。段階3が出たからといって、引越しがうまくいかないという話ではありません。むしろ、段階3が出る子だと当日より前に分かったこと自体が、この試しの成果です。知っていれば、新居の1日目に荷ほどきを詰め込まない、という判断ができます。知らないまま当日を迎えると、その判断ができません。

どのくらいの間隔で、どこまで動かすか|引越しの前に試す頻度の決め方

1回やって終わりにしないほうがいいのですが、毎日やる必要もありません。頻度の目安は、引越しの3〜4週間前から、週に1回です。合計3〜4回。これで、動かすものの種類を3〜4通り試せます。毎日動かすと、その子にとっては部屋が毎日変わる状態になり、何に反応したのかがまた分からなくなります。試しの頻度を上げると、試しでなくなります。

回を追うごとに、動かす対象を少しずつ生活に近づけていきます。1回目は関係のないもの、2回目は毎日視界に入るもの、3回目はその子が実際に触れるもの。順番に近づけていくと、どのあたりから反応が変わるかという境目が見えます。この境目が、その子にとっての「動かしていいもの」と「最後まで置いておくもの」の線引きになります。

引越しの3〜4週間前から、週1回ずつ動かすもの
回動かすもの見るところ
1回目床置きのかご、椅子、玄関のマットその一帯を通れるか、遠回りするか
2回目その子から見える位置の棚やテレビ台毎日過ごす場所から、視界がどう変わったか
3回目その子が乗っているソファのクッション類自分の居場所そのものが動いたときの出かた
4回目1回目に動かしたものを、元の位置へ戻す戻したときにも反応が出るか。出るなら変化そのものに反応しています

4回目に元へ戻す、というのが地味に効きます。戻したときにも反応が出る子は、位置の善し悪しではなく、変わったこと自体に反応しています。この子には、新居で家具の配置を何度も直すやり方が向きません。最初に置いた場所をなるべく動かさないほうが、落ち着くまでの時間が短くなります。逆に、戻したときは何ともない子なら、新居でも配置は試しながら決めて構いません。

Caution初めての人がつまずきやすい3つ

1つ目は、反応が出たときに声をかけすぎることです。心配で名前を呼び続けると、その子は家具ではなく飼い主の様子を見るようになり、記録が取れなくなります。2つ目は、反応が出なかったからと一気に3つ動かすことです。そこで初めて反応が出ても、どれが原因か分かりません。3つ目は、寝床と水皿を試しに使ってしまうことです。この2つは引越しの当日も新居でも、最後まで動かさない側に置いておきたい場所です。

頻度の話をもう1つ。試しの回数より大事なのは、その2週間から4週間のあいだ、毎日の習慣のほうを止めないことです。帰宅後の足ふき、寝る前のブラッシング、朝の食事の時間。荷造りが始まると、この3つが真っ先に飛びます。飛ばした日は記録に残しておいてください。あとで様子がおかしいと感じたとき、引越しのせいなのか、手が減ったせいなのかを分ける材料になります。

荷造りから新居3日目までを、その子の反応に合わせて並べ直す順番

ここまでで、その子が変化にどう出るかの見当がついているはずです。ここからは、その見当を実際の日程に当てはめます。初めての引越しでも、順番さえ決まっていれば当日に迷いません。段階1の子と段階3の子で変えるところは、後ろの2つの工程だけです。前の3つは共通で構いません。

  1. 2週間前|動かさないものを3つ決めて、紙に書いて貼る

    寝床、水皿、食器。この3つは最後まで元の位置に置いたままにします。紙に書いて壁に貼っておくのは、手伝いに来た人が善意で片づけてしまうのを止めるためです。初めての引越しでは、自分以外の手が入る場面をうまく想像できません。書いておけば、こちらが荷造りに集中していても守られます。

  2. 前日|その子が過ごす1か所を、荷物のない状態で残す

    部屋である必要はありません。ケージの中でも、廊下の突き当たりでも構いません。その日のうちに箱で埋まらない場所を、先に確保しておきます。段階3が出た子なら、ここを少し広めに取ってください。段階1の子は、ふだんの寝床のまわりが空いていれば足ります。

  3. 当日|移動の前後で、体に触る時間を1分だけ取る

    全身をていねいに手入れする日ではありません。触るのは、こちらが落ち着いていることをその子に伝えるためです。背中から腰にかけて、手のひらでゆっくり1往復。それだけで足ります。ここで念入りに触ろうとすると、こちらの焦りが伝わって逆になります。

  4. 新居1日目|荷ほどきより先に、水皿と寝床を置く

    箱を開ける前に、この2つを置いてしまいます。置く場所は、人がいちばん長くいる部屋の隅です。段階2・段階3が出た子は、この日は部屋を1つに限ってください。家じゅうを自由にすると、においの基準になる場所が決まりません。段階1の子は、初日から家の中を見せて構いません。

  5. 新居3日目|1回目の試しと同じことを、新居でやってみる

    床置きのかごを1メートル動かして、反応を見ます。引越しの前と同じ段階が出るなら、その子はもう新居を自分の部屋として扱い始めています。前より強く出るなら、まだ落ち着く途中です。焦らず、荷ほどきのペースのほうを落としてください。ここでも比べられるのは、前に記録を取っておいたからです。

反応の段階別に、変えるのは後ろの2工程だけ
新居1日目新居3日目以降
段階1だった子初日から家の中を見せてよい配置は試しながら決めてよい
段階2だった子通り道を1本だけ先に作る家具の位置は1週間動かさない
段階3だった子その日は1部屋に限る落ち着いてから、1つずつ広げる

引越しの前後、床のほこりをいちばん先に拾うのは足先です。そして足先は、その子が自分でなめて片づけようとする場所でもあります。荷物と人の靴が出入りしている家では、そこをなめて済ませてほしくない、という日が続きます。mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、成分は清涼飲料水の規格基準に合わせてあります。舌が最初に届く場所から拭いていける、というのがこの1本の使いどころです。布に含ませて、帰ってきた足先を1本ずつ。荷造りの手を止めずに済む30秒です。2週間前に紙に書いて貼った「動かさない3つ」と同じ扱いで、この30秒も動かさない側に入れておいてください。ここが飛ぶと、あとで様子がおかしいと感じたときに、引越しのせいなのか手が減ったせいなのかを分けられなくなります。

Caution引越しの反応として片づけないほうがいい変化

丸一日以上、水も食事もとらない/下痢や嘔吐が続く/同じ場所をなめ続けている/皮膚が赤い、においが変わった/立ち上がるのをいやがる/呼んでも反応が返らない。これらは環境の変化として様子を見る対象ではありません。引越しの最中でも、動物病院にご相談ください。初めての引越しでは、どこまでが普通なのか判断がつかないのが当たり前です。迷ったら、待つより先に相談してください。転居先の動物病院を、荷造りが始まる前に1つ調べておくと、その日に迷いません。

初めての引越しで動かせるのは、部屋のほうではありません。動かせるのは、その子の反応を知らないまま当日を迎えるか、知った状態で迎えるかの差だけです。家具を1つ動かして15分見る。週に1回、4回だけ。それだけで、当日に出た反応が想定の内側なのか外側なのかを、その場で判断できるようになります。引越しが終われば、その記録はそのまま、その子の平常を知るための最初の材料になります。次に何かが変わる日には、比べる相手がもういます。

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よくある質問

引越しの前に家具を動かす試しは、子犬でもやったほうがいいですか?
迎えて日が浅い子ほど、飼い主の側に比べる材料がないので役に立ちます。ただし、迎えてから2週間ほどは、その家に慣れること自体が進行中です。その時期は試しを入れず、いまの部屋での過ごし方が落ち着いてから始めてください。初めて犬を迎えた家では、慣れる途中と引越しの反応が混ざると読み取れなくなります。
引越し先が決まってから日がなく、週1回を4回できません。どうすればいいですか?
回数より、1回でも記録が残っていることのほうが効きます。1回しかできないなら、床置きのかごを1メートル動かして15分見る、それだけで構いません。段階1か、2か、3か。それが分かれば、新居1日目に部屋を1つに限るかどうかを決められます。何もない状態で当日を迎えるのとは、判断の材料が違います。
新居に着いたあと、どのくらいで元の様子に戻りますか?
日数を言い切れる目安はありません。前もって記録した「戻るまでの時間」が、そのままおよその見当になります。家具1つで半日だった子は、引越しでは数日かかると考えておくと、こちらの気持ちが先に折れません。ただし、水や食事をとらない日が続くときは、日数の問題ではないので早めに動物病院へ相談してください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。