C09シーン別・暮らし

防災と避難を楽にする、シニア猫と暮らす人の毎日の習慣

公開日 2023年2月11日|文=mofuwa編集部

明るい室内の淡いグレーの毛布の上で、クリーム色の猫が静かに休んでいる
備えとして数えられるのは、持ち物の数だけではありません。入るまでの時間も、備えのうちです。写真:cat823/Pixabay

押し入れからキャリーを引き出して、留め具がカチャと鳴った瞬間、その子は寝床から消えていました。ソファの下です。防災の準備をしようと思って出しただけなのに、こちらの用意が終わる前に、その日の一番大きな仕事が決まってしまいました。ペットの防災の話は、たいてい持ち物の一覧から始まります。フード、水、食器、薬、写真、ケージ。どれも要ります。ただ、老猫と暮らしていると、一覧より前のところで手が止まります。用意した袋を持てるかどうかではなく、その子がキャリーに入るまでに何分かかるか。若い頃なら抱えて30秒だったことが、いまは9分かかります。しかも、急ごうとするほど延びます。この記事は、老猫と暮らす家のペットの防災を、持ち物の側からではなく、その9分を短くしておく毎日の習慣の側から書きます。避難のしかたそのものではなく、家の中でできることの話です。

キャリーを出した音で、押し入れの前から消えた|老猫と暮らす人がペットの防災でする経験

その日にやろうとしていたのは、中身の入れ替えだけでした。フードの賞味期限を見て、水を新しくして、古い薬を抜く。ペットの防災としては、たぶん一般的な作業です。ところが、キャリーを引き出した音のほうが先に届きました。老猫は寝床にいたはずなのに、振り返ったときにはもういません。ソファの下で、こちらを見ています。

そこから9分かかりました。呼んでも出てこないので、反対側から手を回して、抱え上げて、キャリーの入り口に向けます。入り口の縁で足を突っ張るので、そこから先が進みません。無理に押すと爪が布に引っかかります。いったん下ろして、また抱え上げる。この往復が、9分の中身です。

同じキャリーに入れる作業で、若い頃と今に起きていること
若い頃老猫になってから
音への反応出しても寝ている留め具の音で、先に移動している
こちらの手片手で抱えて、そのまま入る両手で支えて、姿勢を保つ時間が要る
入り口で起きること頭から入って終わり足を突っ張って止まる。爪が引っかかる
やり直しの回数0〜1回3〜4回。1回ごとに嫌がり方が強くなる
かかる時間30秒前後9分前後。急ぐほど延びる
終わったあとすぐ落ち着く室内に戻っても、しばらく出てこない

この9分は、その日の防災の準備を全部止めます。持ち物の一覧は途中で放り出したままです。そして次にキャリーを出すとき、9分がもう少し延びています。嫌がった記憶が上に積まれるからです。ペットの防災を毎日の側から考えるようになったのは、この積み上がりに気づいたからでした。

ここで断っておくと、この記事は避難の手順を説明するものではありません。どこへ、どのタイミングで動くかは、お住まいの地域から出ている案内のほうが正確です。書けるのは、家の中で、毎日のうちにやっておけることだけです。老猫と暮らす家では、その範囲がちょうど、この9分に重なります。

年に一度しか出さない箱が、合図になっている|老猫の防災が持ち物の話にならない背景

なぜキャリーだけが、これほど嫌われるのか。理由は箱の形ではありません。年に1回か2回しか出さないこと、そして出したあとに必ず移動が続くことです。その子の側から見ると、この箱は「出てきたら動物病院」という合図として、きれいに条件がそろっています。ペットの防災でキャリーを新しく買い替えても、この合図の部分は引き継がれます。

もうひとつ、老猫の側に固有の背景があります。年齢が上がるにつれて、室内で動く範囲が狭くなります。寝床、水の場所、トイレ、日の当たる窓ぎわ。その4か所を結ぶ経路の上だけで、一日のほとんどが終わります。キャリーは、この経路の外側に置かれています。ふだん通らない場所にあるものは、それだけで新しいものとして扱われます。

この6つを並べると、時間が延びている原因が、嫌がる気持ちの強さではないことが見えてきます。延びているのは、入るまでの手数のほうです。手数が増えるのは、その子の体の条件が変わったからです。跳べない、段差を避ける、姿勢を保つのに時間がかかる。老猫と暮らす家では、この条件が毎年少しずつ動きます。

だから、ペットの防災の一覧に「キャリー」と書いて丸をつけても、この背景には手が届きません。持っていることと、その中に入れることのあいだに、9分の差があります。そして持ち物は当日でも買い足せますが、9分は当日には短くできません。短くできるのは、何も起きていない毎日のうちだけです。

Note急がせると、かえって延びます

こちらが急いでいる日ほど、時間はかかります。動きが速くなり、声が高くなり、支える手に力が入るからです。老猫は、この3つを全部読み取ります。ペットの防災の準備を、時間に追われている日にやらないほうがいいのは、そのためです。落ち着いている日にやったことだけが、次のときに残ります。

短くできるのは「入るまでの時間」だけ|ペットの防災を毎日の習慣に置き直す理由

ここからが本題です。ペットの防災で、老猫と暮らす家がいちばん動かせるのは、入るまでの時間です。持ち物は、一覧を見ながら30分で揃います。移動の判断は、こちらの都合では決まりません。残るのが時間で、しかもこれは毎日のうちにしか短くできません。習慣として置く理由は、そこにあります。

  1. 習慣1:キャリーを、室内の家具にしてしまう

    押し入れから出したまま、扉を外して、ふだんの経路の上に置きます。寝床と水の場所を結ぶ線の上が理想です。中には、その子のにおいがついた布を1枚だけ入れます。洗いたてのものではありません。においがついているほうが、その子にとっては自分の場所として読めます。数日で近づかなくても、片づけないでください。片づけると、また合図に戻ります。

  2. 習慣2:帰宅後に1回、中を通るだけの用事をつくる

    帰宅後、荷物を置く前に、キャリーの奥ではなく入り口の手前におやつを1粒だけ置きます。奥に置くと、入ったところで閉じ込められる形になります。入り口の手前なら、通り道の途中で終わります。毎日1粒、1分もかかりません。老猫が来なくても、置いたまま次の日に片づけて構いません。

  3. 習慣3:週に1回だけ、30秒の練習をする

    その子が自分から中にいるときに、扉を30秒だけ閉めます。閉めたまま持ち上げないでください。持ち上げると、練習が移動に変わります。30秒たったら開けて、そのまま終わりです。週に1回で足ります。回数を増やすほど、その子の側で「また来た」になります。

  4. 習慣4:月に1回、入るまでの秒数だけ測る

    測るのは、こちらが「入ってほしい」と思ってから、体が中に収まるまでの秒数です。1回だけ測って、その日はもうやりません。先月より延びたか、変わらないか。ペットの防災の記録として残るのは、持ち物の写真より、この数字のほうです。

4つの習慣は、動かす間隔をそろえていません
何をするか間隔かかる時間
習慣1扉を外して経路の上に置き、布を1枚入れる1回だけ。あとは置いたまま初回10分
習慣2入り口の手前におやつを1粒毎日、帰宅後1分
習慣3自分から入っているときに30秒だけ閉める週に1回30秒
習慣4入るまでの秒数を1回だけ測る月に1回9分から始まります

間隔をずらしてあるのは、忙しい週に全部が同時に止まらないようにするためです。毎日のものは1分、週のものは30秒、月のものは1回だけ。老猫と暮らす家では、この配分でちょうど回ります。3か月続けると、9分だった数字が3分台まで落ちることがあります。落ちない月もあります。落ちなくても、記録が残っていれば次に比べられます。

布については、もうひとつ書いておきます。キャリーに入れる布は、においが薄れても洗わないほうが続きます。体のほうは反対で、老猫は自分で毛づくろいをする量が減るので、背中と腰のにおいは日ごとに動いていきます。mofuwaのグルーミングスプレーは、すすぎも拭き取りも要らないケアスプレーです。毎日きれいにしておきたい場所にだけ、その日のうちに使えます。布に含ませて、背中から腰へ毛の流れに沿って拭きます。ペットは体から脂を出すので、昨日ぬぐったところが今日また変わります。毎日の手数に収まる形であることが、ここではそのまま効いてきます。猫はそのあと、自分でその毛を口に入れます。グルーミングスプレーは清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、布が湿るくらいかけても量を数えずに済みます。拭いたその布をキャリーに敷けば、においの基準が体と箱でそろい、9分のうちで足が止まる場所がひとつ減ります。

Point持ち物の一覧は、それはそれで作ります

時間の話をしましたが、持ち物が要らないという意味ではありません。フード、水、食器、飲んでいる薬、その子の写真。ペットの防災としてまとめておく価値はあります。ただ、一覧は30分で作れて、時間は3か月かかります。先に着手するのは、時間のかかるほうです。老猫と暮らす家では、順番がここで入れ替わります。

入るまでの秒数が延びた月に見たい変化|老猫の体は入り口の30センチに先に出る

習慣を続けていると、月に1回の数字が意味を持ちはじめます。先月より延びた月があったとき、それを練習不足として片づけないでください。延び方の背景に、体の側の変化があることがあります。ペットの防災の記録が、そのまま毎日の観察の記録になるのは、この場面です。

この6つは、どれも防災の練習の話としては説明がつきません。キャリーは、その子の体が一日でいちばん複雑な動きをする場所です。だから、室内の平らな床では見えない変化が、入り口の30センチで先に出ます。老猫と暮らしていると、この30センチが定期的な観察の場所になります。

Caution早めに動物病院にご相談いただきたいサイン

抱え上げたときに鳴く、特定の足を触られるのを嫌がる、段差を避けるようになった、体重が減ってきた、水を飲む量や排泄の回数が変わった、毛づくろいが減って背中の毛がもつれてきた、口のにおいが変わった。いずれかに当てはまるときは、キャリーの練習を増やす前に、動物病院にご相談ください。老猫は、動く範囲が狭いぶん、変化が室内の様子として表に出るまでに時間がかかります。秒数が延びた月と重なっているなら、そのことも一緒に伝えてください。

相談に行くときは、月に1回測っていた秒数をそのまま持っていってください。何月に何秒だったか、いつから延びたか、そのとき体のどこで止まったか。この3つがあると、年齢による変化として見ていい範囲かどうかを、その場で切り分けてもらえます。キャリーに入るまでの記録が、そのまま診察の材料になります。

ペットの防災というと、揃えた持ち物の写真が浮かびます。老猫と暮らす家では、そこに1行だけ足してください。今月、その子がキャリーに入るまでに何秒かかったか。この数字は、当日に短くすることができません。何も起きていない毎日のうちに、1分の習慣で削っておくものです。削れているぶんだけ、いざというときに手が空きます。空いた手で持てるのが、一覧に書いた持ち物です。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。