C12Q&A・豆知識
犬が自分で舐められない場所
犬が体を舐めているところを、上から順に指で数えていくと、背中の真ん中とうなじだけが最後まで一度も出てきません。犬が自分で舐められない場所は、この2か所だとされています。ただし2か所という数え方は、体をいくつに区切って数えるかで変わります。うなじを1つと数えるか、耳のうしろと分けて2つと数えるかで、答えは3か所にもなります。数字そのものより、そこが「本人の手入れが入らない面」だということのほうが使えます。そして、この記事にはもう半分あります。逆に犬がいちばん舐めやすい場所は前足の先とお腹と後ろ足の内側で、そこは舐めすぎが起きる場所でもあります。人が見るのは、届かない場所と、届きすぎる場所の両方です。8つの問答に分けて開いていきます。
犬が自分で舐められない場所は、どこですか
答えは2か所です。背中の真ん中と、首の後ろ(うなじ)。犬が自分で舐められない場所として挙がるのは、たいていこの2つに落ち着きます。背中の真ん中は、肩甲骨のあいだから腰の手前までのあたり。首の後ろは、首輪が乗る位置の少し上です。
ただし、この「2か所」という数字は裸で置ける数字ではありません。体をいくつに区切って数えるかで、答えが変わるからです。うなじと耳のうしろを分けて数えれば3か所になりますし、背中の真ん中を前寄りと後ろ寄りに分ければ、もっと増えます。数える人の区切り方で動く数字だ、と受け取ってください。
- 届かない:背中の真ん中、首の後ろ。口が回りきらない面です
- 届きにくい:肩の上、腰の上。姿勢によっては届くことがあります
- 届く:前足、お腹、後ろ足、尾のつけ根。ここは自由に届きます
- 数え方で変わる:区切りを細かくすると、場所の数は増えます
- その子で変わる:体格・年齢・関節の動く範囲で前後します
犬が自分で舐められない場所を知る値打ちは、数を覚えることではありません。そこが「本人の手入れがまったく入らない面」だと分かることです。ほかの場所には毎日その子自身の手入れが入っていますが、この2か所にだけは入りません。だから、家の側の毎日のケアで最初に見る場所も、自然にここになります。
なぜ、その2か所だけ口が回らないのですか
犬が体を舐めるときの姿勢を思い出すと分かります。前足は口の前まで持ち上げられます。お腹と後ろ足は、体を丸めれば口が届きます。尾のつけ根は、腰をひねれば届きます。つまり、口が届く先はすべて「前・下・後ろ」に集まっています。残るのは上と背中側で、そこは首をどれだけひねっても口が回りきりません。
首の後ろが届かないのも同じ理由です。首は左右と下にはよく曲がりますが、自分のうなじに口を持っていく向きには曲がりません。背中の真ん中と首の後ろは、口が向けられる向きの外側にある、という一点で共通しています。犬が自分で舐められない場所が2か所に集まるのは、体の構造としてはとても単純な話です。
後ろ足で掻くことはできます。ただし掻くことと舐めることは別です。掻くのは刺激を返すだけで、毛のあいだのものを外に出す働きはありません。後ろ足が届く範囲も、耳のうしろから首の横までで、背中の真ん中には届きません。結局、この2か所には本人の手がまったく入らないことになります。
| 向き | 届くか | その子によって変わる条件 |
|---|---|---|
| 前(前足・胸) | 届きます | 体格が大きいほど、姿勢を作る手間が増えます |
| 下(お腹・内もも) | 届きます | 胴が深いと、丸まる角度が要ります |
| 後ろ(後ろ足・尾のつけ根) | 届きます | 腰をひねる動きが硬くなると減ります |
| 横(脇・体側) | だいたい届きます | 毛が長いと、口が地肌まで入りません |
| 上(背中の真ん中) | 届きません | 体格や年齢に関係なく届きません |
| 首の後ろ | 届きません | 首の曲がる向きの外にあります |
表の下2行だけが、条件に関係なく同じ答えになっています。犬が自分で舐められない場所は、その子の年齢や体格が変わっても動かない、ということです。逆に、届く場所のほうは条件で動きます。年をとって腰をひねる動きが減れば、届いていた場所が届かなくなることもあります。届く範囲は減る方向にしか動きません。
「舐められない」と「舐めない」は、同じことですか
違います。ここを分けておかないと、家で見るときに読み違えます。届かないから舐めていないのか、届くけれど舐めていないのか。この2つは、同じ「舐めていない場所」に見えますが、意味がまったく違います。
| 状態 | 何が起きているか | 家でどう扱うか |
|---|---|---|
| 舐められない | 口が届かない。背中の真ん中と首の後ろ | 人が見る場所として固定します |
| 届くが舐めない | 届く範囲だが、いま気にしていない | そのままで構いません |
| 届かないから掻く | 後ろ足で掻いている。耳のうしろから首の横 | 回数が増えていないかを見ます |
| 届くから舐めすぎる | 同じ場所を繰り返し舐めている | 場所と日付を記録します |
犬が自分で舐められない場所は1つ目の行にあたります。ここは、本人が気にしているかどうかにかかわらず、手入れが入りません。気にしていないから大丈夫、という読み方ができない唯一の場所です。ほかの場所は、その子が気にしていなければ、ひとまずそのままで構いません。
3行目の「掻く」も、分けて数えておきたい動きです。掻いている場所は、その子にとって気になっている場所ですが、届いていない場所でもあります。掻く回数が増えているかどうかは、家で数えられる数字です。1日に何回、という細かい数え方は要りません。「先週より増えた気がする」で十分に材料になります。
逆に、犬がいちばん舐めやすい場所はどこですか
こちらも先に答えます。前足の先と指のあいだ、お腹、後ろ足の内側。この3つが、犬にとっていちばん口を持っていきやすい場所です。理由は単純で、伏せている姿勢のまま口が届くからです。立ち上がる必要も、体をひねる必要もありません。
前足の先は、その中でも特別です。伏せた状態でそのまま口の前にあるので、姿勢を変えずに、いつまででも続けられる場所になります。お腹と後ろ足の内側は、丸まる姿勢を作ればすぐ届きます。どれも、その子にとって「思いついたら次の瞬間に舐められる」場所です。
- 前足の先・指のあいだ:伏せたまま届きます。いちばん長く続けられます
- お腹:横になれば口が届きます。毛が薄く、地肌に近い場所です
- 後ろ足の内側:体を丸めれば届きます。歩くたびにこすれる面でもあります
- 尾のつけ根:腰をひねれば届きます。皮脂が出やすいとされる場所です
- 前足の上側:伏せた姿勢の延長で届きます。毛が薄くなると目立ちます
この一覧と、犬が自分で舐められない場所の一覧を並べると、体がきれいに2つに分かれます。本人の手入れが入りすぎる面と、まったく入らない面。毎日のケアで人が手を入れるのは、この両方です。片方だけ見ていると、必ずもう片方を見落とします。
舐めやすい場所が、舐めすぎの起きる場所でもあるのはなぜですか
3つの条件がそろってしまうからです。届く、気になる、繰り返せる。届かない場所では、気になっても繰り返せません。届く場所では、気になった分だけ回数が積み上がります。犬が自分で舐められない場所と、舐めすぎが起きる場所が正反対になるのは、そういう仕組みです。
回数が積み上がると、その面だけ濡れている時間が長くなります。乾く前にまた舐める、という形になると、1日のうちその場所だけが乾いていない時間を持つことになります。毛の色が変わって見える、毛が短くなる、地肌が見えてくる、といった変化は、この時間の長さから出てくると説明されます。
ただし、なぜその場所を気にしているのかは、家では決められません。皮膚の側の話なのか、退屈なのか、痛みなのか、癖なのか。見た目が同じでも中身が違うので、家での見立ては当たりません。ここで原因を決めにいかないでください。決めにいくと、記録が止まります。
同じ場所を数日以上舐め続けている、毛が短くなってきた、地肌が見えている、赤くなっている、においが変わった、触ると嫌がる。こうした変化があるときは、家でのケアを足すより先に動物病院にご相談ください。舐めすぎの理由を家で決めることはできません。相談のときは、舐めている場所と、気づいた日付を伝えてください。犬の場合、前足の先が最初に出やすい場所です。
届かない場所は、放っておいても大丈夫なのですか
放っておくと何が起きるかを、先に書きます。そこだけ、抜けた毛と粉と皮脂が、外に出ないまま残ります。犬が自分で舐められない場所には本人の手入れが入らないので、たまったものが自然に減る道がありません。背中の真ん中でもつれができやすいと言われるのは、この積み上がりが理由だと説明されます。
もうひとつ、見落としの問題があります。届かない場所は、その子が気にするそぶりを見せません。気にしないから、変化が起きても合図が出ないということです。前足なら舐め始めるので気づけますが、背中の真ん中には合図がありません。だから、家の側で見に行くしかない面になります。
| 届かない面 | 届きすぎる面 | |
|---|---|---|
| 本人の手入れ | 入りません | 入りすぎることがあります |
| 変化の合図 | 出ません | 舐める回数として出ます |
| 見つかり方 | 人が見に行ったときだけ | 見ていれば気づけます |
| たまるもの | 抜けた毛・粉・皮脂 | 水分(濡れている時間) |
| 家でやること | 週に1回、被毛を分けて見る | 回数と場所を記録する |
大丈夫かどうかは、放っておいた期間ではなく、前の週と比べて変化があるかどうかで決まります。毎日見る必要はありません。週に1回、同じ場所を、同じ明るさで見る。この形にしておくと、変化があったときにだけ手が動きます。変化がなければ、何もしなくて構いません。
家で見るのは、どちらの場所ですか|週に1回、同じ順で両方
答えは両方です。順番も決めておきます。届かない面から先に、届きすぎる面をあとに。この順にするのは、先に前足を触ると、その子が気にし始めて背中まで進まないことがあるからです。静かな面から始めて、動きのある面で終わります。
-
背中の真ん中を、被毛を分けて見る
指で左右に分けて地肌を出します。抜けた毛がたまっていないか、粉が浮いていないか、もつれが始まっていないか。ここは犬が自分で舐められない場所なので、先週との差がそのまま残っています。比べやすい面です。
-
首の後ろを、首輪を外して見る
首輪をつけたままだと、その下が見えません。週に1回だけ外して、首輪が乗っていた位置とその少し上を見ます。毛が寝ている、地肌の色が違う、といった変化はここに出ます。
-
前足の先と指のあいだを見る
ここからが届きすぎる面です。毛の色が変わっていないか、毛が短くなっていないか、指のあいだが湿っていないか。片足ずつ、同じ順番で持ち上げます。順番を固定すると、左右の差に気づけます。
-
お腹と後ろ足の内側を見る
仰向けにできる子なら仰向けで、嫌がるなら立たせたまま横からのぞきます。毛が薄い場所なので、地肌の色がそのまま見えます。赤みが先週より広がっていないか、それだけを見ます。
4か所で3分ほどです。毎日やる必要はありません。週に1回、同じ曜日、同じ明るさ。これだけ決めておけば、犬が自分で舐められない場所も、届きすぎる場所も、両方が視界に入り続けます。記録は「変わったところがあれば1行」で足ります。何もなければ何も書かなくて構いません。
毎日のケアに使うものも、この4か所の並びから決まります。先に見る2か所は、その子の口が一生届かない面です。あとに見る2か所は、拭いた数秒後にその子が舐める面です。同じ日に同じもので両方を触るなら、届かない面と届きすぎる面の、どちらの条件も満たしていなければ困ります。犬の被毛ケアで使うものが1つに絞られるのは、この2つ目の条件があるからです。
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届く範囲という一つの物差しで、犬の体を読み直す
最後に、ここまでを一つの物差しにまとめます。犬の体は「その子の口が届くかどうか」で二つに分かれていて、家の側の仕事はその両側にある。これだけです。届かない面には手入れが足りず、届きすぎる面には手入れが多すぎることがある。どちらも、人が見ていないと分かりません。
| 場面 | 物差しを持つ前 | 物差しを持ったあと |
|---|---|---|
| 背中にもつれができた | 毛質のせいだと思う | 手入れが入らない面だからだと分かる |
| 前足をよく舐めている | 癖だと思う | 場所と日付を記録して、続くなら相談する |
| 首の後ろを見ていない | 首輪をつけたまま素通りする | 週に1回だけ外して見る |
| お腹が赤い | 気づかないまま過ぎる | 届きすぎる面として毎週見る |
| 年をとってきた | 変わらないと思う | 届く範囲が減っていないかを見る |
| 何も変化がない | 何かしたほうがいいか迷う | 変化がなければ何もしないと決める |
5行目は、シニアになってから効いてくる行です。腰をひねる動きが減ると、届いていた場所が届かなくなります。つまり、犬が自分で舐められない場所は、年齢とともに広がっていくことがあるということです。背中の真ん中と首の後ろに加えて、尾のつけ根やお腹まで手入れが入らなくなることがあります。見る場所を増やすかどうかは、その子の動きで決めてください。
毎日のケアで大事なのは、手数を増やすことではありません。見る場所を決めて、順番を固定して、週に1回だけ回すこと。被毛の下で起きていることは、こちらの都合よりゆっくり動きます。毎日追いかけても、差は見えません。週ごとの差で見るほうが、はっきり分かります。
同じ場所を舐め続けている、掻く回数が明らかに増えた、地肌が赤い、脱毛している場所がある、もつれが急に増えた、においが変わった、触ると嫌がる。こうした変化が続くときは、家でのケアを足すより先に動物病院にご相談ください。犬が自分で舐められない場所の変化は合図が出ないので、気づいた時点ですでに時間がたっていることがあります。週1回のメモと、いま使っているケア用品の容器を持っていくと、話が早く進みます。
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商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
