C09シーン別・暮らし

停電・断水のときを楽にする、はじめて犬を迎えた人の毎日の習慣

公開日 2023年8月26日|文=mofuwa編集部

静かな明るい部屋で、淡い色の犬がうすい色の敷物の上に落ち着いて伏せている
停電の夜にその子がどこにいたかは、その日にしか手に入らない記録です。写真:Iza Ponchie/Pexels

夜の9時すぎに照明が消えて、そのあと冷蔵庫の低い音が止まったことに、30秒ほど遅れて気づきました。スマートフォンの明かりをつけると、足元に犬が立っていました。ふだんはソファの上で寝ている時刻です。声をかけても動かず、そのまま30分、同じ場所にいました。初めて犬を迎えて8か月。その子が停電のときにどうなるのかを、まだ一度も見たことがありませんでした。そのあと蛇口をひねって、水も止まっていることが分かります。断水のときにペットのために何を用意するかという記事は、検索すればいくらでも出てきます。ただ、その夜に目の前で起きていたのは、物のリストのどこにも書かれていないことでした。この記事は、停電と断水の日に何をするかではなく、その日にその子を見ておく、という話です。

明かりが消えたことより、そのあとの30分を覚えていた|初めて犬と暮らす人の、停電と断水の経験

その夜のことで、あとになっても思い出せるのは、暗くなった瞬間ではありませんでした。照明が消えたことより、そのあとの30分に犬がどこにいたかのほうが、はっきり残っています。ソファでも、ケージでもなく、キッチンの入口の床に立っていました。しっぽも下がっていないし、鳴きもしない。ただ、立ったまま動かない。

初めて犬を迎えた人は、この状態をどう読めばいいのか分かりません。怖がっているのか、様子をうかがっているのか、単に眠くないのか。比べる相手がないからです。以前の停電のときはどうだったか、という記憶がない。飼って何年かの人なら「前もこうだった」と言えるところで、初めての人はそこが空白になります。

その場でスマートフォンを開いて、停電と断水のときのペットの対処法を調べました。出てきたのは、水の量、キャリー、食べもの、明かり、暑さへの備え。書いてあることは、どれももっともです。ただ、そこに書かれていたのは物のことばかりで、目の前で立ったまま動かない犬をどう見ればいいかは、どこにも書かれていませんでした。ペット向けに書かれた断水の記事も停電の記事も、その日の準備の話として組まれています。

その夜、時刻ごとに起きていたこと
時刻家で起きたことその子がしていたこと
21時すぎ照明が消え、家電の音が止まるソファから降りて、床に立つ
21時10分懐中電灯をつけて、家の中を歩く人のあとについて移動する
21時40分蛇口から水が出ないことに気づくキッチンの入口で立ったまま
23時明かりを1か所だけにして座る足元に伏せる
翌朝6時電気だけ復旧。断水は続いているいつもより早く起きてきた
翌朝7時食べものを出す半分残した

この表は、あとから書いたものです。その夜のうちに書いたわけではありません。だから正確ではないところもありますし、思い出せなかった時間帯もあります。それでも、この程度のことが残っているだけで、次のときの見方が変わりました。何を用意していたかより、その子がどう過ごしていたかのほうが、あとになって役に立ちます。

音と光と人の動きが、同じ瞬間に3つとも変わる|断水の日にペットの前で手が止まる理由

停電したとき、家の中では同時にいくつものことが変わります。人は「暗くなった」の1つとして受け取りますが、床の高さで暮らしているペットにとっては、別々の変化が3つ同時に起きたことになります。ここが、初めての人が読み違えやすいところです。

犬がいちばん見ているのは、このうち人の動きです。音や光の変化は、人のほうが落ち着いていれば、そこまで大きく効きません。逆に、人が家の中を早足で行き来していると、その子はそれに合わせて立ち上がります。あの夜に足元へ来て動かなかったのは、暗さそのものよりも、人が動いていたからだったのだろうと、いまは思っています。

断水が加わると、変わるのは家の側だけではありません。毎日のケアの手順そのものが止まります。足をふく、食器を洗う、トイレまわりを流す。どれも水が前提になっています。ここで、初めての人はいちばん手が止まります。順番を組み替えた経験がないので、何を残して何をやめればいいのかの判断ができません。

断水のあいだ、毎日の手順のどこが止まるか
ふだんの手順水が要るところ断水の日の扱い
散歩から帰って足をふく洗う・すすぐ水を使わない形に置き換える
食器を洗う毎食後紙で受けて、洗う回数を減らす
トイレまわりを流すその都度袋にまとめて、1か所に置く
体をふくしぼる・すすぐ回数を増やさず、場所を絞る
ブラッシング水は要らないそのまま続けられます

この表の最後の行が、意外と大きいところです。断水しても、水を使わない手はそのまま残ります。ブラッシングは水が要りませんし、被毛の状態を見ることも、皮膚に触れて確かめることもできます。止まった手のことばかり考えていると、残っている手のほうが見えなくなります。

その日にやることより、その日のその子を見ておく|初めての人が持てる考え方

停電と断水の日にできることは、正直なところ多くありません。できることが少ない日に、ペットの側へ無理に手を増やそうとすると、その子の負担のほうが先に増えます。そのかわり、その日にしか手に入らないものがあります。その子が、こういう夜にどうなるかという記録です。ふだんの日には絶対に取れません。

初めて犬を迎えた人がいちばん持っていないのは、道具でも知識でもなく、比べる相手です。「いつもと違う」と言うためには、「いつも」を知っていなければなりません。そして「停電の夜のいつも」は、停電の夜にしか作れません。だから、その夜にやる価値がいちばん高いのは、書き留めることです。

  1. 1行目|その子がいた場所を書く

    時刻と場所だけで足ります。「21時、キッチンの入口」「23時、足元」。ふだんその時刻にいる場所と違うかどうかが、あとで比べられる形になります。写真を1枚撮ってもいいのですが、暗いので写りません。文字のほうが確実です。

  2. 2行目|立ち上がった合図を1つ書く

    何かの音でその子が立ち上がったなら、それを書きます。「玄関のドアが開く音で立った」「懐中電灯を向けたら顔をそむけた」。反応の中身より、何に反応したかのほうが残す価値があります。次のときに、そこを避けられます。

  3. 3行目|食べたか、食べなかったかを書く

    翌朝の1食だけで構いません。全部食べた、半分残した、まったく食べなかった。これは、そのあと動物病院で相談することになったときに、いちばん先に聞かれる情報です。断水中は水を飲む量も変わることがあるので、水皿の減り方も見ておくと足りない情報が減ります。

  4. 手当ては、毎日の形をそのまま持ち込む

    新しいことを始めないでください。ふだんやっているケアのうち、水が要らないものだけを、いつもと同じ時刻にやります。犬は毎日、体から脂を出します。停電していても断水していても、そこは変わりません。グルーミングスプレーは、その毎日の側に合わせてつくられた1本です。足先と口まわりにかけて、布でなでる。口に近い場所に使うものなので、舐めても差し支えのない基準(清涼飲料水の規格基準)でつくられています。量を控えなくていいぶん、暗い部屋でも手が早く終わります。初めての夜に手順を増やすと、その子は「今日は違う日だ」と受け取ります。

Pointその夜にやめてよいこと

断水の日は、ペットのケアの回数を増やさなくて構いません。においが気になっても、拭く回数を上げると、その子は触られる時間が長くなった側で受け取ります。やめてよいのは、ふだんより丁寧にやろうとすることです。いつもと同じ長さ、いつもと同じ場所。同じであることのほうが、その日は効きます。

書き留めるのは、その夜のうちでなくても構いません。翌朝でも、2日後でも、思い出せる範囲で書けば足ります。正確さより、残っていることのほうが大事です。ペットと過ごした初めての経験は、1週間もすると細部から消えていきます。残るのは、そのとき感じたことのほうだけです。3行なら、電気が戻ったあとの散らかった部屋でも書けます。

二度目が来る前に、書き足せることが増えている|断水の日が初めての人に残す変化

電気と水が戻ってから、しばらくは元の毎日に戻ります。ただ、書いた3行は残ります。そして、そのあとの何か月かで、その3行に少しずつ書き足せるようになります。雷が鳴った夜、工事の音が続いた午後、来客が長かった日。ふだんの日にも、家の中が急に変わる場面はあります。そのたびに、あの夜と同じ反応が出るかどうかを見られるようになります。

1回の停電と断水が、初めての人に残していくもの
その日3か月後使い道
いた場所を1行ほかの場面でも同じ場所へ行くかが分かるその子の避難先が家の中のどこかを知る
立ち上がった合図を1行同じ音で立つのか、別の音でもかを比べられる音の側を先に手当てできる
食べたかどうかを1行何日で戻るのかの目安ができる様子を見ていい範囲の線が引ける
水皿の減り方ふだんの量と比べられる動物病院で伝える材料になる

初めて犬を迎えた人にとって、いちばんの変化はここです。停電と断水を1回過ごすと、判断の基準が1つ増えます。ペット向けの物のリストは検索すれば手に入りますが、この基準だけは、その子と過ごした日からしか出てきません。次に同じ夜が来たとき、比べる相手があるのとないのとでは、その夜の落ち着き方が変わります。人が落ち着いていることが、この場面ではいちばん効きます。

毎日の習慣の側にも、1つだけ足しておくと楽になります。ふだんの日に、水を使わないケアの手を1つ持っておくことです。ブラッシングでも、グルーミングスプレーで毛の流れをそろえてから梳かすことでも構いません。静電気が起きにくい状態になるので、空気が乾いている時期ほど手ごたえが違います。断水の日に新しく始めるのではなく、ふだんからやっている手が1つあれば、その日に減るのは水を使う手だけになります。被毛と皮膚を毎日触っている人は、変わったときにも気づけます。

Caution断水が終わっても戻らない変化は、動物病院へ

食べる量が数日たっても戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、体をしきりに気にしている、皮膚が赤い、被毛の一部がふだんと違う、下痢や嘔吐が続く、歩き方が変わった、隠れて出てこない日が続く。これらは、停電や断水の話では説明がつかない変わり方です。「あの日のことがあったから」と待たずに、動物病院にご相談ください。書いておいた3行を持って行くと、いつから変わったのかをその場で伝えられます。初めての人ほど、迷ったときは早いほうを選んで構いません。

停電と断水の日に、ペットのためにできることは限られています。それでも、その日にしか取れない記録が1つあって、それは翌日から使えます。初めての夜は、何を用意していなかったかを数えたくなります。ただ、あとから見ると、足りなかった物より、その子が家のどこにいたかを覚えているほうが、次に効きました。犬と暮らす毎日の中で、こういう夜は何度も来るものではありません。来た日には、まず3行を書いてください。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。