C14トリマー/獣医師視点

プロが「触ってわかる」と言うときの感触

公開日 2023年8月27日|文=mofuwa編集部

明るい光の入る部屋で、淡い色のクッションに並んで横になっている白っぽい猫と小型犬
手のひらの速度が落ちた一点が、プロの言う「触ってわかる」の中身です。写真:Nadiye Odabaşı/Pexels

背中に手のひらを置いて首のほうから腰へ滑らせると、肩の後ろで手の速度がわずかに落ちる場所があります。トリミングの現場で「触ってわかる」と言われているのは、この速度が落ちた一点のことです。被毛の上から手が読んでいるのは毛の量でも長さでもなく、滑りが変わる境目です。この境目は、目では見えません。被毛が地肌を覆っているあいだ、色と形の変化が毛の外側まで出てくるには時間がかかります。手のほうが早いのは感度が高いからではなく、毛の内側へ入れるからです。

手のひらが速度を落とす場所がある|被毛の上から触ってわかることの背景

トリミングのテーブルに乗せたあと、道具を持つ前に、手のひらだけで背中を2往復する手つきがあります。首の後ろから腰まで、往きと復りで速さを変えずに滑らせるだけです。ここで探しているのは、汚れでもほつれでもなく、手のひらの速度が落ちる場所です。2往復して同じ場所で同じように落ちたら、そこを覚えてから道具を持ちます。順番が逆になると、ブラシが引っかかった場所と、もともと滑りが変わっていた場所が区別できなくなります。

なぜ手から入るのかには、被毛の作りという背景があります。犬と猫の地肌はヒトの3分の1ほどの薄さで、その上を被毛が覆っています。目に見えるのは毛の外側だけなので、地肌の側で起きたことは、毛の向きや艶として表に出てくるまで待たされます。手は待ちません。指を立てれば毛の内側へ入れるので、外側に出てくる前の段階で触れます。触ってわかるという言い方が現場に残っているのは、手が優れているからではなく、手だけが内側に入れるからです。

この3つは、同じ被毛の別の層です。触ってわかると言うとき、プロは自分の手がどの層に当たっているかを分けています。手のひらで滑らせているあいだは先の層しか読んでいませんし、指を立てて入れた瞬間から中ほどの話に変わります。素人の手とプロの手でいちばん違うのは、この層の切り替えを意識しているかどうかです。1回の動きで3つの層をまとめて読もうとすると、どこの情報なのか分からない感触だけが手に残ります。

四つの手ざわりに分かれている|犬と猫の被毛で触ってわかる経験の中身

現場で言葉にされる感触は、大きく4つに分かれます。滑りの変わる境目、毛が分かれる深さ、押して離したときの戻り、そして一周したあとに手のひらに残るもの。この4つは動きも見るものも違うので、順番に分けて回します。まとめて触ると4つが混ざり、あとから言葉にできません。

被毛の上から触ってわかる4つの手ざわりと、その動き
手ざわり手の動き変わったときに出るもの
滑りの変わる境目手のひらを首から腰へ、1秒で手のひら1つぶんの速さで速度が落ちる場所が広がる/往きと復りで位置がずれる
毛が分かれる深さ指を3本立て、地肌に届かない位置まで入れる浅いところで分かれる/分かれずに束のまま動く
押して離したときの戻り指の腹で2秒押して、離してから数える起き上がる速さが左右で違う/戻りきらない
手のひらに残るもの一周したあと手のひらを見て、指をこすり合わせる乾いた粉が残る/うすい膜が残る/何も残らない

4つのうち、飼い主がいちばん使えるのは4番目です。手のひらに残るものは、毛の内側に入らなくても分かりますし、日によって変わったかどうかを覚えていられます。乾いた粉なのか、指をこすったときにわずかに引っかかる膜なのか、何も残らないのか。この3択で覚えておくと、一週間後に同じことを聞かれても答えられます。逆にいちばん難しいのは2番目で、毛が分かれる深さは被毛の作りそのものに左右されます。

ここに、犬の被毛でつまずきやすい点があります。上毛だけの子、下毛がしっかりある子、巻き毛の子で、平常の手ざわりがまったく違うのです。下毛のある子は指を入れると途中で必ず抵抗があり、それは変化ではなく元からの作りです。巻き毛の子は毛が分かれる位置が毎回ずれるので、深さでは読めません。だからプロの経験の中身は、感度の高さではなく「何種類の平常を手に持っているか」です。猫でも同じで、短毛の子と長毛の子では、押して離したときの戻る速さの基準が別になります。

この経験の積み上げ方を知ると、家のほうが有利な点も見えてきます。飼い主が覚えるのは1頭ぶんの平常だけです。何種類も持つ必要がないので、同じ場所を同じ動きで三週間さわれば、その子の平常はほぼ手に入ります。プロが年に10回会うあいだに、家では200回さわっています。触ってわかるという状態は、回数のほうで近づける経験です。

手を目盛りの動かないものさしにする|被毛の差が触ってわかる理由

同じ場所を毎日さわっていても差が読めない、といういちばん多いつまずきには、はっきりした理由があります。手の側の速さと圧が、毎回違っているからです。差を読む道具は、目盛りが動かないから使えます。今日は強く、明日は急ぎ足で、翌日はなでるように触れば、手に返ってくる感触はその日の手つきの記録になり、被毛の側で何が起きたかは残りません。プロの手が読めるのは、感度ではなくこの一定さのほうです。

  1. 速さを決める|1秒で手のひら1つぶん

    口に出して数えながら動かします。速いと滑りの境目を飛ばし、遅いと圧のほうが先に伝わって、毛が倒れた状態を触ることになります。

  2. 圧を決める|毛は沈むが、指が地肌に届かない

    指が地肌に触れてしまうと、そこから先は地肌を押した感触に変わります。毛の中ほどまでで止めるのが、4つの手ざわりのうち2番目と3番目を読む位置です。

  3. 順番を決める|5か所を固定して、必ず左右で対にする

    首の後ろ、背中の真ん中、腰、しっぽの付け根、後ろ足の付け根。左右を続けて触ると、その日の手つきのぶんが打ち消されて、差だけが残ります。

もうひとつ、目盛りを狂わせるものがあります。被毛の側の状態が日によって違うことです。前の日に何かを足し、今日は足さず、翌日は別のものを使う。これだと手のほうを固定しても、触っている相手が毎日入れ替わってしまいます。mofuwa スキンケアミストは高機能性電解酸化水だけでできています。舐める場所を避けて回り道をしなくてよいので、顔まわりでも耳のふちでも足先でも、手の速さと圧を変えないまま一周できます。触ってわかるようになりたい場所ほど、舐められる場所であることが多いからです。

浸透する力が精製水の35倍とされている水なので、表面に乗っている時間が短くて済みます。吹きかけてから指を入れるまでの待ち時間が要らないぶん、30秒の一周にそのまま組み込めます。スキンケアミストを使う目的は、被毛の状態を毎日同じところへ戻しておくことです。相手がそろえば、手のひらに残った差は、その子の側で起きた差だけになります。4番目の手ざわり、つまり手のひらに残る粉や膜の変化を追うときは、この前提があるかどうかで読み取れるものがはっきり変わります。

Caution手のひらの側ではなく、被毛の側が変わり続けているとき

押して離したときの戻りが遅い場所が、二週間で広がった/左右で対にして触ったときの差が、日ごとに開いていく/手のひらに残る粉の量が毎日増える/同じ場所だけ、毎回体をひねって手から逃げる。手の目盛りを固定したうえでこの形が残るなら、被毛の側で何かが動いています。さわった日付と、5か所のどこだったかを書いた紙を持って、動物病院で診察の枠を取ってください。いつから差が開いたかという材料は、毎日さわっている人しか持っていません。

毎日の三十秒に置き直す|被毛を触ってわかるまでの考え方

ここまでを一本にまとめると、考え方は単純です。手を固定して、相手をそろえて、同じ5か所を対で触る。4つの手ざわりのうち、最初は4番目だけでいいので、一周したあとに手のひらを見て、粉か膜か何も残らないかを決めます。慣れてきたら1番目の滑りの境目を足します。2番目と3番目は、その子の平常が手に入ってからで間に合います。

触ってわかるという言葉は、特別な感覚の名前ではありませんでした。速さと圧をそろえた手で、同じ場所を何度も通った回数の名前です。今日できるのは、さわる5か所を紙に書いて、1秒で手のひら1つぶんという速さを声に出して数えてみるところまでです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。