C12Q&A・豆知識

車内にペット臭が残る理由

公開日 2023年11月10日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの入る車の後部座席に、窓ぎわで落ち着いて座っている淡い色の犬
車のシートは、家の布と同じように使われて、家の布のようには洗われません。写真:Valeria Boltneva/Pexels

冬の朝、しばらく動かしていなかった車のドアを開けた最初の一瞬にだけ、はっきりにおう、ということがあります。乗り込んで5分もすると、同じ車の中で何も感じなくなります。車内に残るペット臭の正体は、その子の体そのもののにおいというより、シートの布に移った皮脂です。比べる相手は、家のソファやベッドの布。同じように毎日体が触れているのに、家の布は洗われ、車の布は洗われません。車内のペット臭が「積み上がっている」ように感じられる理由は、ほとんどこの一点の差から来ています。この記事では、皮脂が体から布へ移る道すじと、車の布だけが洗われないことで何が起きるのかを、8つの問答に分けて書きます。

車内のペット臭は、そもそも何のにおいなのですか

答えから書きます。車内のペット臭は、シートの布に移った皮脂のにおいです。その子がいまその場にいるかどうかとは、あまり関係がありません。降りたあとの車に残っているのは、体から布へ移ったものだけです。

皮脂というのは、皮膚から出る脂のことです。毛の付け根の近くにある腺から出て、被毛をつたって表面へ広がります。出たばかりの皮脂は、ほとんどにおいません。空気に触れて時間がたつあいだに、においとして感じられるものへ変わっていくとされています。ここが大事なところで、においの強さは「いま出ている量」ではなく、「どれだけ前に移ったものが、そこに残っているか」で決まります。

だから、シャンプーをした翌日に車へ乗せても、車のにおいはすぐには変わりません。体の側は入れ替わっていますが、シートに移ったぶんは前のまま残っているからです。体をきれいにしたのに車がにおう、という食い違いは、置き場所が2つあることから来ています。

車のペット臭を、置き場所で分けて考える
置き場所入れ替わり方ケアの届き方
その子の体(皮膚と被毛)洗う・拭くたびに入れ替わる毎日のケアが直接届く
シートの布外して洗わないかぎり残る拭いても表面までしか届かない
シートの中のクッション材ほぼ入れ替わらない家庭でできることが少ない
空気窓を開ければ数分で入れ替わる開ければ変わるが、すぐ戻る

この表の2行目と3行目が、車だけが持っている条件です。家にも布はありますが、家の布はここまで長く同じものが残りません。次の章から、その差を順に見ていきます。

体から布へ、皮脂はどうやって移るのですか

移り方そのものは単純で、触れているだけで移ります。こすれれば早く、じっとしていても時間をかけて移ります。乗せている時間が長いほど、そして車内が暖かいほど、移る量は増えます。脂は温度が上がるとやわらかくなり、布へ広がりやすくなるからです。

皮膚から出た皮脂が、シートの布にたどり着くまで 皮脂は皮膚から出て、被毛をつたって表面に広がり、触れている布へ移ります。移った先が洗える布かどうかで、そのあとの行き先が分かれます。 皮膚 出る 被毛 広がる シート 残る 毛をつたう 触れて移る 家の布に移った場合 週に一度、洗濯機に入る 積み上がる前に戻される 車の布に移った場合 外せないので、洗われない 乗せた回数だけ足されていく
止められるのは、体の側と、いちばん外側の布の2か所です。

移りやすい条件も並べておきます。どれも「気をつけましょう」という話ではなく、移る量が何で決まっているかという事実として読んでください。

最後の行が、ペット臭が「いつのまにか」出てくる理由です。1回あたりの量は少なくても、回数が積み上がります。そして車のシートには、その積み上がりを一度リセットする機会がありません。

家のソファと車のシートで、何が違うのですか

ここがこの記事の中心です。家の布は洗われますが、車の布は洗われません。違いはほとんどこの一点で、素材の差でも、犬や猫の側の差でもありません。同じ量の皮脂が移っても、片方は定期的にゼロへ戻り、片方は足され続けます。

同じ皮脂が移っても、行き先で結果が変わる
家のソファ・寝床・毛布車のシート
外せるかカバーやカーペットは外せる座面は車体に固定されている
洗う頻度数日から数週間に一度そのままなら、何年も洗わない
洗うまでの間上に敷いた布だけ替えられる敷いていなければ替えるものがない
日ざしカーテンで遮られる窓から直接当たる
温度の上がり方室温の範囲におさまる締め切ると外気より高くなる
空気の量部屋のぶんだけある座席のまわりだけ
気づきやすさ毎日いるので気づかない乗り込んだ最初の数秒だけ分かる

家の布も、放っておけば同じことが起きます。ソファのカバーを1年洗わなければ、車のシートと同じ状態に近づきます。だから、これは車という乗り物の欠点の話ではありません。洗う機会が入っているかどうかだけが、ペット臭の積み上がりを分けています。

Note「車がにおう」を言い直すと

車がにおうのではなく、洗われない布に、洗われない期間ぶんの皮脂がのっているということです。言い直すと、やることが変わります。空気を入れ替えることでも、体を余計に洗うことでもなく、洗える布を1枚、そこに差し込むことが答えになります。差し込む場所は、その子がいちばん長く触れている面です。

拭いても車のペット臭が減りにくいのは、なぜですか

シートが1枚の布ではないからです。座面は、表面の布/その下のクッション材/さらに下の骨格という重なりでできています。皮脂は液体なので、表面の織りの隙間を通って、下のクッション材まで入ります。拭き取りが届くのは、いちばん上の布の表面だけです。

しかも、座るたびに体重がかかります。押されるたびに、表面にのっていたものが下へ押し込まれます。掃除機をかけたあとにまたにおう、拭いた直後は薄くなったのに翌日戻る、というのはこの往復によるものです。減っていないというより、上下に動いているだけ、という見かたのほうが実際に近くなります。

ここから言えるのは、すでに入ったぶんを家庭で取り切るのは難しい、ということです。できるのは、これから入るぶんを止めることのほうです。ペット臭の話をするときに、掃除の道具を増やすより先に「布を1枚足す」が出てくるのは、この構造からです。

毛を全部取ったのに、においだけ残るのはどうしてですか

毛と皮脂は、別のものだからです。毛は繊維に絡んでいるだけなので、粘着ローラーやブラシで取れます。ところが皮脂は、絡んでいるのではなく染みています。取り方がまったく違うのに、見た目には毛のほうしか分かりません。だから「きれいにしたのに、車のペット臭だけ残っている」という状態が起きます。

毛と皮脂は、取り方が違う
毛皮脂
布への付き方繊維に絡む繊維に染み込む
目で分かるか分かる分からない
取れる道具粘着ローラー、ブラシ、掃除機洗濯、または布ごと交換
取ったあと見た目が変わる見た目は変わらない
残ったときに出るもの服につくにおいとして出る

この表は、そのままケアの配分にも使えます。毛を取る作業をどれだけ足しても、ペット臭の側はほとんど動きません。逆に、洗える布を1枚敷いておくだけで、皮脂の側は毎週リセットできます。手間の量ではなく、どちらの列に手を入れているかで結果が変わります。

毛を取るのが無駄という意味ではありません。毛が多く残っていると、そこに新しい皮脂がのって布に届くまでの通り道になります。毛は通り道、皮脂は残るもの。2つを分けて数えると、車の中で何をすればいいかが決まりやすくなります。

止めてある車に乗り込んだときだけ、強く感じるのはなぜですか

条件が3つ重なるからです。温度・空気の量・そして人の鼻の側の事情です。どれもシートに移った皮脂の量とは関係がなく、同じ量でも濃く感じられる、という話になります。

  1. 止まっているあいだに温度が上がる

    締め切った車は、窓から日ざしが入り、内側の温度が外気より高くなります。皮脂の成分は、温度が上がるほど空気の側へ出やすくなるとされています。夏の日中に停めた車で強く感じるのはこのためです。

  2. 空気が入れ替わらない

    エンジンを止めているあいだ、車内の空気はほとんど動きません。部屋なら扉の隙間や換気で少しずつ入れ替わりますが、閉めた車はそれよりずっと閉じています。出てきたぶんが、その狭い空間にたまります。

  3. 外から入るので、差が分かる

    外の空気を吸っていた鼻で車内に入るので、最初の数秒だけ違いが分かります。乗ってしばらくすると分からなくなるのは、においが消えたからではなく、比べる相手がなくなるからです。冬の朝にはっきり分かるのも、外気との差が大きいからです。

  4. 湿りが加わる日がある

    雨の日や、結露する朝は、布が湿ります。湿った布は、乾いた布より空気へ出す量が増えます。同じ車が、日によって強く感じられたり、感じられなかったりするのはこのためです。

この4つが分かると、判断が1つ楽になります。日によって強さが変わるのは、車のペット臭がひどくなったという意味ではありません。条件が変わっただけです。強く感じた日に慌てて掃除を増やしても、翌日の条件が違えば、やったことの効き目は測れません。比べるなら、同じ季節の、同じ時間帯の、同じ乗り込み方でそろえます。

家でできるのはどこまでか|出どころを切り分けて、布を1枚差し込む

まず切り分けです。車のペット臭が本当に車の布から出ているのかを、3つの質問で確かめられます。どれも道具は要りません。ここがはっきりすると、やることが1つに決まります。

3つの質問で、出どころを分ける
確かめることこうなら出どころ
家のソファでも同じにおいがするかする体の側。車だけの話ではない
後部座席の布を外して数日置いたか薄くなった外した布。洗えばリセットできる
乗せていない日の車はどうか乗せていなくてもにおうシートの中。家庭では手が入らない
乗せる前に体を拭いた日はどうか翌日の車が軽い毎日のケアで足す量を減らせる

そのうえで、家でできる手はほとんど1つです。その子が座る面に、洗える布を1枚敷いて、週に一度それだけを洗う。大きなカバーである必要はありません。座る面をおおう1枚があれば、これから移るぶんの行き先が、洗える側へ変わります。車のシートを洗えるようにするのではなく、洗える布を車に持ち込むという考え方です。

もう1つは、体の側で足す量を減らすことです。乗せる前に、腹の下・脇・尾のつけ根・足という、座ったときにシートへ当たる場所だけを拭いておきます。全身をやる必要はありません。固く絞った布で、その4か所を一往復させる。所要は1〜2分です。毎日のケアの目的を「体をきれいにすること」から「布へ移る量を減らすこと」に読み替えると、触る場所が4つに絞れます。

Point洗った直後に乗せるなら、乾かしきってから

洗ったあとの被毛が乾ききっていない状態で車に乗せると、布に移る量がふだんより増えます。湿った毛は、乾いた毛より皮脂を運びやすいからです。シャンプーをした日は、地肌が乾いてから乗せるほうが、車の側には有利に働きます。乾いたかどうかは、毛の表面ではなく、指を入れて地肌で確かめます。

「車内にペット臭が残る理由」を、一行に戻す

最後にまとめます。車内に残るペット臭は、シートの布に移った皮脂のにおいです。家の布と車の布に移る量は、それほど変わりません。変わるのは、そのあと洗われるかどうかだけです。家の布は洗われるので積み上がらず、車の布は洗われないので積み上がります。車がにおいやすいのではなく、車の布だけが洗濯の順番から外れている。これがこの記事の答えです。

理由と、そこから出てくる手を並べる
理由そこから起きることできること
においの元は移った皮脂体を洗っても車は変わらない布の側と体の側を分けて数える
シートは外して洗えない移ったぶんが積み上がる洗える布を1枚敷く
布は3層になっている拭いても表面までしか届かないこれから入るぶんを止める
毛と皮脂は別物毛を取ってもにおいは残る毛は通り道として見る
温度と閉め切りで濃くなる日によって強さが変わる同じ条件でだけ比べる
外から入ると差が分かる最初の数秒しか気づけない乗り込んだ瞬間に一度だけ嗅ぐ

布の側を替えたあとに残るのは、体から足されるぶんです。腹の下・脇・尾のつけ根は、その子が自分では届かない面で、そのまま座面に当たる面でもあります。ここを地肌まで洗えるのは、人が代わる日だけです。布へ移るぶんを減らしたいと思うと、洗う側の力を強くしたくなります。mofuwa モイストシャンプーは、その反対から組んであります。洗浄成分はアミノ酸系のものに限り、その量まで少なくして、そこで落ちる泡立ちを原料の水にした電解水が埋めています。だから、必要なものまで持っていきません。洗い上がりを戻す工程が要らないのは、そのためです。シャンプーを替えれば車内のペット臭も消えますとは書けません。シートに積み上がったぶんは、布を洗うか替えるかでしか戻らないからです。ただ、工程が1つ少ないと、乾かし始めるまでが早くなります。湿った毛は乾いた毛より皮脂を運ぶので、乗せる前の晩に洗うなら、その差はそのまま布へ移る量の差になります。

毎日のケアの側は、目的をはっきりさせておくと続きます。車のためにやるのは、乗せる前の4か所だけ。それ以上を毎日やろうとすると、たいてい2週間でやめることになります。布は週に一度、体は乗せる前に1〜2分。この配分で足ります。

Cautionにおいの質が変わったときは、動物病院にご相談ください

この記事は、車の布に移った皮脂の話です。においの「強さ」ではなく「質」が変わったときは、別の話になります。急に酸っぱい・甘いにおいが出てきた、皮膚が赤い、べたつきが強くなった、同じ場所を舐め続けている、フケが増えた、耳を振る回数が増えた。こうした変化があるときは、車の掃除や毎日のケアを増やす前に動物病院にご相談ください。いつから、体のどこが、どんなにおいに変わったかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。