C09シーン別・暮らし
シニア犬と暮らす人が来客の前で困ること、その手当て
来客の予定が入った金曜の夜、インターホンを試しに押してみたら、その子は寝床で耳の先だけをわずかに動かして、目は開けませんでした。去年の春までは、この音で廊下を走って玄関まで先回りしていた子です。老犬と暮らしていると、来客の日に最初に変わるのは、部屋の片づけでもペットのにおいの手当てでもなく、その子の反応のほうでした。反応が返ってこないと、こちらの段取りも組み直しになります。起こしたほうがいいのか、来客に何と言っておけばいいのか、そしてその子のために実際にやることは何なのか。この記事は、老犬と暮らす人が来客の前に立ち止まる問いを7つ並べて、最後にチャイムから見送りまでを一本につなぎ直します。
インターホンが鳴っても老犬が顔を上げません。来客の前に起こすべきですか
先に結論を書きます。来客の前に、寝ている老犬をこちらから起こす必要はありません。起こして立たせて、体を拭いて、玄関まで連れていく。この一連を来客の10分前にやると、実際に減るのは部屋のにおいではなく、その子がその日に使える体力のほうです。
老犬が横になっている時間は、若い頃と比べて長くなります。立ち上がるまでの数秒に力が要るので、いちど伏せたら、次に自分から動くまでのあいだが空きます。来客の前という数分は、その「自分から動くまでの間」に割り込む時間帯です。割り込むと、その子は起きるためだけに一度力を使い、来客が来たころには、また同じ場所で伏せています。手をかけたぶんの結果が、来客の目には何も見えません。
そのうえ、こちらが焦って起こすと、たいてい支え方が雑になります。前脚の付け根を持ち上げる、後ろから腰を押す。ふだんは時間をかけてやっていることを、来客までの残り時間で急ぐことになります。来客の日にいちばん避けたいのは、その子の姿勢に急な力が入ることです。ペットのにおいの話より先に、ここが土台になります。
- 起こさない:来客の前に、こちらの都合で立たせない
- 待つ:その子が自分から向きを変えた瞬間だけを使う
- 触る場所を減らす:全身ではなく、上になっている側だけにする
- 玄関に連れていかない:出迎えは、その子の仕事ではありません
- 時間を先に決める:来客の前に使うのは5分まで、と決めておく
チャイムに顔を上げないとき、音が届いていないのか、届いていて動かないだけなのか、家の中で確かめる方法はありません。年齢を重ねると、耳の聞こえ方も、眠りの深さも、起き上がるまでにかかる力も変わります。どれが理由かを飼い主が決めなくて構いません。ここで書けるのは、理由が分からないままでも、来客の日の段取りは組めるということだけです。反応の変わり方が急だったときの相談の線は、最後のセクションにまとめました。
そもそも来客の前のペットのにおいのケアとは、老犬の場合どこまでを指しますか
言葉の中身を先にそろえます。来客の前のペットのにおいのケアとは、来客が部屋に入ってから鼻の高さに届くものを、その5分のうちに一段減らしておく作業です。洗うのは時間のある日にやること、来客の前は面のほうを動かすこと。日によって手を置く場所が違うだけで、どちらも同じ毎日のケアの中にあります。
若い犬と暮らしているときは、この作業の中身がほぼ「その子の体」でした。走り回って、あちこちに体をこすりつけて、外から持ち帰ったものを体につけている。だから体を拭けば、部屋のにおいも一緒に薄くなりました。老犬になると、この対応が合わなくなります。動く距離が短くなるほど、においは体よりも、その子が長く触れている面の側に溜まります。寝床の布、その下の敷きもの、体の下側になっている面。ここが来客の前の作業の中心に移ります。
| 若い頃 | 老犬になってから | |
|---|---|---|
| においの出どころ | 体の表面。外から持ち帰ったもの | 体の下側と、寝床まわりの布 |
| 触る面積 | 全身。背中から足まで | 上になっている側だけ |
| 姿勢 | 立たせて、順に拭く | 伏せたまま。向きを変えない |
| 使う時間 | 10分ほど | 5分まで。長くしない |
| 布の枚数 | 体用に2〜3枚 | 体に1枚、寝床の下に1枚 |
| やる回数 | 来客のたびに1回 | 来客の前と、帰ったあとに1回ずつ |
この置き換えができていないと、来客のたびに空回りします。体をていねいに拭いたのに部屋のにおいが変わらない、という感覚が残るからです。老犬の来客対応でずれているのは、手のかけ方ではなく、手をかける場所のほうです。ペットのにおいのケアという言葉の中身を、体から面へ移してください。
なぜ、動かない老犬のほうが来客にペットのにおいが届きやすいのですか
理由は、時間と接地面の2つで説明がつきます。まず時間です。一日のうち体の同じ側が床に触れている時間が、若い頃の倍近くになります。次に接地面です。触れている側は空気が通らないので、皮脂と湿りがその場に留まります。においが強くなったのではなく、同じ場所に置かれ続けているというほうが近い状態です。
来客の鼻がそれを拾うのは、部屋に入った最初の数秒です。住んでいる側は毎日その空気の中にいるので、少しずつ濃くなる変化には気づけません。来客は、その日の濃さを何とも比べずに、いちどだけ嗅ぎます。だから家の人には分からない差が、来客にだけ分かります。老犬と暮らす家で来客の前にペットのにおいが気になるのは、感覚が鈍ったからではなく、比べる相手が家の中にいないからです。
- 寝床の中心:体重が乗っている場所。手を入れる順番の1番目です
- 寝床の縁:あごや前脚が乗り、よだれが落ちる場所
- その子の周囲30センチ:抜けた毛が集まり、来客の足元にもなります
- 水皿と食器の下:老犬は飲む姿勢が下がるので、こぼれる範囲が広がります
- 玄関から寝床までの直線:来客が歩く線と、その子の生活の線が重なる場所
5つ並べましたが、来客の前に全部を回す必要はありません。来客が座る場所から近い順に、2つだけ選んでください。老犬の寝床がソファのすぐ横にあるなら、寝床の中心とその周囲30センチで足ります。玄関に近いなら、直線のほうを先にしてください。
寝たままの老犬に、来客までの5分で触れるのはどこですか
順番を書きます。この4つは、その子が伏せたままの姿勢で全部終わります。途中で立たせない、抱き上げない、向きをこちらから変えない。これを守れる範囲でだけ手を動かしてください。
-
その子が自分から向きを変えるまで、何もしない
老犬でも、数十分に一度は自分で体の向きを直します。来客の30分前から、そのタイミングだけを待ってください。変わった瞬間に、それまで下になっていた側が上に出ます。ここが一日でいちばん手を入れやすい数十秒です。待っているあいだは、部屋の側の用事を進めてください。
-
上になった側だけを、布で一方向になでる
毛の流れに沿って、首から腰まで。往復させずに、同じ向きに3〜4回です。来客の前に増やしたいのは回数ではなく、面が空気に触れた時間のほうです。拭き終わったら、その面を数分そのままにしておきます。布を替えて何度もこすると、その子は起き上がろうとします。
-
口のまわりと前脚の内側を、小さい布で1回ずつ
老犬は口のまわりが湿ったままになりやすく、前脚の内側にはあごが乗ります。ここは面積が小さいので、来客までの残りが短くても入ります。においの出どころとしては、背中よりこの2か所のほうが上位です。強くこすらず、押し当てて離す動きにしてください。
-
寝床の下に敷いた布を、1枚だけ差し替える
その子を持ち上げずにできます。寝床の下に、あらかじめ大判の布を2枚重ねておいて、来客の前に上の1枚だけを引き抜きます。ここが、老犬の来客対応でいちばん結果が変わる一手です。体を拭くより早く、その子に力を使わせません。引き抜いた布は、そのまま洗濯機へ入れてください。
来客までの5分に探しものを入れないでください。大判の布1枚、小さい布2枚、差し替え用の敷き布1枚。この4枚をまとめて、寝床から手を伸ばせば届く場所に置いておきます。老犬の横で立ったり座ったりする回数が減るほど、その子は起きません。前の晩の3分が、当日の5分を静かにします。
上になっている側をなでる布には、mofuwa グルーミングスプレーを含ませています。その子に直接吹きかけず、布に移してから、毛の流れに沿って首から腰へ。お風呂そのものが負担になる子の毎日を、寝たままの姿勢で整えるための道具です。舐めても問題のない基準でつくられているので、口のまわりを拭く布にも同じように含ませられます。布に含ませる量は、握って落ちない程度で足ります。グルーミングスプレーは、前の晩に用意する4枚の布と一緒に寝床の横へ置いておくと、当日に探す時間がなくなります。
来客に、うちの老犬のことを何と伝えておけば大丈夫ですか
ここは、家の中の手当てより効きます。来客が困るのは、その子が動かないことそのものではなく、動かないときにどうすればいいか分からないことのほうだからです。先に伝えておけば、来客は迷いません。伝えるのは3つで足ります。
| 伝えること | そのまま使える言い方 |
|---|---|
| 起きないこと | 「奥で寝ています。年なので、たぶん起きません」 |
| 起きたときのこと | 「起きたら自分から来ます。呼ばなくて大丈夫です」 |
| 触っていい場所 | 「触るなら、背中を上から2〜3回だけお願いします」 |
| やめてほしいこと | 「顔の前に手を出すのだけ、控えてもらえますか」 |
| 音のこと | 「聞こえ方が変わっているので、後ろから急に触らないでください」 |
3つと書いて5つ並べましたが、玄関で言うのは上の2つで構いません。残りは、来客がその子に近づいたときに足せば間に合います。先に言っておくと、来客は「無視された」と受け取らずに済みます。老犬が動かないことを、こちらが説明のいらない当たり前として扱うと、来客も同じ扱いに合わせてくれます。
ペットのにおいについても、隠そうとしないほうが結果が静かです。「犬がいるので、少しにおうかもしれません。窓を開けておきますね」と先に言って、実際に来客が座る側の窓を細く開けておく。これで、来客は最初の数秒で拾ったにおいを、想定内のものとして流します。老犬と暮らす家では、においを消しきることより、においの出どころが説明済みであることのほうが働きます。
子どもは、寝ている犬に先に近づきます。だから玄関で親に伝えるのではなく、靴を脱ぐ前に、子ども本人へ直接、触っていい場所を渡してください。「背中を、上から2回だけ」と場所と回数で言うと、そのとおりに手が動きます。老犬の側から見ると、後ろから急に触られる回数がここで減ります。禁止の言葉を並べるより、やっていいことを1つ渡すほうが早く伝わります。
来客の日、老犬に対してやめてよかったことを教えてください
手を増やす話が続いたので、ここで減らします。来客の日にやめて、困らなかったことが3つあります。どれも若い頃には意味があったことで、老犬になってから空回りに変わったものです。
| やめたこと | やめて困らなかった理由 |
|---|---|
| 来客の前日に洗う | 乾かしきるまでの時間が長くなり、当日まで湿りが残ります |
| 全身をブラッシングする | 立たせる時間が要ります。上になっている側だけで足ります |
| 玄関まで連れていって挨拶させる | 廊下を往復するぶん、来客中に眠り続ける時間が減ります |
| 部屋じゅうに敷きものを足す | 洗う枚数が増えるだけで、においの出どころは動きません |
| 来客の直前に寝床の場所を移す | 落ち着ける場所がなくなり、その子が部屋を歩き回ります |
とくに1つめは、来客の予定が決まった日にいちばん考えることだと思います。けれど老犬は、乾くまでにかかる時間が若い頃より長くなります。体の下側は、伏せているあいだ空気が通りません。前日に洗って、当日の朝にはもう乾いているつもりでいると、来客の時間帯に、いちばん湿っている面が床に触れていることになります。洗うなら、来客の3日前までにしてください。
2つめについても書いておきます。ブラッシングをやめるという話ではなく、来客の日にやる回のブラッシングを、全身から片側だけに切り替えるという話です。老犬は同じ姿勢を保つのが負担になるので、全身を1回よりも、上になっている側を2日に分けるほうが体に合います。来客の日は、そのうちの1日にあてれば足ります。
後ろ足が震える、腰が落ちる、途中で座り込む。来客までの残り時間があると、この合図が見えていても最後まで続けてしまいます。その日に見えた合図は、来客の予定より優先してください。拭き残した面は、来客が帰ってから、その子が自分で向きを変えたときに回せます。来客の前にできなかったことは、その日のうちに取り返せます。
来客が帰ったあとに残る疑問は、どこから動物病院に相談する線になりますか
来客の日は、ふだんと違う音と人が家に入る日です。だからその子の反応の変化に、いちばん気づける日でもあります。ここまで書いてきたのは、反応が返ってこないことを前提に段取りを組む話でした。ただし、次のような変わり方に気づいたときは、来客の話としてではなく、そのまま動物病院で相談してください。
- 数週間のうちに、反応の返り方が急に変わった:ゆっくりではなく段差のある変わり方です
- 起き上がろうとして、途中で止まる:立ち方そのものに時間がかかっています
- 後ろから触ると、以前より強く驚く:気づき方の変わり方として記録しておいてください
- 同じ場所を気にして舐める、こすりつける:接地面の皮膚のほうを見てください
- 体の下側になっていた面が赤い、湿っている、においが変わった:面の側の変化です
- 水を飲む量や、食器の前にいる時間が変わった:においとは別に、記録に残す変化です
接地面の皮膚が赤い、じくじくしている、においが以前と違う、触ると痛がる、同じ場所を舐め続けている、起き上がるまでにかかる時間が急に延びた、食欲や水を飲む量が落ちている。いずれかに当てはまるときは、来客の日のケアを増やす前に、動物病院にご相談ください。老犬は、変化がゆっくり進むぶん、家の中では見過ごされやすくなります。見過ごさないための手がかりは、来客の日付とその面の2つです。
相談に行くときは、いつから/どちら側の面で/一日のうち何時間その姿勢だったかの3つをメモしてください。来客の日は日付が残るので、思い出す手がかりになります。「先月の来客のときは顔を上げたのに、今回は上げなかった」という言い方でも、変化の速さは伝わります。ペットのにおいの相談として持ち込むより、姿勢と時間の話として持ち込むほうが、切り分けてもらいやすくなります。
チャイムから見送りまでを、起こさない前提で一本に並べる
7つの答えを、来客の日の時間順に並べ直します。全部を毎回やる必要はありません。前の晩の3分と、来客前の5分だけが決まっていれば、残りは当日の様子で削って構いません。
| いつ | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 前の晩 | 布を4枚、寝床の横に置く | 洗わない。洗うなら3日前まで |
| 来客の30分前 | その子が向きを変えるのを待つ | こちらから起こさない |
| 向きが変わった直後 | 上になった側を布で一方向に | 往復させない。全身をやらない |
| 来客の10分前 | 口のまわりと前脚を1回ずつ | 立たせない |
| 来客の5分前 | 寝床の下の布を1枚引き抜く | 寝床の場所を移さない |
| 玄関で | 起きないこと・触っていい場所を伝える | 玄関まで連れていかない |
| 来客中 | 座る側の窓を細く開けておく | 呼んで起こさない |
| 見送ったあと | 反応の返り方をひと言メモする | その日のうちに手を足さない |
この表の右の列を見てください。来客の日に増えているのは、やることよりも、やらないと決めたことのほうです。老犬と暮らしていると、来客のたびに手を足したくなります。足した手はたいてい、その子に一度立ってもらうことを前提にしています。立ってもらうと、来客が来たころにはもう眠れなくなっている。これが、いちばん取り返しにくい消耗です。
最後に、来客が帰ったあとの15分について書いておきます。この時間帯は、その子が自分から向きを変える確率が高い時間です。人の出入りで空気が動いて、床の温度も変わるからです。来客の前にできなかった面は、この15分で回してください。寝床の下の布をもう1枚差し替えて、部屋の窓を反対側まで開ける。ペットのにおいのために来客の日にやることは、来客が帰ったあとにもう半分残っています。
来客のチャイムに老犬が顔を上げなくなったことは、家の中では小さな出来事です。それでも、こちらの段取りは全部そこから組み直しになります。起こさないと決めて、伝える言葉を先に渡して、触る面を上になっている側だけに絞る。この3つが決まっていれば、来客の日の5分は静かに終わります。反応が返ってこないままでも、その子のためにやれることは残っています。
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mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
